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第153話 フィニィの歓迎会ラウンド2!戦いのゴングは鳴らされた

この度もお読み頂きまして誠にありがとうございます。


年末の大掃除を今から少しずつ始めています。普段からこまめに掃除はしているのに埃って溜まるんですねぇ~。こんな中で生活しているのかと思うとゾッとします。


あとおせちの材料集めも意外に競争率が高い……早い段階で買うと安いですからね。年末ってイベントごとが詰め込まれているのでホントに師走ですよ……。ああ、ゆっくりしたい。


嗚呼、前書きで愚痴るなと言う声が聞こえる……


本日もどうぞよろしくお願いいたします。

 俺とフィニィはその後で一緒に夕食の準備が整ったことを伝えに他の仲間たちを呼びに回った。この組み合わせがよほどめずらしかったのか、扉を開けた仲間たちは並んで立つ俺たちを全員非常に驚いていた。


 シュバルツ・ミハイルと同室だったアンフィニは何を勘違いしたのか「妹に手を出してないだろうなァ」とドスの利いた声で俺に詰め寄って来たのでめっちゃ怖かった。だって、見た目ゴシックファンシーなぬいぐるみが凄んでくるんだぜ?軽いホラーだよ。


 なお、このアンフィニの勘違いはフィニィの「安心して、お兄様。こんなヒト、私のタイプじゃないから。可能性は未来永劫ないわ」と言う淡々と冷静で刃物の様な言葉で終息した。


 何で勝手にフラれたみたいな展開になっているのか。こっちだって下心など全くないと言うのに……解せぬ。そんな多少のトラブルを交えつつ、仲間たちには先に食堂へ向かってもらった。


 面白いことと言えば最後に呼びに行ったケイオスさんに「呼びかけをする奴が2人もいるんだったら手分けした方が効率よくね?」とツッコまれるまでこの広い宮殿で2人して連れ立って行動している無意味さに気が付かなかった。


 そうだよ、手分けして呼びに行った方が絶対早かったじゃん。何で無言のまま一緒に行動じてたんだ。アホかよ俺。


 ちらっとフィニィを見てみれば彼女も手分けして呼びに行くと言う考えには至っていなかった様で、小さな声で「気が付かなかった……」と呟いていた。あ、思考回路一緒だ。と思いながら何気なくフィニィを眺めているとバチッと目が合って睨まれた。


「……なによ、馬鹿にする気?効率的な考えができなかったのはそっちも同じでしょ」


「別に馬鹿になんてしてないし、するつもりもないが」


「じゃあこっち見ないでよっ」


 えええ……なんで俺怒られてんだ。本当に馬鹿にしてないのに。何となく見ただけで怒られるとかひどくない?


『照れ隠しだよ、君の器が大きいなら軽く流すのが正解だよ』


 態度がコロコロと変わるフィニィに困惑していると聖は俺の耳元でそうアドバイスした。そう言うもんかねぇ……。


「あ。俺ってば空気悪くした感じか?悪い悪い、えーっと夕食の準備ができたんだっけ?呼びに来てくれてサンキュー。俺で最後なんだろ、みんなで食堂に行こうぜ」


 ケイオスさんが空気を悪くしたことを察して少し気まずそうな苦笑いを浮かべて話をうやむやにしようと試みていた。このヒトでも空気読もうとするんだな……ビックリ。と思ったが言葉や態度に出すと後が怖いので言わない。


 そんな感じで3人とタブレット1台で並んで食堂まで向かうと、俺たちが呼びに行ったので当然であるが既に全員が着席していた。


 恐怖を覚えながら長い数10人用のテーブルを確認してみたが、まだ個々の取り皿以外は何も置かれていない。ただ、料理を置くつもりであるであろうスペースが異常に広いので既に嫌な予感はしている。


「あ、来た来た~。みんなを呼んできてくれてありがと、フィニィちゃん。クロケルさんも付き合ってくれたんだって?お疲れ様、ささ座って。みんな揃ったからご飯を並べるよ~」


 厨房からエクラが満面の笑みでひょっこり顔を出して俺たちに着席を促した。エクラの料理はプロ並みに美味しいが、調子が乗ると量が増えると言うデメリットがあるので楽しみな反面、身構えてしまう。飯を食う前に身構えるって中々ない感情だよな。


 夜もご馳走にありつけると言う楽しみと、夜も大量の食事と向き合わなければならないと言う恐怖を感じながら着席し、仲間たちと歓談していると厨房からそれはもう大量の皿が乗ったカートを引いたエクラとシュティレが現れた。


「た、大量の皿がカート2台分……だと」


 事前の希望で量を減らして欲しいと頼んだのに全然減っていないことに軽く絶望して、自分の顔が引きつるのがわかった。戸惑いと絶望の声も零れる。


 そして思い起こされるフィニィの「夕飯、覚悟しておいた方がいいかもね」と言う不穏な言葉。ああ、寒くないのに体が震えて来た……。


『凄いね、減るどころか寧ろ増えてる気がする』


 聖もタブレット越しにカートを眺めて、昼と夜2連続での規格外の量の料理たちには流石に戸惑いを覚えたらしく、半ば半笑いだった。


「少なめってリクエストを貰っていたけど、みんなからのリクエストを受けてあれもこれもって思ってたら創作意欲と手が止まらなくなっちゃって……シュティレさんも手伝ってくれたから効率も良くてつい作り過ぎちゃった★」


 エクラは小さな舌をペロッと出して自らの頭を小突いた。いや、テヘペロやなしに。頼むから自制してくれよ……んでやっぱりシュティレが加わったから調理の戦力2倍でえらいことになってるし。


「少量を希望してもらぅていたのに品数を増やしてしまったことについては謝罪する、すまない。エクラ殿の教え方が上手いのと興味深いレシピが多かったので私も楽しくなってしまって」


 シュティレはしゅんとして謝りつつも、個人的に収穫はあったのかちょっと浮足だっているのが見て取れた。すっごいホクホクしてるじゃん。


「まあ、冷凍保存できる料理が多いし、大皿をみんなで取り分ければ衛生的にも問題ないからダイジョーブっしょ!いっぱい食べるヒトもいるし、好きなだけ食べて」


 そう言ってエクラとシュティレが大きな数十枚はある大皿を手分けして手際良く並べて行く。スープ以外はクロッシェで覆われているため全貌は不明だが、俺にはわかる。これからまた料理との戦いが始まると言うことが。


 だってシャルム国王がお肉料理をリクエストしていたし?確実に肉料理はあるはずだ。それにスープなんて5種類あるんだぜ?


 キャベツと玉ねぎと鶏肉団子のコンソメスープ魚介の白湯はあっさり系だからいけそうだか、何故ビーフシチューとクリームシチューを用意した。コーンスープもこんなに種類があるなら1リットル鍋ではいらんだろ。


 何度も言うがビュッフェじゃねぇんだぞ。ご自由に選べるスタイルやめろ。ああ、クロッシェの中に隠されたメインを見るのが怖くなって来たぜ。


「も、問題はお皿の数よりも内容ですよ!重くない食材……野菜とかならいけそうな気がします!」


 まだ見ぬ料理に震える俺を同じく不安を覚えているシルマが苦笑いで励ましてくれた。料理を食べるのに励まされるってどう言う状況なんですかね。


 そしてついにクロッシェが開かれ、料理たちが姿を現す。暖かで美味しそうな匂いと共に現れたそれらにその場の誰もが感動と期待の声を上げた。


「期待通りの豪華なメニューね。それにお肉料理がたくさんで嬉しいわ。クラージュにも食べさせてあげたいわねぇ」


 シャルム国王がめずらしく目で見てわかるぐらいウキウキとしながら満足そうに頷く。そりゃあテンションも上がるだろう。何故ならテーブルに並ぶのは、彼がリクエストをした肉が中心の料理なのだから。


 醤油ベーズで香ばしく焼かれた豚と鳥の丸焼きと、数種類のソースが用意されたローストビーフ、それに見慣れない肉がある。


「この骨付き鶏ももみたいな肉はなんだ?」


「あ、クロケルさん食べたことない?羊のお肉だよ。この辺りではよく食べられているだ~。臭みがないように調理したし、甘辛ソースの他にタルタルも用意したから是非、食べてみて」


「お、おう。是非頂くよ……」


 俺の1の質問に対して10ぐらいの答えを返して来たエクラを見て、料理を調理・提供したことによって彼女のテンションが上がり始めているのを感じた。いかん、このままでは追加の料理が来てしまう可能せいがある。


 そんなことになってたまるか。もう極力料理には触れないでおこう、感想だけはしっかり伝えて平和的に乗り切ろう。そう心に決めて余計なことは言わずに食事を始めようと手を合わせた瞬間、ケイオスさんが余計な口を開く。


「すげぇでっかい生クリームの塊がある!あれってケーキか?」


 ああああああ、質問しちゃったぁー!すごく気になってたけどーーーーーーっ!!一番ヤバそうだから余計な発言で余計なことにならない様にあえて気にしないようにしてたのにっ。


「ふふ、そうです!ケイオスさんのご希望通りの生クリームモリモリケーキですよ。クリームをメインとして味わえるようにテクスチャーは少し固めに。それでいて口の中でふわっとほどける様に試行錯誤してみました。クリームの中にきちんとスポンジもありますよ」


「な、生クリームモリモリケーキ……」


 俺は地獄の様な見た目と地獄の様な名前のケーキを呆然と眺めてドン引きした。ケーキ、ケーキなのか、アレ。どっからそう見ても大皿に盛られた生クリームの塊にしか見えませんが?


 色とりどりのフルーツやカラフルな丸いチョコに彩られて綺麗ではあるが、絶対重い。お腹に溜まるに決まってる。テクスチャーを固めにしたって言ってたし。絶対胃に圧し掛かって来るヨ?


 ケイオスさんは何故、あれを見てはしゃげるんだ。どんだけ甘党なんだよ。シュバルツも目がキラッキラしてるし。でもあのケーキ、カロリーと糖分がヤバそうだなぁ。一口で血糖値爆上がりだろ。味は良くても体に異常をきたすわ。


「このケーキについては私もレシピ制作に関わらせてもらった。中々困難を極めたが、楽しかったな」


 普段あまり表情を変えないシュティレが楽しそうに笑っていた。本当に有意義な時間を過ごせたんだろうとは思うけど、このクリームの塊ケーキの爆誕に関わったのだとしたら余計なことしてくれたなぁと思ってしまう俺は心が狭いのだろうか。


「生クリームの試作品がいっぱいできたから追加で欲しいヒトは言ってね!新しいスポンジも焼くし、パンにつけてもおいしいから!」


 パン、ああ……エクラが夕食のアンケートを取った時にシュバルツが希望してたなぁ。だからこんなに大量のパンがあるのかぁ、甘い系から総菜系まで揃えちゃってるし。パン屋かな?


 エクラは誇らしげに、楽しそうに笑っているが、生クリームの試作品と言う言葉は俺にとっては地獄でしかない。どうか昼間みたいに頼んでもないのに皿に盛るのだけはやめてくれよ……。残すの勿体ないから。


「料理の説明はもうよかろう。気になるものがあれば食事をしながら聞けばよかろう。料理は温かい内に食べるのが一番、早く頂こうではないか」


 もう待ちきれなくなったのか、シェロンさんがうずうずとしながらみんなを促した。うん、まあ確かにおいしそうではあるし、食べたいとは思うからその提案を却下するつもりは毛頭ないが、覚悟を決める時が来たようだ。 


 エクラもシュティレもエプロン取っていそいそと各々の席に着く。そしてエクラが元気に声を弾ませて言った。


「はーい!それじゃあ、両手を合わせてぇ」


「「「いただきまーす」」」


 みんなの食事の挨拶の声が重なる。もちろん、俺もキチンとその言葉を口にした。が、この挨拶は俺にとって食との戦いへの第二ラウンドのゴングでしかなかった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


聖「次回予告!ついに始まった食との戦いラウンド2!凡人胃袋のクロケルはこの戦いを無事に乗り切り、食べ物たちを胃に収めることができるのか」


クロケル「俺は何と戦っているんだ……」


聖「次回、レアリティは最高ランクだが素材がないのでレベル1第154『家族を裏切ることはできない』生クリームモリモリケーキがクロケルの精神と胃袋を苦しめる」


クロケル「何で食事で胃と精神を患わなければならないんだ。おかしいだろ」


聖「ねー、あれを食べきる奴らは異常だよねぇ」


クロケル「もしかして、シャルム国王たちって昔から食べるタイプだったのか?」


聖「うん、僕も最初はドン引きしたよ~。だから今更かなぁ」


クロケル「まじかぁ~」


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