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第20話 宿泊先でホラーの予感

この度もお読み頂きまして誠にありがとうございます。


やった!今日も投稿できました。嬉しいです。1日1本を目標に投稿していたので(涙)

でも時間も体力もないし今日の晩御飯は手抜きでいいや。


あと、またまた微妙なタイトル変更申し訳ございません。あまりない様にしたいと言った矢先にこれですよ。もう土下座ものです。


改めてプロットって大事だなって思います。せめてストックを貯めることができればなぁ。


本日もどうぞよろしくお願いいたします。

「で、でけぇ」


「大きいですねぇ」


 国王と別れて数十分敷地内のはずなのに何故か車に乗せられ、エクレールさんの運転で車に揺られること数十分。


 辿り着いた先はシャルム国王の住まうグラウベン城より一回りぐらい小さな城だった。こちらも氷でできた城だ。俺とシルマは大口え開けてそれを見上げていた。


 漫画とかアニメとかだと「ずおぉぉっ」とか「どぉぉぉん」とかそんな効果音が付きそうなぐらいには大きい。見上げているだけで首が痛いし、口も開けすぎて痛い。


 あれ、おかしいなぁ。宿泊棟って聞いたから母屋的なものを想像していたんだけど、まさか城に連れて来られるとは思っていなかったぞ。


「あ、あの。このお城って」


 城を指さしながら確認すればエクレールさんは車から荷物を下ろしながらさらりと言った。


「宿泊棟でございます」


「はは、そうですかぁ」


 そうですよね、わかってましたよ。確認しただけです。と言うかその荷物は何ですか。俺たちそんなに大荷物じゃないですよ。財布とか軽めの食料が入る鞄しか持ってないですけど。


「それではお部屋に参りましょう」


 エクレールさんは車から降ろした荷物を全て担ぎ上げて言った。えっ、その段ボール4箱どうやって持ってるんですか。結構な重さがありそうですけどなんで涼しい顔なんです。あとその中は何なんですか。


 心のなかで疑問を並べるも俺が口を開く前にエクレールさんは扉へと向かった。もう既に他の執事とメイドが到着しており、荷物で両手が塞がっているエクレールさんの代りに扉を開けた。


「お待ちしておりました。クロケル様、シルマ様、シュバルツ様、お話は陛下より伺っております」


 開け放たれた扉の先でエクレールさんと同じく40代ぐらいで燕尾服姿で白手袋の男性が深々と頭を下げて俺たちに挨拶をする。


「プロクス。帰っていたのですね」


 エクレールさんがそう呼びかけ、燕尾服の男性はゆっくりと頭を上げた。


「ああ、先ほど帰還したばかりなのだが、客人を招いているとのこと。既に宿泊棟へと向かっていると聞いて一足先に到着して、準備を進めていたんだ」


「そうでしたか。それはご苦労様です」


 ん、なんだ知り合いなのか。と思いつつ俺は先ほどのシャルム国王の言葉を思い出す。確か、あとで執事長も紹介すると言っていた。


 改めてプロクスと呼ばれた男性の姿を確認する。丁寧な物腰に皺もなければ埃や汚れすら見当たらない燕尾服、真っ白な手袋。


 二次元でよく見る片眼鏡を左に描けていて、清潔感のあるグレーの髪をオールバックにし、口元には同じくグレーの髭で、形容するのであれば英国紳士と言う言葉が一番しっくりとくる。


 ピンとした背筋は高身長であろう男性を一層引き立てている。エクレールさんよりも背が高いし、180cmはあるんじゃないか。


 まじまじと見つめる俺の視線に気がついた男性が、何を勘違いしたのかこれは失礼と小さく咳ばらいをし、俺たちに向き直る。


「自己紹介が遅れて申し訳ございません。私はこの城の執事長、プロクスと申します。陛下の命により、エクレールと共にみなさまのお世話をさせていただくことになりましたので、なんなりとお申し付けくださいませ」


 プロクスさんはまた丁寧に頭を下げた。その上品さと気品あふれる立居振舞に俺もシルマも何度目だと言うほど緊張してしまい、こちらも丁寧な行動を心がけようと思えば思うほど、ぎこちない反応をしてしまう。


「よ、よろしくお願いいたします。あ、俺はクロケルと言います」


「お世話になります。わ、私はシルマと申します。こっちはシュバルツくんです」


「……こんにちは」


 緊張でガチガチな俺とシルマ。他人に対して警戒心が抜けないためか素っ気ない挨拶になったシュバルツそれぞれにプロクスさんは穏やかな笑みを向け、最後に空中に浮く聖を見る。


「こちらのタブレットは」


『あ、僕はアキラって言います。クロケルのパートナーでーす』


 視線を向けられた聖は飄々と挨拶をした。こいつはいっつも礼節に欠けるな。世界の長だからって他人にそう言う態度は良くないぞ。


 そんなことを思いながら聖を睨んでいると俺の耳元まで降りてきて、耳元て小声で言った。


『クロケル、この人も凄いよ。レアリティ5。エクレールさんと同じでアサシンの適性を持っているね。レベルは90だよ。中々の実力者だ』


 イケおじキター!!しかもロマンスグレーだぁぁぁっ!!プロクスさんをアナライズした聖の言葉を聞いた俺は突如としてテンションが上がった。顔を押さえて絶叫しそうだったが、そんなことをすれば不審者のほか何者でもないので何とか耐えた。


 悲しかなオタクってすぐ興奮しちゃうよね。大体みんな同じ反応をするよね。でも仕方ない。自分の好みのキャラが出て来て興奮が抑えられるものか。寧ろ感情を表に出さなかった俺を褒めて欲しい。


 心を躍らせる俺に聖が小声のままワクワクとした口調で続けた。


『面白いのが君と同じヒト型の魔族ってとこだね』


「魔族……!?魔族って王族に仕えることができるのか」


 思ったことが口から出てしまい、同時にその場が水を打った様に静かになる。若干空気が凍っている様にも思える。一瞬どうしてこんな空気になったのかわからなかったが、直ぐに思考が繋がり、ハッとして慌てて口を押える。ヤバい、今の言い方は誤解され兼ねない。


 俺はただ単純に疑問に思っただけだが、聞き方と捉え方によっては「魔族のくせに王族に仕えてるのか」みたいに捉えられてしまう。


「他の国では種族ごとに住む地域や職業を分けているところもある様ですが、グラキエス王国は害を与えないと証明された者は異なる種族と共に暮らしたり、働いたりすることが許されているのです」


「す、すみません。別に魔族だからどうとか言いたかったんじゃなくて……。俺も魔族ですし。えっと、ちょっと驚いただけで……あ、驚いたって言うのも否定的な意味じゃなくてですね」


 失礼な反応をしたにも係わらず、プロクスさんは穏やかに説明をしてくれた。俺の発言を一切気にしていない態度に余計に罪悪感を覚え、取り繕おうとすればするほどドツボにハマって行く。


 ああ、俺は何が言いたいんだ。情けないっ。ひょっとして聖以上にデリカシーがないんじゃないか俺。もしくは世渡り下手か。


「はは。お気になさらず。あなたは純粋で素直な方ですね。魔族とは思えないほどに」


 自己嫌悪状態で頭を抱える俺にプロクスさんが穏やかに笑みを浮かべながらそう言ってくれて安心した。


 しかし、同時に後半の発言にはドキリと言うかギクリとした。「魔族とは思えないほどに」と言う言葉に含みがあった気がしたが思い違いか?


 プロクスさんみたいなタイプは物事を見透かす能力に長けていそうな気がしてならないから別に悪いことをしていないけれどドキドキしてしまう。


 確かに俺は前世では普通の人間。その魂と記憶を引き継いでいるためか、魂を入れる器は魔族だが、魂はどこまで行っても平凡な人間なのだ。価値観や考え方は純粋な魔族とは大きく異なって当然だろう。


『グラキエス王国は他の国と違って種族同士の共存が進んでいる様だね』


「はい。私は先々代からこの城に仕えておりますので。私の様な者でも不自由なく暮らせる環境を与えて下さった王族の皆様には感謝以上の恩を感じております」


心中を見透かされないかドキドキしている俺を他所に聖が呑気に言い、プロクスさんが笑顔で返した。


 あれ、なんか話がうやむやになったぞ。まさか聖、わざと話を逸らしたのか。そう思って宙に浮く聖を見上げたが、特に反応が返って来ることはなかったので気のせいだと思うことにした。


「プロクス。お客様に立ち話をさせるものではないですよ。まずはお部屋に案内することが先です」


 エクレールさんが冷静に注意を促し、それを受けたプロクスさんは深々と頭を下げて謝罪した。


「これは、私としたことが大変失礼をいたしました。では、お部屋へご案内はこの私、プロクスがさせて頂きます。エクレールはその荷物の準備を頼めるかな」


「はい。わかりました」


 プロクスさんの指示を素直に受け取ったエクレールさんは大荷物を両手に抱えたままこの場を去ろうとしたので思わず呼び止める。


「あの、エクレールさん」


「はい。何でしょう」


 機械の様にピタリと止まり、エクレールさんがこちらを振り向く。重そうな荷物を持たせたままで申し訳ないとは思うが、俺はずっと気になっていたことがある。だから聞く。いや、聞いておきたい。


「その荷物はなんですか」


「みなさまの宿泊に必要な日用品や食材です」


 当然の様に答えて頂いたが、なにそれ聞いてない。百歩譲って日用品は分かるよ。あれだろ、アメニティグッズってやつだろ。ホテルとかにもあるもんな。バスタオルとか歯磨き粉とか。正直それは非常に有難い。


 でも、食材ってなんぞ。さっきシャルム国王が食事はみんなで食べるっていうてたやん。何で食材がいるの教えて。


「あ、あの。何故に食材を運び込んでいるんですか」


「お食事以外に何かを召し上がりたいと思われた際にすぐに対応できる様にするためです。私とプロクス、そして他のメイドや執事の数人はこの宿泊棟に控えておりますので、間食をご希望の場合は、いつ何時でもお声がけ下さい」


「はははは。そうですか。ありがとうございますぅ」


 正直に疑問をぶつけてみればエクレールさんは即答で当然のことの様に言った。なんでこんなに至れり尽くせりなんだよ。大歓迎ムードが逆に怖いんですけど。


「それでは。参りましょうか」


 顔を引きつらせる俺にプロクスさんが改めて声をかけられ、俺たちは満を持して部屋へと向かうことになった。




 案内されたのは6階の部屋。宿泊棟だけにその階にはたくさんの扉が並んでいた。通されたのはその内1つだったが、気に入らなければ他の部屋を使っていいと言われたので、その申し出は前もって断っておいた。


 因みにのクラージュは下の階、5階の部屋に通されていた。基本的にはこの建物内は自由に使っていいと言われているので、あとでシルマの様子を見に行ってみるか。


 そんなことを思いながらプロクスさんに扉を開けてもらい、シュバルツと共に部屋に入った瞬間俺は固まった。石化とはこう言うことかと思うほどに思考も挙動も停止した。


「このへや、俺が使っても良いのか」


 思わずそんな感想が口から洩れる。だって、めっちゃ広いんだもん!めっちゃ豪華なんだもん!


 部屋に入って飛び込んできたのは高そうな造りの5~6人掛けと思われる大きなソファーと、複数人で食事ができそうなガラス製のローテーブル。その前には見たこともないインチのテレビが壁に埋め込まれていた。と言うかほぼテレビが壁である。


 うーん。これでゲームをしたら爽快だろうな。某ゾンビ系とか格闘ゲームとか楽しそぅ。


『こんな豪華な部屋を前にして呑気なこと考えてるねぇ』


「うるせぇよ。非現実的な光景を目の前にしたるから平凡なこと考えてねぇと心のバランスが取れないんだよ。あと心読むなっつの」


 これが客人用とかありえん。本邸(と言う表現が合っているか謎だが)シャルム国王と妻であるクラージュの部屋はどんだけえげつないんだ。


 自分には不釣り合いな豪華すぎる部屋にげんなりとしながらも、丁寧に部屋を案内してくれるプロクスさんの後に続く。


 清潔感しかない洗面所、室内温泉の様な風呂場、用量たっぷりクローゼット、そしてベットメーキングが済ませてある寝室。どれもこれもスケールが大きく、キラキラしていて目が痛かった。部屋を見て回っただけなのにどうしてこんなに疲れるのだろうか。


「これで一通りお部屋はご案内させて頂きました。何かあれば部屋に備え付けの電話よりご連絡下さい。受話器を上げるだけで繋がりますので」


プロクスさんは美しい礼をし、最後に「ごゆるりと」と言い残して静かに扉を閉めた。


 こんな部屋でどう寛げと言うのか。緊張しかしないんですけど。こんな豪華な部屋、前世でもテレビの特集ぐらいでしか見たことがない。


 しかも俺たちはこんな豪華な場所に無料で泊まれると言うわけで。うん、何か裏があるんじゃないかな。なかったとしても何となぁく一悶着おきそうだなぁ。気のせいだといいなぁ。


 何をしていいかもわからず、とりあえずベットに寝転がる。1人で寝るには十分過ぎるぐらいの広さ。これがキングサイズか。


 シュバルツも同じ部屋に泊ると言う事で、同じ部屋の違う場所に同じキングサイズのベットが用意されていた。もう至れり尽くせりである。


 ベッドは大きいだけでなく、ふかふかだった。いい感じに体が沈んで秒で眠気が襲ってくる。骨の髄まで平民の俺にはどう表現すればいいかわからない。高級食パン?それぐらいふかふかで心地いのだ。


 俺は寝返りを打ち、その心地よさに何故か楽しくなってきて何度も寝返りを打った。


「あははは」


 寝返りを打つ度にベッドは優しく俺の体を吸収する。それすらも面白く感じてしまい、思わず漏れる笑い声。


『うわ。慣れない贅沢を前に頭おかしくなってる』


 聖が引き気味に言うがもう今はその発言すらどうでもいい。

おずおずと突っ立っていたシュバルツも俺をマネて同じベットに飛び込んだ後、楽しそうに寝返りを打った。


 いかん。これが常識だと思われてはいけない。人間として示しをつけないと。我に返った俺はピタリと動きを止めてシュバルツに言った。


「すまん。シュバルツ、これはこうして遊ぶもんじゃないんだ」


 シュバルツはキョトンと首を傾げたので、俺が説明をしようとしたその時、俺のポケットから電子音が響く。


「ぴぃっ」


 音に驚いたシュバルツが飛び上がってシーツに包まった。慌ててポケットを探ればこの国についた際にクラージュに連絡用だと渡された端末だった。


 そう言えば返すの忘れてたな。でもこれが鳴ったってことは俺に用があるってことだよな。とりあえず応答するか。


「もしもし」


『あっ。クロケルさんですか。よかったぁ。端末を渡したままにしてて』


 端末の向こうからホッとした様なクラージュの声がした。


「なんだ。何か用か」


『はい。伝え忘れたことがあった急遽ご連絡させて頂きました』


「伝え忘れたこと?」


 俺が聞き返せばクラージュは明るい声で何てことがない雰囲気でキッパリと言った。


『客室棟を好きに使ってもらって構わないのですが、地下の部屋には近寄らないで下さいね』


 その言葉に俺は新たなトラブルの気配を感じてふらついた。しかもこの展開はホラーな気配がするぞ。


 教訓、タダより高いものはない。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


聖「次回予告。豪華なお城でトラブルの気配。物語はホラー路線へ向かうのか……そしてクロケルは見事トラブルに対処できるのか」


クロケル「俺が対処すんの前提か。やめろ、頼む!1度で良いから平穏をくれ」


聖「異世界は冒険してナンボでしょ」


クロケル「俺はスローライフでも十分構わない。寧ろそれが良い。平和しか勝たん」


聖「次回レアリティは最高ランクだが素材がないのでレベル1 第21話『幽霊騒ぎを調査せよ』せっかくの異世界転生なんだから冒険心を忘れるのは良くないなぁ」


クロケル「自分の身の安全が確保できるならいくらでも冒険してやるよ」


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