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第149話 標的はクロケル。特訓なのにフルボッコ!?

この度もお読み頂きまして誠にありがとうございます。


急に寒くなりましたね。朝洗濯物を干そうと上着を着ずに外に出て、気温に対して完全に油断しており死にそうになりました。


もう12月ですものね……。そりゃ寒くなるわ。皆様も風邪などひかぬ様、どうかご自愛くださいませ。


本日もどうぞよろしくお願いいたします。

「えっ」


 すっかりうやむやになっていたかと思っていたことを再確認され、俺の口から間抜けな声が漏れた。多分表情も大分ポカンとした間抜け面だろう。


 訓練、すっかり忘れていた。と言うかマジで自分が参加させられるとは思っていなかった。え、確認してくるってことは参加しないとダメな感じなのか。待って待って、凄く嫌なんですけど。


「もちろんお前も参加するよなぁ?お前の事情的に鍛錬して体を鍛えることは大事だぞ」


「うげっ、苦しいッス、ケイオスさん。首、首絞まってるっ」


 意地悪い笑みを浮かべたケイオスさんが俺の首元に腕を回して結構な強い力で引き寄せた。その際に彼の拳が頸動脈を圧迫してめっちゃ苦しい。何、もう鍛錬始まってるのか?プロレスでも始めるつもりか。


「おっと、悪い悪い」


 そんな風にツッコむ余裕も徐々になくなって行き、意識が遠き始めたので力を振り絞ってケイオスさんの腕をタップすると、ようやく俺の首を絞めていることに気が付いてヘラヘラとしながら両手を上げて俺を開放した。


 ヒトを落としかけておいてなんと言う適当な謝り方っ!と思いながら俺は転がる様にしてケイオスさんから距離を取った。

 

 あっ、ダメだコレもう疲れて来た。無理だよ、鍛錬なんて無理。鍛錬が始まる前から予期せぬダメージを食らい、ライフが点滅寸前もしくは危険信号の警鐘を鳴らしているのを体感した俺が鍛錬には参加しない意志を示そうとした時、シェロンさんがそれを遮って頷いた。


「ふむ、我もクロケルは鍛錬に参加した方がいいと思うぞ。見たところクロケルの状況は()()()()()()()()()()()様じゃからなぁ」


 残念そうな口調で俺の評価をするその言葉に疲労困憊の心臓がギクリと跳ね上がる。俺にはわかる。これは無条件で特訓に参加させられる流れだと。小さな災いが今、俺に降りかかろうとしていると!


「ワシも色々と魔術指導をしたのじゃぞ。あのフィニィと言う相手に中々面白い技を使えていたしの。あの技を本当に習得できたかテストといこうじゃないか」


「アストライオスさん!?」


 鬼メンバーの鍛錬に参加しなければならないかもしれないと感じ取り、恐怖に震えている俺に追い打ちをかける様にアストライオスさんが余計なことを言った。


 思わず何で言うんですか!と叫んだ俺にアストライオスさんはしれーっとしながら視線を逸らした。くっ、これは確信犯だ。だってこのヒト未来が視えるんだし。絶対視た上で発言しただろ、俺を戦いに参加させる気満々だろーっ!!


「あら、そうなの。新しい技を習得していたのね、それは初耳。しかもアストライオスが指導したなら期待はできるわね。丁度いいわ、鍛錬でその成果をみせてもらいましょう」


「ほほぉ、俺が覚醒させてやった力を更に進化させたのか!それは是非とも拝見したいものだなぁ」


 アーッ!シャルム国王とケイオスさんがもの凄くワクワクし始めたーっ!?逃げ場がなくなったーっ!!不運へのカウントダウンをビンビンに感じて涙目で頭を抱える俺に聖がふよふよと近づいて来てちょっと楽しそうな声で言った。


『ファイトだ、クロケル。ここは乗り切るしかないよ。レベル1でも体を鍛えることはできるんだしっ』


「てめぇ……他人事だと思って呑気に構えやがってっ」


 呑気に浮遊するタブレットを睨みつけていると不意にシャルム国王が腕を引っ張る。これ、さっきのフィニィと同じ状況では……?フィニィが光り堕ちしてばんざーいとか言っている場合ではないのでは。


「さあ、そうと決まれば早速鍛錬に行きましょう。善は急げって言うしね」


「そうと決まればって、何も決まってないですよ!?俺、まだ返事してません。と言うか鍛錬は

ちょっと休んでからじゃなかったんですかっ」


 そんなこと言ってるけど早く戦いたいだけだろ!?くそ、何て力だ。踏ん張りたいけど踏ん張れないっ、どんどん引きずられてしまうっ。


「もう十分休んだでしょ。さあ、行くわよ、アストライオス。訓練の場所を用意頂戴」


「宮殿の敷地は余るほどあるからのう、一番広くて大暴れできる場所へ案内してやろう」


 アストライオスさんも鍛錬が楽しみなのか嬉々として先導を始めた。くっ、通常の戦闘とかは面倒臭がって参加しない癖に何で今回はそんなに前向きなんだよ!


「よーし、久々に本気をだすかぁ」


「我も本気で行きたいところじゃが……流石に竜の姿にはなれんかのう」


 ケイオスさんが腕をぐるんぐるんと回しながら、シェロンさんがマジでガチの本気モードになろうかと悩みながら後をついて来る。


 完全にGOTOHell★ってか何で誰も止めないの、俺結構困ってるよね。助けてお願い、このヒトたちを止めて。本当にもう、誰か、誰か助けてーーーーーーーーっ!!



 俺の抵抗と叫びも空しく、あれよあれよと鍛錬のためにアストライオスさんが案内してくれた(しやがった)敷地へと辿りついた。


 そこはアストライオスさんが用意した馬車にのらなければ辿り着けないほど宮殿から随分と離れており、整備された土のみが広がる開けた場所だった。


「うん。遮蔽物もないし、これなら思いっきり暴れられそうね」


 シャルム国王が満足そうに頷いた。こんなきれいな顔で雰囲気も上品な一国の王から暴れられるとか言う言葉聞きたくない。このヒトだけは話が分かるヒトだと思っていたのにまさかの戦闘狂とかただただ頭を抱えたくなる。


「土が荒れてもまた整備し直すから、好きに暴れて良いぞ」


 そんな快諾、今はいらない。そんなこと言ったらこのヒトたちは間違いなく遠慮のない戦闘を始めるに決まっている。そなったら危険が危ないだろ、主に俺が。


 そしてそんなことはさておき……自分の身の危険も大事なんだが1つだけ気になることがある。俺は自分の左隣をチラッと見やって疑問を口にした。


「なあ、なんでシュティレも参加しているんだ」


「私も体を動かしたくなってな。それに、かつての英雄たちと手合わせができる機会なんてそうないだろう?是非とも参戦したくてな、シェロンさんに申し出たのだ」


 淡々として理由を語るシュティレだがそわそわワクワクしているのが分かる。何でみんなそんなに強いヒトと戦うのが楽しいと思えるんだ。鍛錬とは言え、危機感を持とうぜ。


 因みに、シルマとシュバルツも参加を促されていたが今回は見送ることにしたらしい。シルマは自分の実力がバレたくないから、シュバルツは歴戦の猛者たちが怖くて戦いたくないから鍛錬への参加を断ったのだろう。いいな~断れて。


 なお、常に俺の傍にいる聖とアムールも観戦組と共に離れて待つことになった。アムールは戦闘中のサポートがしたいと俺から離れたがらなかったが、ここにはいない英雄、ペセルさんの分身であるアムールがいたらチート並の補助を受けてしまうため、俺の鍛錬にはならないと強く却下された。


 広い土地の中心に俺とシュティレが隣同士に、ウキウキの英雄たち3人が並んで対面に並ぶ。一体どんな鍛錬を始めるつもりなのかと不安過ぎて胃を痛めていると、シャルム国王が口を開いた。


「鍛錬内容はアタシから提案させてもらうわ。ルール簡単、個人戦で行きましょう。誰を狙ってもいい、最後の1人になった方の勝ち。勝利条件は……そうねぇ仲間に大怪我をさせるのは忍びないし、相手の体を地面につけたら勝利、と言うことにしましょう。単純でしょ」


「おお!わかりやすくていいな」


 ケイオスさんが淡々とした提案に満足そうに同意し、それを聞いたシャルム国王がさらに続ける。


「更に提案させてもらうとするならば、ここにいるのは実力者が多いし、戦いが終わらないかもしれないから制限時間も設けましょうか。時間は2時間ぐらい、時間内に複数人が残った場合は倒した数が多い方の勝ち」


「ふむ、このメンバーで勝敗をつけるには中々に良い条件じゃの」


「ああ、ワシも異論はないぞ」


 シェロンさんからもアストライオスさんからも反対意見は出なかった。シュティレの様子も窺ってみたが、深く頷いていたのでこちらも納得している様だ。


 ここで俺が反対しても絶対意見は受け入れてもらえないだろうな。俺ってホントに不運野郎……ああ、もうどうにでもなれ。


「みんな納得している様ね、じゃあそろそろ鍛錬を始めましょう。各自、位置について」


 口元に緩い笑みを浮かべながらシャルム国王がそう言ったので、俺たちは背を向けて距離を取り、そしてまた正面を向いて離れた位置から対面で立つ。


 アッ、心臓がヤバい、不安と緊張と恐怖でドキドキ、ぞわぞわ、バクバクする。心臓に負担かかりまくって吐きそう。


「準備はいいわね、じゃあ鍛錬開始よっ」


 精神的体調不良を起こし始めている俺にはお構いなしのシャルム国王の涼やかな声を合図に、俺を除いた全員が地を蹴り戦闘態勢に入った。




 そして、戦そ闘が始まって数秒後、俺は人生最大の不運とピンチに見舞われていた。


「ちょっとぉぉぉぉぉぉっ!!何で俺ばっかり狙うんですかーーー!!」


 紙一重で攻撃をかわしながら半泣きで叫んで俺は全力で抗議する。こんなの弱い者いじめじゃねぇーか!世界を救った英雄のくせにカッコ悪いぞ!!


「決まっているでしょ。敵を倒した数を競う場合の戦法はただ1つ!」


 俺の抗議を涼しい表情で受け流し、力強く言い切ったシャルム国王に続いて、ケイオスさん、アストライオスさん、シェロンさんが楽しそうに……俺にとっては不穏でしかない笑みを浮かべて声を揃えて言った。


「「「弱い者から潰して数を稼ぐ!!!」」」


 弱くて悪かったな!とツッコミを入れたが言葉の意味を理解して秒速で血の気が引く。


 ……俺の人生、終わったかもしれない。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


聖「次回予告!クロケル選手、大ぴーんち!最弱なせいでこの鍛錬の標的になってしまったーッ!この状況をどう乗り切るつもりなのか。まさかの新たな力が覚醒!?それともこのまま負けてしまうのか!?僕は圧倒的後者の展開になると予想しているよ」


クロケル「てめぇ……俺の危機的状況を楽しんでやがるな」


聖「次回、レアリティは最高ランクだが素材がないのでレベル1第150話『弱者が意外性を見せられる瞬間、それは根性を出した時である』人聞きがわるいなぁ、楽しんでないよぉ~……くくっ」


クロケル「おい、笑いが漏れてるぞ」


聖「あっ、ヤバッ」


クロケル「ヤバ、じゃない!くそ~馬鹿にしやがってぇぇぇっ」


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