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第157話 暴走ペセルを鎮めよ

この度もお読み頂きまして誠にありがとうございます。


今日もとても、とても忙しかったです……。投稿できないかと思いましたが何とか投稿できそうな時間を見つけることができたので、本日は遅めの投稿となります。


締め切りだけは何としてでも守る!学生時代から貫き続けている真面目根性を見せてやる。来い!大仕事、年末まで勝負だ(疲れすぎて錯乱中)


本日もどうぞよろしくお願いいたします。

『ちょっと、落ち着いてよ。ペセル、1回騒ぐのヤメて!みんなの鼓膜がやばい』


 宙に浮かぶことが出来る聖がモニターの向こうで拗ねて喚くペセルさんに近づいて画面越しに彼女を宥めるが言葉を聞き届けるつもりは毛頭ないようでただひたすらに「悔しい、ずるい」と叫び続ける。


 なお、同じく空を飛べるはずのミハイルはペセルさんの声の圧に押しつぶされて羽ばたけずに地面で悶えている。


 ……なんだろう、ミハイルは純粋な動物ではないと頭では理解しているはずなのに白いモフモフの動物が地面に体を横たえて苦しんでいる姿を見ると動物虐待をしている様な罪悪感が沸き上がってくると言う不思議。


 助けてやりたいが自分の耳に当てている手を離すと自分がペセルさんの声の圧でノックアウトしてしまう気がするので助けに行けない。すまん……許せ、ミハイル。


 しっかし……天下の売れっ子アイドルがここまで感情を露わにして暴走するって何事だよ。ペセルさんってこんなキャラだったのか?出会った時とイメージが違うぞ。


 聖はその後何度かペセルさんに呼びかけたがやはりその行動は無意味で、とうとう説得を諦めた聖はヘロヘロになりながらモニターから離れて俺の傍に戻り、脱力して深くため息をついて言った。


『ダメだ……全然話を聞いてくれない』


「無理だ無理。諦めろ、こうなったペセルは誰も止められないだろ」


 耳を塞ぎながらやれやれと首を振って半ば諦めて面倒くさくなっている態度でケイオスさんが言ったので、俺はこの状況が何なのか早急に説明を求める。


「あ、あの。ペセルさん、俺が知っている感じと大分性格が変わっちゃってますけど、まさかこれが普通なんですか」


 俺の問いかけにケイオスさんは首を傾げてひどく困った表情で唸る。そしてペセルさんの絶叫で自分の声がかき消されない様になるべく大声で答えてくれた。


「いや~普通と言うか、こいつの性格と言うか性質と言うか……。ペセルは仲間外れを極端に嫌うタイプなんだよ。俺たちって基本協調性がないけど、ペセルは唯一仲間意識が高いんだ。誰かと何かを成し遂げるのが好きなんだよ」


 協調性がないとか自分からさらっと言うもんじゃねぇですよ。とツッコみたかったが今はそれどころではない。


「えっとつまり、今回見たく自分のいないところで仲間が協力するのは許せないと」


「そう言うコト。自分のいないところで仲間同士の絆が深まるのが我慢ならないんじゃないか。うう、相変わらずうるせぇぇぇ」


 ケイオスさんは俺の言葉を肯定した後、まだ発せられ続けるペセルさんの絶叫にげっそりとしながら身震いしていた。


 いるいる。自分のいないところで友達同士が遊んだり仲良くするとキレる奴。俺には理解できん。俺は聖がどこで誰と話そうと仲良くなろうとどうも思わん。


 それに自分のいないとことで問題が解決しているなら最高じゃねぇか。ペセルさんみたいに極端にヒトが好きと言うか仲間意識が高い人間って面倒くさいなぁ。ってかどうするんだこの状況、収集がつかねぇぞ。

 

「ペセル、落ち着いて!話を聞いて。わたし、ここまで旅をしてきてたくさんご主人様のサポートをして来たんです。自分で言うのもおかしな話かもしれませんが、お役に立てた場面も多かったと思うんです。ね、ご主人様」


 俺の肩の上でアムールは小さな体をぴょんぴょんと跳ねさせてペセルさんを落ち着かせようと試みていた。どうやらAIである彼女はこの怪音波の影響を受けないらしい。この場の全員がペセルさんからの音の圧にもだえ苦しむ中、完全にノーダメージだ。


 実にうらやましい。俺なんて爆音を浴びすぎて耳がぼんやりとしてきた。その内意識も遠くなりそうだ。


「え。あ、ああ。そうだな、アムールのおかげでピンチから救われたことは何度もあった」


唐突にアムールが俺に同意を求めて来た。意識が朦朧とし始めていることもあり、理解が追いつかず一瞬言葉を詰まらせてしまったが彼女がパーティに加わって以降、何度も助けられたことは本当なので俺は頷いた。


「ほえっ?」


騒いでいる割に回りの音はしっかり聞いていたらしく、アムールの言葉を受けたペセルさんの金切り声声がピタリと止む。


 流石がは現役アイドル。あれだけ騒ぎまくって周りを苦しめて不快にする様な行動をとったくせに、目をくりっとさせて、アニメキャラの様な驚きの声をあげつつ何事もなかったように驚く姿に可愛さを感じさせるとは中々のやり手である。


 これが俗にいう“あざとい”と言う奴なのか……いや、俺が単純なだけなのか?もしかして俺は相手の二面性に気がつけなくて騙されるタイプだったりして……。


『あー、その気はあるねぇ。君、素直で馬鹿正直ででお人好しだし』


 聖が苦笑いで同意した。っておいおいおい、また心の中を読みやがった上にバカにしやがったなこいつっ……。


「心を読むな!ってか久々だなコレ」


『えへへ、マンネリ回避でここ最近が遠慮してみました』


「腹立つ言い回ししてんじゃねぇぞ、あああん?」


 聖の態度にイラッと来た俺はつい噛みついてしまい、そこからこそこそと妙な小競り合いが始まる。


「よく考えてみて、あなたの分身です。わたしがみなさんの役に立ったと言うことは()()()が役に立ったのも同然。ペセルはずっとみなさんをサポートしてきたんですよ」


 しょうもない漫才じみた会話をしている間にもアムールの必死の呼びかけは続く。いかんいかん、普段から他の奴らに話を逸らされてイラついているのに自分までそうなってはいけない。本当に話が進まなくなるので絶対にいけない。


「んんんんっ!そうです。アムールの力はペセルさんの力だと思っていますよ。いや~ペセルさんの能力って偉大だなぁ」


「え、そう?そうかな。ペセルちゃん、自分が知らないところでみんなの役に立ててたの?」


 気を取り直した俺がアムールの言葉をフォローすると明らかにペセルさんの感情が落ち着き、ヒステリックな感情が静まって行くのが分かる。


「そうね、アムールは分身を生み出せるんだし、現場に本体がいなくても仲間のサポートができるんだからうらやましいわ」


「うんうん。俺たち何かよりずーっと前からクロケルたちをサポートして来たってわけだ」


 ペセルさんが落ち着いたタイミングを見逃さず、シャルム国王とケイオスさんもすかさずペセルさんアゲの言葉を口にする。


「お前は相変わらず心配性だのう。ワシらがお前を仲間外れにするわけがなかろう。常に頭数に入れてあるぞ。故に、過剰な心配や嫉妬をする必要は一切ないぞ」


「それに、お主はライブやツアーで忙しくしているであろう?お主がファンを大切に思っているのは我らも十分承知。誇りを持って仕事こなしている者の邪魔をしたくないと思うのは当然ではないかのう」


 シェロンさんもアストライオスさんも、彼女の怪音波から逃れたいからなのか、珍しく優しい口調の褒め言葉をペセルさんにかける。


 その後、シルマにシュティレ、そしてシュバルツとエクラも、そして明らかに「どうして俺が/私が」と不満の表情を浮かべてはいたが、フィニィもアンフィニもミハイルも、これ以上の耳への苦痛は避けたいと思っているのか必死でペセルさんを褒める。


 当初、この状況にポカンとしていたペセルさんだったが、自分が頼られていると言うことをじわじわと実感したのか、徐々に笑顔を取り戻し、最終的にはいつものアイドルスマイルに少しの照れ笑いを浮かべてモジモジとして言った。


「そ、そうなんだ。ペセルちゃん、みんなの役に立ててたんだね。よかったぁ……みんなが先に問題解決しちゃって1人取り残されたかと思って不安だったんだ。騒いじゃってごめんね」


『ははは、いや~わかってくれればいいんだよぉ』


 はにかんだ後に反省して頭を下げるペセルさんにこの場にいる全員を代表して聖が棒読みで気遣いの言葉を返し、ペセルさん暴走騒ぎはなんとか鎮まったのであった。


「さぁて、こちらの小さ~な問題は色々と解決したことじゃし、うやむやになりかけていたがライアーのところへ向かうとするかの」


 ペセルさんの怒りが完全に治まったことを見計らい、場に流れるぐだぐだな空気を断ち切る様にパンッと胸の前で両手を合わせてシェロンさんが気持ちと話を切り替える。


「ええ。訳の分からない方向へ事態が進んでいたから私の気持ちも揺らぎそうだったわ。何度あなたたちへの協力を諦めようとしたことか」


 フィニィが唇を尖らせ目を閉じて腕組みをし、苛立たしく言った。それな、なんで大事な局面でこんなしょうもない、と言ったら失礼になるかもしれんがそれしか言葉が見つからないので……しょうもない話に流れを持っていかれなければならんのだ。


「まぁ、そう言うな。無事に終息したのだから問題はない。寧ろこの流れに乗ってライアーのことも解決してしまうではないか」


 うーわー、すっごい前向きな捉え方。こんなぐだぐだな流れから激重案件を解決できると何故思うのですか、シェロンさん。適当に言葉を紡ぐものではねぇですぜ。


 笑顔でフィニィを宥めたシェロンさんだったが、それを受けたフィニィは特に言葉を返すことなく、納得がいかない表情を浮かべたままフンと顔を背けた。 


「あ!今からラスボスとご対面なんだね!ペセルちゃんってばナイスタイミングで通信を繋いだ感じ?もちろん、ペセルちゃんもこのまま通信を繋いで同席させてもらうよ」

 

 ナイスタイミングと言えばそうだが、こちらとしてはバットタイミングです。


 あれだけみんなを苦しめておいて、何事もなかったかのようにしゃあしゃあと眩しい笑顔で同行を申し出るペセルさんに若干の寒気を覚えた。


 対人関係において我がままになっていることに本人は無自覚だろうし、この笑顔も心からの喜びなんだろうが、アイドルテンションを除き一番まともで優しいと思っていたペセルさんに意外でややこしい一面があったことを知ってしまってもう、苦笑いしかできない。


 頼もしい仲間が増えたはずなのに、今後の行き先に不安を覚えつつも俺たちは今度こそライアーの元へと向かったのだった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


聖「次回予告!ペセルのご機嫌取りに成功したクロケルたち。さあ、いよいよ次こそライアーとの対面だ。しっかりきっちり話を聞こうね!」


クロケル「何でお前はそんなに張り切れるんだ。俺はもう……疲れた。と言うより気持ちが萎えた。困難への意欲とか覚悟が脆くも儚く崩れ去ったんだが」


聖「次回、レアリティは最高ランクだが素材がないのでレベル1第158話『家族で対話をしようじゃないか』君のやる気って脆いんだねぇ」


クロケル「脆くねぇよ。お前にの関係者が与える精神的衝撃が大きすぎてただでさえ細い俺の精神を根こそぎ持って行ってんだよ」


聖「個性が強くて面白いでしょ?まとまりはないし、腹が立つところも多いけど、一緒にいて退屈しないし、僕の自慢の仲間たちだよ」


クロケル「突然デレるなよ。普段は究極にドライな関係なくせに」


聖「ドライな関係だからって感謝を覚えないわけじゃないもん」


クロケル「もんとか言うな気持ち悪い」

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