《第38話》帝局の回廊にて
『インフィ』
誰かがインフィの名を呼ぶ声が聞こえた気がして、アミールは立ち止まる。
帝局窓口フロアの上部の渡り廊下のようになったテラスから、声が聞こえた一階フロアの方を振り返る。一階は申請者でごったがえしており人がひしめき合っていた。
まさか気のせいだと思い探すのをすぐにやめる。死んだ親友の姿を。
「アミール将軍」
テラスを一人の兵士が書類の束を手にしてやってくる。
「有事申請はどれも各地の魔物の大量発生に関するものばかりです。今並んでいる方たちもきっとそうなのではないかと思われます」
「ええ。将軍全員に召集がかかっているわ。この後その件で陛下もご出席の会議を行います。今届いている情報だけでも簡単にまとめておいてもらえないかしら」
「はい。そうかと思いまして、こちらをお持ちしました」
手配の早い兵士は持っていた書類の束を渡す。
「地域ごとに分類してあります。それと集計もまとめてあります」
「助かるわ。ご苦労様」
アミールは書類を受けとって再び一階フロアを見渡す。やはりそこに親友の姿などあるわけもなかった。
(同じ名前の人がいたのかしら……そうよね、いるはずないわ)




