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第167話 世界を蝕んでいた者は……

この度もお読み頂きまして誠にありがとうございます。


よかった……今日も投稿できないかと思いましたが何とか投稿できました。時間を見つけてすこしずつ執筆、投稿が出来たらいいなと思い頑張っております。


そして相変わらず思うのです、このお話の着地点どこ……


本日もどうぞよろしくお願いいたします。

「え、なにそれ。私そんなの聞いてない」


 ポンッと発言されたケイオスさんの言葉にフィニィが信じられないと言った様子で目を見開く。アンフィニィもその事実はしらなかったのか同じようにして固まっている。


「それ、本当なんですか。長がモンスターを暴れさせるような状況を作っていたって……」


 すっかり思考が停止してしてしまったアンフィニたちの代りに俺が質問をするとケイオスさんがケロッと軽口で答えた。


「ホントホント。だって本人が言ってたし。なぁ」


 ケイオスさんは軽口で周りの神子一行に確認の言葉を投げかけ、それを受けたみんなが同時に首を縦に振った。衝撃の事実だったと思っていたことは神子一行の間ではまさかの共通認識だった様だ。


 恐らく前長の冷酷な一面をこの兄妹は見たことがなかったのだろう。心優しい育ての親として接していたのだろうか。


「だかモンスターを暴走させるなんて芸当はできるのもなのか?協力を仰ぐにしても相手の同意が必要だろう」


 首を傾げるシュティレにすかさず聖が説明する。


『同意なんて必要ないよ。モンスターは他の種族より理性が低いからね、波長を乱せば簡単に操れるし、理性を奪うこともできる』


「波長を乱すって……そんなことできるものなのか?」


『長は世界の管理者だからね~できないことの方が少ないと思うよ』


 俺の疑問にも聖は即座にヘラヘラと答えた。真面目な話をしているんだからもう少しシャキッとしろよこいつ。


「それはつまり、世界の管理者がその権限を使って自らの手を汚さずに世界を蝕んでいたと言うことですか」


 口にすれば恐ろしい真実をシルマが真っ青になって震えながら言葉にした。


 世界を消滅させることを望んでいたにもかかわらず、自分では手を下さずに、と言う部分に俺も恐怖を覚える。


 波長を乱したってことは無理矢理に凶暴性を引き上げられた可能性は十分に高いし、本来は大人しいモンスターもいただろうに……多分、討伐された連中も多いんだろうな。


「なるほどな、モンスターをが暴れれば弱きものはその手にかけられ命を失い、暴れたモンスターは危険な存在として力ある者に討伐される。こう言う言い方は良くないかもしれないが、世界情勢を利用してうまい具合に世界の種族同士が潰し合っていたと言うわけだな」


「はい、それがあまりにも自然過ぎてその状況が“長様のせい”とは考えもしなかったのでしょうね」


 シュティレが難しい表情で唸り、シルマも悲しそうに頷いた。


「驚く様なことでもないだろう。世界を滅ぼす決断をした奴だぞ、自らの権限を使ってモンスターを暴走させるぐらいやってのけるだろ」


「ばっか!この状況下で色々と掻き乱すようなこというなよ」


 自分たちが知らなかった長の一面を知らされ、動揺し困惑するフィニィとアンフィの心を一刀両断する様な発言をミハイルがしたので慌てて窘めたがフンと鼻を鳴らされた挙句に無視された。酷い。


「しかし、ミハイルの言うことにも一理あるぞ。アンフィニィ、お前たちは長らく長と暮らしていたんだろう?その間一度も冷酷な一面や世界を貶めようとする片鱗は見当たらなかったのか?」


 シュティレが比較的気持ちを落ち着けているアンフィニィの方に質問を投げかけるとフルフルと首を横に振った反応が返って来る。


「いや、俺たちが理解していたのは長様が世界を滅ぼすと決めたと言うことだけだ。そのための下準備、と表現していいか分からないが滅びの為に世界を操作していたことまでは知らされていなかった」


 いや、世界を滅ぼそうとしていることを報告されている時点で大分えぐいけどな。寧ろ世界の滅びを望む相手と家族として暮らせるな。


 同じ状況に置かれた場合、俺なら最初は良いかもしれないけど途中から生きたいって欲に負けて信用できなくなりそうだ。人工魔術師の研究施設から助けられたことに余程の恩を感じていた、と言うことなのだろうか……。


「ん~でもよく考えたらアンフィニィくんたちもよく“世界の滅び”を受け入れたよね。いくら人生の恩人の決断だからって自分も消えちゃう選択によく加担できたなぁって思うよ。辛い場所からやっぱり助けてもらったからって気持ちが強いの?」


 エクラが難しいことを考える様に眉間に皺寄せ、口元に人差し指を当てて、俺が感じていることと似たような疑問を口にし、首を傾げた。


「そう、その通りよ。どんな思想を持っていたとしても、例え気紛れの行動だったとしても私は、私たち兄妹にとっては救いだった。長様は身勝手で辛い実験を受けて暗い闇を落とした人生に差し込んだ光だったの」


「ああ、長様は俺たちにとって救世主で心のよりどころだったからな」


 口数が減りつつあったフィニィだったがこればかりはしっかりと肯定した。アンフィニィもこくり頷いて静かに同意する。


 フィニィは兄であるアンフィニィの方を一瞥した後に、心に留めていた思いを吐き出す様に勢いよく続けた。


「さっき、正義がどうのって話が出たけれど、私にとっては長様の考えこそが正義だった。だから、世界を滅ぼすのが目的だって言われても力になりたいって本気で思った。ううん、今も思ってる。でも……」


 途中までは迷いなく言葉を紡いでいたフィニィだったが唐突に勢いと自信を無くし、言葉を濁す。そしてやはりライアーの反応を気にするようにチラチラと見てからスッと息を吸い、決意した様に言った。


「でも、さっきのケイオス……さんの話を聞いて思っちゃった。わざわざモンスターを暴走させる必要があったんだろうって。世界が滅びることは決定しているんだから、そこに住まう生物を苦しめる必要はあるのかなって……」


 こんなことを思うなんて、やっぱり私は裏切者なのかな……と悲しそうに目を伏せるフィニィをライアーを除くその場の誰もが切なげに見つめる。


 恐らくフィニィの中では色々な思いがうす巻いている。聖たち神子一行への恨みも完全に拭いきれていないし、前長の死からも立ち直れていない。ライアーにも裏切者の烙印を押され、さらには前長が裏で自ら進んで世界を荒廃させていたと言う事実を突きつけられた。


 頭の中と心の中で渦巻く複雑な葛藤と想いを処理できず、向き合うこともできずについにフィニィは「ううう」と唸って頭を抱え蹲ってしまった。


「わかるよ、フィニィちゃん。こんなんキャパオーバーしちゃうよねぇ。ちょっと休憩しよ」


 エクラがフィニィを支えて背中をさすりながら優しく労わる。ここまで何度もくじけそうになりながら頑張ってくれたフィニィの精神も限界が近いかもしれない。


 そろそろフィニィに負担をかけている状態で様子を見ながらこのまま話を進めるか、フィニィの精神面を考慮してまた出直すかを決断しなければならないな。


 また話を切り上げるとなると話が長引きそうになるが、フィニィをもってしても相変わらずライアーは相変わらずこちらの対話に素直に応じる気はなさそうだし……。


 ああ、こんなことを繰り返していてもいつまで経っても平行線な気がする。ライアーと対話なんて未来永劫無理だろ。懐柔に至っては夢のまた夢だ。


「なんとも健気なものではないか。死してもなお“家族”にこの様な思いをさせるなど、お前の娘の正義とは、なんとも物騒なものじゃのう」


 精神的にボロボロになり始めたフィニィを見て大きくため息をついたシェロンさんはわざとらしい口調で前長の正義の在り方をライアーに問う。


「……そうすることが長として娘が下した判断なのであれば、間違いではないのでしょう。世界は滅ぶのですから。()()は早めに済ませた方がいいですものね」


 ライアーは娘がモンスターをけしかけて人々を苦しめていたと言う事実に若干の動揺を見せていたが、しかしそれでも“長としての決断”ならそれでいいと前長がやったことを正義とした。


 って言うか世界の住人が危機的状況に陥っている状況を掃除って言うな。人権と言う言葉を知らんのか。

 

 とんでもねぇ正義だな。持っている正義はヒトそれぞれ、話合えば分かり合えることもあると聞くが、この場合の正義は認めたらダメだろ。無理無理、解り合うの無理。


 掲げる正義の違いから俺がライアーとの和解は諦めたその時、突然聖が苛立たし気に絶叫した。


『あーーーーーっダメ!やっぱり価値が違う相手の正義を受け入れるなんて僕には無理!』


 聖は空中でクルクルとタブレットのナリを回転させてライアーの顔面スレスレまで詰め寄った。絶叫しながら不可思議な動きを始めたタブレットに突然視界を塞がれたライアーは珍しくビクッと体を上下させて驚いた反応を示したが、直ぐに鬱陶しそうな表情に戻って目の前の聖を振り払う。


「何ですか、唐突に!」


『あのね、ここにはフィニィちゃんもいるから僕も色々と気を遣ってたんだけど、埒が明かなそうだからこの際きっちりハッキリ話させてもらうよ。前長の本性……ううん、彼女が抱えていた闇を』


 ライアーの手から軽々と逃れた聖はとても真剣な口調で言い、そのない様前長と対峙したことがあるに神子一行以外の仲間とライアーが同時に息を飲んだ。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


聖「次回予告!もう、もう限界だよ。大体、掲げる正義を取っ払ったところで元々相容れない相手と理解し合えるわけないじゃん!結局状況も変わってないし、時間の無駄だよ!ストレスが募るだけ!」


クロケル「逆ギレすんなよ……大体正義うんぬんはお前が言い出したことだろ。責任を持て」


聖「次回、レアリティは最高ランクだが素材がないのでレベル1第168 話『前長の本性、抱える闇』責任を持てだなんて言い方きつすぎない?僕からすれば全く意見を出さずにただ戸惑うかツッコむだけのヒトにだけは言われたくないなぁ」


クロケル「お前はまたそうやって俺に喧嘩を売る。俺だっていい策が思いついていたら口にしてるわ!何も思いつかないんだから仕方がないだろ」


聖「はあ~経験不足のヒトはこれだから困るんだよねぇ」


クロケル「露骨でわざとらしいため息ヤメロ」



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