新たな自分との遭遇
その事実に俺は戸惑いを隠しきれず、何度も自分の顔を触る。それでもその姿は自分の姿であり、なんの変哲もない現実であることが俺をより一層混乱させる。そして俺の顔を見てあることを思った。
(よくよくみると俺の顔、すっげぇー美人じゃねぇーかよ。)
そんな事を考えて少し気持ちが落ち着いたので病室に戻りナースコールで医者を呼ぶことにした。
数秒して医者と看護師が駆けつけて俺の姿を見るなり安堵の言葉を漏らした。
「よかった神谷さん。峠を越えられましたね。よく持ち堪えました。」
医者の顔は安堵と感激のふたつが浮かんでいた。
医者は俺が大手術後、一ヶ月目を覚さなかったことを教えてくれた。そして俺は疑問をその医者に投げかける。
「何故俺の顔は女の顔になっているんですか?」
そうすると医者は顔を濁しこう語る。俺が地獄の激痛に悶え苦しんでいる時、あらゆるところから流血し骨などが皮越しに流動していたらしい。骨芽細胞の成長と老化が数秒間に何百、いや何万回も同じ細胞で起こっていたという。もはや人間であることを忘れるかのように全身は原型を止めなかったのだ。
そしてそのサイクルが収束する頃には人間の形にこそ戻っていたが、もはやそれは俺ではなく別人の姿になっていたらしい。この医者はこの奇病に対する処置をするのは初めてではなく何回も行っていたらしいがこんな現象は初めてとのこと。そして俺はこの症状を完全に克服したことなどが医者の口から語られた。