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第158話 さあ、家族で対話をしようじゃないか

この度もお読み頂きまして誠にありがとうございます。


年末が近づいて参りましたね……ちょこっとずつ大掃除をしているのですが終わらねぇです。普段からこまめに掃除はしておりますが、やり出したら止まらない。埃を全部取り除きたくなる性格……神経質な性格、直したい。


本日もどうぞよろしくお願いいたします。

 なんやかんやと余計な事態を収束させ、俺たちは本来の目的であるライアーとの対話のために宮殿内の次元の歪みの道を歩く。なお、ライアーと鉢合わせると色々とヤバいかもしれないミハイルは部屋でお留守番である。


 しかし……もう何回も通っているせいか空間の歪みを見ても酔わなくなったぞ。馴れって怖いな~。この場合は良い慣れなのかもしれんが。


「フィニィ、どうしたんだ浮かない顔をして」


 ライアーが捕えられている捕虜部屋に近づく度に表情が曇るフィニィを心配したアンフィニが声をかけるとぎこちない返答があった。


「うん……私が神子一行と一緒に行動している姿をライアーに見られたくないなって。ネトワイエ教団を、ライアーを裏切ったって思われたくないって思って……」


「そ、そうか」


 しょんぼりとして紡がれたその言葉を聞いたアンフィニが明らかに動揺する。まあ、自分の妹が敵に執着に近い反応をするのはつい最近まで埋まらなかった深い溝を修復したばかりの兄としては辛いよな。


 アンフィニは返す言葉が見つからないのか挙動不審にモジモジし始めた。俺も助け船を出してやりたいがどう話を切り出していいかわからず、無言になっていると、揃って歩いていたみんなの歩みがピタリと止まり、シャルム国王が冷たく厳しい口調で言った。


「ついたわよ。フィニィ、まだ心に迷いがあるなら今のうちに覚悟を決めておきなさい」


 もう何度も目の前にしてきた捕虜用の部屋の重厚な鉄の扉。この先にライアーがいる。今、俺たちができることはあいつが世界を滅ぼすために立ち上げたネトワイエ教団の少しでも多くの情報を引き出さすこと、そして可能であれば世界を滅ぼすということをやめる様に説得をすることだ。


 フィニィにはそれの中心になって貰わなければならないのだが、彼女はライアーのことを家族同然に思っている。そしてここにいるクマのぬいぐるみの中にある魂が実の兄であるアンフィニだとも認めた。ふたりの家族をどちらも裏切りたくないと言う思いが彼女を迷わせているのだろう。


「フィニィ、無理はしなくてもいいんだぞ。精神的な負担をかけるのも良くないし」


 兄として複雑な思いを抱えているであろうアンフィニが、不安で瞳を揺らすフィニィに気遣いの言葉をかける。


 アンフィニはつい最近までフィニィが捕虜の立場だった際に彼女と対話をする際に似た様な悩みと苦しみを抱きかがらフィニィと対面していたので気持ちがわかるのだろう。


 そしてここ数時間の間コメディ空間にいたせいで忘れていたが、フィニィが人工魔術師の被検体になっていた代償で精神的脆いのだ。過度な不安やプレッシャーを与えるのは良くない。何があるか分かったものではないので細心の注意を払うに越したことはない。


 もちろんフィニィ自身のことも心配だが、正直これ以上のトラブルは御免被りたいので何事も安全にいきたいと言うのが本音である。


 心配を募らせる俺たちを他所にフィニィは深呼吸をしてキュッと表情を引き締めたのを見て俺は思った。ああ、これはこちらが心配することは何もないのかもしれない。覚悟が決まったようだ。


「大丈夫。平気よ、お兄様」


 声も体もかすかに震えていたが覚悟がしっかりと決まった強い瞳をしていた。それを見たシャルム国王が冷たい無表情から一変、満足そうにそして穏やかに微笑んだ。


「そう、アナタ意外に強い子なのね。そう言う子、私は好きよ」


「……別に、あなたに好かれても嬉しくはないのだけれど」


 フィニィは戸惑っているような、照れているような態度で腕組みをし、視線を逸らす。


「この状況でライアーと話をするのは怖いかもしれないが安心しろ。俺たちがちゃんと後ろで見ていてやるから」


 照れ隠しなのかツンとするフィニィにケイオスさんがにかっと眩しい微笑みで優しい言葉をかけ、その隣からひょっこり顔を出してエクラもフィニィに笑顔を向けた。


「そぉだよ。フィニィちゃんが1人で頑張る必要なんてないんだから★精神的に辛かったり、困ったりしたら振り向てもらっていいよ!ちゃーんと助け船をだすから」


「ば、馬鹿じゃないの。私に不安なんてない。ライアーと話すって決めたんだから。助けて欲しいなんて微塵も思ってないわ」


 フィニィは分かりやすく天邪鬼な態度を取りながら慌てていた。優しい言葉に慣れていないのか、つい最近まで敵だった物からの優しさに違和感を感じているのかはわからないが、すっかりツンデレ化している。


「ふふ。それだけ元気があれば問題ないわね。じゃあ、決心が揺らぐ前に扉を開くわ。頑張ってね」


「わかっているわ、あと何度も言うけどあなたたちのためにライアーと話をするわけじゃないし」


 ツンとした姿勢を崩さないフィニィに気を害することなく微笑まし気な表情を浮かべてシャルム国王はこの場を代表して扉を開いた。


 ていうか一国のトップに力を押さえているとは言え捕らえている敵がいる部屋の扉を開かせるって結構不敬だよな。などど余計な心配は心の隅に置いておこう。本人も気にしてないみたいだし。


「おや、人数が増えたかと思いきやフィニィさんではないですか。私を助けに来た、と言うわけではなさそうですね」


 扉を開けて団子状態で入室した俺たちに反応し、感情のない表情でゆっくりこちらを見て直ぐにフィニィの姿を見つけてほんの一瞬だけ真顔のまま固まったが直ぐにいつもの胡散臭い笑みを浮かべてそう言った。


「あ、うん……ごめん。助けに来たわけではないけど、あなたに会いたいと思って来たのは本心よ」


 フィニィは不安と罪悪感から肩をビクッと震わせてから怖々とライアーの機嫌を窺う様に言葉を紡いだ。笑顔の奥のライアーの表情はひどく冷たい。フィニィを蔑んでいる様にすら見える。


「私に会いたい、ですか。それは光栄です。わざわざ敵の懐に入ってまで会いに来てくれるとは実に光栄です」


 言葉尻は優しいのに言葉にとんでもない圧を感じる。それに言葉もどこか刺々しい。これは多分、怒っているのではないだろうか。


「ふ、懐に入ったとかそう言うんじゃなくて……私は本当にライアーに会いたかっただけで深い意味はないのに」


 棘のある言葉に気圧されて涙目になり、どんどん言葉尻が小さくなって自信を失いモジモジとするフィニィを見ると説得を任せてしまったことに申し訳なさを覚え、心が痛くなる。


 しかし、ここでいやこのタイミングで俺たちが出て行っても更に空気が悪くなるだけだ。まだ挨拶程度の会話しかできていない。話している間にライアーの心に隙ができる可能性もあるし、フィニィには申し訳ないが、もう少し頑張ってもらうしかないのだ。


 その場の全員がライアーの様子を黙って窺う。アンフィニは今にも飛び出しそうになっていたが、その小さな体と口を押えて塞ぎ、行動を制する。


 もちろん、この空気と空間がフィニィの精神的負担にならない様に気遣うことも忘れない。俺たちはありとあらゆることに配慮しつつ、この話し合いの行く末を見守る。


「恩を仇で返されるとは思っていませんでした。共に過ごした時間は短いですが、私はあなたのことを本当の家族だと思っていたのに」


「ち、違うわ。私はあなたを裏切ったつもりはない。今もあなたのことを家族だって思ってる。これだけは、この想いだけは本当に信じて欲しいの」


 静かで、それでいて蔑んだ冷たい言葉を投げかけたライアーにフィニィが言葉を詰まらせながら必死で訴えかけるが、ライアーの雰囲気も表情も変わらない。


 あまりに冷たい態度を突き通すライアーにショックを受けたフィニィの呼吸が荒くなる。体は震えて足元も若干だがふらつき始めた。


 ああ、これはもうダメかもしれない。ここらで一旦切り上げないとフィニィが危ないかもしれない。そう思った時、聖が冷静で涼やかな声ですっぱりと言った。


『そんなに突き放すことはないだろう。心配しなくてもフィニィが君を裏切ったりなんかしてないよ。寧ろ罪悪感があるぐらいだよ。君は彼女の“家族”なんだからそれぐらい見たらわかるでしょ』


「突然会話に介入してきたと思いきや分かった様な口で綺麗事ですか。なんとも奇妙で不快なタブレットですね」


 ライアーの嫌味の矛先が聖に向いたが、フィニィとことなり聖は神経が図太いので一切動揺することはない。寧ろこちらに反応を見せたことをいいことにグイグイと行く。


『綺麗事なんてとんでもない。僕はただ君がフィニィの“家族”を名乗るのであればそれなりの器の大きさを見せてって言ってるんだ。まあ、他人の話を聞くなんて大人としても敵側のボスとしても当然のことだとおもうけど』


 自分の器の大きさを小さいとでも言うような言い回しをされたライアーの表情が引きつり、わかりやすく不機嫌な表情になる。かなり気を悪くしたのか俺にも感じ取れるぐらいのドス黒い怒りのオーラがズモモモと体から漏れ出ていた。


 ヤダ、怖い。なんで挑発したんだ聖のアホ!まだ話合いも始まっていないのにっ。普段は穏やかだから失念していたがライアーは結構短気なんだぞ。


 そんな不満を内心でマシンガンの様に並べ立て、そしてナイフダーツが頬をかすめた際の記憶が鮮明に蘇って戦慄した。


「……いいでしょう。その挑発に乗って差し上げましょう」


 不機嫌になって話を適当に流されると思っていたが、意外にもライアーは怒りを飲み込んで話を聞く姿勢を見せた。暗黒微笑を浮かべながら口角がヒクヒクしているのは見なかったことにしよう。


『ふふ、そうこなくっちゃねぇ。さあ、家族で対話をしようじゃないか』


 ライアーの返事を受けて満足そうに笑う聖を見て、ただ漠然と改めてこいつも大概腹黒いなぁと感じた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


聖「次回予告!やったね、ライアーも話を聞いてくれるって。後はなるべくフィニィちゃんに任せて、徐々に問題を解決していこう。このまま上手くことが運べば戦わずして世界を救えるかもっ」


クロケル「なんかアレだな。俺たち基本的に敵とは比較的平和的解決してるよな。味方との方が激しい戦いを繰り広げている様な気がしてならん」


聖「次回、レアリティは最高ランクだが素材がないのでレベル1第159話『信じて欲しい。私はあなたが大切なのです』アレは特訓であって戦いではないでしょ」


クロケル「ああ、そう言う名目ではあるが毎回死にそうなんだよ。敵よりも味方の手で命の危機に晒されることの方が多いってどう言うことだよ」


聖「そんな大げさな。みんなクロケルのことを思って特訓に付き合ってくれてるんだよ。多分、きっと」


クロケル「言葉濁してんじゃねぇか!お前も自信がないんだろ」


聖「いや~、君をいたぶ……特訓している時の彼らがあまりにも生き生きしてるから~断言できないんだよねぇ]


クロケル「今、甚振るって言ったーッ」

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