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第131話 ラスボスと至近距離で対話とか精神が擦り減るに決まっている

この度もお読み頂きまして誠にありがとうございます。


家の近所に可愛い隠れ家的カフェがあって、最近通い始めました。お菓子もコーヒーもおいしいお店で、幸せ気分です。お値段はそれなりですけどまあ、個人経営のお店ですし、そこは仕方がないですよね。値段以上の価値はありますし。


ただマスコミを専攻していた時の癖で、色々と聞いてしまうのは私の悪いところですね……直さないととは思うのですがこの口がっ(震)

本日もどうぞよろしくお願いいたします。



 捕虜になっているのにも関わらず、ライアーはいつもの通り胡散臭い笑顔を浮かべて俺たちを迎え入れた。残念ながらその表情から彼の感情を窺い知ることはできない。


 ラスボスを前に緊張して中々言葉が出て来ない俺たちに代わってアストライオスさんが最初に口を開く。


「意外なのはこちらも同じじゃ。予想していたよりも目覚めるのが早いのぅ」


「嫌ですねぇ、回復魔術を施したのはそちらでしょう。瀕死の敵に情けをかけるなんて()()()()()は懐が深いですねぇ」


 ライアーは笑顔を保ったまま嫌味っぽい言葉を返して来た。この余裕……本当に回復しているみたいだな。


「ってかこの場合回復していいのか?ある程度弱ってくれていた方がこっちの都合がいいんじゃないのか」


『あはは、君も大分戦場脳になって来たねぇ』 


 小声ではあったが思わず漏れた本音に聖が笑って指摘した来た。うわ、マジだ。凄く自然に相手が弱っていた方が話を聞きやすいのにって思考を巡らせてた。やだ、怖い。つい数分前まで仲間の戦場脳に怯えていたのに自分も染まりつつある。


 自分の中の小さな変化に怯えているとそんな俺の反応が面白いのか、聖はクスクスと笑いながら俺の言葉に応えた。


『でもまあ多少の回復は気にしなくても大丈夫だよ。性質上目には見えていないけど、シェロンのほぼ呪い見たいな拘束魔術も施してあるし、抵抗はほぼできないよ』


「はい、ご安心下さい、ご主人様。シェロンさんの拘束魔術は今も有効です。それにアストライアさんが全ての武器を取り上げている様ですので現状、危険はないですよ」


 聖に続いてフィニィが俺を安心させるようにライアーの現状を伝えてくれた。この2人が大丈夫と言うなら大きな問題はないんだろうが、ちょっとだけ不安を感じるのは恐らく俺がビビりなせいである。いや、それについては本当に申し訳ないッス。


「ははは、嫌味を言えるほど回復しているのなら問題あるまい。その勢いでお前の知っていることを全て話してもらおうか」


 アストライオスさんはライアーの言葉を豪快に笑い飛ばし、さっとく本題に入る。もっとじわじわと攻めていくのかと思いきや直球で言葉をぶつけたのにはちょっと驚いた。


「唐突に話せと言われましても……私にはあなた方の知りたいことが良く分かりませんので困ります」


 直球の質問をライアーは飄々とした態度とわざとらしい口調で返した。あの質問に対してその理由は絶対嘘じゃん。話す気がありませんって遠回しに行ってるじゃん、こいつ。


「わざとらしい態度を取り負って。捕虜になっておるのじゃから、ワシらが聞かんとすることは大方予想がつくじゃろうて」


「すみません、よくわかりません」


 若干圧をかけながらアストライオスさんが追及をしたが、ライアーはどこ吹く風。しかも声がよく聞き取れなかった時のAIみたいなセリフでとぼけた。何でいちいち腹の立つ返しをするんだろう。嫌味を言わないと命を落とす呪いにでもかかっているのだろうか。


『分からないならもっとわかりやすく直球で聞いてあげるよ。君が何者なのかということ、もしくはネトワイエ教団の情報を全て。どっちでもいいからとっとと吐いて。いや、両方吐け』


 のらりくらりとした態度を続けるライアーに流石に腹がたったのだろう。聖が早口かつ苛立たし気に子供でも若ある様に直球ど真ん中の表現で言葉をぶつける。相当イライラしているのか口調も荒い。


「はあ、全くしつこいですねぇ。話したくないからとぼけておるのにその意志を汲めないなんてどれだけ鈍感なのでしょう。全く失礼な方たちですね」


 やっぱりわざとだったんかい!いやわかっていたけども。しかし捕虜になっても態度を変えないなんて凄い根性だな。それとも何をされても口を割らないと言う覚悟の表れなのだろうか。何にせよ、やはり簡単には話を聞き出せない様だ。


「うーん、どうする?おじいちゃん。ご飯攻撃する?胃袋わし掴んじゃう?今からパパッと簡単なモノを作って来ようか」


 エクラが困り顔で首を傾げ、アストライオスさんに申し出るが返って来たのは否定の言葉だった。


「いや、食事を提供することには異論はないが、情報を聞き出すための手段にするのはこやつには無意味じゃろう。仮に抵抗せずに食事を口にしたとしても、それはそれこれはこれと割り切って情報の提供は断りそうじゃしな」


「ふふ、良くお分かりで。私は施しを受けたとしても敵にそれを返すつもりは一切ございませんので悪しからず」


 渋い表情でやれやれと首を振ったアストライオスさんの言葉をライアー本人が満面の笑みで肯定した。自分で認めちゃったよこのヒト……しかも清々しいほど堂々と。


「ナニコレ、開き直り?」


 一切悪びれることもなく、そして捕虜になっていることへの危機感すら覚えている様子もないライアーにドン引きを通り越して尊敬の念すら芽生え始めて来た。俺もこれぐらいの図太さが欲しい。


『いや、ライアーは実力があるが故の図太さなんだろうけど、君の場合は弱くて図太くなっちゃうからただの小物になっちゃうよ?』


「ヒトの心を読んだ挙句にい弱いだのこものだのぬかすなこのヤロー」


 いちいち俺をディスっては心を抉り散らかしてくる聖に果たしてこいつは本当に親友なのかと疑問に思考を持って行かれていると、中々こちらの話に応じようとはしないライアーの態度に見兼ねたがシェロンさんが口を開いた。


「言っておくが、同じく捕虜となっておるフィニィからある程度のことは来ておるのじゃぞ。お主、前長の父親らしいではないか」


 その切り札とも言える言葉に俺の聖に向いていた意識がライアーの方へと戻る。しかし、失礼な親友へ怒りが消えたわけではないので後できっちり落とし前をつけようと思った。タブレットの画面に指紋つけまくって視界不良にしてやる。


 などと言う俺の個人的で心の狭い俺の小さな恨みなどどうでもいい。今は話に集中しよう。そう言い聞かせてライアーの返答を待った。


 流石にその真実には触れて欲しくなかったのか、ライアーが動揺したことがわかった。と言っても肩がピクリと動いたのと一瞬だけ表情が強張った程度で、直ぐにいつもの胡散臭く穏やかな態度に戻ってしまったが。


「そうですか。フィニィから聞いたのなら私が隠す必要はございませんね。しかし、それが何だと言うのです?私があなた方と世界を憎む理由が解明されたでなのでは。こちらとしては漏洩して困る情報ではございません」


 わずかな動揺は見られたものの、その程度の情報を知られたところで痛くもかゆくもないと言う風な態度のライアーに聖が毅然とした態度で追及した。


『そう、前長との親子関係が君の中で情報漏洩扱いにならないのであれば、君の過去を聞くことも構わないよね?世間話程度に話してよ』


「はい?」


 まさかそんな風に追及されるとは思っていなかったのか、ライアーは一瞬だけ目を見開いた。笑顔は消え、丁寧な口調ではあるが若干ドスが効いた声で怪訝な表情で聖を睨みつけた。


『何、やっぱり君でも過去は知られたくない?あはは、あれだけ強いのに弱点が過去とか笑える』


 聖は聞いているこちらが止めたくなるほど棘のある言葉を容赦なく投げかける。多分、わざと煽る様な言い方をしているのだろうが、煽り方が完全に悪人のソレである。


 こいつ本当に世界を救った神子様なのか?本当にこの世界の現長なのか?性格が悪すぎるだろ。ドライなところがあるのは知っているがそんな一面があるなんて夢にも思わなかったわ。怖い、この世界に来てから親友が怖い。


「いいえ、くだらないことを聞くのだなと呆れているだけです。私の過去なんてあなた方にとっては無意味なものでしょう」


 戦う前はアストライオスさんの軽い煽りに対しても笑顔でブチギレてナイフダーツを繰り出す瞬間湯沸かし器みたいな性格をしていたライアーだが、魔術で力を抑え込まれているのと武器を取り上がられているからか、あの時の様な反撃はなかった。


 いや、反撃されても困るけれども。だが、聖の分かりやすい煽りに苛立っていることには間違いないのは分かる。


 だってめっちゃ笑顔だけどシーツがぐちゃぐちゃに皺が寄るほど力強く握りしめてるし。力を抑制されたなかったら聖は確実にナイフダーツの的になっているだろう。


『無意味じゃないよ。敵の過去を知れば行動原理を理解することができる。そうすれば君に共感して、話し合って君の考え方をことができるかもしれないだろう?僕たちにとっては大きな収穫だ』


 えっ何、急に正義っぽいこと言うじゃん。数秒前はあんなに悪人っぽい言葉を並べて圧かけてた奴だとは思えない平和ワード言ってて逆に怖いし引く。と言うかあれだけ煽っておいて解り合う気があったのか。


「解り合う、ですか。とんだ偽善ですね。ただ話しただけで私の苦しみが理解できるとでも?しかも敵同士なのに?つまらない冗談ですね」


 ライアーが張りつた笑顔と丁寧な口調で言葉で歩み寄ろうとした聖を突き放す。だが、正直なところライアーの気持ちも分からなくもない。


 自分が抱える悩みや闇を他人に、ましてやつい先ほどまで戦っていた敵に“解り合おう”と言われても信用できないどころか苛立ちしか覚えないだろう。聖には悪いがさっきの言葉は俺でさえきれいごとだと思ってしまう。


 偽善と言われた聖だったが、特に取り繕う様子もなくその言葉を素直の受け止め、毅然として自らの言葉の真意を語る。


『別に偽善って思われてもかまわないよ。理解したところで100パーセント和解できるわけでもないし、戦いが回避できるとも限らないこともわかってる。でも、もしまた戦うことに相手の信念が分かっていれば君の気持ちをリスペクトした上で倒せるし、後味が悪くなくなるもん』


 理解した上で戦って止める。そう言い切った聖にライアーはもちろんのこと、その場の全員が面を食らっていた。あまり動揺を見せないアストライオスさんとシェロンさんですら、めずらしく目を見開いて固まっている。


 全員が固まって場が静まり返る中、一番最初に口を開いたのはいや正確に言えば噴き出したのはシェロンさんだった。


「あははははっ、話を聞いたうえで正義が違えばぶちのめすとは。なんともお前らしい考えじゃのぅ」


 俺的にはどこがおもしろいのか全然理解できなかったし、相手の価値観(正義)が分かった上で戦って勝つ意思を示すとか相手の思いを背負い込む覚悟が決まり過ぎてて寧ろ引くんですけど。


 俺の親友のメンタルヤバすぎない?流石は世界を救った神子で現世界の長だ。主人公属性を持った奴の根性と思考力と価値観全てが半端ねぇ。俺には一生身につかない精神だよ。


 と言うか強メンタル過ぎて逆に心配だわ。前にも思ったが、お前異世界に神子として召喚されてどんな旅と経験をして来たんだ。やっぱり一度話を聞かねば。


「うむ。シェロンの言う通りアキラらしい考えだのう。どうじゃ、ライアーよ。こやつは決して綺麗事を言っているわけではないぞ。覚悟と責任は負うつもりの様じゃ。この面白さに免じて、少しぐらい話をしてはくれぬか」


 アストライオスさんがクククと笑いなら呼びかけると、ライアーは宙に浮かぶ聖とその周りに佇む俺たちを順に眺めてた後に盛大な溜息をついた。


「……はあ。覚悟と責任を負うですか……うざったいですねぇ、その正義の押し付け。でもまあ、いいでしょう。確かに意外性のある言葉でしたし、どうせ将来的には命を頂く相手です。そこまで言うのであれば話して差し上げまあすよ」


 あー、どうせ()るから過去を知られても影響はないってことかぁ。ちょっと怖いなぁー。だが、一応話をする気にはなった様なので第一関門突破といったところか。


「ですが、私が話したいと思う範囲だけですし、ネトワイエ教団のことについては一切話すつもりはございませんのであしからず」


 似た様な会話をフィニィともした気がするがこれは仕方がない。いくら捕虜になって逃げられない状況だからとは言え簡単に情報を提供する奴なんて相違ないよな。


 特に幹部級の人間やライアーやフィニィの様に譲れない信念があって元々死を覚悟して戦っている人間は絶対に口を割らなさそうだ。なんなら拷問を受けても乗り切れるようにある程度の訓練をしてそうな気がする。あんまり考えたくないけど。


「ああ、構わんぞ。お前は既にワシらの手の中。時間をかけて情報を引き出すつもり故、今は話したいことだけを話すがよい」


 アストライオスさんが嫌味な言い回しの言葉に対し、それをしっかりと受け止めた上で平然として快い返事をするとライアーはその態度が気に食わなかったのか顔を逸らして小さく舌打ちをした後、俺たちに視線を戻してこちらを軽く睨みつけながら静かに言った。


「では、話して差し上げましょう。私と娘の過去を。そして、あなたがたが犯した罪がいかに重いかを知るがいい」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


聖「次回予告!過去を話すことを了承したライアー。隠され続けた彼の背景がついにベールを脱ぐ……ののか?彼から語られる言葉は嘘か誠か。それも見極めないといけないね」


クロケル「ああ、気を遣わないといけない部分が多そうだな……ああ。話を聞きく前からなんだか疲れてきた」


聖「次回、レアリティは最高ランクだが素材がないのでレベル1第132『語られる過去』もう、君は毎回毎回後ろ向きだなぁ。そう言うとこ直した方がいいよ?ストレスの軽減にもなるだろうし」


クロケル「残念ながら性格はそう簡単に治らないんだよ。何かをする度に腹をくくらなきゃならない俺の気持ちも理解してくれ」


聖「えー、基本何でも割り切っちゃう僕には理解できない思考だなぁ。」


クロケル「敵と解り合おうとするのに親友の俺とは解り合う気はないんかい!!」

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