表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/187

第10話 モンスターを追え!盗まれた王家のペンダント

この度もお読み頂きまして誠にありがとうございます。

やっぱり戦闘シーンって難しい……。せっかくの異世界ものなので戦闘シーンはなるべく入れたいなぁとは思っているのですが、技術が……(震)


でも頑張って書きますよ!修行だ修行!


本日もどうぞよろしくお願いいたします。

「えっ」


「なんですか」


『いきなり大きい声出さないでよ』


 俺の声に反応してクラージュが目を見開き、シルマが俺を見つめ、聖が不満そうな声で俺を非難する。


「いた!いたんだよ。モンスターがっ。ペンダントも持ってた」


 中庭を指させばみんなの視線がそちらに向き、いち早くモンスターの姿を発見したクラージュが勢いよくガラス窓に張り付く。


「本当だ!あのモンスターです!捕まえないと」


 クラージュはモンスターの姿を捕えるや否や左右を素早く見渡し、中庭に繋がる出入口を探す。


 俺も逃してはならないと必死に出入口を探し、そして見つけた。俺に近い方の廊下の隅、ガラス製で出入口と書かれた扉があった。反射的に全力疾走でそこへ向かう。


「クロケル様!?」


『クロケルっ』


 シルマと聖が俺を呼ぶ声がしたが、俺の足を止めることなく中庭へと向かった。俺が慌ただしく扉をあけたせいか、身を隠していたであろう黒い物体はビクッと体を揺らした後に弾む様にして逃げる。


「あっ!待てっ、逃がすかこのっ」


 せっかく見つけた目的のモンスター、これを逃せば面倒事が長引くだけだ。絶対にここで捕まえる。

 俺は自分の平穏のために全力でそれを追いかけた。転生前は体力も運動能力も至って平均だったが、この体はすごい。レベル1と言えど足の長さがあるためか、一歩踏み出す度にグイグイ進む。


 こう言うところはこの体の長所だなぁ。と感じると同時にレベルが高ければ本当に戦いに恵まれた体なんだろうなと実感する。


 足が速いおかげでモンスターを一度たりとも見失う事なく追いかける事ができ、ついに角地に追い詰めた、と思い勢いよく角へと飛び込んだが、そこには黒い物体の姿はなく、代わりに人がいた。


「わっ、すみません」


 クラージュの二の舞になってはいけないと俺は慌てて自分にブレーキをかける。今度は正面衝突することなく止まる事が出来てホッとした。


「クロケルさん、モンスターは……っ」


 俺の後に続いて息1つ切らしていないクラージュが姿を現した。と言うかもう追いついたのか。

クラージュの足の速さに感心していると、彼女は目の前の人物を見て、目を丸くしてその場で固まる。


「国王様っ」


「国王様ぁ!?」


 意外な言葉に俺は目の前にぼんやりと佇むその人物を改めて確認する。

 キラキラと光る銀の髪をシニヨンで纏め、切れ長の瞳も同じく銀色に輝いている。まつ毛も長く、見るからに美形だ。


 細身でヒール付きのショートブーツを履いてはいるが、それを除いても170は超えていそうな高身長。

 肌は陶器の様に白くて細く、しなやかな印象を受ける。ああ、これが「美しい」と言うものか。と思わす見惚れてしまうほどの容姿だった。


 グラキエス王国の紋章である銀の薔薇の刺繍が施された青色のローブを身に纏い、それが夜風を受けてヒラヒラとはためく。その姿すら絵になる美しさと言える。俺たちの世界で言うモデルに近い印象を受ける。


 このめっちゃキレイな人が、国王!?女性の国王か。見た目は20代ぐらいに見えるがえらく若い国王なんだな。


「あ、あら?グラキエス王国の国王様がお若いのは存じておりましたが、男性ではなかったかしら」


 息を切らしながら遅れて追いついてきたシルマが不思議そう国王と思わしき人物を見て言った。国王(仮)は一言も言葉を発することなく、微動だにせずその場で佇んでいる。


「国王様、何故こんなとろにおられるのですか」


 クラージュは動揺しながらも目の前に近づこうとしたが、すぐさまピタリと歩みを止め、素早く腰に備えたレイピアを抜き放つ。


「お、おい。クラージュ!?」


 突然の行動に俺は驚いた。目の前にいるのはグラキエス王国の国王、つまりはクラージュの主だ。自らの主に剣を抜くなど、とんでもない反逆行為だと言うのは素人の俺でもわかる。


「大丈夫です。あいつは国王様ではありません」


 慌てる俺を他所にクラージュは毅然と言い放つ。そして刺すような視線で国王の姿をした何者かを睨みつけて言った。


「貴様、何者だ。国王様の姿を借りるとはこの不届き者め。この私が成敗してくれる」


「……!」


 レイピアの先をまっすぐに向けられ、国王(仮)は初めて反応を見せた。

 だが、自らの正体を明かそうとはしない。しかし、ひどく悲しそうな顔をしながら口をパクパクと動かしていた。


 まさか、声が出せないのか?そんなことを思いながらふと視線を下に落とせば、その手にはクラージュがモンスターに盗られたと言うロケットペンダントが握られていた。


「おい、クラージュ。あれを見ろ、お前のロケットペンダントなんじゃねぇか」


「……!本当だ。でもあれはモンスターに盗られたままだったはず……」


 ペンダントの存在に気がついたクラージュがレイピアを構えながらも相手の手元を凝視する。


『現状考えられる可能性は3つだね』


 状況を傍観しているだけだった聖が宙に浮かんだまま冷静な声で突然そう言った。


「3つ?」


 聞き返せば聖は極めて冷静に、そして淡々として解説を初めた。


『1つ目の推測。目の前の人物は本物の国王様。それなら王家のロケットペンダントを持っていても不思議じゃない』


「いえ、それはありえません。あのロケットペンダントは王家に伝わるたった1つの代物。私が知る限り、この世に2つとしてありません」


 1つ目の推測をクラージュはキッパリと否定した。王国関係者が自信を持って言うのであれば間違いないな。


「それに、私にはアレが国王様ではないとわかるのです」


「根拠は」


 ペンダントのことを否定した時以上に毅然として言ったクラージュに聞けば、彼女は武器を国王(仮)に向けながらも俺を見据えて強い眼差しで断言した。


「私が、あの方の騎士だからです」


 精神論か。と一瞬だけ思いかけたが、クラージュの視線があまりにも真剣で本気で確信を持って言っていると言うことが伝わってきた。


 王と騎士の絆と言うわけか。クラージュはよっぽど国王に忠誠を誓っているんだな。これは彼女の言葉を信じてもいいんじゃないか。

 

『そっか。ならこの線は消えたね』


 聖もクラージュの態度を見て同じことを感じた様であっさり己の考えを却下した。


『じゃあ2つ目の推測。さっきの黒いモンスターは既に別の誰かに捕えられてしまって、ペンダントは第三者が盗んだ』


「だが、目の前の奴は国王の姿をしているぞ。お前の推測通りなら、モンスターを捕えたのは国王と言うことになる。クラージュが言うにはアレは本物の国王じゃないみたいだし、矛盾するんじゃないのか」


 2つ目の推測は俺が否定した。モンスターを第三者が捕える。という発想は理解できるし、考え方としては至極全うだと思うが、盗人が国王と言うのはおかしい。


「そうですね。それに仮にあの方が本物の国王様だったとしても、ペンダントをと取り返したと言うのに自分の騎士であるクラージュ様に無反応、と言うのもおかしいですよね」


 シルマも俺の意見に同意を示し、頷きながら意見を述べる。それを聞いた聖はまたもや素直に納得をする。


『ふむ、ならこの線もナシだね』


 落ち着いた声色で言った後、聖は空中でくるんと回転してからキメ顔ならぬキメ声で言った。


『なら答えはただ1つ!目の前の人物は黒いモンスターそのものだっ!』

 

 ドドーン!とご丁寧に自ら効果音まで出して恰好をつけた聖を見た時、俺は悟った。こいつ最初からわかってやがったな。


 そうだよな、だってこいつ相手をアナライズできるわけだし、正体を暴く事ぐらい容易なはずだもんな。その上で推理ごっこで遊んでいたな。


「なぁにが答えはただ1つ!だよ。どっかで聞いた様なセリフ言いやがって。それが言いたかっただけだろ」


「あは。そうだよー。探偵ぽくって恰好よくなかった?」


 ギロリと睨んで指摘をしてみれば聖はけろっとしてそれを認めた。自分の血管が怒りのあまりブチッと音を立てたのがわかった。


「あーきーらぁっ」


 空中に浮かぶ聖をとっちめ様として飛びかかかるも、軽々とかわされて手を伸ばしても届かない高さまで上昇されてしまった。くっ、小癪な。石でも投げてやろうかっ


「まあまあ。怒らないの。僕の分析によればアレは確実に君たちが探していたモンスターだよ。ついでに、どんなモンスターかもアナライズしたよ」


「なに、マジかっ」


 聖の言葉に苛立ちが吹き飛ぶ。話を逸らされた感はすごくあるが、ものすごく重要な事を言ったので、先ほどまでの怒りはあえて流してやることにする。


「レアリティは5闇属性のレベル10の弱小モンスター。カゲボウズ。擬態を得意とするみたいだけど、突出した戦闘能力はないみたいだ」


 擬態……なるほどそれでグラキエス王国の国王の姿を模していたのか。でも、なんでその姿を選んだんだ。何か目的でもあったのだろうか。

 そしてレアリティ5でレベル10、弱小呼ばわり。なんか心に刺さるものがあるな。


「なんであろうとも、()()()のお姿を借りるなど万死に値する。覚悟っ」


 国王(仮)の正体がわかるや否や、クラージュはレイピアを構え直し、タンッと地面を蹴ると同時に相手の懐に潜り込み、レイピアを突き立てる。


「……!!」


 よろける様に攻撃をかわしたモンスターだったが、レイピアの先が胸のあたりをかすめる。それと同時にポンッと言う音がして国王だったモンスターの姿が元の黒い球体に戻る。


「ちっ、浅いかっ」


 クラージュが小さく舌打ちをする。黒い球体に戻ったモンスターは弾むようにして俺の方へと飛んで来きた。


「うわわわっ!?」


 やばい、レベル1の俺では例えレベル10の弱小モンスターであっても対応できるわけがない。突然のことに焦った俺は腰に携える剣を抜くことさえできずに俺はその場で固まってしまった。


「クロケル様っ!お助けいたします。盾の女神の加護(アイギスエヴロギア)


 シルマの詠唱と共に俺の眼前に金色に輝く大きな盾が現れ、突進してきたモンスターをゴンッと言う鈍い音と共にいとも簡単に跳ね返した。

 モンスターは勢いのままゴロゴロと転がり、植木をなぎ倒した後に激突してそのままぐったりと動かなくなった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


聖「次回予告!ペンダント騒動も一段落。やっとクロケルにも平穏が訪れる……のか?」


クロケル「何で疑問形なんだよ。そこは肯定してくれよ頼むから」


聖「次回レアリティは最高ランクだが素材がないのでレベル1 第11話 『ペンダント騒動決着!擬態モンスターカゲボウズ』新たな出会いはクロケルに何をもたらすのか」


クロケル「また面倒事が起こりそうな気がして胃が痛い」


聖「この前胃薬を取り寄せてあげたでしょ」


クロケル「もうなくなったよ……」


聖「用法用量は守らないとダメだよ?」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ