第140話 緊急ミッション!兄弟の絆を修復せよ
この度もお読み頂きまして誠にありがとうございます。
下半期は忙しいから好きじゃありません……あと、年度の始めも忙しいです。大人になったらこんなにも休みが憎くなるとは思いませんでした……。
体は休まりますが仕事は休んでいる間にも仕事は入って来ますからね……やっぱり学生の内に好きな事をしておくのは大事ですね~大人になると自由が利かない場合があるので。ああ、過去の自分に若い内に存分に遊べと言ってやりたいっ。
そんな愚痴はどうでもいいですね、ハイすみません(スライディング土下座)
本日もどうぞよろしくお願いいたします。
「あっ、クロケル~」
謎の動揺を見せて走り去ったシュティレの心情が分からず、呆然と立ち尽くしていると背後から聞き覚えのある声で自分の名前を呼ばれたのでハッとして振り返る。
そこにいたのは自主的に離れて行ったはずのシュバルツとそれを追いかけたシルマだった。シュバルツは満面の笑みを浮かべて千切れんばかりに手を振っている。そして振っていない方の手には今にも零れ落ちそうなほど大量の食糧やお菓子が入った紙袋を持っている……ご満悦の理由はそれか。
その斜め後ろには疲れた様な苦笑いを浮かべるシルマの姿も見え、俺と目が合うと軽く会釈をして微笑んだ。
しかもシュバルツ、なんかモグモグしてるし。食べ歩きを満喫してるじゃん。さっき朝ごはんを食べたばっかりなのにまだ入るのか、どんな胃袋だよ。
すっかり忘れてたけどシュバルツってモンスターだったよな。まさか胃袋がヒトよりも超越してるのか。ヒトよりも食べちゃうかんじなのか。胃袋が大きいか牛みたいに胃袋が2つあるのか。なるほど納得~。
って納得できるか!胃が大きかろうが複数あろうが食い過ぎは良くないぞ。後で言って聞かせないと。などど心の中でツッコミと入れつつ決意をしているとシルマとシュバルツが小走りで俺の元へとやって来た。
「あら、シュティレ様はご一緒ではなかったのですか?」
シルマが不思議そうに周囲をキョロキョロと見回し彼女の姿を探す。
「あー……なんだかよくわからんがイチゴ飴を買ったらそのまま走り去って行った。なんかはぐれたみんなを探してくるとかなんとか」
俺も状況を把握できていないので、見たままの事実をそのまま伝えるとシルマは首を傾げて困惑の表情を見せた。
『ちょっと違うよ。クロケルが飴をプレゼントする名目でシュティレさんのことを口説くからこう言うコトになったんだよ』
「口説いてねぇよ!?」
聖がとんでもないことを言ったので俺は食い気味で全力で否定&訂正をした。俺が!いつ!シュティレを口説いたんだよっ!
「は、はあ。よくわかりませんが、ちらっとお話を聞いている限りなんとく……本当になんとなくですが、シュティレ様のお気持ちがわかる気がします」
「えっ」
何でその場にいなかったシルマがシュティレの気持ちがわかるのに俺がわからないんだ。もしかして俺ってば聖の言う通り鈍感なのか。
『まあ、その内落ち着て戻って来ると思うし、どっちにしろ自由行動をしまくっている連中とは合流しないといけないから、みんなを集めてくれるって言うならこのまま任せておいていいんじゃないかな』
「そぉですよ~、ご心配には及びません。私のレーダーによりますと、はぐれたみなさんは近くにいらっしゃるみたいですし、既に合流できている方もいますのでノープロブレムです」
もだもだとする空気の中、聖が呑気で投げやりな口調で流し、アムールも何も問題はないとゆる~い口口調でいつの間にかレーダーでみんなの行動を調べた結果を報告した。
そして軽く協議を結果、自分たちも動くとさらに仲間同士ではぐれるハメになると言う結論に至り、行き交うヒトの邪魔ならない場所に移動し、この場で大人しく待つことにした。
そう言えばエクラって端末持っていたよな。くそ、こういう時に連絡が取れるように連絡先を聞いておくべきだったか。
そんな後悔を覚えながらもシルマと軽く会話を、そしてシュバルツはお菓子をモグモグと食べながら待っていると、エクラの明るい声が耳に届く。
「あ、いたいた~。クロケルさんたち~お待たせ。みんなと合流できたよ」
『うん、何事もなく合流できてよかったねぇ。それじゃあ、ぐだぐだがてら宮殿に戻る?』
聖が戻って来た面々を出迎えながらも早々に観光の切り上げを提案する。無事合流もでき、途中で台無しにはなったがある程度観光もできて、お土産や旅支度も整えられたと言うことで反対意見もなく宮殿に戻ることになった。
エクラの厚意から始まった観光だったが、色々とぐだぐだになってしまったことが申し訳なくなって謝ってみれば、にっこり笑顔で「みんなでわちゃわちゃするのも観光の醍醐味だから気にしなくていいよっ★」と笑ってくれたのが救いだ。
ってか何で俺が謝ってるのに自由行動をした奴らは素知らぬ顔をしてるんだ。お前らのせいでまともな観光ができなかったと言うのに。
序盤の方はエクラのガイド付きである程度はまともな観光をできていたんだが、その時の記憶が薄れるぐらいこいつらの自由行動が過ぎて疲れた。俺ってばずっと他人に疲れさせられてるじゃん……辛い。
精神的疲労を抱えながらも問題なく宮殿へと戻ることが出来た俺たちは応接間に集まり、今度こそ今後のための会議が始まった。
席に着くなりエクラが喫茶店のごとく全員に好きな飲み物を聞いてくれて、各々が希望を口にした。お茶菓子はシュバルツがみんなにも食べて欲しいと大量のお菓子の紙袋から取り出した揚げ饅頭だ。
食感は表面はさくっと中はふわっとしていて、中にあんこが入っているものとカスタードが入っているもの2種類があっておいしい。シュバルツは食べることが好きなだけあって目が肥えているのかもしれない。もしくは匂いで判断している可能性もあるが、とにかくチョイス能力は確かだ。
それをもさもさと頬張りながら俺たちは今後の行動について意見を出し合う。最初に提案したのはシャルム国王だ。
「とりあえず、意見を出し合ってそれを一致させてから行動するなんて埒が明かないし時間もかかるわ。余程のリスクや無駄がない限り、優先順位は気にせずにやるべきことを1つずつ片付けた方が効率的で確実よ」
シャルム国王の言うことは最もだった。昨日の意見交換の場でも、接し方次第で心を開く可能性があるフィニィを懐柔するのが先か、和解の道が閉ざされているがこの案件の最重要人物であるライアーから話を聞き出すかで揉めたところだ。
みんなの意見を一致させたり、平等に取り入れて行動に移すなんて非効率が過ぎるし、人数が多ければ多いほど意見が割れるに決まっている。ましてやここにいる面々は実力者な上にプライドが高く、個性も強いので自分の意見を簡単に曲げるとは思えない。
昨日も思ったがこう言う場合は多少の妥協も必要なのだ。俺はシャルム国王の意見に心の底から賛成できる。
「俺もシャルム国王に賛成だ。意見をまとめることに気を取られていたら話が進まない。解決策がある問題から順に片付けて行くことを推したい」
今まで何も思いつかなかった自分がここにきて意見を提案できたことに内心で驚きつつも、ドキドキとしながらみんなの反応を待つ。
「俺は話が滞りなく進むなら何でもいいぜ。クロケルは何の問題から片付けたいと思うんだ」
「えっ」
ケイオスさんが提案に対して質問で返した来たので一瞬驚いて思考が止まったが、聞かれなければと考えて更に意見を述べる。
「えっと……俺としてはアンフィニたち兄妹の問題を解決する方を優先した方がいいと思います。アンフィニも早く妹と和解したいだろうし」
ちらりとアンフィニの方に視線をアンフィニの方に移せばソファーの上で大人しくお互いにもたれ合うクマとウサギのぬいぐるみの姿があった。俺の言葉に反応する気配はない。
先だってフィニィに拒絶されて以降すっかり口数も減り、元気もなくなって存在感もなくなってしまった。フィニィの一部であるツバキが何度も慰めの言葉をかけ、寄り添っているがそう簡単には立ち直れない様だ。
「じゃあ、クロケルの意見を採用しましょう。一応、チームのリーダーなんだから従わないとね。みんなも異論はないわね」
シャルム国王が俺の意見をあっさりと受け入れ、反対の意見は出すなと言わんばかりの言い回しで話を締めくくりにかかる。
驚くことに昨日あれだけ意見がまとまらなかったと言うのに、異論は出ずその場の全員が俺の意見を受け入れた。
「うっそだろ。こんなにあっさり話が進むものなのか?昨晩の滞りまくっていた会議は一体何だったんだ」
『うーん、シャルムの強引な話の進め方もあるだろうけど、みんなも余計なことを言ってこれ以上話が滞るのは良くないと思ったんじゃない?』
戸惑う俺に隣で浮いている聖がのんびりと推測した。ちょっと強引に進めてこんなにあっさり決まるなら、昨日の内にゴリ押しで意見しておけばよかった。
何はともあれ、こうして俺たちは長らく亀裂が入り相容れなくなってしまった兄妹の絆を修復すると言うミッションを実行することになったのだった。
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聖「次回予告!アンフィニとフィニィの関係修復ミッションがついに指導する!幾度となくすれ違った兄妹は今度こそ心を通わせることはできるのか。果たして、この問題は前進するのだろか」
クロケル「フィニィはアンフィニを相手にすると感情的になってしまう傾向があるからな。そこは俺たちがフォローしないと堂々巡りだ」
聖「次回、レアリティは最高ランクだが素材がないのでレベル1第141話『何度目の正直!?フィニィとの対話』僕はきょうだいがいないから、この兄妹の感情ってよくわからないなぁ。きっと両親に向けるのとは違う感情があるんだろうね」
クロケル「俺も同じだ。絆もあれば複雑な意地もあるんだろうな。家族間の絆にあまり介入はしたくないが、今回はこんがらがりすぎているから仕方がないが」
聖「ここまで関わってしまったんだから、上手くほどいてあげないとね」
クロケル「ああ、そうだな」