第156話 仲間外れはよくないんだよ!?
この度もお読み頂きまして誠にありがとうございます。
12月も中旬に近づき、また一段と寒くなりましたね。私の家は山に近い方なので廊下に出ただで死にそうになります。お昼間でも極寒です。
みなさまも風邪などを引かぬ様、今年を乗り切りましょうね。って何様……
本日もどうぞよろしくお願いいたします。
「説得って……私からライアーに世界を滅ぼすことをやめろってお願いしろってこと?冗談でしょ?私だってまだ完全に世界の消滅を諦めていないのに」
聖の真剣な申し出に対し、フィニィは鼻で笑って半ば呆れた口調で返した。と言うか彼女、世界を消滅させることを諦めていなかったんだな……割と良好な関係になって来たかと思ったが本当の意味での和解にはまだ遠そうだな。
『うん、君が抱える思いもまるっと総合的に考慮した上でのお願いだよ。君の話ならライアーも少しは聞く耳を持つんじゃないかなって思ったんだ』
馬鹿にする様な視線を送るフィニィになど気にする様子は一切見せず、聖は自分の意見をきっぱりと肯定した。
嫌味をぶつけたつもりがあっけらかんとする態度を崩さない聖に驚きを覚えたのか、フィニィは数秒目を見開いて固まり、それから声を詰まらせると言う動揺を見せつつも強気で言葉を返す。
「な、なによ。開き直り?それとも私の言葉の真意が汲み取れなかったのかしら。ならハッキリ言うわ。嫌、お断りよ。私とライアーの志はまだ同じ何だから」
『ああ、言い方が悪かったかな。何も今すぐ世界の消滅うんぬんを諦めさせろ、なんて無茶なことは言わないよ。君たちの意思が固いのはよ~くわかっているし』
どこまでもヘラヘラとしながら、それでいて口にしたお願いを取り下げるつもりは全くない様子の聖にフィニィはますます戸惑いと苛立ちを覚えたのか眉間の皺を深くして不機嫌モード全開で聖を睨む。
『怖いなぁ、睨まないでよ~。ぶっちゃけ深い意味はないんだよね。君が僕たちに少しでも心を開いてくれているのなら、ライアーの説得に協力して欲しいと思っただけだよ、彼の“家族”なら少なくとも僕たちよりも話せるでしょ』
フィニィは暫くの間へらへらにこにことする聖をじっくりたっぷり睨み続けて、そして観念したのか表情を若干ではあるが柔らかくしてとても深いため息をついて言った。
「……わかったわ。ライアーと話をしてあげる。でも、本当に話をするだけよ。説得はしない。私がただライアーに会いたいからあなたの意見を受け入れただけ。それもいいわよね」
『うーん、本当のことを言えば説得は必須なんだけど……無理強いしても良くないし、いいよ。君の好きなように行動してもらって構わない。できれば、説得して欲しいけど』
フィニィに説得をしてもらうのを諦めた様な、諦めていない様な微妙な苦笑いと共に聖は了承した。何か良く分からないまま何かが決定したぞ。
「え、えーと……つまり、フィニィがライアーと話をつけてくれることになった……ってことでいいのか」
「勘違いしないで。私は普通にライアーと話すだけ。あなたたちに手を貸す訳じゃないから」
見て理解したままのことを口にするとフィニィがツンとしつつもおおよそ肯定した回答を返した。何だかんだで力を貸してくれるんだな。まあ、こちら側にアンフィニがいると言うことが大きいんだろうな。
「何にせよ、ライアーから聞き出さなくてはならないことはたくさんあるのだし、フィニィがあいつとの話し合いの場にいてくれるのならこちらも心強いわ」
シャルム国王がクールにそう言って、俺たちもその意見に同意して首を縦に振った。いよいよ、ライアー……ラスボスから再び話聞く時が来たと思うと緊張してきた。前回は丁寧に拒絶と抵抗をされて色々とうやむやになってしまったからな。
力は封じ込めているし脱走や目立った抵抗をされることはないと思うが、このままライアーを宮殿に閉じ込め続けるわけにはいかない。
世界の消滅をかけた戦いを終息させるには恐らく首謀者であるライアーを説得することが一番の近道、と言うより不可欠。この案件を解決するために絶対に話をつけなければならないのだ。
それに聖が言う様に元より意見が対立している俺たちよりも家族だと認識されているフィニィが主軸に話を進めた方が情報が好転するかもしれない。今回はそれに期待したい。
「では、善は急げと言うしフィニィの気が変わらない内にライアーに話を聞きに行くとするかの」
アストライオスさんの言葉にその場の全員が緊張感を高め、頷いて立ち上がった時、突然肩の上に座るアムールがピクリと反応して告げた。
「通信、入りました。送信者、ペセル。通信を繋ぎますか」
「ペ、ペセルさん!?」
そうだ、すっかり忘れていたがペセルさんも色々と片付いたら俺たちを助けに来てくれると言っていたな。でも何故このタイミング……内心でツッコミを入れつつも、せっかくの頼もしい仲間からの通信だ。無下にはできない。それに何か情報を掴めたのかもしれないし。
「とりあえず、繋げてくれアムール」
「了解しました」
予想していなかった展開に戸惑いつつも通信を繋ぐ様に頼むとアムールは即座に了承し、空中に大きなモニターが現れ、そして人影が写る。ペセルさんだ。
あれ、心なしかいつもよりテンションが低い様な……彼女なら通信が繋がったと同時にファンサ全開のアイドルスマイルとハイテンション挨拶をしてくれるかと思ったんだけど。
「ペセルさんお久ぶりで……」
「ちょっとぉーーーーーー!!アムールちゃんから連絡貰ったんだけど、ペセルちゃん抜きで随分話が進んじゃってるみたいじゃん!ひどいよぅ~仲間外れはよくないんだよ!?」
様子がおかしいと思いつつもとりあえず挨拶をしようと俺が口を開いた時、それを思いっきり遮られた。
突然の大声に何事かと改めて空中に大きく映し出されたモニターを見ると大変ご立腹のオーバーリアクションで泣き叫ぶ一流電脳アイドル、ペセルさんの姿があった。
わざわざ連絡をくれるなんてどんな大切な要件なのだろうかとちょっぴり期待に胸を躍らせて通信を繋げたのになんだこの流れは。
「ひどいひどい!みんな直ぐには手助けに行けないって言ってたくせにソッコーで現地到着してるじゃん!アムールちゃんから貰った情報ではかな~りカッコいいことしちゃってっ。ずるいずるい!ペセルちゃんもみんなの力になりたかったーーーーーーーっ」
ペセルさんはモニターの向こうで両手で拳を作ってぴょんぴょんと跳ねながら憤慨していた。それも人目もはばからず、かなりの大絶叫で騒ぎたてる。
甲高いアニメ声がステレオ調子でビリビリと部屋に響き渡り、部屋にいる全員が耳を塞いでそれに耐える。な、なんだこの声っ鼓膜が破れるッ。
例えるなら……ああ、アレだ。ライブ会場でどデカいスピーカーの近くに立ってしまった時と同じぐらいの音の衝撃。耳から耳にドーン!!って音が貫通する感覚。しかもペセルさんが騒ぐ度に部屋が揺れてるぅ。
『うわ、うるさっ』
「始まったわよ……ペセルの不機嫌モード」
「あーあ、どうすんだよこれ。また収集がつかなくなるぞ」
「放置……と行きたいところじゃが相変わらずキッツイ叫び声じゃのう~」
「うむ、年寄の脳には少々堪えるうるささじゃのう」
聖、シャルム国王、ケイオスさん、シェロンさん、アストライオスさんが耳を塞ぎ、不快な表情を浮かべながらも、この状況にどこか慣れている様な感じがした。
……まさかペセルさんってこうなることがあるのか?ってか、ライアーと対面する事への決意と緊張感が吹き飛んだ気がするぞ。
俺は思った。いや、悟った。ああ、これはまたシリアスな雰囲気がぶち壊れる流れであることを。
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聖「次回予告!突然騒ぎ出し、不機嫌モードに突入したペセル。クロケルたちは無事彼女の機嫌を取り戻すことができるのか……そして、フィニィの力を借りてライアーを説得して話を聞き出すことはできるのかっ」
クロケル「おい、やることが増えてないか!?なんでここに来てペセルさんのご機嫌取りをしなきゃならんんのだ!色々拗れすぎて胃と頭が痛いわっ!!空気もぶち壊しだし」
聖「次回、レアリティは最高ランクだが素材がないのでレベル1第157話『暴走ペセルを鎮めよ』いいじゃない。シリアスは嫌いなんでしょ。コミカルな空気に飲まれなよ」
クロケル「シリアスは苦手でが、コミカルに自分が巻き込まれるのも嫌なんだよ!疲れるから」
聖「も~、我がままだなぁ」
クロケル「我がままじゃねぇ、平穏に過ごしたいと言う純粋な願いだっ!!」