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兆し

初投稿になります。よろしくお願いします。


 当事者たちを除き、その現象に最も早く気が付いたのは、横浜にオフィスを構えるIT企業だった。



 ビッグデータの分析と提供――特にWEB上で使用される単語を調査することに特化した彼らだからこそ、気づくことができた些細な変化。


 最初の異変は検索ワードにおける、奇妙な単語群の急激な使用率増加だった。

 間を置かずして、SNS上でも同様の傾向が表れた。


『謎の声』

『幻聴』

『空想上の生物』


 それぞれの言葉の使用頻度が、僅か三カ月の間に十倍近い伸びを見せていたのだ。

 加えて、それらの言葉は個別ではなく、まとめて入力されている場合がほとんどだった。


 偶然、使用されるとは考えづらい単語の数々。

 それらが多用される理由について、当然のように様々な検討と調査が行われた。


 何らかの疾患が流行しているのではないか?

 流行りの漫画や小説などの創作物に、頻出する単語なのではないか?

 特定の地域で、人体に影響を及ぼす公害や自然災害が起こっているのではないか?


 ところが、どれだけ調べても、それらの単語が増加する理由は一向に見つかることはなかった。

 最終的に残された推論は、実際に頭の中で妙な声が聞こえるという謎の現象が各所で起こっているのではないか。

 そんな与太話だった。


 その頃、彼らが抱えていたクライアントの中に大手製薬会社が混じっていたことは、大きな分岐点だった。

 未知の疾患の可能性が0とは言い切れない。

 専門家である顧客側が判断すればいい。念のために伝えよう。

 慎重ともいえる担当チームの判断により、あくまで備考として与太話はクライアントに提供されるデータに記載された。


 多くのものにとって、それは無価値な情報であった。

 事実、製薬会社の担当者たちには一読されただけで、すぐに忘れ去られてしまったほどである。


 だが、その情報は巡り巡って、正しく意味を知る者の元へと届くことになる。



 そして、それは多くの人間の命運を大きく変化させる引き金となった。



お読みいただきありがとうございます。

しばらくは、連日投稿いたします。

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