第136話 今後の行動を考えたいけど良い案はありますか
この度もお読み頂きまして誠にありがとうございます。
今更ながらもう11月……年賀状の準備をしないとですね。私は毎年枚数も少ないですし、デジタルで描くので推しキャラを手書きして送りつけているのですが現在多忙で手書きができるか怪しくなって参りました……。
後、推しの衣装とか髪型が異常なまでに難しくて泣きそうです。もうあまり時間がないので練習もできねぇですよどうしましょう(どうでもええわい)
本日もどうぞよろしくお願いいたします。
『おお、流石アストライオス。切り替えが早いねぇ~、可愛いお孫さんの料理をもう少し味わうかと思ったけど、もう今後についての会議をするの?もうちょっとみんなを休ませてあげてもいいんじゃない?』
敵ながら重たい事情を抱える彼らの話をわずかながら聞いて気分はブルーだった心が、美味しい食事で癒された直後に急ハンドルでシリアス胃痛モードに話を戻そうとしているアストライオスさんに聖がケラケラと笑いながら言った。
アストライオスさんの発言を楽しんでいそうな聖の態度は若干イラッとするが、発言自体には激しく同意である。胃はある程度休まったから精神的に休ませて欲しい、切実に。
「ワシは毎日可愛い孫の手料理を食べておるからのぅ。胃も心もいつだって幸せになれるのじゃ。故に、面倒事を片付ける心の余裕は十分にある」
ドヤ顔で孫ノロケをするアストライオスさんにほんのわずかな殺意が沸き上がったが、仮に歯向かったとしても口でも拳でも100パーセント勝てないことは分かっているので頑張って怒りの感情を押し込める。余計なストレスが加わって胃が締まるのが分かる。
辛い、心身共に余裕がない人間ってあまりに辛い。ああ、目からしょっぱい汁が流れて来た。そしてお馴染みの眩暈まで……。
「今日は中々に密度のある日じゃったからな。戦いや重い状況に慣れていない者にとっては疲労は大きいじゃろうし、我としても、心と体を休めることは大事だとは思うが、今回の様な面倒且つややこしいことは早めのに対策をするに越したことはないからのう。話し合いはすべきじゃろう」
いつの間にかデザートの皿が下げられ、エクラによってこれまた手際よく並べられた食後のコーヒーを優雅に口にしながらシェロンさんが涼しい顔で話し合いを進めることに賛同した。
「私もこのまま話し合いを進めること自体は反対しないけど、でもやっぱり疲れているヒトもいるんだし、今日は軽い意見交換だけでもいいんじゃない?しんどい時はあんまりいい意見もでないだろうしさ」
全員分のコーヒーを並べ終え、自分の席に腰かけながらエクラが優しくも気遣い溢れる有難い提案をしてくれた。俺は思う、できればこの意見を採用してくれと。
あ、非常にどうでもいい話ではあるが、シュバルツは苦いコーヒーが飲めなかったのでエクラがシロップとミルクたっぷりのカフェオレを入れてくれた。それは口に合った様で美味しそうにこくこくと飲んでいた。
何度も言うが今日は知り得た情報量が多いのと重すぎるので主に心が疲労困憊である。確かに早めの準備は重要だとは思うが、特別急ぐことではないとのことだし今日は軽い意見交換ぐらいで済ませてくれると非常に有難い。と言うかそうして下さい、お願いします。
「うむぅ、手っ取り早く色々と対策を練りたかったのじゃが、可愛い孫の意見とあらば聞かぬわけにはいかんのぅ。よし、その提案を受け入れよう。ワシの孫は優しいのう」
アストライオスさんは話を迅速に進められないことを残念そうにしつつも、デレデレしながら孫であるエクラの意見を即決で採用した。
自分の思惑通りに話が進み、やった!と思いながらも孫を相手にすると急速に意志が弱くなって判断力が低下するアストライオスさんの今後に少しの心配と一抹の不安を覚えなくもない。
「お前の変わり身の早さには正直ドン引きじゃが、我は少しでも話が進めば問題ないからの。ど~でもいいわ。好きにせい」
突然意見と態度を変えたアストライオスさんに若干呆れた様子でシェロンさんはまたコーヒーを啜った。そのカップのコーヒーがなくなるタイミングで、話に参加していたエクラがサッと立ち上がった。
「コーヒーのお代わりはど~ですかっ」
「ああ。悪いのう、せっかくだし頂こう。お主はアストライオスと違って気が利くなぁ」
笑顔でドリップポッドを差し出すエクラにシェロンさんも笑顔でコーヒーカップを差し出した。凄い、話をしながら相手のカップの中身まで把握するなんてヤバい。エクラって見た目はパリピで自由人なのに気遣いの鬼か。
いや、別にパリピが気遣いに欠けている存在とか言いたいのではないぞ。もっと自由度が高い子なのかなぁって思ってたら意外と周りを見て行動しているからギャップに驚いているだけだ。
「ワシはビジネス以外で気を遣わない主義じゃならな。そんなことはどうでもいい、早速意見を出し合おうではないか。ここまでの状況を見て、何か意見がある者はおるかの」
さらっと吐かれたシェロンさんの嫌味を涼しい表情で流し、アストライオスさんは話を進めるが、瞬間、水を打ったかのようにその場が静まり返る。
難しい状況の中、誰もが今後のことを考え、発言に慎重になっているのか中々意見が出ない、誰も発言しない。そんな気まずい空気が数秒流れ、一番最初に発言をしたのは意外にもミハイルだった。
「せっかく貴重な人材を捕虜にできたんだ。時間をかけてゆっくりと話を聞き出して、あわよくば懐柔するのが一番なんじゃないのか」
珍しい。基本は俺たちの行動にはアドバイスも手助けも一切発言しないスタイルなのに、今回の問題には最初から積極的だ。ラピュセルさん効果か、それともやはり同一の存在であるライアーに思うところがあるのかは分からないが、突然の前のめりな姿勢には少し驚きを覚えてしまう。
「ふむ、一発目の意見ともありスタンダードな意見じゃの」
アストライオスさんが賛成とも反対とも取れる微妙な反応をした。それを見て元々気の短いミハイルが瞬時にカチンとした表情になって刺々しい言葉で返す。
「なんだ。そんな回りくどい反応をするぐらいだったら俺の意見は却下だとハッキリ言えばいいじゃないか。そう言う反応を返される方がムカつくんだが」
「いや~、却下とまでは言い切らんが懐柔と言う表現が引っかかってのう。確かに今のところは時間もあるし、少しずつ話を聞き出しつつ心を許してもらう状況に持って行くと言うのもアリだとは思うが……」
顎髭をモジモジと触りながらアストライオスさんが言葉を濁す。珍しい、愛しい孫であるエクラ以外の意見なのに却下と言い切らないなんてあるんだな。ミハイルの意見は悪くはないと思っているのは事実だと思われる。
「まあ、フィニィならこちらの行動や発言に気をつけさえすれば懐柔はできるやもしれぬが、ライアーの方は中々厳しいと我は思うぞ。あやつに限ってはどう頑張っても一生懐柔は無理そうな気配がするぞ。その辺り、未来視ではどうなっておる」
煮え切らないアストライオスさんの気持ちを察してシェロンさんがフォローを入れつつ、質問を投げかけた。そうだよ、こっちには未来視って言うチート能力を持っている人間がいるんだった。俺たちの前では未来視の能力をあんまり見せないからすっかり忘れてたぜ。
歩く攻略本とも言える能力を持つアストライオスさんこそ、未来を元に良い意見が出る、と言うか先が分かっているんだったら最善策も分かっているだろうに……何故渋る必要があるのか。正直、未来が視えているのなら早よ言えと言う感情が俺の中の大半を占めている。
「まあ、フィニィの方は何とかなる。これは断言する」
「そう、なのか?」
フィニィと距離を置いて大分経つが、敵対しているとは言え実の妹をパニック状態に陥らせた上に拒絶されてしまった事実から立ち直れずに意気消沈していたアンフィニが、前向きなアストライオスさんの言葉に弱々しく反応した。
「そうだとも。兄であるお前の行動が未来を変える可能性はあるが、己の行動を見直してしっかりと妹と向き合うことを心がけることだな」
「……少しでもフィニィと和解できる可能性があるなら、希望を持って自分自身を見直したい」
アストライオスさんの言葉に偽りがないことを信じたアンフィニは暗く沈んでいた表情をキッと引き締めて、瞳に生気とやる気を取り戻して頷いた。
「ああ、お前たち兄弟のことに関してはワシ、と言うよりここにいる全員が必要以上に介入することではないからな。こちらの監視下にある上に力は押さえてある故、ワシの拘束魔術が解かれない限りは自滅することもない。時間とをかけてしっかりと向き合え」
アンフィニに対し微笑んで優しい励ましの言葉をかけた後、アストライオスさんは唐突に神妙な面持ちになり続けてい言った。
「問題はライアーの方じゃ」
『あ~、やっぱり一筋縄にはいかない?』
聖が苦笑いで聞くとアストライオスさんは首をしっかりと縦に首を振った。できれば横が良かったけど、しっかりと確実に縦に振られた。何となくわかっていたことではあるが、正直チクショウとしか言えない。
「色々な行動、発言、接し方、全てのパターンの未来を視たがライアーは決してこちらに心を許すことはない。ワシが視る限り、永遠にな」
「さっきミハイルくんの言葉に微妙な反応をしたのは懐柔はフィニィさんには有効だけど、ライアーには無意味だから曖昧な返事だったんだね」
渋い表情をするアストライオスさんの言葉にエクラがうんうんと頷いて言った。ああ、なるほどそう言うことか。否定も肯定もできる提案だった故の反応だったわけね。しかもライアーに関しては永遠に懐柔できないことが確定しているのならそりゃ反応も微妙になるわ。
「ではまずはフィニィさんの問題から片付ける方が良いと言うことになりますね。和解できる可能性があるみたいですし」
「いや、和解の可能性があるからこそ、あの少女の件は一旦置いておいてネトワイエ教団のトップであるライアーから話を聞き出す方を考えるのが先ではないか」
シルマの提案をシュティレが否定し、また会話が止まる。おっとこれは話が進まない気配がして来たぞ。非常に不味い流れだ。
「俺は妹と早急に和解したい。フィニィが心を開いてくれれば、ライアーのことを色々と聞けるかもしれないし、先にフィニィとの話し合いをすることを提案する」
「私はお兄様の意見に従います」
「わたしもフィニィさんとの話し合いを先に片付けた方が良いと思うなぁ。可能性が高い方から片付けた方が精神衛生上いいでしょ」
アンフィニ、ツバキ、エクラがシルマの意見を援護した。それに対してすぐさま否定に近い反応があった。
「我はライアーの問題を片付けることが先だと思うぞ。あの少女よりもライアーの方が有益な情報を持っているし、この案件の発端で確実に止めるべき相手じゃからな。力を抑制しているとは言え、下手に放置して何か対策をされてしまうと困る」
「ワシもあの男から話を聞くのが先だとは思うぞ。懐柔が無理なら拷問でもなんでもして情報を聞き出せばいいしな。じゃが、エクラの意見も悪くないと思うぞ」
「俺もライアーの問題を片づけたい。あいつが近くにいる限り、俺の存在が常に危険に晒されているわけだからな。とっとと解決して早く距離を置きたい。そしてラピュセルに会いたい」
シェロンさんがしっかりとした理由付きでシュティレ側に付き、アストライオスさんは孫の意見に自分の意志をぐらつかせ、ミハイルは自らの消滅回避のためライアーと離れたい一心で本心を口にした。
もうダメだ。意見が別れたら話が長引くことが確定した。自分も意見するべきだとは思うのだが、いかんせんいい案が出ないので何も発言できず、対立する意見で言葉のキャッチボールをする仲間たちを言葉が飛び交う度に目で追うことしかできなかった。
シュバルツなんて既にお眠で船を漕いでいる。座ったまま寝ると非常に危険なため、アムールに頼んで突然意識を飛ばさない様に面倒を見てもらうことにした。
「話、長いな」
『長いねぇ、まとまらないねぇ』
それ以降も意見が出ても、あれでもないこれでもないとなり、中々意見も方針もまとまることはなかった。何も思いつかない俺は一瞬も会話に加わることが出来ず、聖と共にぼんやりとディベートをする仲間たちを眺めていた。
今日は意見交換程度じゃなかったのか。結局ガッツリ会議になってるじゃねぇかよ。捕らえた相手が2人共強敵で扱いが難しいと言うのもあると思うが、こう言うのって意見の穴を見つければ見つけるほどまとまらいんじゃないか?
多少納得できない部分があっても妥協するのも1つの手ではないのか。まったく進まない話合いに疲労もあってか無意味さと苛立ちを感じ、勇気を持って妥協すべきだと意見しようと試みたその時だった。
バンッと扉が勢いよく開かれる。敵襲かと思うレベルで唐突にもの凄い勢いと音を立てて開いた扉をアストライオスさんとシェロンさん、聖を除く全員が凝視する。
「おー、みんなそろってんじゃん。結構ナイスなタイミングで到着できたんじゃないか?」
「扉を開く前にノックは常識よ。それに扉は静かに開け閉めするものだから。アンタがガサツなのは知っているけど、せめて人様の家での行動には注意して欲しいものね」
能天気な声と呆れた声と共に並んで現れたのは戦闘置いては頼もしい存在、ドヤ顔で仁王立ちするケイオスさんと彼の勢いのある行動に頭痛めながらも優雅にモデル立ちで佇むシャルム国王だった。
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聖「次回予告!中々意見がまとま止まらない中、颯爽と助っ人が到着したよ。人数が増えたことによってより良い意見がでるのか、それともヒトが増えたせいで余計に話にまとまりがなくなってしまうのか。期待と不安が入り混じる」
クロケル「なんとなくだが話がまとまらない気がするなぁ。でも懐かしい……。生前でもこんなことあったのを思い出したよ。文化祭とかの出し物とか委員会の役員を決める時に誰も発言しなかったり、意見が出ても同意を得ることが出来ずにホームルームが終わらないアレ」
聖「次回、レアリティは最高ランクだが素材がないのでレベル1第137話『眠れない夜は夜風にあたりましょう』ああ~!懐かしいねぇ、意見を出さないと帰れませんよ的なやつ」
クロケル「ぶっちゃけ学校行事で一番辛い瞬間だよな。ビミョーだと思った意見でも行事が始まったら楽しいんだけど」
聖「ああ言う会議の時ってみ~んな他力本願になるのが面白いよね。意見を考える気がない奴の方が多いもん」
クロケル「まあ、俺も意見と考えるの面倒なタイプだからヒトのことをとやかく言えんがな」
聖「ね、さっきアストライオスに意見を求められてもなにも発言できなかったもんね」
クロケル「だから、良い笑顔で俺をディスるな。今回はちゃんと考えたわ!考えた上で良いアイディアがでなかったんだよ」
聖「それはそれで情けないよね」
クロケル「情けないって言うなっ」