第123話 強敵と戦う時はやっぱり窮地に陥っちゃうよね
この度もお読み頂きまして誠にありがとうございます。
長い……自分でもどんだけ同じ場面を書き続けているんだと思います。ですが、話が進みません(泣)いや作者的には頑張って時間を進めいるつもりなのですが。
もっとテンポ良く書き進めたい。そして各キャラの影が薄くならない様にしたい……。まだまだ道のりは遠いですが、頑張ります。
本日もどうぞよろしくお願いいたします。
「うおーーっ」
戦い方など皆目見当もつかない俺は気合いだけで全力でライアーの元まで絶叫しながら走りぬける。ライアーは何故か攻撃を仕掛けてくることはなく、微笑んだまま俺の方に体を向け、ほぼウェルカム状態でその場に佇んでいた。
「でりゃっ」
その様子に妙な不気味さを感じつつも俺は間合いを詰めた後、闇雲に思いっきり剣を振り上げ、そして下ろした。剣に慣れていない俺の唯一出来る剣技、大根斬りである。
「前回戦った時も思いましたが、あなたは中々大胆な攻撃をされますね。力強さもあってある意味では型にはまっていないと言えるでしょう。ですが、少し素人っぽいかもしれませんねっ」
「ご主人様っ、脇腹注意ですっ」
ライアーは語調を強めて俺の攻撃を右ステップで躱しながら、振りかぶっているせいでがら空きになっている俺の脇腹に前がけてナイフを素早く投げつけて来た。
アムールが早めに反応して注意を促してくれたが、残念なことにそれは無意で、kkllk俺はナイフを目視することしかできなかった。
「げっ」
ヤバい、刺さるっ。迫って来るナイフがスローモーションに見えるのに躱せないと言う謎現象。いや、刀を振り下ろしている最中なので躱したくても躱せないと言うのが現状なのだが。
戦闘に参加して早々に退場とか目も当てられん。曲芸躱しを習得していないモブの俺では回避は絶望的だ。もうダメかもしれない、俺はナイフダーツの的になるんだ。個の数秒の間にいくつも絶望の言葉を紡ぎ、目を閉じたその時だった。
俺の影がぶわりと蠢く気配がした。そして数秒後、何の痛みもないことに気がつき、違和感を覚えた影を見下ろして俺は驚いた。
影が……俺の影がぶよぶよのスライムみたいな質感になって具現化し、その場でくねくねと蠢いていた。自分の腹部を見ればそのぶよぶよが巻き付いてナイフを難なく吸収していた。
「えっ、ナニコレ」
気持ち悪っと一瞬思ったが影とキーワードでふとある答えに行き着く。シュバルツの魔術かっ!
閃いた瞬間、ライアーと言う目標を失った俺の剣が勢いに任せたまま地面を叩く。明らかに鉄が痛むゴキンと言う鈍い音がしたが、剣は折れてはいない様だ……もしかしたら刃こぼれはしてるかもだが。
ライアーの攻撃を凌ぎ、無事着地に成功した俺はさっとシュバルツの方を振り向くと彼はシルマの隣で両手を振って魔術の成功をアピールした。
その様子があまりにも微笑ましかったものだから、目の前に敵がいると言うのについ手を振り替えしてしまった。
「おや、防御されてしまいましたか。やはり仲間が多いとサポート面で有利を取られてしまいますか。いやはや何とも戦い辛い」
肩を竦め、両手を肘まで上げた状態でふぅと溜息をつきながらライアーは左右に頭を振った。
うむむ……口では戦い辛いと言っているが全然困っている様に見えないのはなんでだ。くそぅ、毎回毎回余裕をぶっこいた態度がむかつくっ!何とかして鼻をへし折ってやりたいっ……けど今のところそれも無理そうなのがまた腹立つ。
「そうだな、俺にはお前と違って信頼できる仲間はいるんだ。例え実力に差があったとしても仲間がいるから怖くねぇっ」
嫌味には嫌味で応戦するのが一番だ。腹が立ったからと言って無暗斬りかかって返り討ちに遭うよりかはマシな行動だろう。ふふ、言ってやったぜ!
……などと思いつつ、あんまり挑発しすぎて後が怖いから強がりと嫌味のギリギリのラインの言葉をチョイスしている俺なのであった。
だってさ、ライアーってさっきアストライオスさんからの軽めの挑発に即反応したじゃん。怒りの導線が超短いのを目の当たりにしてしまったので行き過ぎた挑発をして仕返しをされてしまった際に自分で対処できないと言う意味でも気をつけたいのだ。
怖がりじゃあないぞ。慎重になっていると言って欲しい。強敵相手にお借りと言う余計なガソリンを注ぐわけにはいかないのだ。
「仲間、そうですねぇ。信頼して背中を預けることが出来れば戦いを有利に運ぶことが出来るかもしれませんね。そう言った面では仲間は必要かもしれません」
幸いなことに俺の嫌味はそれほどライアーの怒りには触れなかったらしく、のんびりとした口調で自らの落ち度を認める様な発言をした。
「なんだ、妙に素直だな。実力者である貴様でも流石にこの人数を同時に相手をするのは骨が折れる、と言うことか」
シュティレがエセお困りムーブをするライアーにシュティレが更に嫌味を重ねるが、ライアーは眉を下げていた表情からは一転、ケロッとした爽やかな笑顔で清々しく否定の言葉を口にした。
「いえ、私は腕には自身がありますので。相手をする人数が増えようが特に支障は出ないのですが、面倒だなぁと思っているだけです」
うわ、めっちゃ丁寧な嫌味。そしてやっぱりまだ余裕があるんだな。人数の差でも有利を取れないってなにそれ。この状況はゲームのエクストラモードなの?そんなモードに設定した覚えはないけどナァ!?
「と、とにかくっ!そんな風に俺たちを見下して余裕をかましているのも今の内だ。お前が興味がなさそうにしている“仲間がいること”の凄さをこの戦い証明してやるッ」
これ以上ライアーのペースに飲まれてはならない。そう思った俺は強気に言い放って再び剣を構えた。シュティレも大槍を構え直し、踏み込む体制に入った。
現状、前衛は俺とシュティレ、直接は戦わないが、俺の肩でサポートの役割を果たすアムール。後衛はシルマ、エクラ、シュバルツと言う布陣になっている。
後衛と言っても聖獣を召喚しているエクラは前衛と後衛、どちらの役目も果たせるし、影を操ることができ、攻撃も防御もできるシュバルツにも同じことが言える。
そう言う面を考えれば戦略の幅は広いだろう。個々の能力を使って上手く組み合わせればそれなりにライアーとも渡り合える可能性はある。
まあ、その辺の実力や能力もある程度は予測した上でライアーは余裕をぶっこいているんだろうが……でも実行しないよりはマシだ。気を引くだけで充分なのだから。
多くのリスクを背負いながらも参戦を了承してくれたミハイルの足を引っ張らない様に、ここは頑張るしかない。掠っただけとは言え、頬からも流血したことだし、もうこの際多少怪我をしてもかまわん。
俺は小さく息を吐き、視線だけを後方へ向けて今から踏み込むぞと言う合図をシルマに送る。シルマも視線だけで了解の意思を見せ、俺は慎重にライアーの出方を窺うシュティレよりも早く動いた。
「これならどうだっ」
俺が剣を振り上げた瞬間、剣先にわずかな振動を感じ、稲妻が走るのを感じた。突然ビリビリが伝わって来たのでちょっとだけ驚いたが、肩の上のアムールが耳元で小声で現状を教えてくれた。
「さっそくシルマさんからのフォローです。雷の魔術をご主人様の剣に施して下さっていますよ。発動の準備はバッチリみたいなので、そのまま振り抜いて下さい」
「え、あっああ。わかった」
突然魔術の気配を感じて驚きはしたが、思い当たる節はある。先ほどは調子に乗って接近戦を選んでしまったせいでナイフダーツの的になりかけたので、今度は直接剣で攻撃するのではなく、遠距離攻撃が可能な魔術攻撃を仕掛けようと思ったのだ。
ただ俺は魔術がまともに使えないし、シルマにサポートされていることを周りに悟られてはいけないため、シルマに向かって言葉で指示を出すこともかなわない。
なので先ほどダメ元で送った目線の合図でその意志を伝えたのだが、彼女は見事“魔術攻撃をして欲しい”と言う俺の意志を読み取ったシルマが俺の剣に魔術をかけたのだ。
実を言うと本当に意志が伝わるか少し不安だったのだが、これだけあの一瞬視線を交えただけでよく読み取ったな。シルマは聖の様なテレパス能力を持ち合わせていないはずだから、ここまでドンピシャで俺の意志を予測するなんて察しが良すぎて称賛に値するわ。
「ほほう、剣技と雷の魔術を合わせた攻撃ですか。面白いですね」
まさかシルマが後方で魔術を使っているとは想像もついていないであろうライアーが俺の剣を興味深そうに見つめた。
おいおい、俺今思いっきり剣を振り上げて攻撃態勢を取ってるんですけど。しかも剣に稲妻走ってるんですけどー!?まだ余裕なのか、って言うか完全に攻撃を見切られてる気がするんですけど!?
「調子にのるなっつーのっ!!」
未来視の力などなくてもほぼ100パー避けられる予感しかしなかったが、振り上げた剣は止められない。と言っても俺はあくまで攻撃をする風なのだか。
シルマが魔術を発動中であるため、一瞬でもためらったりタイミングがずれたりすると色々とバレる。なので俺は「ええいままよ!」の精神で稲妻を前に飛ばすイメージで剣を思いっきり縦に振り抜いた。
ドォン、バチバチッと近くで落雷でもあったかのような轟音とわずかな地面の振動と共に剣から稲妻が鞭状になって放たれた。その威力は凄まじく、握りしめていた柄から伝って体に軽く痺れる様な衝撃が走る。
「わっとととっ」
攻撃の衝撃と風圧で一瞬後方へ吹き飛びそうになったがあまりにも格好が悪いので何とか耐える。ちょっと情けない声が漏れたがよろけただけで済んだのでセーフ。
「ふむ、威力は抜群。命中すればただでは済まなそうですね」
癖なのか趣味なのか嫌味からくる言動なのか、ライアーはまた評価を口にしつつ、迫る攻撃を余裕で躱す。やはり完全に見切っていた様で俺(厳密に言えばシルマ)が繰り出した攻撃は掠りもせずに真っ暗で果てのない空間へと抜けて飛散した。
「だー!もうっ!!また躱されたっ」
悔しさのあまり絶叫してしまった俺を見て、ライアーが口元に手を当てて楽しそうにクスクスと笑った。
「ふふ、そんなに怒らないで下さい。あなたたちも防御壁で自分の身を守って簡単には手出しができない様にしていたではありませんか。お相子ですよ」
「くっ、また厭味ったらしく痛いところを突いて来やがるっ」
挑発に乗るなとシルマから注意はされているし、乗ってはいけないということも重々承知しているがやっぱり腹立つもんは腹立つ。
俺は震える拳を握りしめ、改めてライアーに向かって剣を構えた。刃を向けられたライアーも笑顔を浮かべたままナイフを構える。
その間、ライアーと向き合う形になり、息もできないほどの緊張感が走ったがその空気はシュティレの鋭い声によって一瞬でかき消される。
「お前の相手は1人ではないぞっ」
ライアーに先制攻撃はさせないと言わんばかりの素早い攻撃は味方である俺ですらビビる容赦のなさだった。
槍は大きく十字に振るわれたが、やはりこの攻撃も見切ったライアーはステップを踏みながら軽やかに躱し、最後の一振りを躱したところで懐から3本のナイフを取り出してそれをシシュティレに至近距離から投げつける。
狙われたのは鎧で身を守る彼女が唯一ノーガードとなっている顔面だ。それも確実に目を狙っているのが分かる。接近戦で急所を狙うと言う確実でえげつない攻撃に俺の肝が一瞬で冷えた。
「シュティレっ」
刃を交えるライアーとシュティレの距離はわずか数十センチ。そこまで接近されていては彼女のフォローに入ることもできない。でも何とかしないと、でもどうすれば……と焦ったもののそれは秒速で杞憂へと変わる。
シュティレは至近距離からレーザービームの様に一直線に素早く迫る3本のナイフの存在に素早く反応し、そして冷静に対応した。
「なんのっ」
シュティレはライアーに向けていた槍を素早く引き戻し、槍の柄で顔面に迫るナイフを全て弾き落としたのだ。
「出たよ……曲芸回避」
俺の心配を軽々と跳ね除けてまたもや高過ぎる動体視力と身体能力で「曲芸回避」をやってのけたシュティレに思わずボヤキに近いツッコミを入れてしまった。
何だよ!もう……めっちゃ焦ったのにまた平然と曲芸で躱すんかい!いや、どんな避け方でも無事ならいいんだけどさぁ……。
何だろうこう、心配とツッコミが合わさって感情が完全にジェットコースターになっている気がする。アップダウンが激しい。
目の前で繰り広げられる目まぐるしい、時に曲芸まじりの戦いに徐々に戦闘からではない脱力感を感じ始めていると、ライアーからの攻撃を回避したシュティレがバックステップで距離を取りつつ俺の隣に立った。
「魔術攻撃すらも身1つで躱すとは……やはり強敵だな」
一瞬の判断で槍の柄でナイフを3本も弾くお前も相手からすれば十分に強敵だとは思う。と言うツッコミは口に出さず、俺はとりあえず頷いた。
「ああ、そうだな。さっきから攻撃が全然当たらん。正直めっちゃ悔しいし嫌味もウザい」
拳を握りしめ、わなわなと震える俺にシュティレは「その気持ちは分からなくはない」と呟く様に前置きをしてから、後方で控えるシルマたちを振り返った。
「しかし、後衛とも連携を取ると決めたもののいざ戦いが始まってみると中々難しいものだな。特にエクラ殿は先ほどから攻撃をする機会を窺ってくれてはいるが、中々動けない様だ」
「エクラの場合は仕方がないな。あの聖獣……レオだっけか。ヘラクレスほどではないが魔力消費が激しいと言っていたし、この空間に存在させるだけでも大変そうだぞ。魔力温存のためにも攻撃の無駄打ちはできないんだろう」
恐らく同じ予想を立てていたのだろう。シュティレは俺の意見に特に意見することなく頷く代わりに難しい表情のまま「ふむぅ」と唸っていた。
しかし何と言うことか。連携してライアーの動きを止めると言う作戦を立てたにも関わらずそれが実行できないなんて。
いや、でもよく考えたら連携って結構難しいよな。仲間同士の攻撃を読み合わないといけないし、失敗があればフォローを入れなければならない。信頼関係が特に重要になって来るため、即席パーティではちょっと厳しいかもしれない。
シルマは個々の実力を活かすべく連携を提案したんだろうが、やはり「個」が強いだけでは連携できないと言うことを今この瞬間、痛いほど理解した。
現にシルマもここまでの流れを見て、思ったよりも連携ができていないことに焦りを覚え、不安そうな表情をして杖を握りしめている。
「相手が攻撃を見切るのなら、ご主人様の防御魔術で閉じ込めてしまうのはいかがです?」
何とか対処すべく、次の動きを考えているとアムールが肩の上でコテンと首を傾げてそんな提案をした。
「う、それは確かに方法としてはアリなのかもしれないが……」
純粋な問いかけに俺は口ごもってしまう。確かに俺が習得した防御魔術は相手を閉じ込め、尚且つ受けた攻撃を暴発させる機能を持つ鉄壁の檻だ。
上手く活用できればこの事態を好転させることができるかもしれないが、残念な事に未だに上手く扱うことができない。発動させる自信が全くない。
前世を含めて今まで魔術とは全く縁がなかった俺は発動に必要な魔術回路が全く読めず、何度か読み方は教わって多少のコツは掴みつつあるものの、まだ落ち着いた環境でないとあの青い脈はイメージできない。
何が言いたいのかと言うと、こんな敵が至近距離にいるのに心を鎮めて魔力なんて読めるか!!緊張と危機感で俺のSAN値がヤバいんだよ。ギリギリでこの場に立ってるんだ。他のことに気を回せるかっ。
「あっ、もしかしてまだ難しいです?」
本体であるペセルさんと共有しているため、俺の事情を把握しているアムールが申し訳なさそうな表情を浮かべて聞いて来たので、事情をしらないシュティレにこの情けない状況を悟られない様に小さく頷いて返事をした。
「クロケル殿の防御魔術は確かに協力だ。期待したいところだが、ライアーの場合はそれすらも見切ってしまいそうだからな。便利な防御魔術であるが故、使うのであればもっと状況を考えて慎重に使った方が良い」
「で、デスヨネー!じゃあ俺の防御魔術の件は一旦保留で」
よかった……今は防御魔術を使えないことをどう言い訳しようかと考えていたが、なんか勝手にお流れになった。真面目で冷静なシュティレには感謝しかない。そして戦いが進んでも魔術を使う機会が来ないことを今から祈り、いや念じておこう。
「しかし、それはそれとしてこの状況をどう切り抜けるかが課題だが……」
「そうだな……もどかしいが一旦シルマたちのところへ戻ってもう一度作戦を」
考え直さないと、と続けようとした俺の足元にカカカッと金属音を立てて何かが刺さる。一瞬何があったのか分からなかったが、自分の足先数ミリのところに小型ナイフが5本ほど生えているのを目視して悲鳴を上げて飛び上がった。
「ぎゃあっ!?」
「クロケル殿!?」
幸い足に痛みはない。もちろん、流血もしていない。ナイフが捕えているのはあくまで床の様で、俺の足は無傷だった。でも肝がめっちゃ冷えている。内臓が出るんじゃないかと錯覚するぐらい気持ち悪い。心臓もバクバクである。
俺の動きと声に驚いてシュティレも声を慌てて俺を見て、そして即座に状況を理解したのか武器を構えた。
「また彼女の防御壁の中に逃げるおつもりですか。ダメですよ、待っている間結構退屈なんですから」
穏やかに俺たちを静止する声が聞こえ、恐る恐るそちらを見れば笑顔のライアーがそこにいた。でも、待って。目が、目が全然笑ってナイヨ?
笑顔の奥から絶対にシルマの元へは戻らせないぞと言う強い意志を感じて、もう震えが止まらなかった。
これは絶対に逃がしてくれない、と言うか下手に背を向けない方がいい。そう思って隣で武器を構えるシュティレと頷き合い、非常に不本意だがこのまま戦いを続行しようとしたその時、肩の上に乗るアムールの瞳がチキチキッと音を立てて光った。
「あ、アムール?どうした」
いつもとは様子が違うアムールに不調でも起こったのではないかと心配して声をかけると、彼女はパッと顔を上げて元気よく言った。
「ご安心下さい、ご主人様。救援、来ますっ」
「えっ」
予想外の言葉に思わず面を食らってしまう。救援?救援ってなんだ。全然思考が追いつかない。ライアーからの圧に恐怖を覚えていることもあり、軽くプチパニックを起こしていたその時真っ黒い空間に白く光るひび割れが起こる。
闇の空間に突然光が差し込むと言う予想外の事態に敵味方関係なく身構える。流石のライアーも笑みが消え、警戒態勢に入った。ん、と言うことはこの光はライアーとは無関係と言うことか。
そんなことを考えている内にひび割れは徐々に大きくなって行き、最終的には乾いた砂の様にボロボロと崩壊して黒い空間にぽっかりと穴が開き、そこから眩い光が漏れる。
一瞬目が眩んだが、白い光の先から人影の様なものが見えた。その正体が一体何なのか、必死で目を凝らしていると徐々に目が光慣れて来て、その状態をはっきりと瞳に映した。
「……!あなたはっ」
「ふふ、最短最速の登場……竜の国の長、シェロンじゃ」
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聖「次回予告!危機的状況で突如響き渡る声。バトルもののお約束の窮地にお助けキャラ登場展開!これで戦いはどう動くのか。そして、一瞬主人公ぽかったけどやっぱりヘタレたクロケルはちょーっと恰好悪いかも」
クロケル「ヘタレてねぇよ!戦いに慣れてない奴が刃向けられたり攻撃されたりして“それでも負けないぞ”ってなるわけないだろ!あれは二次元における大体の主人公の一般思考だ。モブの俺には適応されない。あと、そう言う生き急ぎタイプの主人公は良くないと思います」
聖「次回、レアリティは最高ランクだが素材がないのでレベル1第123『助っ人参戦!シェロンの大立ち回り』うわ、すっごい早口。いいじゃん、ピンチでも、いやピンチの時こそ奮起する主人公って恰好よくない?」
クロケル「格好いいっておもってもそれを実行できるかどうかは別物だろ」
聖「じゃあ実行すればいいじゃん」
クロケル「い・や・だっ」