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第146話 パーティメンバーが増えたので歓迎会を始めましょう!

この度もお読み頂いて誠にありがとうございます。


私、イラストも描くオタクなのですが、デジタル塗りで長く描いてにますが、まだまだ未熟なので色々と勉強がしたくて他の方のメイキングとか見るんです。


でね、途中までは理解できるんです。ああ、なるほど~って。でも陰影技術の辺りから「????」ってなります。こういうのってやっぱり陰影とかの基礎知識がないと中々上達しませんよね……。


人間誰しも秀でた才能を持っていると聞いた事がありますが、あれ嘘ですね!私なんてすべてのことにおいてオール凡人ですぞ!!


本日もどうぞよろしくお願いいたします。



「……あいつは、きちんとその少女の中に戻った様だな」


 ツバキが消えたことにより沈黙が続いていたが、ここまで黙って見守っていたミハイルが口を開いた。その表情と口調から複雑な思いを抱いているであろうことが分かる。


 ()く言う彼もライアーが自ら抜き出した彼の“幸福だった頃の記憶”だ。ツバキと似た様な存在で似たような運命を約束されているだけあり、この状況を他人事とは思えないのだろう。


「そうじゃな。何事もなく、と言う表現はあまり良くないかもしれないが、ツバキを心に戻したフィニィにも異常は見られないようじゃし、状況だけ見れば一件落着と言えるじゃろう」


 ポツリと紡がれたミハイルの呟きにシェロンさんが静かに答えた。それ以外は誰も口を開くこともなく、悲しみ溢れる重たい沈黙が場に満ちている。


 大抵のことに対してドライに、そして飄々としている聖も、アストライオスさんも、ケイオスさんも今は神妙な面持ちで胸に手を当て静かに目を閉じるフィニィと、ツバキが消えた一点を見つめぼんやりと立ち尽くすアンフィニの姿を見つめていた。


 シルマとシュバルツは今にも泣きそうな表情を浮かべているし、シュティレも目を閉じてアンフィニたちから視線を外し、辛そうな表情で佇んでいた。


「ツバキさん、確かにあの女の子の中に戻っていますよ。ちゃんと内側から存在を感じます。目視はできませんが、存在は消えていません」


 肩の上に乗るアムールが誰に言うわけでもなく静かな口調でツバキは今も存在していると言う事実を伝えた。


 分析に長けるアムールがそう言うなら、ツバキと言う存在は消えていないのだろう。彼女はフィニィの中で理性として永遠に存在し続けるのだ。それについてはもう安心してもいいだろう。


 彼女がこの世から完全に消えたわけではないのは理解できている。直接会えることはもうないと思うとどうしても寂しさが生まれてきてしまうのだ。


「同一の存在とは言え、一度自我を持ってしまったのにそれを捨てて未練もなく本体に戻るなんて、中々の根性だったな、あいつ」


 ミハイルがまたツバキを気にする素振りを見せる。こいつが他人に関心を向けるのは珍しいなと思っていると、その思いをシェロンさんが口にした。


「なんじゃ、やはり近しい運命を持つ者としてツバキのことが気にかかるか」


「いや、気にかかると言うほどではない。確かに自分に待ち受ける運命について考えてしまったが、これに関してはあいつが満足して戻ったのならそれでいい」


 先ほどから素っ気ない返事をしているが、彼がここまで話に関わってくるということはそれだけ気を向けている。


 ミハイルはツバキとは異なり、特殊な事情によって本体であるライアーと同一でありながら“ミハイル”と言う個の魂として存在を確立しているらしい。ややこしい表現になるがライアーとは“同一”の存在でありながら“異なる”存在と言うかなりややこしい立ち位置にある。


 だが、聖曰く本体に認識されてしまえばツバキがフィニィの中に戻った様に、ミハイルもライアーの中に吸収されてしまう可能性もあるらしい。


 ツバキとフィニィは和解に近い状態で元の鞘に戻ったが、ライアーとミハイルの場合は和解など皆無であることがわかる。と言うかライアーをフィニィの様に説得するなんて不可能だろう。


 恐らくライアーは例えミハイルと言う“幸福な記憶”が自分に戻ったとしても、それを完全に消滅させるだろう。だってそのために切り捨てたのだから。


 もしそうなればミハイルはこの世のどこからもいなくなる。ツバキが大好きなアンフィニとお別れした様に、ミハイルも愛するラピュセルさんと別れなければならない。それも未来永劫。


 その可能性と未来を考えると、ツバキの結末を目の当たりにしたミハイルがこんな風に複雑な思いを抱いてしまうのも理解できる。


「ねぇ、ちょっといい?」


 シリアスな空気が消えない中、不意にエクラが割と明かるめな口調で小さく挙手をした。突然どうしたのかと皆が小首をかしげるが愛する孫の発言にアストライオスさんがシリアスな空気をぶち壊しのデレデレとした猫なで声になって答えた。


「ん~どうしたんじゃ、エクラ。何か気になることでもあるのかのぅ?」


「いや、気になることって言うか提案なんだけど~フィニィちゃんの敵意も随分薄れて来た未定だし、大分落ち着いて来たみたいだし、この部屋から出てもいいんじゃね?って思って」


 エクラのしれっとしながらも唐突に中々にリスキーなことを言ったので、シリアスとは異なる沈黙が流れる。いや~捕虜に自由を与えるなんて流石のアストライオスさんも許すわけが……。


「ああ、構わんよ。お前がそう望むならな」


「って即答かいっ!!」


 一瞬も迷いを見せずに簡単に了承したアストライオスさんに驚いて思わず乱暴な口調でツッコミを入れてしまった。だってマジでビックリしたんだもんよ。


「ワシの未来視ではこの娘を外に出したところで目立った問題は起こっていないからのう。で、あれば可愛い孫の提案は受け入れて当然だろう」


「ああ、未来が視えていらっしゃるんでしたね!そいつは安心しましたっ」


 平然と理由を口にするアストライオスさんに思わず脱力する。このヒトの未来視に振り回されるのは何回目だよっ!


 ってかフィニィをここから出しても本当に大丈夫なのか?未来視の結果では問題ないらしいが、これまでのフィニィの行動や心の状態を考えるとちょっと不安が残る。それはシルマやシュティレも同じらしく、アストライオスさんの返しにはひどく微妙な反応をしていた。


 シャルム国王とケイオスさんからは特に反応はない。寧ろ大きな問題を一旦は凌いだこともあり、事の成り行きを傍観する気満々に黙ってその場に佇んでいた。2人共ポーカーフェイスもいいところである。


「ああ、流石に拘束魔術は解けとは言うつもりはないよ。捕虜って立場から解放しろとも言わない。ただ、これだけ気持ちも落ち解いているんだから力を押さえた状態で宮殿内で自由に過ごしてもらっていいんじゃないかなって思ったんだけど」


 アストライオスさんから快い許可をもらったものの、一部からの微妙な空気を察してかエクラがそう付け足した。だが、それを聞いても素直に信頼できないと言うか賛成し辛い。


 まあ、特殊な魔力で力は押さえているわけだし、エクラが言う様に敵意も薄れてきている様だし、今後はフィニィとの信頼関係も大事になって来るだろうから、そう言う面では条件付きで自由を与えるのも方法としてはあり……なのか?


『こんなことで迷っていても仕方がないよ。アストライオスの未来視は確か何だし、フィニィちゃんがここから出ても問題ないならエクラさんの意見に賛成してもいいと思うよ、僕は』


 返答にもだもだする俺に聖がそう言った。うん、まあ……そうだよな。ここでまた余計な議論を始めても話は進まないよな。


 よし、腹をくくるぞ。俺は迷いすぎて泳いでいた目を同じく悩んでいたシルマとシュティレに交錯させ、そしてぎこちなく頷きあった。


「わかった。なら、エクラの言う通りフィニィには捕虜部屋から出で貰おう」


「……本当にいいの?不意に暗殺とかしちゃうかもよ」


 この部屋から出る方向に話が進み始めたにも関わらず、フィニィが淡々と物騒なことを口にした。憎まれ口かと思ったが目が本気だ。


 怖っ、やっぱり反対し様かなぁと震えているとエクラが先ほどの言葉を物ともせず、にっこりと微笑んでベッドに座るフィニィに手を差し伸べた。


「言ったでしょ。暗殺させない様に力は抑えたままにするって。あなたにとっては窮屈で不自由かもしれないけど、そんな怖くてつまらないことなんて置いておいて一緒に外に出よう」


 優しい言葉に驚きと戸惑いを見せつつ、差し伸べられた手とエクラの姿を交互にじっと見つめ、そして遠慮がちにその手をしっかりと握り返した。


「うん、早くここから出よう!」


 明るく微笑むエクラにフィニィは小さく頷きを返したのだった。


 フィニイと共に捕虜部屋を出て、捕虜を逃がさない様にわざと歪ませた次元を抜けて宮殿の廊下を歩く。長い廊下に連なる大きなガラス張りの窓からは心地よく柔らかで温かい日差しを感じる。


 さっきみんなで朝ごはんを食べたと思えばもう昼なのか。結構長い間あの部屋で過ごしたんだなぁ。色々と複雑な時間を過ごしたせいで時の流れがマッハだぜ。


 そんなことを考えながら歩みを進めていると、暫く経って長い廊下の半分ぐらいまで来た時、先頭を歩いていたエクラが踵に重心をかけてくるりんとこちらを振り向いた。その表情はとても明るい。


「さてとぉ~、みんな朝から色々あって疲れたでしょ。とりあえずゆっくりしなよ」


 エクラが笑顔でみんなに気遣いの言葉をかける。毎度のことながら精神的疲労を覚えている俺はあんなことがあった後でも明るさを忘れないエクラの精神力に戸惑いと尊敬を抱いた。


 異世界に来て自覚したが、やっぱ俺って精神的に弱いのかもしれない。特に人情が絡むとダメだ。そう言えば生前も内容が重めの二次元作品にハマる度に精神にダイレクトアタックされてたわ~。精神が脆い片鱗あったわ~。


「ありがとう、そうさせてもらうよ」


 情けない精神の自分に自覚しつつ、苦笑いを浮かべて返答する。俺以外の仲間たちも先だって宿泊用に用意された部屋で各々休むことにする様だ。


「エクラも疲れただろ。きちんと休めよ」


 一切疲れた様子は見せないが、戦闘に参加したりフィニィを誰よりも気遣ったり、歓迎の料理をしたり、観光案内をしたり、アストライオスさんを手玉にとったりと精神、肉体共に疲れているはずだ。エクラこそゆっくり休んで欲しい。そう思って声をかけたのだが、彼女は首を緩く横に振った。


「お気遣いありがと★でも、わたしは今からお昼ご飯の準備をしたいんだ。出来たら呼ぶから遅れずに来てよね。ってことで、皆さんごゆっくり~」


 ヒラヒラっと手を振って厨房へと向かったであろうエクラの背中を見送り、妙にテンションが高かった気がする彼女に疑問を抱きつつも俺たちは心と体を休めるべく、体を休めるべく解散することにした。


 なお、アムールがしれっと俺の部屋に同行しようとしたところ、きっちりシュティレに見つかって再び首根っこを掴み上げられた後に連行されて行った。




「こ、これは一体……何事だ」


 暫く部屋でゆったりとしているとエクラが昼食の準備ができたと部屋に訪れ、食堂へと向かった。何故かウキウキMAXなエクラに促されるままテーブル席へと着席させられ、そしてテーブルの上を見て驚いた、と言うかドン引いた。


 小さめの山かな?と首を傾げてしまうほど大きく野菜たっぷりのミートローフがテーブルの中心を陣取り、その周りにはこれまた山盛りの唐揚げが並べられている。


 その他にも数十種類の野菜の煮物や数種類のスープ、パスタ、餃子にエビチリにサラダとフルーツ……これは既視感……そう!あれだ、ビュッフェ!このキラキラと豪華さはビュッフェだ。


 ……なんで俺たちは昼間からガッツリ系のビュッフェを囲んでいるんだ。この豪華な食卓には俺とシルマ、シュティレ、シュバルツはもちろんなこと、アストライオスさん、シャルム国王にケイオスさん、シェロンさんも着席している。


 更に驚いたことにフィニィもシュティレとシルマの間に複雑な表情を浮かべてちょこんと大人しく座っている。膝の上にはアンフィニが乗っているが、随分距離が近くなったな……。なお、ミハイルは相変わらず食卓から少し離れた止まり木にいた。


「えへへ~、頑張ったんだよ!せっかくいいことがあったんだから、パーティしなきゃって思って!」


「いいこと……ってなんだ」


 得意げに言うエクラの発言の意図が分からず首を傾げると、満面の笑みで答えが返って来た。


「だって~アンフィニくんの想いがフィニィちゃんに通じただけじゃなくて仲間が増えたんだよ!これはパーティーするしかないっしょ!……悲しいこともあったけど、喜ぶべきとことはしっかり喜ばないと」


「なるほど、お前の意図するとことは分かった。でもパーティーって……昼から?」


「お祝いするのに時間は関係ないじゃん、ネッ★」


 バチコーンと星が出そうな勢いで調子の良いウィンクを向けて来たエクラを見て思った。パーティ好き、と言うより楽しいことが好きなこの感じ……やっぱりエクラってちょっとギャル気質なのかもしれない。


 これだけは言わせてくれ。今そんなことしてる場合か!?


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


聖「次回予告!さあ、楽しい楽しいパーティの始まりだ!フィニィちゃんと交流を深めようね。また美味しいものが食べられそうでよかったねっ」


クロケル「何故だろうか……本格的な冒険が始まってから宴ばっかりな気がする。割とシリアス展開に身を投じている気がするのに、ずっと食べてる気がする。そしてここからまた緩い展開が待ち受けている予感もすげぇする」


聖「次回、レアリティは最高ランクだが素材がないのでレベル1第147話『良いもてなしは時として拷問になりうるのです』パーティーなのにちょっと不穏だね、クロケル」


クロケル「もてなしが、拷問ってナニ?俺の身に何が起こると言うんだ」


聖「それはアレだよ、次回のお楽しみってことで」


クロケル「俺はまた何かに巻き込まれるのか……?」


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