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第1話 何故俺が転生者になったのか

お読み頂きまして誠にありがとうございます。


前作が完結しておりませんが、同時連載を頑張ろうと思います。『死神補佐』の続きは明日投稿できればいいなと思っております。


どうぞよろしくお願いいたします。

 俺の現世の名前はクロケル。これは俺が好きだったゲームのキャラから頂いたものだ。そして前世の名前は千賀和樹(せんがかずき)。ゲームとアニメと漫画好きな至って普通の高校2年の男子生徒だった。


 何故、普通の高校生だった俺がこんな森の中でクロケルなどと言う中二病大爆発な名前になり、ドラゴンに追いかけまわれるようになったのかと言うと、全ての発端はこのタブレットの声の主で俺の幼馴染であり親友でもある、御子柴聖(みこしばあきら)にある。


 あの日の出来事はあまりに印象的で、遠い過去になってしまった今でも鮮明に思い出せる。そう、あれはある日の学校の帰り道に起きた。


 記憶は時空の彼方まで遡る。







 聖の実家は俺たちが住んでいる地域で唯一の神社だった。俺は至って普通のサラリーマン家庭で生まれた子供だったが、家が近所で、趣味が同じで話が合ったと言う事もあり、聖は俺にとって一番親しい友達だ。


 因みに、本人は気がついていないが聖は学内ではイケメンと名高い。イケメンと言うか中性的なところが女子ウケしてるのかもしれない。


 薄い茶色の髪はふわふわした髪質で、目も男にしては大き目でくりっとしている。常にニコニコしているからか、王子と呼ぶ生徒も少なくない。これについては聖の内面も知らずに呑気だなと思う。


 なお、俺は聖と真逆の見た目である。ツンツンとしたこげ茶の髪の毛で、三白眼なせいか目つきが悪いし怖いとよく言われる。


 そんな見た目が正反対な者が一緒にいるせいか、一部の女子は俺たちを『主従コンビ』と呼び、黄色い声を上げている。


 なんで俺が従者なんだよ。いつ俺が聖に(かしず)いた。パシリにされたことすらねぇわ。


 俺も聖も学内では自分の趣味を公表していない隠れオタクなため、彼女らは気がついていないと思ってよからぬ妄想をしている様だが、生憎同類のため全て理解できる。


 だからたまに女子の反応を楽しむため、聖と相談しながらわざと彼女らが好きそうな行動を取ることもある。


 あ、もちろん俺も聖も内面は高校生男子で思春期ど真ん中。だから、お互いに女子が期待するような感情は抱いてない。


 恋愛の形はそれぞれだし、否定もしないが俺は今のところ恋愛対象は女性だ。



 

 ある日の放課後のことだった。聖が当然のことの様に俺に言う。


「今日も僕んとこに寄って行くんでしょ」


「ああ、今日は親の帰りが遅いからな。いつもよりも長く居座れそうだ」


「あはは。それはよかった。じゃあ、夕飯も食べていきなよ。母さんに頼んであげるから」


「マジか!聖のお母さんの飯、上手いんだよな。ラッキー」


 田舎町で生まれた幼い俺たちの遊び場は、聖の実家である神社の裏手だった。正月は人でごった返すが、それ以外の日に人はほとんど来ない。特に裏手は大きな藤の木が一本生えているぐらいでその他はなにもないため、誰にも邪魔され俺たちの幼い頃からの憩いの場所だった。


 学校帰りにはもちろん、休日だって毎日そこへ寄らせてもらい、時間が許す限り、ただくだらない話をして過ごしていた。


 そして俺たちはいつもの様に神社の裏へと回った。ハマっているソシャゲでレアキャラが出た事を自慢してやろうか。そんな呑気な事を思っていた。この日を境にいつも通りの日常がもう二度と訪れなくなるとも知らずに。



「な、なんだこれ」


「藤の木が、光ってる……?」


 神社の裏へ足を踏み入れた瞬間、俺と聖の目に飛び込んできたのは白く淡い光を放つ藤の木だった。


 自発的に発光する木など聞いた事がない。俺たちはその不可解な光景を茫然と見つめていた。見た事もない光景に驚きすぎてその場で思わず固まってしまった。


「ここから離れた方がいいんじゃないのか」


 こんな怪奇現象が起こっている場所にはいたくない。そう思って俺は聖に意見を求めたが、聖からの反応はない。


 不信に思って聖の顔を覗き込めば、すっかり藤の木に魅入っていた。俺の声が聞こえていないのか、呆けた表情で光を放つ藤の木を見つめていた。


「おい、おいって!とりあえずここから離れるぞ。おじさんとおばさんにも報告だ」


 様子のおかしい聖を見て何かがヤバいと直感した俺は聖の肩を掴んで乱暴に揺すった。

 こんな非現実な現象は大人に報告しても対応しようがないとは思うが、ただの高校生である俺たちにだって対処できる様な現象ではない。


 この状況で俺たちができる唯一の行動は逃げること。そう思った俺は反応が薄い聖に必死で声をかけて意識を引き戻そうと試みる。


「聖!おい!あきらっ。この馬鹿!しっかりしろ」


「え、あっ和樹……?」


 何度目かの声かけと強い揺すりで、ようやく己の意識を取り戻した聖は、まだぼんやりしているのか頭を抑えながらようやく返事を返した。


「うん。ごめん、そうだね。早く離れよう」

「ああ」


 聖から反応があったことに俺は胸を撫で下ろした。そして早急に2人でこの場から走り去ろうとしたその時、聖の真下に金色の魔法陣が現れた。


 それは丸い形をしており、見た事もない文字や紋章がぎっしりと施されている。どれもこの世のものとは思えない複雑な形をしていた。


 魔法陣など二次元の世界でしか目にした事がない。全く状況が飲み込めない俺は聖の足元に浮かぶそれを凝視する事しかできなかった。ふと光り続ける藤の木をみれば、そこにも同じ魔法陣が浮かび上がっていた。


「藤の木と魔法陣が連動しているのか?」


 おい、待て、二次元でこう言う光景を何度も見て来た覚えがあるぞ。誰もいない場所、科学では説明できない謎の現象、謎の魔法陣……これは異世界召喚フラグと言う奴ではないか。


 いやいや、そう言うのは二次元の話で現実ではまずありえない。

この状況でそんな呑気な事を思っている場合ではない。そんな事は十分わかっている。例え俺が二次元好きで異世界にあこがれを抱いていると言えど、現実と二次元の区別はしっかりついている……はず。


 だが、この状況はどう考えても俺が知る異世界召喚ラグ条件が揃いすぎている。しかも俺ではなく聖にフラグが立っている気がする。


「わっ」


「聖!?」


 短い悲鳴が聞こえる。聖の方を見ると体が魔法陣に飲み込まれる様に地面に沈み始めていた。


 これは本格的のヤバい。だが焦っている間にも魔法陣はどんどん聖の体を飲み込んで行き、今では上半身しか確認できない。


「聖!!」


 俺は反射的に聖に向かって手を伸ばした。親友を助けなければと言う一心で何も考えずに、必死だった。


 地面に飲み込まれ、身を捩る事がやっとの聖も俺の手を取ろうと手を伸ばし、そして互いの手が届いた。そう思った瞬間、眩い光俺の視界を奪い、俺はそのまま意識を手放した。


 次に俺が意識を取り戻した時、そこは真っ暗で何も見えない空間だった。それだけでなく、静寂に包まれていた。まさに無音の虚無空間だ。


 俺は妙な不気味さと寒気を感じ、言い知れぬ恐怖感を覚えた。

 しかし、直ぐに地面に飲み込まれて行った親友の姿が脳裏に過る。そしてさっき以上の不安感とあせりを感じた。


 あの時、確かに手は届いたはずだ。あいつの手を掴んだ感覚も、あいつが俺の手を握り返した感覚も覚えている。


 だが、聖の姿はどこにも見当たらない。同じ場所にいるのだろうか。そもそもここはどこなんだ。


「そうだ、聖!あきらーっ」


 どんなに叫んでも返事はないし、どんなに見渡そうとも聖の姿は見当たらない。

 とりあえず聖を探そう。そう思った時だった。


 闇の中に一筋の光が現れた。闇の中に突如として現れた光に驚いてそれを凝視していると、光は徐々に大きくなり、やがて人の形を成し始める。俺は何故だかその光から目を逸らすことができなかった。


 輝きは徐々に治まって行き、そこに現れた人物を見て俺は目を剥いた。


「あ、聖!?」

 

 光の中から現れたのは今まさに俺が探そうとしていた人物だった。姿は最後に見た時のまま、つまりは学校の制服を着ていたが、若干雰囲気が大人びている気が……しなくもない?


 俺の声に反応する様に聖は閉じていた目をゆっくりと開け、俺の姿を見て心から安堵した表情を浮かべた後、今度は何故か今にも泣きだしそうな表情になり、俺を見つめて口を開いた。


「よかった。和樹……ここにいたんだね」


「それは俺のセリフ……」


 ようやく見つけた親友に聖に近づこうとした俺はふと違和感を覚える。()()()()()()()()()()()()()()()


 冷たくぞわりとした感覚が俺を襲う。何かとてつもなく嫌な予感がする。先ほどまで気づかなかった違和感に襲われ、ふと足元を見る。


 そして俺は言葉を失った。()()()()()()()()()()()。反射的に手を確認しようとしたが、足と同じく目視する事はできなかった。と言うか体を動かすことが不可能だと言う事に気がついた。


 俺が動揺している事に気がついたのだ聖が俺を落ち着かせる様にゆっくりとした口調で言った。


「落ち着いて聞いて、和樹。君はね、一度命消滅したんだよ」

「……は」


 あまりにも悲しそうな表情を浮かべる聖を見て、冗談を言っているのではないと理解して、俺の中に焦りと絶望が生まれる。


 消滅ってことは存在が消えたって事か?

 体がないことを自覚したばかりで混乱している俺は思わず取り乱しそうになったが、悲しそうな表情を浮かべる親友の前で情けない姿を見せたくなかった俺はなんとかそれに堪える。


 落ち着け、落ち着くんだ。俺……・


 それに『一度』と言う言葉が引っかかるし、俺には千賀和樹としての意識もあるし記憶もある。

 体がないことは事実だが、命を失ったと言う感覚はない。それに俺は今のところ現状をまったく理解できていない。


 まずは現状を理解することが最優先事項だ。


「なあ、聖。今はどう言う状況なんだ。知ってる教えてくれないか」


 聖は苦笑いを浮かべながら答えてくれた。


「うーん。信じてもらえるかわからないけど、聞いてくれる?」


「ああ。もちろんだ」


 言葉を濁す聖に疑問を抱きながらも俺はしっかりと頷いた。聖は『それじゃあ……』と呟いた後、きっぱりと言った。


「僕はね、神子として異世界に召喚されたんだ」


「は?お前ふざけてんの」


 話を聞くと言った矢先、自分でも驚くほど低い声でツッコミを入れてしまった。聖はムッとした表情を浮かべて反論した。


「なんだよ!話を聞いてくれるっていったじゃないか」


「ああ言ったよ!でもそんな漫画みたいな話をされるとは思ってなかったよ!」


 不満全開の聖に対して俺もムキになって反論する。

 突然真っ暗な空間で目が覚めたかと思えば、光の中から現れた親友に命を失ったと言われ、挙句の果てに自分は異世界に召喚された。そんな話を誰が信じると言うんだ。


 聖も俺と同じぐらい重度なオタクだと知っていたが、いくら何でもこれはひどいひどすぎる。


「冗談はやめろ。そんなの信じられるわけないだろ」


「僕は嘘なんてついてない。全部本当のことなんだ」


 必死に反論する聖を見ていると、冗談を言っている様にも嘘をついている様には見えず、俺の心はスッと冷えて行く。


「え、マジなのか」


 目の前の親友は至って真剣な表情で頷いた。


「和樹、意識を失う前の事は覚えてる?」


「あー。いつも通りお前んちに寄って、神社の裏手に回ったら藤の木が光ってて……」


 俺は記憶を辿る。若干ぼんやりとしている部分はあるが、何とか記憶を絞り出す。


「そうだ。お前、あの時魔法陣?に飲み込まれてなかったか!?」


 記憶の中でその光景が鮮明に蘇り、それを問えば聖はすぐさまそれを肯定した。


「そう。俺はあの時に異世界に召喚されたんだ」


「マジか」


 俺は思わず頭を抱えた。魔法陣を目にしたあの時、確かに異世界召喚フラグっぽいとは思っていたが、まさか本当にフラグだったとは。

 

 冗談だろ、あんなのファンタジーの世界の話だ。しかも神子!?なんだそれ、強制異世界召喚なんてはた迷惑な話、現実であってたまるか。


「ちょっと待て。仮に、仮にだぞ。お前が神子として異世界召喚されたとして、俺が命を失うことにどう繋がるんだ」


 追いつかないツッコミは一旦置いておいて、俺は一番知りたいことを問う。すると聖は申し訳なさそうに俺から視線を逸らし、俯きながら言う。


「あの時、君は僕を助けようと手を伸ばしただろう」


「ああ」


 確かに、俺はあの時反射的に手を伸ばした。そして掴んだ。それが命を失う事にどう影響していると言うのかがさっぱりわからない。


「僕は神子として異世界に迎え入れられる形で召喚されたんだ。だから、時空を超えても平気だった」


「ああ」


 聖が言わんとしていることはよくわからないが話の流れ上、とりあえず相槌を打つしかない。いちいちツッコミを入れていては話が進まないし。


「でもね、君は違う。神子でないし、異世界に召喚されたわけでもない、ただの人間だ。僕の手を掴んだばっかりに一緒に魔法陣に引きずりこまれたんだけど……」


 そこで言葉を切り、聖はまた口ごもりそして今度は俺の方をしっかりと見据えて言った。


「普通の人間である君は時空の流れに耐えきれず、魂と体が消滅してしまったんだ」


「はぁ!?」


 告げられた真実に俺は思わず声を荒げてしまった。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



聖「次回予告!ドラゴンに追いかけられていたと思ったら突如として昔語りを始めた和樹、もとい魔法騎士(笑)クロケル。現実逃避をする彼は無事にドラゴンから逃げ延び、生還する事はできるのか……。まだまだ続くよ!昔語り。次回『レアリティは最高ランクだが素材がないのでレベル1 第2話 運命が決まる!?確定なしの異世界転生ガチャ』皆、クロケルの行く末を見守ってあげてね」


クロケル(和樹)「てめぇ……俺の事バカにしてんだろ」


聖「してないよー。魔法騎士(笑)様」


クロケル(和樹)「よぅし、てめぇの画面を叩き割る」



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