第178話 永遠の別れが辛いからこそ、強くありたいと希う
この度もお読み頂きまして誠にありがとうございます。
昨日はこのサイト様のメンテでしたね。いや、それは良いのです。何においてもメンテナンスは大切な事。それに関しては本当に不満も何もないのです。ないのですが……
そう言いうと聞き限ってUSBにバックアップを取っていない自分をぶん殴りたい。小説が消えた、とかではないですよ?ただ、ただね……ログインできないから続きが書けないっ!(頭を抱える)状態でした。
いつもはメンテ対策等でWordにきっちり記録しているのになぁ。しかも時間があって書き溜めチャンスの時に限って対策を怠るってなにさ。自らのクソさを自覚した1日でした。
みなさん、データを記録する際はめんどくさいって思っちゃダメですぜ(何様)
本日もどうぞよろしくお願いいたします。
大粒の涙、とまではいかないが、出会ってから今まで家族であるコクリコやフィニィ以外には薄ら寒い笑顔と飄々として腹の底が読めない態度だったライアーが敵である俺たちの前にもかかわらず、感情を隠すことなく、恥じることもなく瞳を揺らして頬から涙を静かに流している。
悲しみの感情を素直に示すライアーにその場の誰もが複雑で気まずい感情を抱いて事の成り行きを黙って見守る。
特に短い期間とは言え家族として行動を共にしていたフィニィはライアーの感情に完全に引っ張られて両手では抑えきれないほどの量の涙を流し、そのまま窒息してしまうのではないかと心配になるぐらい激しく嗚咽を漏らしている。
「大丈夫?フィニィちゃん。これ、使って」
すっかりフィニィの姉ポジションになりつつあるエクラが自然な動きでハンカチを差し出し、小さな背中をさする。
それを見たアンフィニが小さな声で“どうして俺はぬいぐるみ何だろうっっ!俺もフィニィの涙を拭いたいし、背中をさすって気遣いたいのにっ”と歯ぎしりをしながら小さく呟いていた。
空気を読んでいたのか、声になるかならないぐらいの本当に消え入りそうなぐらいの呟きだったが、近くにいたせいか俺にはバッチリ届いていた。
多分、口にするつもりはなかったんだろうけど、フィニィを気遣うきょうだいの役目を取られたのが悔しいと言う感情が抑えきれなくなって口から零れたんだろうなぁ。
いや、今そんなことに悔しがっている場合じゃないだろ、お前の親代わりだった人物との永久の別れの場面だぞ!?とツッコミたくなったし、正直シリアスな雰囲気ぶち壊しだが、周りには届いてないからセーフということにしておいてやろう。本人、無自覚っぽいし……。
いかん。俺もシリアスモードから脱線しかけている。こんな状況でツッコミを入れている場合ではないと言うに!
「どうして、どうしてなんだ。コクリコ、何故お前はいつも私を悲しませる様なことをするんだ」
瞬きをする度にライアーの涙は勢いを増し、紡がれる言葉は先ほどまでの苛立ったような荒々しいものではなく、今にも消え入りそうで苦しそうで、聞いているこちらも息が詰まりそうなものだった。
しかし、コクリコさんの消滅……いや悔いがなくなったと言っているし成仏と言うべきか。それは既に決まっていること。
聖を除いてここにいる面々は特殊な種族や能力値は高いが神ではない。生憎世界の理を覆す様な力を持ち合わせていないのだ。故に俺たちではどう頑張ってもこの状況を覆すことなどできない。
神に近い存在であり、世界の理の前では長である聖も使える力には制限や規則があると言っていたし、薄情で酷な表現にはなるが、これは“仕方のないこと”なのだ。
それぞれが自分たちの無力さに悲しみや悔しさを浮かべる中、消える寸前のコクリコさんだけは悲しそうにしながらも、清々し笑顔をライアーに向けて言った。
「消えちゃう前に、もう一度……何度だって伝えるよ。私はお父さんが私への執着をなくして自分のために穏やかに人生を送って欲しい。それだけが私の願い。でも、お父さんの人生だものね、最終判断をするのはお父さんだから。私の言葉にあまり悩まないで欲しい、かも……」
「コクリコ……」
自分が消えそうになっても尚、父を想う言葉を紡ぐコクリコさんに何と気持ちを表せばいいのか、どう言葉に表現していいか分からないのだろう。ライアーは声を震わせて彼女の名を呼び、悲しい様な、困った様な表情を浮かべていた。
そんなライアーを見て気持ちを察したのだろう。コクリコさんはちぐはぐなこと言ってごめんね、とはにかむと、一旦言葉を切り、そしてきゅっと唇を噛みしめてから、すっと息を吸い、感情を安定させるためか、そのままゆっくりと深く呼吸をした。
瞳の端には涙が輝いて見える。その表情を見て改めて思った。ああ、やっぱりコクリコさんも本当は消えたくないのだろうな、と。
いや、覚悟は決まっているみたいだったから、もしかしたら消えたくないと言うよりかはせっかく会えたライアーともう少し一緒にいたいと言う想いの方が強いのかもしれない。
いずれにしても、見ているこっちが切なさで押しつぶされそうになる状況が続いていることにはかわらない。正直、もう胸が張り裂けそうな感覚が限界突破している。めっちゃ苦しい。さっきからまともに呼吸ができないぐらいに精神が追い詰められている。
エクラに支えられているフィニィはついに精神状態に限界が来た様で、渡されたハンカチでは抑えきれない程の涙を流し、激しく嗚咽を繰り返してその場に崩れ落ちてしまった。
それによって一旦はみんなの視線がフィニィに集まる。消滅しかけているコクリコさんと激しい悲しみに耐えているフィニィのことを同時に気にしていたアンフィニも流石にフィニィの方に駆け寄って彼女の足元に寄り添って声をかけた。
「フィニィ、大丈夫か?無理しなくてもいいんだぞ。外に出るか?」
多少は安定してきたものの、フィニィは幼いころから研究施設で度重なる実験を受けていたせいで精神的に脆いところがある。怒りでも悲しみでもあまり精神に負担がかかるのは彼女にとっては良くないことだ。
それを心配してアンフィニはそう言葉をかけたのだろう。しかし、フィニイは涙を必死で拭い、真っ赤になってしまった鼻を何度も擦って勢いよく首を左右に振った。
「ううん、ふっ、へいき、おささまを、ちゃんとおみおくり、したいのっ」
溢れ出る涙を止めるにはハンカチでは間に合わないため両手を交互に使って拭い、そして首を激しく左右に振って消えゆくコクリコさんを見送りたいと切望した。
俺はまだ自分の近しい者との“永遠の別れ”は経験したことがないが、どんな形であれ、もう会えなくなってしまう家族を見送ると言うのは光栄なことであり、同時に辛くて悲しくて切ないものに違いない。
そんな現実を通常のヒトよりも脆い精神と、度重なる実験で体の成長が止まっているため外見は幼女と言う小さな体でフィニィは必死で悲しみを耐え、そして復讐に飲み込まれていた時とは違い別れを受け入れようとしていた。
「お前が、そうしたいと思うならお前の気持ちを優先する。でも、本当に大丈夫か?無理はしないでくれよ。精神に過度な負担をかけてまでの見送りなんて、多分長様も望んでないと思うし」
兄であるアンフィニはフィニィの中に生まれている色々な気持ちを気遣いながら、フィニィにもう一度、この場に居合わせても本当に平気なのか確認する。
しかしフィニィのコクリコさんの最期に立ち会いたいと言う彼女の意思は変わらないようで、声がまともに出せない代わりに何度も首を縦に振って強い意思を示した。
「……成長、したのね。フィニィ。アンフィニも、妹を甘やかしすぎない立派なお兄さんになったじゃない」
兄妹のやり取りを見ていたコクリコさんが消えゆく自分に行かないでくれと声も出せずにを縋るように見つめてくるライアーから名残惜しそうに一度視線をそらし、フィニィとアンフィニに声をかけた。
それはライアーに対する様な“子供”の態度ではなく、子供の成長を喜ぶ“母親”の言葉そのものだった。
消える寸前、先ほどまでとは異なる一面を見せたコクリコさんの言葉に、この土壇場で空気がまた少し変わった様な気がした。
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聖「次回予告!最近重い展開が続いているせいで全身に力が入りすぎて肩が凝ってきたかも……息もぐるしい感じも辛いし、ライアーにもいらぬ同情を始めちゃいそうだから早く事態が収束して欲しい……」
クロケル「確かに複雑な家族の話合いと別れの場に立ち会うのは辛すぎるし、息も詰まるがそんなうんざりとした態度で言い表すものでもないと思うんだが」
聖「次回、レアリティは最高ランクだが素材がないのでレベル1第179話『さようならは晴れやかに』だって、何回も言うけど僕が力を貸した全然進展がないだよ!?寧ろ手を出したせいで二の足を踏んだ感じじゃん。うんざりもするよ」
クロケル「……お前、やっぱり薄情な奴だな」
聖「違うよ~薄情じゃない割り切ってるって言ってるでしょ」
クロケル「それはもう何回も聞いたし、理解はしようとしてる。でも……割り切るとか戦場に置いての同情は良くないとかそう言うのじゃなくてこう……人間性と言うか道徳心?みたいな面でお前のそう言うトコがヤダ、超嫌い」
聖「ちょっ、そんな子供みたいにヤダとか嫌いとか言わないでよ!なんかリアルに突き放されてる感じがするんですけど。普通に罵ってよぅ」
クロケル「またそんな軽口叩いてすぐおふざけ展開に持って行こうとするの、見え見えだからな」
聖「場を和ませようとしてるだけだよっ」
クロケル「ああああー!やっぱわざとらしい反応がイライラするぅ」