新たな自分との遭遇
時は20XX年、世界全域で流行したある病で地球の総人口は減少しつつあった。この病は一箇所から現れたのではなく世界の数カ所から同時に広まった。この謎は解明されぬまま数年が過ぎた。その病の流行は俺の住む日本も例外ではなかった。この病は人を媒介にして感染するものではなく、殆どが特定の地域での発症とされる。ウィルスや細菌とはまた違った生態を持つとされるものによる病気とされており、未だ改名されていない。しかし一つ言えることがある。それは...致死率が90%であること。この病に倒れ再び立ち上がった人は世界全体を見てもほんの数人程度であった。そして生還者は例外なく後遺症が残る。その後遺症は人それぞれで異なっていているがそのどれもが私生活に支障をきたすものであることは変わりない事実であった。
そんな俺もつい一年前、この病を発症してしまった。
この病気の症状を簡潔に表すと、骨の超成長と急激の老化。それを高速で繰り返す恐ろしい病だ。骨芽細胞の成長と老化の比率が噛み合わないと一気に体内の臓器や筋組織が圧迫され壊死する。そうなれば命の終わりまでは急だ。新薬でその比率をある程度調整することができるが人それぞれ体の強さは違う。この治療に耐えられないものから順に、人生に終止符を打たれるというとても理不尽な世界へとこの数年で成り果てた。そして体の限界が近い事も俺は悟っていた。この数ヶ月以内に俺の命の灯火は消えるだろう。この年は大学受験を控えていたが、彼女もいなければ友達といえる人も少ない。殆どやりたい事もやったし未練はない。もはや自ら人生の終わりを望んでいた。治療による体の酷使、これがとてもストレスが激しくて俺の髪の毛も完全に白髪になった。医者には今夜が正念場と言われたのでそろそろ終わるだろう。
やがて日が傾く頃、俺は激痛で目が覚める。いつものだ。その激痛は等間隔でどんどん強くなっていく。全身から骨が軋む嫌な音が絶えず鳴る。その不快な音がまた激痛へと変わる。それの繰り返し。やがて何も聞こえず視界が歪んできた。視界が完全に暗くなる前に医者が総出で処置し慌てる様子俺の最後に見た光景となった。視界はないがどうやら気絶した訳ではないらしい。激痛は病まず全身の感覚もある。何分、何時間と、どれだけ激痛に耐えたのかは分からない。だがそこで意識が消えかかり走馬灯なるものを見た気がする。ただしそれは形容し難いものでありそのうち意識は闇へと落ちた。ようやく俺は死を迎えられる、そう考えると少し報われた。だが俺の願いを裏切るかのように闇の世界に光が差し込めた....