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第138話 いい雰囲気になった時に邪魔が入るのはラブ展開の王道です

この度もお読み頂きまして誠にありがとうございます。


三食ご飯を考えるって大変ですよねぇ……もうずーっとご飯を作っていますが、自分だけなら適当に済ませられるんですが、家族がいるとそうも言っていられません(泣)


栄養のバランスとか、節約を考えて満足感のあるものを考えなければならないのが辛い。まあ、お昼は絶対に麺類って決めてるのでそこは楽させてもらっていますが。いや、麺類でも手間はかかりますけどね。簡単な料理なんてこの世に存在しませんから。


……なんで前書きで愚痴を書いているんだ私は。


本日もどうぞよろしくお願いいたします。

「……」


「……」


 俺が話をしようと提案し、シルマもそれを勢いよく了承したのはいいものの、お互いに話題を見つけることができず気まずい沈黙が続いていた。気まずい、気まず過ぎるこの空気どうしたらいいものか。


 そう言えば俺って自分から女子に話しかけたことってあんまりなかったな。特に用事もなかったし。向こうから話しかけられることはあったし、恥ずかしとか言う感情はなかったし、普通に会話もできてたけど、残念ながら異性が好む会話ができるのかと言われればそうでもない。


 共通の話題から何かひねり出さなければ。趣味、好きな食べ物、後は好きな本とかか?だが、このタイミングで唐突にそんな話を話題にするのもまた微妙な気がする。寧ろ無難過ぎて会話が下手な奴の話題なのではと思ってしまう。


 こう言う時聖がいればまともな話題が出たかもしれない。くそぅ、やっぱりついて来てもらえばよかった。いや、でもここに居たら居たでなんかウザそうな気もしなくないのでやっぱりいなくて正解かもしれない。


「あ、あのっ」


 話題がないことにイライラモヤモヤしているとシルマが挙動不審になりながらも俺の方をぎこちなく見つめて戸惑いながらも口を開いた。


「ん、なんだ?」


 良かった。向こうから話題を振ってくれた……自分が話題を考えなくても良くなったことに安堵して返答してみればシルマはビクッと体を震わせて口ごもった。


 あれ、話題が見つかったから話しかけて来たんじゃないのか?と疑問に思いなら俺はとりあえずシルマの言葉を待つことにした。


 その間、シルマは俺から目を逸らしたと思ったらまた目が合ったり、何か言葉を紡ごうとして口を動かそうとして、やっぱりやめたりを繰り返していた。んん?何か緊張してるっぽい?


 俺相手に何を今更緊張することがあるのかと思い、すっかり挙動不審になっているエクラに声をかけようとした時、ようやくシルマが言葉を紡いだ。


「私、ずっと気になっていたことがあって……。少し前、アエラスでライアーさんの罠にハマった時のことを覚えていらっしゃいますか」


「ああ、もちろんだ。あの時はマジで死を覚悟したから忘れるはずもない」


脈絡のない質問に疑問を覚えたが、せっかく生まれた話題を断ち切るのも気が引けたのであの時の光景と恐怖を蘇らせつつ俺が苦笑いを浮かべて答えると、シルマはまた一瞬遠慮をする素振りを見せてからゆっくりと続ける。


「本当は聞かれたくないとは理解しております、ですが、あの時ライアーさんがおっしゃっていた言葉の真相がどうしても知りたくて……その、クロケル様が異世界の住人と言うのはどう言う意味なのでしょうか」


あー、それか~。今更それについてツッコんじゃう感じかぁ。あの時以降、気にしていた様子はあったけど特に追及はなかったからてっきり流してくれるかと思ったけど、やっぱり気になるよな。


 うん、わかるよ。俺も立場が逆なら多分、同じ行動をとってると思う。複雑な事情を抱えている仲間が実は異世界から来ました!とか言う超展開は凄く気になるし驚くし、場合によっては引く。


「ど、どう言う意味って言われてもなぁ」


 シルマの問いかけに対して何をどう回答すべきかと悩む。個人的な俺の魂が異世界のものだと言うことは話しても構わないと思う。信じてもらえるかはわからんが、シルマは信頼できる仲間だし、その辺りの事情を話すことには別に抵抗はない。


 抵抗はないのだが、問題はどの程度かいつまんでもしくは誤魔化して話すかしなければならない。何故なら俺の転生の経緯を丸のまま話してしまうと聖の存在まで知られてしまうことになるからだ。


 長である聖の存在は流石に本人に相談なしには話せないし、世界の理とやらがなにやら複雑っぽいから言えない。そもそも俺と常に行動をしているタブレットが異世界では親友で神子で、今はこの世界の長とか知ったら卒倒しそうと言うか、信用してもらえなさそうな気がする。


「やはり、言いにくいことを聞いてしまいましたか?申し訳ございません、どうしても言いたくないのであれば別に……」


 何をどう隠して説明すべきかと悩んでいる内に難しい表情になっていたのだろう。シルマが不安げな表情と視線を俺に送って引き下がろうとしたので慌てて返答した。


「いや、違うんだ。言いたくないとかそう言うのじゃなくて。ちょっと色々と複雑だから頭の中で整理してたんだ。少し長くなるけど、聞いてきれるか?」


「は、はい。クロケル様がいいのなら、お話を聞かせてください」


 話すことを了承した俺に少しだけ驚いた様子を見せながらシルマは姿勢を正して俺の言葉を待った。俺も話す覚悟を決めた。


 聖もとい神子や長のことには一切触れず、少し嘘や誤魔化しを混ぜながら俺はここまでの経緯をできるだけ真実を話した。



「……ってことで現在に至る訳だ」


 長い話が終わって俺はふう、と一息つく。多少の嘘はありつつも、多分違和感なく真実を伝えることができたと思う。後はこの話をシルマがどうとらえたか、信じてもらえたかだ。


「そうですか。経緯としては神子様と似たような感じなのですね。でも、クロケル様は神子ではないと」


「ああ、神子ではないことは断言できるぞ。ちょっと事故って1回消滅して、記憶を保持したまま生まれ変わったってところだ」


 本当は微妙に違うのだが、長になった聖に特例で助けてもらったとは言えないからな。事実は隠させてもらったが、シルマは特に妙だとは思わなかった様でうんうんと頷いていた。


「1度命を落として記憶を保って転生なんて、嘘みたいな話だがマジなんだ。信じてもらえるか?」


「はい、もちろんです。世界は色々な次元に繋がっていると聞いたことがありますし、クロケル様の話が全くの嘘だとは思いません」


 シルマはあっさり俺の話を受け入れて笑顔で頷いた。その反応にこちらの方が驚く。いくらこの世界がファンタジーに溢れる世界でも「記憶保持で異世界転生しました~」みたいな話を簡単に受け入れるか?


 正直、こっちは真剣に聞いているのにと非難されるかと思ったが、まさか満面の笑みで全部あっさり受け入れられるとは思わなかった。怒るどころか寧ろ心の奥に抱えていた疑問が解消されたのか、表情も疑問と不安で溢れていた表情が柔らかくなっている。


「えっと、こんなありえない過去を持つ奴にこれからも協力してくれるか?」


 これは俺にとって1番重要事項になる。一度命を失って異世界から来たと主張し、レベル1でシルマの力を借りないと戦えない奴と行動を共にしてくれるのだろうかと不安を覚え、シルマに恐る恐る確認する。


「私はクロケル様がどこから来ても何者でも、お約束はしっかり守ります。だから、クロケル様も私との約束は守って下さいね」


 シルマはウジウジとした不安を吹き飛ばす様に、俺の方をしっかりと見据えて言った。俺とシルマの約束事、レベルカンストの事実を隠したいの代りに俺が強いフリをして、シルマは俺が素材を集めて本当に強くなるまでこっそりと俺を守ってくれると言うものだ。


「ああ、もちろんだ。と言うか、この約束に関しては俺はほぼ何もしなくても良いからなぁ」


 例え敵が目の前に現れても俺は適当に剣を振るうだけだし、シルマは俺の動きやその時の状況に合わせて使う魔法を判断し、なおかつ紙耐久の俺を守りながらこっそり戦わなければならないから負担はより大きい。


「いいえ、クロケル様には私の我がままで前線に立って頂いているのですし、私が支えるのは当然のことです」


 シルマは首を緩やかに振って優し過ぎる言葉と共に俺の言葉を否定した。本当にいい奴だなぁ……こんなに誠実に思われているんだから、俺も早く素材を集めて強くなってシルマの力を借りなくても戦える様にならないとなぁ。


 あれ、もし、もしいつかの未来で俺が本当に力をつけてシルマの力を借りなくても良くなった時、俺たちの関係ってどうなるんだろう。共に旅をするメリットってなくなるんじゃないか?


 ふとそんな考えが思いが頭を過り、胸の間がざわっと言うか、モヤッと言うか、とにかく変な感覚に陥ってつい黙り込んでしまった。急に動きが止まった俺を不審に思ったのかシルマが隣に座ったまま心配そうに俺を覗き込んだ。


「クロケル様?どうかされましたか」


「あ、いや何でもない。そうだ、こうして俺の事情も伝えられたことだし、約束の確認ついでに改めて約束をしようぜ」


 自分の中で一瞬何か妙な感情が浮かび上がった気がしたが、それを誤魔化す様にして俺は小指をシルマに差し出した。


「えっ、えええっ」


 行動が少し唐突過ぎたのかシルマが目を丸くして俺と俺の差し出した小指を交互に見て、何故か狼狽していた。


「あれ、こっちの世界では指切りとかないのか?」


「い、いいえ。指切りはありますよ、ありますけどっ」


 シルマは顔を朱に染めて視線を忙しく八方に泳がせている。なんでこんなに動揺してるんだ。俺、何か変なことでもしたか?


「どうかしたか、シルマ」


 明らかに様子がおかしいシルマに今度は俺の方が心配になって覗き込んでみれば、スザザッと勢いよく土煙を上げて後退されてしまった。え、何で逃げるんだ。まさか、俺に近づかれるのが嫌とか?シルマってパーソナルスペース広かったっけ。


 もしくは単純に俺が嫌とか?うわ、だとしたらショックなんだが。あっ、だから指切りとかも嫌なのか。


「あ、えっと……ごめんシルマ。別に嫌な思いをさせるつもりは一切なかったんだが」


「ち、違います!嫌とかではなくてですね」


 ちょっぴり小心モードな俺の言葉をシルマが食い気味に、そして全力で首を振って否定した。そしてささっと小指をハンカチで拭いた後に、すすっと俺の近くに戻ってきて、おずおずゆっくりと小指を指し出した。


「ゆ、指切りお願いします」


「お願いしますって……変な奴」


 指切りをするのにお願いをされるなんて聞いたことがない。なんだかおもしろくなってつい噴き出してしまったことで恥ずかしくなったのかシルマの顔が更に真っ赤になった。


 俺の指とシルマの白く細い小指が絡み合う。よほど緊張しているのか、何に緊張しているかはさっぱりだがシルマの手は小刻みに震えていた。体も固くなっている様な気がする。


「ゆーびきりげんまん」


「う、嘘ついたら針千本、のーます」


 歌い出した俺に続いてシルマも口遊む。異世界でもこの歌は共通なんだな。びっくりだよ。


「「指切った」」


 最後のフレーズで声が合わさり、同時に指を離す。


「うん、指切りすると約束は守らなきゃって気持ちになるな」


「はい、そうですね。これから先もよろしくお願いします。クロケル様」


 そうして俺たちは見つめ合い笑い合った、その時背後から口笛が聞こえた。


『ヒュ~、夜風は冷たいのに空気は暑いねぇお2人さん』


 のんびりとした空気の中で神経を逆なでる軽口が聞こえた。誰の声かは直ぐにわかったので舌打ちをしながら振り返る。


「聖、てめぇ部屋で待ってるんじゃなかったのか」


 苛立ちを覚えながら振り返った先でふよふよと宙に浮いていたのは案の定、予想通り1体のタブレット、聖だった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


聖「次回予告!夜に女の子と逢瀬……しかも、寄り添って微笑み合うってクロケルってば隅に置けないんだから!オトナの階段も上っちゃう感じ?僕の親友が恋愛街道まっしぐらなんてちょっと寂しいかも~」


クロケル「気持ち悪い言い方するなよ。ただ指切りをしていただけだろ。ってかしつこいぞ。俺とシルマにの間に恋愛感情はないぞ」


聖「次回、レアリティは最高ランクだが素材がないのでレベル1第139話『面倒事が続いたのでちょっと一息いれましょう~幕間中に乱立~』いや、フツ~の男女は夜中に微笑み合って指切りはしないし。後ろから見てたけど、大分良い雰囲気だったよ?うぬぼれていいレベルだよ?」


クロケル「気持ちも確認してないのに恋愛方向に持って行くのはシルマにも失礼だろ。それに俺たちの仮に間に特別な絆があるとしたら、それは友愛ってやつだろ」


聖「うわぁ、クロケルってヤバいね。助言しておくけど、誠実さって場合によっては残酷なんだよ。もうちょっとこう……ときめきを覚えよう?乙ゲーとかしてたよね、恋愛のシュチエーションとか何となくわかるでしょ?」


クロケル「ゲームと現実は違うだろ。ゲームはあくまでファンタジーだよ。お前割り切るタイプだったろ」


聖「うーん、僕が言いたいのはそう言うことじゃないんだなぁ。雰囲気を察しろと言いたいんだけど」


クロケル「はあ?」


聖「ダメだ……自分の親友が天然タラシとか。最初は面白いと思ってたけど、シルマちゃんが可哀そうになってきた……」

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