第185話 脱線は続くよ、どこまでも
この度もお読み頂きまして誠にありがとうございます。
いや~忙しいことと不幸なことって重なるんですねぇ……仕事もリアルも人生最大の忙しさですよ。体がいくつあってもたりん。
そして普段から体力づくりをしていてよかったと思う今日この頃。筋トレとかスポーツって精神的にも鍛えられるから良いですよね。ちょっと辛いことがあってもそこまで悲観しないし。
突然の不幸があったのでしばらく投稿速度は落ちるかもですが、書き続けるつもりではありますので、お暇があればチェックしてやって下さい。
本日もどうぞよろしくお願いいたします。
「うっし!考えがまとまった。俺の意見を聞いてくれ」
わざとらしいぐらい大げさにうーんと唸っていたケイオスさんが唐突に明るい表情になって声を上げた。
「あら、良い笑顔。いいわよ、アンタの意見を聞きましょう。話が滞っているんでから上手く流れを変えて頂戴ね」
「おうよ!」
期待していると言う割にはシャルム国王の言葉には加減さと言うか期待があまり込められていない様な気がするが、ケイオスさんはお構いなしに大きく頷いた。
ケイオスさん、本当にちゃんと考えていたんだな。適当に考えているフリをしているのかと思った。おっとと、こんなことを口にしたらシメられそうだからお口チャック~。
そんなことを思いながら何故か突然やる気を見せたケイオスさんを眺めて返事を待つ。このヒトなんで急にノリ始めたんだ。情緒迷子か!気まぐれにも程があるだろ。と心の中でツッミを入れている間にケイオスさんの口上が始まる。
「まずはライアーの今後の扱いについて。これはもう色んな事情を鑑みて、処罰はなしでこのまま保護でいいと思う。現状、それでも問題はなさそうだしな」
「は~い!それはわたしも大賛成!前にも言ったカモだけど、抵抗することが出来ない相手を無暗に処罰する意味はないもんね。流石、世界最大で優秀な魔法学校の校長先生っ!」
ケイオスさんの提案にアストライオスさんに激おこ感情を向けて眉間に皺を寄せていたエクラがパッと表情を明るくして勢いよく手を上げて賛成した。
自分には冷たく、ケイオスさんのは敬愛の意を示したエクラの反応を見たアストライオスさんがその対応の違いにショックを受けて見る見る内に萎んでいくのがわかり、凄く不憫に思えて思わず目を覆ってしまった。
「はは、それほどでも~」
ギャルらしいキャピキャピとした誉め言葉に気分が良くなったのかケイオスさんは鼻の頭を掻きながら照れつつ、ドヤッ!と胸を張ってエクラの称賛にヒラヒラと手を振って調子よく応えた。
妙なテンションの2人に更に精神的な疲労がのしかかったのか、シャルムが眉間に手を当て頭を抱え込む姿が目に映る。わかります、国王様。今の反応は俺でもイラッと来るものがありました。そして俺もため息と頭痛が止まりません。
「あっ、でも一応、この国であいつを捕虜として預かるアストライオスにも確認は取っておこう」
そここまで言ってケイオスさんはポンッと両手を合わせてから「んんっ」と短く咳払いをしてわざとらしい口調で未だに笑われたことに腹を立ててぶつぶつと呟いているアストライオスさんに揚々と確認をする。
「この国のトップでお偉~いアストライオスさん?ライアーには得に懲罰は与えず、彼の身柄はこのまま保護、と言う形を取らせてもらっても問題ないですね?」
普段は敬語アストライオスさんに対してなんて全く使っていないからか口調も含めてわざとらしさが半端ない。からかってますよアピールが半端ない。
と言うか何故そんな喧嘩を売る様なスタイルを取っているのか……からかいと言うか気の知れた者同士のじゃれ合いの範囲内ではあるが、アストライオスさんが孫であるエクラに怒られてしおしおになる姿がそんなに面白いのだろうか。
「ああー、構わん構わん。ワシも孫に恨まれてまであやつに罰を与えたいとは思わん」
相手にするのも疲れると思ったのか、アストライオスさんはわなわなと震えて怒りを抑えながらも、それを口から吐き出して怒りを爆発させることなく耐えて、ムスッとした表情で顔を背け、右手をヒラヒラと振って軽くあしらった。
反発されることを期待していたのか、思いのほか反応が大人しかったことに対して明らかにつまらなさそうに口を尖らせた。
「もう少し言い返してくれてもいいじゃねぇか。喧嘩売った俺がアホみたいだろ」
この状況で喧嘩を売ったつもりやったんかい。だとしたら“みたい”じゃねぇ、アホです。断言できます。
「ワシはお前ほど子供ではないんじゃよ。もし何か問題が起こった際にはお前たちに協力してもらうつもりではあるがな」
「それは当然だよねぇ~。ライアーを保護している途中で何かあった時はみんなで協力!それでオッケーだよねっ」
適当にあしらわれたことが気に食わないのか、不満全開の表情を浮かべブツブツと何か呟くケイオスさんに変わってペセルさんが眩しいアイドルスマイルを浮かべて声を弾ませ、みんなに確認を取る。
俺以外の面々は躊躇なしに首を縦に振っていたが……待って、その協力する者の数に俺たちも含まれている感じですか。まだこの問題に関われと!?
『それはクロケルたちも協力する流れなんだよね?』
内心で慌て始めた俺の代りに聖が軽い口調で確認すると、アストライオスさんが何を言っているんだと言わんばかりにジトリと俺たちの見て言った。
「当然じゃろう。と言うか、この案件を持ち込んだのはお前たちの方じゃし、どちらかと言えばワシらが協力をしている側じゃからな。よもやこの中途半端な状況で投げ出すつもりではなかろうな」
アストライオスさんに当然の様に頷かれてしまったが、よく考えればそうである。周りにチート連中が集まり過ぎなのと、これと言った戦闘に関わっていないせいでこちらが手伝う側であると錯覚してしまっていたが、この件の中心は俺たちだった。
そりゃこのまま協力もせず投げたらアストライオスさんも気分が悪いよな。いや、マジでスミマセン。忘れていたのはわざとではないのですよ?脳が無意識に忘れようとしたかもしれんが。
「い、嫌だなぁ~途中で投げ出すわけないじゃないですかぁ。ちゃんと最後まで関わるつもりです」
と、返事はしたものの……。俺個人としてはちょっとしんどいデス。でも俺のパーティメンバーであるシルマもシュティレも協力する気満々だし、このまま事態が収束するまでライアーの問題と向き合うしかない。
シュバルツは俺について来るだろうし、ミハイルは……ラピュセルさんのお願いが取り下げられない限りは嫌々でも行動を共にしてくれるだろう。
何よりここまで過去のコトもひっくるめて付き合って来たフィニィとアンフィニをこのまま投げ出すのは正直忍びないと言うか罪悪感しか湧かない。つまり、俺に逃げ場はないのだ。
「はあ~」
あまり負の感情を露骨に態度には出したくはなかったが、俺の口から自然とため息が漏れる。だがこれぐらいは許して欲しいものだ。
でもなあ、根本的な解決にはなっていないとは言え、ライアーの戦意と言うかモチベーションは低下しているし、後のことはかつて世界を救っている最強で優秀な実力派揃いの神子一行に任せてそろそろ俺自身のレベル上げを頑張りたいな~とか思ってたんですが、そうですかダメですか。
俺は頭を抱え、誰に言うわけでもなく心の中で強く、それはもう強く嘆いた。
悲報、俺のレベル上げ、また遠のく。
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聖「次回予告!そっかぁ、クロケルにはレベルを上げるって言う大きな課題があったことをすっかりわ忘れていたよ。でも、世界と個人を天秤にかけたら世界の方が大切なのは明白だし、もう少し雑魚のゲ現状に耐えてね」
クロケル「ああ、別に俺も自分を優先して欲しいなんて一度も思っていないさ。でもな、レベル1のクソ紙耐久のままじゃ世界が終わる前に自分の人生が終わる可能性があるんだよ。それを回避するために少しぐらいレベルを上げたいと思うのは罪なことなのか?」
聖「次回、レアリティは最高ランクだが素材がないのでレベル1第186話『唐突に英雄集結モードになるな』罪じゃないでしょ。どんなことでも“思うのは”個人の自由だし」
クロケル「おい、何なんだそのヒトの意見を肯定している様で突き放した言い方は」
聖「別に突き放したつもりはないけど……でも、ぶっちゃけここまでレベル1でぐだぐだしつつ何とかなっているわけだし、気にしなくてもいいんじゃないかな~とは思ってる」
クロケル「うん。それはお前の主観な。俺は毎回、敵と対峙する度に震えてるんだよ。チートのお前にはわからん感覚だろうがなぁっ」
聖「あは、小鹿ちゃんなクロケルかぁ。面白いねぇ」
クロケル「誰が小鹿か!面白いことあるかボケェッ!!」