第176話 サヨナラのタイムリミット
この度もお読み頂きまして誠にありがとうございます。
また投稿の間隔をが空いてしまった……この時期って慌ただしいんですよね……。仕事とかはもちろんですが、ホラ……確定申告とか確定申告とか、ね。それに医療費うんぬんの計算が入って来るともうとんでもなくめんどい!
だから小説が書けなくて遅れちゃった★と言ういいわけでした~。あ、はいスミマセン、普段からちゃんと書き溜めて置けと言う話ですよねぇ(滝汗)
本日もどうぞよろしくお願いいたします。
『んんっ。コクリコよ、お前は復讐心に囚われる父を開放したいと願っているのであろう?であれば強い意思の元、しっかりと想いを伝え続けるべきなのではないか』
フィニィのライアーの心情を理解しようとする複雑な心情も手伝ってか、非常に気まずい空気になり、話が完全にストップ状態になってしまったのでヤバいと思ったのだろう。聖が再び長モードとなって会話に介入して来た。
長っぽく堂々として威厳がある様に見せているっぽいが、俺には小さな咳払いが聞こえた。慌てていることが丸わかりである。
それにライアーにかける言葉がなくなってしまったコクリコさんに助言をしている様な演出をしているが、要約すると“ライアーを説得するために呼び出したんだぞ、早く説得しろやぁ”ってことだろ。
現状を見ると完全に立ち行かなくなってるじゃねぇか。こいつも大概締まってないよなぁ。
「そんなこと、あんたに指摘されなくても分かっているわ、わかっているけれど……不用意にお父さんの気持ちを蔑ろにしたくないと言う気持ちもあるのよ」
コクリコさんは前半は聖を睨みつけて反論したが、後半になるにつれ言葉尻を弱め、最終的には下を向いて消え入りそうな声で言葉を言い終えた後に唇を噛んでまた黙り込んだ。
自分の意思を継ごうと自らの人生を犠牲にしようとしている父親を止めたい、だが自分を想ってくれている気持ちも否定したくない。と言う彼女の葛藤はわからなくもない。寧ろ家族思いでいいヒトだと思う。
モンスターを操って世界中で暴れさせ、世界の破滅を早めようとしていたとは思えないほどの人間性である。本当にそんなことをしていたのかと疑いたくなるほど他者を思いやる心を持っているじゃねぇか。
そう言えば研究施設から解放されたフィニィとアンフィニィに手を差し伸べた時も2人を下心なしで家族として迎え入れていたみたいだし、根は優しい……とか?
いやいや、でも罪もない種族も含めて世界の住人を殲滅しにかかっていた奴だぞ。優しいと言っていいのか?“優しい一面もある(但し、身内に限る)”的な?それは迷惑な話だな!
自分の目的を果たすためなら手段を選ばない冷酷な一面を持ちながらも、家族を思いやる心を持つコクリコさんの本質が分からず悶々としていると、ここまで納得のいかない表情を浮かべて黙り込んでいたライアーが口を開く。
「お前の願いは私の願いで人生そのものだ。私はお前がいない人生は考えられないし、考えたくもない。愛する家族が突然離ればなれになって、亡くなったことを告げられられた時のショックがお前にはわかるか?」
愛娘から告げられた言葉でも簡単に受け入れることはできないらしく、ライアーは少し苛立ち始めたのか語調を強め、早口に言った。
再開を果たした際は“残留思念の具現化”と言うあり得ないを前に動揺を示していたものの、娘の姿を再び目に映すことが出来たことに素直に喜びを、長年凍てついていた心の氷が解け始めて穏やかで優しい雰囲気になりつつあったの様に感じたが、その心の氷が音を立てて再構築して行くのがわかる。
その原因は十中八九、コクリコさんがライアーを開放したいと願い、ライアーの心情を気遣いながら勇気を持って発した“復讐をやめて自分の人生を優先欲しい”と言う旨の言葉。
そもそも娘を失ったライアーの原動力は娘の意思を継ぐと言うことと、コクリコさんをと言う強い思いを簡単に捨て去るなんて無理だろう。俺は何かに強い思いを抱いたことはないので気持ちがわかるとは言わない。
言わないがライアーはコクリコさんの為だけに これまでの行動を否定するも同然で、怒りや悲しみを覚えてしまうと言う面は理解できる。
ライアーの悲痛な言葉にコクリコさんは下を向いたっきり一向に言葉を返せない。それを見て更に怒りと悲しみの感情は加速したのか、ライアー言葉の勢いは止まらない。
「お前のために悲しみに耐えて、必死で生きて行動して、それをお前も見てくれていたと言うのに、それを否定するのか!お前はどれだけ私を悲しませたら気が済むんだ」
相当なパニック状態に陥っているのだろうか。本来ならば恐らくはしないであろう行動……愛娘を追い詰める様な発言にコクリコさんは悲しそうに瞳を揺らし、そして涙が零れそうになるのを耐えながら首を左右に振った。
「お父さんを傷付けて、たくさん傷つけたことは分かってる!私のためにたくさん頑張って行動してくれたことはちゃんと理解してる」
「それなら!どうして私のしたことを否定するんだ。どうして喜んでくれない!どうせ世界は滅びるんだ。お前のために残された人生を使ってもいいだろう!」
少しでも落ち着いてもらおうと必死に気持ちを伝えるコクリコさんに食い気味でライアーは食ってかかったが、コクリコさんも負けじと被せる様に言葉をぶつける。
「でも、それじゃダメなの。お父さんは私に、死者に縛られちゃダメ。いつまでも私を想ってくれるのは嬉しい。でもそれじゃあ残りの人生が辛く悲しいだけなの。私、お父さんがそんな人生を歩む姿は見たくない!」
長い間離ればなれになっていた親子のお互いを想うからこそ譲らない激しい“想い”のぶつかり合いに思わず誰もが圧倒されてしまう。
このまま争い激化するかもしれないと言うのに、誰も仲裁できないほど激しかった。コクリコさんの叫びに近い言葉を最後に、一旦は言い争いが落ち着きを見せる。
親子は互いを見つめ合いながら、腹の底から叫びあったせいで息が切れ、肩で浅く息をする。数秒、数分張り詰めた空気の中で酸素を求める呼吸の音だけが続き、ライアーは俯き加減で静かな声で言った。
「お前は若い内に神子として選ばれ、長になったから共に過ごせる時間もごくわずかだった。生きている時は親として碌に役目を果たすことが出来なかったからこそ、何かしてやりたいと願いのは悪いことなのか?」
心の中で抱えていることを言葉にすると怒りが沸き上がってしまうのだろうか。ライアーの語調がまた徐々に強くなっていく。
「……世界を滅ぼそうとしていた私がこう言うコトをいうのは凄くおかしいのかもしれない。でも、世界が存続してそこにお父さんの人生があるなら、私はお父さんに暖かで優しい余生を送って欲しいの」
どんなにライアーが苛立とうが、コクリコさんも自分の考えを曲げる気は一切ないようで、何度も同じ言葉で譲らない気持ちを示して気持ちをぶつけ続ける。
「……おい、何かあいつ体が薄くなってないか」
静と動の争いを繰り返す親子を見守る最中、ケイオスさんが眉間に皺を寄せ、目を凝らしてコクリコさんを眺めて唐突に言った。
「やっぱり、そう思う?実はアタシも同じことを思っていたの。残留思念で実態がないから透けているのかと思っていたのだけれど……具現化した当初よりも薄くなっているわよね」
シャルム国王がケイオスさんの言葉に同意し、視線で周りに意見を求める。その場の全員が同じくコクリコさんの姿が薄くなって来ていると感じており、俺も含めてシャルム国王から視線を受けた全員が嫌な予感から神妙な面持ちで首を縦に振った。
「あき……じゃない。長様、コクリコさんの体が薄くなっているのは気のせいッスかね?」
俺は一瞬身分を隠す親友の名前を呼びかけ、慌てて訂正して宙に浮き続けるタブレットに全員の疑問を投げかけた。
『ああ、すまない。言い忘れていた。コクリコの残留思念が具現化にはタイムリミットがある』
さも今思い出した様に聖は言った。しかも“いや~うっかり”みたいな感じで軽く言ったが、とんでもなく重大過ぎる内容にこの場にいる全員が固まって表情が引きつる。
目まぐるしく変わる空気の中、キョトンとしているのは元はモンスターであるため世間知らずのシュバルツぐらいだ。
よし、ここは俺が代表して恐らく共通しているであろうみんなの心情を露わそう。
それを早く言え!!!このアホっ!!!
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聖「次回予告!前回の予告で僕が言葉を濁していたもの……それは具現化にはタイムリミットがあると言うコトでしたぁ~。だから急いでね。後、アホとか言わないで割と傷つく」
クロケル「急いでね、じゃねぇよ。そう言う大事なことは前もって言えよ、限られた時間でするべきことがいっぱいあるだろ!それに罵られたくなかったら、後先考えてちゃんと言うべきことを言え!このアホ!大馬鹿者!」
聖「次回、レアリティは最高ランクだが素材がないのでレベル1第177話『復讐よりも大切なこと』ひど!重ねて馬鹿にしたっ!それが親友に対する態度なの!?」
クロケル「自分自身が抜けてるのが悪いとは思わないのか、謝ろうと言う気はないのか」
聖「あ、そっか。いやぁ、長モードになることに必死で言い忘れちゃってぇ、ごめぇん」
クロケル「いいか、こころからの謝罪をするヤツは“あ、そっか”なんて言わねぇんだよ。反省してないだろ」
聖「してるしてる。ホントにしてるって」
クロケル「ぜっっってぇしてない」
聖「信用ないなぁ~」