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第105話 ぬいぐるみの呼び名。名付け親は……俺かいっ!!

この度もお読み頂きまして誠にありがとうございます。


混ぜて焼くだけなのでよくチーズケーキを焼くのですが、やっぱり「焼く」行程が一番難しいですね……しかもオーブンを新調したせいでしょうか。まだ機械のクセを理解していなくて必要以上に焦げてしまう(泣)


たくさん使ってもっとオーブンと仲良くならなけでばと決意した今日この頃と言うか昨日です。


毎回日記とか呟きみたいな前書きで申し訳ございません、作品に触れろよって感じですよね。いや、でもネタがなくて(汗)


本日もどうぞよろしくお願いいたします。

「このぬいぐるみが喋っているのはおじいちゃんの仕業って、どう言うこと?」


 エクラが前のめりになって怪訝に、そして興奮気味にアストライオスさんに詰め寄るが、疑問の視線を向けられている当の本人は涼しい顔だ。なんだったら、みんなが自分の発言に驚いたことに対してちょっと嬉しそうにしている気配すらある。


 正直、俺もパニクッている。ぬいぐるみ本人にも分からなかった本体(フィニィ)の意志に左右されずに自らの意志で行動できる理由はアストライオスさんにあるなんて、理解が追いつかない。


「なぁに、簡単な解除魔術じゃよ」


「解除魔術?」


 アストライオスさんは胸を張って自慢げに言うがやっぱり理解などできるはずもなく、ただ言われたことを疑問系で返して首を傾げることしかできない。


「ああ。そのぬいるぐみには人格封印の魔術が施されていたからのう。何やら複雑な術式が組まれていたがワシの手にかかればちょちょいのちょいよ」


 空中で人差し指をくるくると動かして気分よく言った。ってかなんて言った、人格封印ってどう言うことだ。理解が追いつかないワードが多すぎるんですけど。


「すみません、これまでのことが全く理解できないので1つずつ説明して下さい」


 小さく手を上げて申し出るとアストライオスさんはすまんすまんと笑ってから紅茶を一口すすって落ち着いてからから話を始めた。


「さて、何から話したものかのう。ざっくりと言えばぬいぐるみが自分から動けなかったのは魔術によって意図的に人格封印をされていたからで、それに気がついた聡明で寛容なワシがこの部屋に連れ帰った際にその術を解いてやったということかの」


 自分で自分を称賛したことについてはツッコミは入れないぞ。でもなるほど、あの時アストライスさんが捕虜部屋からぬいぐるみを持ち出したのはそう言う意図があったからなのか。


 ……いや、だどしたらやっぱり前以て言ってくれよ。何で毎回毎回お楽しみ的な感じで未来を隠すんだ。あれか、未来を知っているから面白い方向に未来が転んだ時に他人の新鮮な反応を見て楽しむのが趣味とか。やめてしまえ、そんな趣味。

 

『人格を封印したのはもちろんライアーだろうね。万が一にもせっかくぬいぐるみに閉じ込めた理性が負の感情の塊である本体を止めるなんてことがあったら困るもの』


「ああ、俺も何となく思った。そう言う理由があるからぬいぐるみの状態だと理性の面を持つフィニィは表に出ることが出来なかったのか。全部ライアーの計算なんだろうな」


 アストライオスさんに思うことは色々あるが聖が真面目に現状分析を始めたので、不満が込められたツッコミを押し込めて俺もそれに同意した。


「そう言うことでしたか。通りでこの部屋に入った瞬間意識が鮮明になって、会話をすることができたと思いました。それについては感謝いたします。ありがとうございます」


 ぬいぐるみは拘束された状態で深々と頭を下げた。ツンとした態度を貫き通す割には意外と礼儀正しい。フィニィの理性って案外大人っぽい側面が強いんだな。そう言えば人体実験のせいで外見年齢は5歳だが本来は大人だって言っていたな。


「しかし、敵がわざわざ魂を分けたとは言えお前もあの少女の魂の一部なわけだろう。理性であるお前自身に復讐心はないのか。態度は敵対心むき出しの様にしか見えないが」


 この話に興味があるのか、ミハイルがめずらしく話に入って来て踏み入った話をしようとしてくる。ホントにどうした、なんで今回はこんなにグイグイ来るんだお前。いつもの我介せずの態度はどこ行った。


「隠すようなことでのないのではっきりと言わせて頂きますが、神子とその仲間が長様の命を奪ったことは許すつもりはありません。寧ろ嫌いです。しかし、暴走するほどの復讐心は抱えておりません」


『それは光栄だけど、やっぱり嫌いは嫌いなんだね。何か傷つくわ~』


 自分の嫌悪感を包み隠さずぶつけて来るぬいぐるみに聖が苦笑いを浮かべていた。これに関しては複雑な問題過ぎて俺も半笑いしか反応できない。でも一応フォローは入れておいた方がいいか……。


「いいじゃねぇか、腹の中で恨みを隠されるよりはハッキリ嫌いです、憎いですって言われた方が心構えができるだろ」


『そうかなぁ』


「そうだよ」


 少し寂しさを見せながら納得できない様子で拗ねる聖を俺は無理矢理納得させた。少し間をおいて、質問をしたミハイルが不遜な態度でな頷いた後、追及に追及を重ねる。


「ほぅ。復讐心も俺たちの向ける嫌悪も認めるか。で、お前はどうして俺たちに喋りかけようと思ったんだ。ネトワイエ教団の連中は今はお前の仲間だろ、何故俺たちに仲間の情報を売るようなことをする」


「別に。あなた方に協力しようと思って意志を示したわけではございません。私はお兄様と意志の疎通がしたかっただけです。お兄様は私の心を救おうとしてくれましたし、理性である私はネトワイエ教団に少なからず疑念はあるので」


 いつもと変わらず、聞いているこちらもイラッとしてしまうような嫌味な言い方をする日はいるに対し、ぬいぐるみはツンとして対応してみせた。


『それはつまり、アンフィニが反ネトワイエ教団派だからそれに協力するだけで、彼と目的が同じ僕らはついでってことだね』


「そうですね。先ほども言いましたが、私はあなた方が大嫌いです。しかし、お兄様の考えに賛同しているのであれば“今は”味方。納得はしていないし、心の底から嫌ですが、私がお兄様と生きるために、可能か限り協力します」


 聖の確認の言葉にぬいぐるみは嫌悪を隠すことなく、寧ろ嫌悪感をたっぷりと混ぜ込んだ言葉で流暢に答えた。すっごい嫌いの念押しして来るじゃん。


「お互いの心情はどうあれ目的は同じで抵抗する気もないんだから、そのぬいぐるみちゃんも仲間ってことだね!よろしく……ってこの子のことなんて呼べばいいのかな」


 前向きなエクラはぬいぐるみから向けられる嫌悪を気にすることなく、志が同じであると言う部分を前向きに捉えて拘束されたまま座るぬいるぐみに満面の笑みで歩み寄ろうとして、そして動きを止めたかと思うと“名前呼び”と言う妙な部分に引っ掛かる。


「なんて呼べばって、こいつはフィニィなんだから普通にフィニィでいいんじゃないのか」


 一応、このぬいぐるみはフィニィの魂を分けた存在。半身と言えども本人なわけだし。そう思って俺が言うとエクラは眉間にキュッと皺を寄せて不満そうに意見してきた。


「えぇー、でも今捕虜部屋にいる子もフィニィちゃんじゃん?何かややこしくない?」


「ややこしいってお前ね……」


 確かに同じ存在で同じ名前の者が、同一空間に存在したら呼び方とかもろもろややこしいけども。でもそこまで気にする様なことか……?と思わず脱力してしまったがエクラはそんな俺になどお構いなしに、その路線で話をぐいぐいと進めて行く。


「せっかく仲間になるんだから、名前はしっかり呼んであげたいっしょ?何がいいかなぁ。ねねっ、あなたはなにか希望ある?」


 楽しそうに思案しながらグイッとぬいぐるみに顔を近づけてエクラは聞いた。突然心身共に距離を詰めて来たエクラに今まで素っ気ない態度だったぬいぐるみも思わず戸惑っていた。


「は、えっ。なっ、何を言っているんですか。希望なんてある訳ないでしょう。それに、あなた方に名前を呼んで欲しいなんて思ったことは一度もありませんし!」


「そんな冷たいこと言わないでよ。心配しなくても変な名前なんて付けないからさ。ねっ」


 一瞬エクラの勢いに気圧された様子のぬいぐるみだったが、直ぐに突き放した態度を見せる。しかし、エクラはまるで気にすることなく、変わらず笑顔で馴れ馴れしく歩み寄っていた。


「な、何なのですか、このヒトっ。ウザいんですけどっ」


 エクラに冷たいたい態度を取っても無駄だと悟ったぬいぐるみはなんとかしろと言わんばかりにこちらに視線を送って来たが、俺では残念ながらどうしようもない。


 それに名前付け自体は別に悪いことでもないので、特に止める必要はないと判断した俺はぬいぐるみから送られてくる痛い視線からそっと目を逸らした。


 しかし、エクラのコミュニケーション能力って凄いな。他人で、しかもつい最近まで敵対していた存在に対して、なんでそんなに満面の笑みでグイグイ行けるんだ。


「もしかしてギャルってパーソナルススペース激狭なのか?」


『いや~ギャルでもクールな一匹オオカミタイプの子はいるし、エクラちゃんがちょっとパリピ寄りなのかもしれないよ』


 ボソリと零れた俺の呟きに聖が苦笑いで返した。パリピ、パリピかぁ。だとしたらちょっと苦手ってか今後振り回されそうな予感しかしない。


「見た目がTheギャルだから、多分そうだろうなとは思っていたけど、今まで割と普通のテンションだったからあまりそんな印象はなかったんだがなぁ」


『空気を読んでテンションの変え時を区別してるんじゃないの。きっと彼女は真面目なパリピギャルなんだよ』


「真面目とパリピは果たして両立するのだろうか。もしするとしたら根は真面目なんじゃ……」


 男2人でコソコソとそんなやりとりをしている間にもエクラはウキウキとしてすっかり目の前にいるぬいぐるみの名前付けに夢中だ。


「見た目はウサギのぬいぐるみちゃんだし、可愛い方がいいかな。でも意表を突いてクールでかっこいい名前も捨てがたいよねぇ」


「はいはいっ、名前ならご主人様に頼むのはいかがですかっ。私の名前を付けて下さいましたし、センスがあると思うのですっ」


「はあ!?お前何言ってんの!!」


 俺の肩に乗っているアムールが突然勢いよく手を上げ、勝手にぬいぐるみの名付けに俺を立候補させようとしたので思わず声を荒げて突っ込んでしまった。


 その際にアムールと目があったのだが、突然話題に放り込まれてプチパニック状態の俺を見てキョトンと首を傾げていた。くそぅ、曇りなき眼が辛いぜ。


 ホントに待って。俺に名付けのセンスなんてないから、マジで!!アムールと言う名前は“お前が”気に入っただけで、一般的にセンスがあるかと言われると自信がない。そもそもセンスなんて個人の価値観なんだから人に委ねるものじゃねぇんだよ。


「そう言えば、シュバルツくんのお名前もクロケル様がつけてさしあげていましたね。私も名付けにはクロケル様が適任だと思います」


「シルマァァァァッ!!」


この度の名付けは全力でお断りしようと口を開いた時、シルマが悪気の欠片も見当たらない真っすぐで曇りなき笑顔で余計なアシストを決めた絶叫した。


「は、はいっ!?な、何か変なことを言いましたでしょうか」


『あはははははははっ』


 言ったよ!変なことってか余計なこと言った!!本気で困惑するシルマに俺は頭を抱えた。頭上で聖が大爆笑していたので久々に殺意が湧いた。


「あっ、そうなんだ。うんうん、シュバルツくんはもアムールちゃんも素敵な響きで良い名前だもんね!確かにセンスあるかもっ。じゃあ、この子の名付けもクロケルさんにお願いしちゃおうかなっ」


 ああ、無常。エクラからもの凄くいい笑顔と共にノリが良く、弾んだ口調で返答があったので俺は更に深く頭を抱えることになった。どうして、どうしてこうなるのっ。


 下を向くのさえしんどくなってふと顔をあげると、この場にいる全員の視線を一心に浴びていると言うえげつない状況であることに気がついてしまい一気に絶望感が増した。


 同時これは逃げられない空気だと察する。ミハイルやアンフィニの様に場の空気に関係なく、自分がやりたくないことや関わり合いになりたくないことに対してきっぱりNOと言える性格なら良かったんだが、残念なことに俺はどちらかと言うと保守的。


 空気を悪くしたくない俺は、期待や好奇の視線から来るプレッシャーに耐えながら、俺は考えたくもない名前付けをすべく必死で頭を回転させた。因みに、好奇の視線を向けてくるのはミハイルとアストラオスさんである。許すまじ、老人とフクロウ。


「ちょっと、私は別に呼び名をつけて欲しいなんて頼んでいないし、了承もしていないわよ。勝手に進めないで」


 耳に届いたのはすっかり空気に流されて俺の言葉を待ってしまっていたぬいぐるみが我に返った様子で慌てて文句を言った言葉。


 俺だって別に考えたくて考えてるんじゃないっそう思って、文句をぶつけて来るウサギのぬいぐるみを睨んだ時、その胸元にとある花の刺繍が小さく施されていることに気がついた。その花の正体に気がついた時、俺の中で何かが閃く。


「あ」


『お、どうした。何か名前を思いついたの?』


 俺の表情が困惑から閃きに変わったことにいち早く気がついた聖が興味深そうに俺を覗き込んできた。それを皮切りに他の仲間たちも期待を浮かべた表情で俺を見る。な、何か緊張するんだけど。


「いや、何となくピッタリかなって思っただけで……気に入ってもらえるか自信はないが」


 本当に自信がないのでついグチグチと言葉を濁してしまう。だって、良く考えてみてくれ。期待されるのは悪くないことかもしれないが、過度な期待をされている状況で失敗してみろよ。失望される度合いも大きいんだぞ。そうなったら俺の精神的ダメージもデカいわ。


「大丈夫です、ご主人さま。お気を確かに。私はご主人様から頂いたお名前は好きですよ」


「ボクも。クロケルから貰った今の名前、好きだよ」


 アムールとシュバルツが優しく俺の心に触れ、励ましてくれる。うう、なんて良い奴らなんだ。俺はあんまり涙もろいタイプじゃないがプレッシャーに潰されそうなこの状況では心にしみるぜ。


「ありがとう、2人共。そう言ってもらえて嬉しいよ。じゃあ、ちょっと自信を持って、思いついた名前を言わせてもらうよ」


 否定され、失望される可能性も含めて腹を括り、妙な緊張感に包まれる中、俺は深く息を吸って、思いついたぬいぐるみの名を口にすることにした。


「俺が思いついた名前は……」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


聖「次回予告!またもや名付け親になってしまったクロケル。魔法騎士から姓名判断師になったほうがいいんじゃないかな、と思わなくもない。クロケルが思いついた名前とは一体。そして、ぬいぐるみはその名を受け入れてくれるのだろうか」


クロケル「なんだ、ここ最近のシリアスな様で全くシリアスじゃないぐだぐだとしたこの展開は。そして言っておくが俺は無理矢理名づけを任されているだけで、それを職業にしたいわけではない。物事には適材適所があるからな。名付けを職業にするなんて俺には多分、合ってないない」


聖「次回、レアリティは最高ランクだが素材がないのでレベル1 第106『新な名前と少しの人生』僕としては魔法騎士だって十分君に合ってないと思うなぁ。ここまでの行動を見る感じだと特に」


クロケル「その評価は間違っていないが、本人を目の前にしてそれを言うお前の正直さには怒りしかわかねぇよ。それに、俺は異世界転生ガチャとやらで()()なったんだ。俺自身の意思じゃねぇってに」


聖「ガチャって恐ろしいよね」


クロケル「ああ、高レアが強いわけじゃないってのも含めてな……」






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