第170話 それでも、私はあなたの家族です
この度もお読み頂きまして誠にありがとうございます。
お話しの内容に加えて各話数のタイトルにも頭を抱える日々……。物書きの家系だと言うのに何故私は才能を受け継がなかったのかorz
大伯父が言っていた様に文章は才能ではな日々の精進なんですねぇ……実感しました。誰かに面白いと思える様な作品を生み出せるように頑張るぞ!
本日もどうぞよろしくお願いいたします。
『ええっと、どこまで話が進んだんだっけ』
数秒まえまでミハイルの余計な“気づき”のせいで聖の立場的に非常に危うい状況に陥りそうになったと言うのに聖はもうケロッとして主導権を握って話を戻そうとしていた。こいつの精神構造は一体どうなっているんだ。
神経が図太い、いや……逆に情緒が不安定なんじゃないかとさえ思う。得する性格と言うか俺もそう言う性格にあやかりたい……。
「前長の経歴や長や神子のの実態はある程度話したな。んで神子が前長の抱えていた孤独や苦悩を理解した上で戦って打ち勝った言うところまでだな。そこで話が途切れた」
ケイオスさんがここまでの話の流れをわかりやすくまとめてくれた。なんでみんなそんなに冷静なんだ。俺なんて話が飛び過ぎて何の話をどこまでどう話したか思い出せないぞ。
「ってかさぁ、神子とか長とかの話も大事かもだけどまずはそこのライアー……さんとフィニィちゃんの和解が先だよね。そっから話がズレてるんだと思うんだよね」
それについて相当不満を抱えているのか、エクラが腕組みをして話に割って入って来た。
「うん、まあそうだよなぁ。ここまで行き当たりばったり感はあるし、ここらで一旦話を軌道修正した方がいいかもな」
話がいつまで経っても平行線なのは“とりあえずライアーから話を聞く”と言う目標しか掲げていないせいかもしれない。
「軌道修正ねぇ~。でも何をどう修正してもこいつが俺たちに嫌悪感を持っている限り、解り合うことはおろかまともに話し合いすらできないだろ。結局は無駄なんじゃないか」
ケイオスさんは面倒くさそうに頭を掻いて目の前の“敵”を見やる。視線を送られたライアーはケイオスさんを軽く睨みつけた後にフイッと目を逸らした。
「ネトワイエ教団の情報を聞き出したり、こちらの言うことを聞かせるだけでいいのであれば、単純に拷問と言う手が一番手っ取り早いのじゃが……それはやめて欲しいのじゃろう?」
それが一番手っ取り早いのにと言いたげにアストライオスさんが顎髭を撫でながら俺たちを見やった。
一番最初に当たり前だと大きく頷いたのはエクラで、俺も流石に拷問を仕掛ける覚悟は持てないので激しく首を縦に振って拷問は避けて欲しいと言う意思表示を示した。
モンスターであり、人間の言葉を習得中のシュバルツは「拷問ってなに?」とシルマの裾を引っ張りながら質問し、それを受けたシルマの動きが一瞬返答に迷いを見せる。
それから怖がりなシュバルツに対してなるべく表現をマイルドにして説明をしたが、元々えげつない意味を持つ言葉のため、どんなに柔らかな表現にしてもあまり意味はなく、シュバルツは青ざめて震えた。
そして勢いよくアストライオスさんの方を見て、もげるんじゃないかと思う勢いで千切れんばかりに首を左右に振りまくった。
「だ、ダメ!そんな怖いこと、しちゃだめ!」
「私も対立している方とは言えど、無理矢理話を聞き出すのはあまり好ましくはないですね」
震えてすがるシュバルツの肩をポンポンと叩いて宥めながらシルマも拷問と言う選択肢を却下した。シュティレは戦いにおいてはシビアと言うか割り切った考えを持っているのでどちらとも取れない反応を示していた。
「ふむぅ、やはりか……全く甘い奴が多いのぅ~。一番手っ取り早い方法を否定するなど勿体ないぞ」
俺たちの返答を予想していたのか、もしくは元々視えていたのか、アストライオスさんは肩を竦めてそう言った。
『まあ、拷問は最終手段に取っておこう。何にしても反対意見がある以上、強行するのは仲間割れの原因になるだけだ』
「仕方ないのぅ」
聖が拷問はやめようと意見をまとめ、アストライオスさんは残念そうに唇を尖らせてため息をついた。なんでそんなにガッカリしてるんだ。まさか拷問したかったのか?だとしたら怖いわ!
物騒な方向に話が持っていかれなかったことに安堵しつつも、話は振り出しに戻ってしまった。ちらりと回りの様子を窺う。
視界に映るのは大半が今からどうすべきかと頭を悩ませる仲間たち、違う反応を示している者と言えば、ミハイルはいつもの通り明後日の方向を向いて話がまとまるのを気だるそうに待ち、フィニィはライアーが危険にさらされないことに安堵し、アンフィニはそんなフィニィをみて複雑な表情を浮かべていた。
「じゃあどうするんだよ。エクラが言った様に今から目標を立てて根競べか?」
拷問の話が流れてしまったことに不満を抱いているのか、ケイオスさんが少し苛立った様子で俺たちに意見を求めた。
「ど、どうすると言われましても……」
どうしようもねぇですよ、とは言えず俺は何の意見も返すことが出来ず口ごもる。
「でも、全てを一気に片付けるよりもある程度目標があった方がこちら側としてはやりやすいのではないでしょうか。エクラさんの言う様に、まずはお二人の関係を取り持つことから始めるのが問題解決に繋がる一番の近道だと思います」
ギスギスした気まずい空気の中、シルマがオロオロとしながらもエクラの意見に同調する発言をした。この状況で自分の意見を伝えられるなんてシルマって意外と度胸があるよなぁ。
俺とは大違いだ、とこの世界に転生して何万回目かの自己嫌悪に陥っていると、ほぼこの場のまとめ役となっているシャルム国王は色々と飛び交う意見と繰り広げられる会話と気まずい空気の中、はあ……と明らかに疲労感溢れるため息をついた後、余程困り果てているのか頭を押さえながら言った。
「ややこしいことになって来たけれど……結果を得ようと思えば何もしないよりも行動することは大事よね。まずはエクラとシルマの言う通り、そこにる家族の溝を埋めるところから始めましょう」
溝を埋める、と言う言葉にフィニィが肩をビクリと揺らして反応し、ライアーも体をピクリと反応させた。
「うんうん。それが一番いいよ。フィニィちゃん、これで邪魔は入らないよ。もう少し頑張って話してみよう」
「え、ええ……それは分かっているのだけれど……」
フィニィとライアーの仲を修復すると決まった瞬間、エクラは嬉しそうに頷くが、フィニィの方は乗り気ではない様子で表情を曇らせる。
「家族に嫌われたくないって気持ちはわかるよ、否定されて辛いのもわかる。でも、だからこそちゃんと話し合って誤解を解かないと、これからもっと辛いことになるかもしれないよ。話せるうちに自分の気持ちはしっかり伝えないと。相手の心に届くまでしつこくね!」
エクラはライアーと話し合うことにすっかり尻込み状態で身を固くしているフィニィを優しく、明るく勇気づける。
フィニィはゆっくりとエクラを見つめ、そしてライアーを見る。ライアーは無反応だったが、視線を受けたエクラは満面の笑みを浮かべながら後押しをするように頷いた。
エクラの言葉と微笑みが勇気に変わったのか、フィニィはキュッと表情を引き締め、そして精神を落ち着かせるため、ゆっくり息を吸ってそして吐いた。
それから遠慮がち且つ少しの恐怖を抱いた様子でライアーを見据えて震える声を必死で抑え、何度伝えても受け入れてもらえなかった言葉を改めてきっぱりと口にした。
「ライアーが私を信用しなくても、裏切り物だと思って入れも……私はあなたの家族だと思ってる。もちろん、私にとってももあなたを大切な家族。説得を受け入れなくてもいいの。お願いだから、私を嫌わないで、否定しないで。今は、それだけが望みなの」
「それは何度も聞かされたのでわかっていますよ。ですが、やはり私は裏切ったあなたを受け入れることはできません」
涙を堪えながら紡がれたその言葉に胸が締め付けられる。しかし、ライアーからははやり拒絶と否定の言葉が返って来る。ここまで言ってもだめなのか。
それでも頑張って思いを伝え続けようとフィニィが次の言葉を紡ごうとしたその時だった。
『はあ……仕方ないなぁ。このままだとこの話に決着がつく気配がないね……できれば話合いだけで説得できるのが一番だったんだけど……ここは僕が人肌脱ぐしか解決法がないみたい』
意味深なセリフと共に、本当はここまで介入したくなかったんだけどとうんざりとため息をついた聖に敵味方問わずその場の誰もが注目をした。
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聖「次回予告!結局僕が出るハメになっちゃった。世界を治めるのも楽じゃないよね~、苦労も多ければやることも多いもん、まったくぅ」
クロケル「何で毎度お前はちょっとぶりっ子しながらむくれるんだ、絶対に精神的な余裕あるだろ」
聖「次回、レアリティは最高ランクだが素材がないのでレベル1第171話『チートな奴ほど能力の解放を出し渋る』あー、せっかく助けてあげようとしてるのに何、その態度。僕は皆のためを思って“世界の理”を顧みず助けてあげようとしてるのに」
クロケル「それが本当なら有難いことだが、前も言った様な気がするがお前態度で大分損してるぞ。もう少しシリアスと言うか真剣になれないのか」
聖「僕は空気も読んでいるつもりだし、こういう場面では真剣でシリアスのつもりなんだけどなぁ」
クロケル「ホントか、本当に現状と状況を考えて真剣に考えてこの場にいるのか」
聖「ホントホント、ちゃんと真面目にみんなの行く末を見守っているつもりだよ」
クロケル「つもりじゃダメだろ……」