第159話 信じて欲しい。私はあなたが大切なのです
この度もお読み頂きまして誠にありがとうございます。
何度もしつこい様ですが、私はこの作品をギャグコメディとして書き進めておりました。無能主人公と有能ヒロインのドタバタコメディにしたかった……。
なのにどうしてこうなったッ!(机をドンッ!)ちょっとシリアスに寄り過ぎですよね。もう少しギャグ要素を盛り込みたいのに……。
ですが形になってしまったものは仕方がない。このまま自分の指が動くまま、キャラクターたちが動くがままに書き進めたいと思いますのでどうかお付き合い下さいませ。
本日もどうぞよろしくお願いいたします。
「前向きな検討をありがとう。さあ、フィニィ。ライアーはアナタの話を聞いてくれるそうよ。落ち着いて、ゆっくりと話をしましょう」
呼吸を荒くして震えるフィニィの体をさすりながらシャルム国王が毅然と言う。そして大丈夫?とフィニィを気遣い、彼女は顔色こそ優れなかったが弱々しくそれに頷いた。
「大丈夫、話して見るわ。みんな、悪いけど少し離れてもらえる?なるべく2人きりに近い状況で話がしたいの。その方が私もやりやすいし」
『わかったよ、じゃあ、僕たちは少し後ろに下がっているから。でも会話は聞かせてもらうよ。それでもいい?』
聖が代表して返事をし、そして確認をした。
「ええ、私はそれで構わないわ」
フィニィはこくりと頷いた後、ちらりと遠慮がちに見る。どうやらライアーの気持ちも知りたいらしいが、それを聞けないようだ。そんな彼女の気持ちを汲み取った聖が代りに確認をする。
『君は?僕たちがフィニィとの会話を聞くことに文句はないよね?』
やや間があってライアーはふぅと面倒くさそうなため息をついて答える。
「好きになさればいいですよ。最初に言ったように私は情報を渡す気など毛頭ございませんので」
ライアーはツンとして刺々しく答えた後、ベットから降りて部屋に備え付けてある椅子にゆるりと腰かけて足を組んだ。うん、話をする体制になったんだろうけど捕虜なのに態度がデカいなぁ。自分の家で話すみたいな態度じゃん。
『あはは~、話してもらえるなら何でもいいよ。まあ、拒否されても話はしてもらうんだけどね!』
聖は優しい声色の中に圧力がたっぷり込められた言葉を穏やかな態度で返して見せると言う器用なマネをした。こんな一面を持つ親友が本当に怖い。
「うむ、話す気になっておるのであれば早急に話を進めよう。エクラ、適当な椅子を用意してきてくれ。ワシらもゆっくり腰を据えて話そうではないか」
「りょうかーい!直ぐに盗って来るよっ!えっと何脚いるかな」
「あ、私お手伝いします」
「俺も手伝うよ」
アストライオスさんのお願いに快く頷い矢エクラは椅子を用意するためにいち、にぃ……と人数を数え始めた時、シルマが手を上げて手伝いを申し出たので俺もそれに乗っかる。
少しでも怖くて重い空気から逃れたいと言う気持ちと椅子を運ぶのであれば男手が必要だろうと素直の思ったので手を上げた。基本無能だからこう言うところで活躍をしないとただのクズキャラと化してしまうからな。
なんかもう、色々ありすぎてこのまま一生レベルが上げられない気がしてきたから最悪このまま弱キャラ固定になったとしてもクズキャラもしくはヘッポコキャラにはなりたくない。
そう、俺は荷物運びぐらいはできるのだ!と何故か言い訳っぽく自分に言い聞かせている自分が情けない。本当に情けない。あああっ、やっぱりレベル上げてぇ。
『なに心の中で悶えてるの。今は目の前のことに集中しなよ』
「うるせぇ、心の中を読むな……。悪い、待たせたな椅子を取りに行こう」
しれっと心を読んでぴしゃりと言う聖に力なく言い返すことしかできない。また事が進む前から精神的に疲れ始めた俺は本来の目的である椅子の運びに集中しようとエクラに呼びかけた。
「あ、うん。じゃあ、2人には椅子運びに協力してもらうけど……クロケルさんどうしたの。何か急に疲れてるみたいだけど」
「体調がすぐれない様でしたら、ここでお休みになられた方がよろしいのでは……」
突然テンションが落ちた俺をシルマとエクラは不思議そうに心配そうに俺を気遣ってくれたがこれに関しては俺の豆腐メンタルが原因なのでどうしようもないのだ。
「いや、なんでもない。本当になんでもないんだ……」
シルマたちの優しさにしんみりしつつ、俺は何とか気持ちを持ち直して共に人数分の椅子を取りに向かったのだった。
その際、フィニィが込み上げる不安からまだ若干体を震えさせていたので、俺はすれ違いざまに軽く肩を叩いて声をかける。
「あいつの言葉や態度が辛いなら、無理しなくてもいいぞ。情報を聞き出そうとかプレッシャーを感じる必要もない。お前はライアーと話をしに来ただけなんだろ」
俺に触れられたフィニィがピクッと反応して、チラリと俺を見る。もしかして肩を触ったからセクハラとか言われるかもと一瞬ひゃっとしたが、不安そうな表情のまま俺を見つめるだけで文句は飛んでくることはなかったのでちょっと安心……。
まあ、俺は何もできないわけだしこれぐらいの気遣いは当然だもんな。もしかしたら無意味で余計なお世話なのかもしれないが、フィニィの心が楽になる可能性があるならそれでいいと思うのだ。
ただ、今回は何も考えずに異性に触れてしまったので、今後はもっと考えてから行動しようと思った。でないと自分の将来が危ういからな。
無意味、もしくは不用意に異性に触れて許されるのは主人公タイプ、もしくはライバルタイプでイケメンかつ二次元のキャラだけだと個人的に思っている。恋人でもない女性にモブと現実の男が触ろうもんならブタ箱行きが約束されてしまう。
もしも自分の将来にいらぬ不安を抱いて恐怖しているとフィニィが恐らく百面相をしている俺を見てふっと小さく微笑んだ。
「励ますか慌てるかどっちかにしなさいよ、変な奴。でも……ありがと」
態度も口調も素っ気なくはあったが、最後に小さな感謝の言葉が返って来て俺も何だかむず痒くなりつつも微笑みを返した。
「むぅ、ご主人様がまた別の女性とロマンスです!許せませんっ」
『諦めなよアムール。これ、素だから。こんなんでも他意がないから実質ロマンスじゃないよ』
アムールと聖のAIコンビの会話が何か俺に関する会話をしていた気がするがよくわからなかったのでこれについては特に追及はしなかった。だって、面倒だし。
それから数分後、俺たちは当然のことながら無事に椅子を持ち帰り、壁際に座るライアーを囲む様に扇状に座った。可能性は低いがもしライアーの逃げ道を塞ぐための配置である。
いざ、話をする時が訪れると、無音の時間が生じ、テレビやラジオなら完全に放送事故状態の間と場の凍り付き方だったが、フィニィが緊張気味にすっと息を吸った後に口を開いた。
「そ、それじゃあ、話をするわね。まずは、私が何故敵側にいるのかの経緯を離させてもらうわ」
フィニィは決して自分はライアーを裏切るつもりはないし、ネトワイエ教団を俺たちに売るつもりはないと言うことを伝えたいのか、これまでの経緯と今の気持ち、そしてどうして俺たちとここへ訪れたのかを必死で語った。俺たちは一切口出しをせず、ただ黙って彼女とライアーの様子を窺う。
自分の気持ちを何とかして解ってもらいたいのだろう。フィニィは早口で焦った口調でいつもよりも滑らかに喋っていた。そうして全てを語りフィニィはふぅと息をついてから黙って話を聞くライアーを見て怖々と言う。
「……で現在に至るの。あなたとネトワイエ教団の情報は渡していないわ。本当よ」
不安で瞳を揺らすフィニィに対し終始無言を貫いていたライアーがようやく口を開く。
「情報うんぬんはどうでもいいです。そもそもあなたは教団に来て日が浅いですから。重要な情報も私が知る限りは持っていないし、渡していませんのでそこは問題ないです」
「そ、そう。なら良かった……えっと」
「それで、あなたは私のことを裏切って私に世界を滅ぼすことを諦めろと。そう言いたいのですね」
まだ話を続けようとするフィニィの言葉を遮り。ライアーが冷たく刺々しく言った。突如話を断ち切られたフィニィがビクリと肩を揺らし悲しそうな表情になったため、見ていられなくなった俺は間に介入しした。
「おい、フィニィはまだ喋ろうとしてるじゃないか。勝手に結論付けるな」
「おや、さっそく味方が現れましたね。最近まで敵だった相手と随分と仲がよくなったものです」
ライアーは嫌味を更に重ねて来た。しまった、フィニィがあまりにも気の毒で間に入った逆効果だったか。と申し訳なさが込み上げた時だった。
「ねぇ、ライアーこれだけは聞いて欲しい」
度重なる辛い言葉に唇を噛んで俯き悲しさに耐えていたフィニィが顔を上げて言った。声も今までで一番張りが合って力強い。
先ほどまでと雰囲気が異なるフィニィに少し驚いた様子のライアーはそのまま口を噤んで彼女の言葉を待っていた。
「私のことを嫌いになってもいい、失望してもかまわない。でも、どうかこれだけは信じて欲しいの。私はあなたが大切なのです」
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聖「次回予告!不安になりながら、怖がりながらも自分の気持ちを素直に懸命に伝えるフィニィ。彼女の想いはライアーに届くのか。そしてライアーから上手く情報を引き出すことができるのか。もっと言うならこの事態の行く末はどうなっていくのか……これは長として見ものだよ」
クロケル「……なあ、お前なんでちょっとワクワクしてるんだ。コミカルな空気は混ざる時はあるが、俺たちはかなりシリアスな事案に関わっているんだぞ。後、一生懸命に行動するフィニィを“見もの”だんて言うなよ。性格、と言うか根性が悪すぎるぞ」
聖「次回、レアリティは最高ランクだが素材がないのでレベル1第160話『家族の話を聞かない人間は大概器が小さい』根性悪だなんてひどいなぁ。世界を治める者としての余裕って言って欲しいよ」
クロケル「お前の言い方とか考え方は二次元で言うところの、最強だけど敵か味方か分からないタイプだからな。黒幕か裏切るんじゃないかって視聴者から考察されると思う。絶対。」
聖「え~それは嫌だなぁ。僕は常にクロケルのいや、みんなの味方なのにぃ。それにいつだってこの世界の平和を祈っているよ」
クロケル「そう言うことを言うところも不穏フラグなんだよ。部類で言えばライアーと同じだからな。胡散臭くて掴みどころがないところが怪しさ満点なんだよ」
聖「うーん、怪しさを醸し出している自覚はないし、君に対しては嘘もついていないんだけどなぁ]
クロケル「悪いな、オタクであるが故の先入観もあるのかもしれん。微妙に信頼しきれない」
聖「なんだとぅ!!」