第18話 楽しいお泊り会開幕!?
この度もお読み頂きまして誠にありがとうございます。
1日おきの投稿で申し訳ございません。
昨日も本当に忙しかった。中途採用の指導が終わったと思ったらもう新人の方への指導が見え隠れしている(震)
でも、小説はコンスタンスに投稿はしたいので、お付き合い頂ければ幸いです。
実はこの物語はプロットなしで、毎回思いつくまま書いているのでグダグダして長いんですよ。設定とかブレない様に必死です。楽しんで頂けていれば良いのですが……。
本日もどうぞよろしくお願いいたします。
【追記】ブクマが1件増えていた事、いいねが4件あった事、そしてもう1つの作品死神補佐のポイントが上がっていた事、誠に御礼申し上げます。
皆さんの評価はとても力になります(賛否どちらとも)
仕事で滅多打ちになっても頑張るぞ!ってなれます。本当にありがとうございました。
同じ内容になってしまいましたが、活動報告でも御礼の言葉を書かせて頂いております。本当に感謝です。
国王に気を遣われるままお茶をすすって大分気持ちも落ち着いた。温かい紅茶が暗い気持ちだった俺を温かく包んで和らげる。
「ここから先はアタシから話すわ。世界の存続を望むと言う意見に賛同したのがアタシたちってわけ」
俺の気持ちが落ち着いたことを見計らってシャルム国王が口を開いた。
「賛同した?」
それは一体どういうことなのか。それに「たち」他にもメンバーがいた可能性がある。そう言う意味合いも含めて疑問形で返した。
「アキラは異世界の神子として世界を救って回っていたからね。色んなところで救世主として支持されていたからね。その志に賛同するものも多かったの」
『この世界を救う力になりたいって僕のところへ志願して来る人は多かったんだよ。最初はね』
聖が含みのある言い方をしたため、俺はますます首を傾げてしまう。
「最初はってことは状況が変わったってことか?」
「前長がクレイドルの消滅を望んでいるなんて当時は誰も思わなかった。まあ、当然よね。長が世界を消滅させまーす。なんて目論んでいるなんてこと誰も信じるわけないもの。異世界から来た神子がおかしなことを言っていると信用をなくしてしまって、次第にヒトも減っていったのよ」
『寧ろ、僕がこの世界を乱しているのではないかって言うヒトたちもいて大変だったな』
「この世界の長は全知全能。ほぼ神と同格と言ってもいい。当時は治安が乱れる状況下でも長が救ってくれるとみんなが信じていたから、よそ者であるアキラが劣勢になるのは仕方がないわね。仲間だったアタシたちも割とひどい目にあったわ。まったく……とばっちりもいいところよ」
聖はため息混じりに笑い、シャルム国王も当時のことを思い出してか少しだけ表情を歪めてうんざりと肩を落とした。
確かに、人間は一度信じたものからの裏切り行為を受け入れられるほど強くないもんな。かりに前長が世界を滅ぼそうとしているってわかっていてもその事実から目を逸らす奴の方が多そうだ。
「でも、何人かはアキラの元へ残ったの。アキラを信じる者、真相はどうでもいいから単純に世界を救いたい者。理由は様々だったけど、とにかく誠に世界の平和を望む者たちの集いだったわね。あ、因みにアタシは後者の方よ」
「国王様はどういった経緯で聖に協力することになったんですか」
それが一番気になるところだ。見たところ聖は人々からは歓迎されていなかった様だし、王族であるシャルム国王が妥当長を掲げている聖の手を貸すのは色々と不利な気がする。
「アタシはアタシで次期国王候補としてどうすれば世界を守ることができるか模索していた時にアキラがグラキエス王国にやって来たのが理由と言えるかしら。そして共に世界を救う旅に出たと言うわけよ。アタシの他にも後4人協力者がいたのよ」
つまり合計で6人のパーティメンバーと言うことだな。世界の長を相手にするにしては少なすぎる。よほど過酷な戦いだったことが予想される。
『そんなこと言ってるけど、最初は僕にアタリ強かったじゃん』
聖が不服そうに言えばシャルム国王はツンとして返した。
「そんなの当たり前でしょう。異世界から来ただの世界を守る神子だの言われて信じるほどアタシはお人好しじゃないの」
『うわ、開き直ったよこの人』
嫌味じみた言い合いをするが、絆がある者同士だからこそできるやりとりの様にも感じ
られてなんか、ちょっとだけジェラシー?
俺が消滅した後にも世界の時間は進んでいたんだ。聖は聖の人生を頑張っていたのは分かっているけど、自分が親友の知らない姿を知っているやつがいるって言うのはちょっとだけ寂しいかも。
「最終的には協力を決めたんだからいいでしょ。長の暗躍の真相はとにかく、この世界が良くなるのであればアキラに協力しても良いと思ったの。アンタも悪い奴じゃなさそうだったし」
不満そうな聖にシャルム国王は左手をヒラヒラとさせて払うような素振りでとてもウザったそうにそう言った。
「そう言えば聖は前長が世界を滅ぼそうとしているっていつ知ったんだ」
クレイドルの住人が予想もしなかったことを、召喚された聖は知っていたのかが気になり、聖に聞けば迷いながら返答をした。
『うーん……この世界に召喚された当初は知らなかったよ。僕、世界そのものの声が聞こえるんだけど、最初に言われたんだ。神子としてあなたに問います。世界の存続か、消滅か、選んで下さいって』
「右も左もわからない奴に唐突に究極の二択迫るとか、この世界は鬼か」
いや、でも二次元の主人公って大概は理不尽な選択を迫られるよな。しかも大概が十代で精神的にも未熟。そして若くして過酷な運命に立ち向かうと言うプレイヤー側からすればワクワク展開。
現実的に考えるとただの無茶振り。もっと言うなら他力本願もいいところである。
まあ、序盤で主人公が運命から目を背けようもんなら即エンドロールだろうけど。バットともトゥルーでもない謎エンドになるけれども。
そもそも最近まで普通の学生やってた奴に突然世界の命運を預けるとか酷すぎじゃね。
世界を救うなんてことはファンタージーだからこそ楽しめるんだよな。実際にやれと言われると多分、半ギレで「は?」ってなること間違いなしだ。
大体、何故自分とは全く無縁の場所を命をかけて守らなきゃならんのだと思う。自分が住んでいる世界を敵の侵略から守るために戦えと言われた方がまだ納得できる。
『あはは、うん。まあ僕もこんなに人生がハードモードになるとは思ってもなかったよ。物語の主人公になるって憧れだったけど、こう言うのは漫画やゲームの世界で楽しむものだって心の底から思ったよ』
聖は苦笑いをした。そりゃそうだよな。誰だって叶うことなら平穏無事に人生を送りたいよな。きちんと世界を救ったお前は偉いよ。
「聖とシャルム国王は前長に会ったことは?」
「いいえ、ないわね。と言うか長基本的にその身を護るためにその身を表すことはないし、居場所を知らせることもないわ。その辺はアキラと一緒でしょ」
俺の問いかけにシャルム国王が首を横に振ってそう言ったので聖の方へと視線を移す。
「そうなのか」
『うん。長が襲われたり暗殺されちゃうとそれこそ世界が滅びちゃうからね。次の長候補でもいない限り、長は誰もいない、誰も来ない場所で静かに暮らす必要がある』
そう言えば最初にそんなことを言っていたな。自分は世界のどこかにいるってぼやかしてたし。あれは自分の身を護るためだったんだな。
世界を守るために長は孤独でないといけないなんて、凄く悲しくて辛いことだろう。こうしてタブレット越しに会話をしているが、本物の聖はこの世界のどこかに1人でいると言うことになるもんな。
俺が心を曇らせていると、聖がぎこちなく言った。
『さっきの問いに答えさせてもらうと、前長には神子として何度か会ったことはあるよ。全部向こうからのアクセスだったけど。当初の彼女は僕に協力的な印象だった。この世界は滅びゆく運命にある。世界の長である自分1人の手には負えない。神子である僕の力を貸して欲しいって言われたのを覚えてる』
「なんだそれ。自分は世界を滅ぼそうとしているのに聖に助けを求めたのか。矛盾してるだろ。本性を隠して言ってことか」
「確かに。それはアタシも初耳ね。前長っていい性格してたのね」
顔をしかめる俺の目の前でシャルム国王は優雅に紅茶を飲んだのち鼻で笑って言った。
聖は何とも言えないと言った口調で自信なさげに続けた。
『その時の彼女の真意は分からないままけど、彼女の態度が変わったのは僕がこの世界の存続を決めた直後だよ。あなたとは道を違えることになったって冷たい声と表情で言われた。それ以来、彼女とは一度も会っていない』
「そうか……」
前の長は変わった奴だったんだな。でもなんで世界を滅ぼすことになったんだろうかとぼんやり考えていると聖は話を締めくくる様に言った。
『そして僕たちは長い旅の果て、前長の居場所を突き止め、戦いに勝利して世界の存続を勝ち取った。シャルムにも世話になったよ』
「ええ、我ながら良い働きをしたと思っているわ。ただの修行以上の成果も得ることができたと思うし、アンタとの旅があったからこうして国王になれているかもしれない。改めて感謝してあげるわ。ありがと」
『どういてしまして』
シャルム国王の上から目線且つ、素っ気ない感謝の言葉に聖は同じく素っ気なく返した。
『前長を倒した後のことは単純だよ。神子は次期長になる権利があるからね。僕は空いた座を埋めるために長となった。それで現在に至るって感じかな』
何でそんな軽く言っちゃうかな。と言うか全体的にギュッと詰め込まれた気がする。まあ、聞けば聞くほど壮大な話だし、一から十を話すのには相当時間がかかるんだろうな。結局過去のことはあまりわからなかったけど、仕方がないか。
「でも、どうしてお前はこの世界の長になったんだ。お前は別世界の人間だ。断る権利はなかったのか」
関係のない人間を異世界に呼び出して世界の命運を託した挙句に今度は世界の長になれなんて理不尽があるか。
当然、拒否権はあったんだよな。そう思って聞いた見たが聖はとても静かな声で少しだけ寂しそうに言った。
『長に打ち勝った神子は次期長になることが決まりなんだ。この世界は様々な種族が混在する。だから、価値観のズレは当然生まれる。誰かが監視しなければ争いが多発し、全ての種族や文明が滅びてしまう。そうならないために監視役が必要なんだよ。だから、神子として選ばれた時点で拒否権はないんだ』
「うそだろ……この世界に長ってのはそんなに必要なのか」
世界に呼ばれた時点で聖が元の時空に戻れないことが確定していたことを知って驚愕する俺に聖は続けて言った。
『この世界で長って言うのは世界を支える柱みたいなものでね。同時にこの世界の未来を決める裁定者としての役目も背負うことになるんだ。この世界の運命を決める神様。だからいないと世界自体が成り立たなくなるんだ。そして世界の存続を望んだ俺は当然この世界を見守り続けると言う義務がある』
「お前、そんな簡単に言うなよ」
どう考えても理不尽な運命をあっさり受け入れた聖に怒りを覚えて自分でも驚くぐらい強い口調になってしまった。
『いいんだよ。それに長になって神子以上に力を手に入れることができたしね。長年の願いもかなったし』
聖は穏やかな口調で返してきた。その言葉にシャルム国王が反応する。
「そう言えばアンタ、その願いとやらは何だったの」
『うっ』
言葉を詰まらせた聖に問いかけたシャルム国王は目を丸くした。
「あら。ごめんなさい。あんまりにも必死だったから、旅を共にしていたとこからずっと気になっていたんだけど、聞いてはいけないことだったかしら」
それは失礼。と優雅に紅茶を口にするシャルム国王に今度は俺が問いかける。
「必死と言うのは」
「アキラがクレイドルを救いたいと思う気持ちは本当だったと思うわ。実際、こうして救ってくれたしね。最初こそ葛藤戸惑いはあったようだけれど、己の運命と向き合う強さと仲間たちを引っ張って行くカリスマ性、と言うか人たらしに近い能力もあった。そう言うとことはアタシも認めているし、アキラを信じてみようと思った要因でもある」
うわ。聖って聞けば聞くほど主人公してたんだな。寧ろそう言う側面を持っていたことの方が驚きだよ。俺と同じ普通のオタク男子かと思ってたのに、裏切られた気分。
俺が心の中でやさぐれているとティーカップをゆっくりと置いてシャルム国王が静かな声で続けた。
「アキラが一所懸命な人間だと言うことはわかっていたわ。でも、世界以上に何かを救いたがっていたとアタシは思うの。当時から焦りに近いものを感じていたわ」
「焦り、ですか」
「ええ。なんでも大切な友人の命を救いたいだとか。早くこの世界を救って、力を手に入れて友人の魂を探しに行きたいって息巻いてた」
やっぱり、聖が躊躇いもなくこの世界に残ることを決めたのは聖の召喚に巻き込まれて消滅した俺のためだな。
前に本人の口からもそれは聞いていたから動揺や憤りは覚えないが、ただでさえ過酷な状況で神子として世界を守りながらもずっと消滅した俺を救おうとしていたのだと思うと俺の方にも罪悪感が生まれてしまう。
「でもまあ、言いたくないならいいわ。アタシ、他人の事情に首を突っ込むのは好きじゃないの。離す気がないのならこの話はこれで終わり」
また空気が重くなりそうなのを察したのかシャルム国王がそ話を唐突に切る。
「アタシが話せるアキラの過去はこれぐらいかしら」
『僕も。まあ、おいおいと話すことも増えるだろうけど、今はいいかな』
話すことが増えるんだな。と内心でツッコミながらも俺は思う。かつての聖の仲間はあと4人いると言っていた。これは少なくとも聖の過去をしる人物が最低でも4人出て来ると言う壮大なフラグではないか。
俺の育成素材を探す旅だったはずが聖の過去を知る旅にすり替わらないことを祈りたい。
そんなことを思っているとシャルム国王が唐突に言った。
「アナタたち、この国まではジェットで来たんでしょ。今日住む宿は決まっているの?」
「いえ、突然ここへ来ることになったのでまだ……」
そうだった。ここまで来るまで急展開過ぎて宿のことまで頭が回ってなかった。今から探すのはちょっとめんどくさいけど、仕方がないか。そう思った時、シャルム国王があっさりと口を開く。
「なら、今日はこの城に泊ると良いわ」
「はい?」
あまりにしれっと言われたので、失礼だとは思いつつも思わず聞き返してしまったが、何?今、城に泊れとおっしゃりましたか。この国王様。
「客人用の宿泊棟を用意させるわ。1人1部屋でいいわよね。クラージュに協力してくれたお礼の1つとして受け取って頂戴。ちゃんとした御礼はあなた達がこの城を発つ時に渡すから安心しなさい」
いえ、安心も何も。俺としてはもう御礼とかもうどうでもよくてですね。
俺が返事をするよりも早く、シャルム国王はさっと端末を取り出し、どこかへ連絡を入れた。
「ええ、大丈夫そうかしら。そう、なら準備をよろしくね」
素っ気なくそう言った後にプッと端末を切り、涼しい表情で俺を見つめて言った。
「今、宿泊棟を使える様にしてもらったわ。遠慮なく泊まっていきなさい。すぐ案内させるから」
おおう、もう完全に城に一泊する流れになってるし。まあ、宿を探す手間が省けたのはいいけど、城を宿代わりにするとか緊張感がやべぇ。城に泊るとか知ってシルマ、失神しないかな。大丈夫かな。
「あ、ありがとうございます。お世話になります」
「御礼なんていいのよ。客人をもてなすのは王として当然のことだもの」
動揺と緊張でガチガチになって頭を下げれば懐が深すぎるとしか言い様のない返答があったので俺は更に深々と頭を下げた。
『おお!これはお泊り会だね。お城に泊れるなんて中々の良イベじゃん。スチルありは確定だよ』
「お前、マジで呑気だな」
こう言うところは昔と変わらないんだけどな。こいつがどんな経験をして何を思ったのかは多分、モブの俺では一生理解できないだろうけど、こいつと同じ時間を過ごす限り、俺はこいつの親友だ。
呑気に浮かぶ聖を見ながら俺は改めてそう思った。
「それじゃ、クラージュたちが控えている部屋に行きましょう」
シャルム国王が優雅に立ち上がり、扉へと歩いて結界である青い鎖を解除する。
そのまま振り返ることなくツカツカと歩みを進めたので俺は慌ててその後を追いかけた。
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聖「次回予告!僕の過去をある程度わかったところで次に発生したイベントはなんとお城でのお泊り会!2話連続で重めな話だったから、今度こそギャグ回になってクロケルにいつもの調子を取り戻してもらいたいな」
クロケル「俺はギャグ担当になった覚えはないんだがな。このダークよりな見た目でギャグ要因はちぐはぐし過ぎるだろ」
聖「でも、敵だったキャラが味方になるとギャグ落ちする展開はよくあるよ」
クロケル「俺は敵キャラじゃねぇし」
聖「次回レアリティは最高ランクだが素材がないのでレベル1 第19話『イケおばとイケおじは二次元の宝です(※個人の見解です)』レッツエンジョイしちゃってよ」
クロケル「イケお……なんだ?新キャラ登場フラグか?」