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なんやかんやで二週間が経った。
親父が用意していたのは俺の防具一式と武器だった。
革のスケイルアーマーとエストック。
エストックはまだしもスケイルアーマーはかなり値が張るだろう恐らく俺の渡した金貨に宝石を使ったに違いない。
「お前が外に出られない分集めてやった...何、正直に言うと足が出たが、お前が落ちた時にかなりの金が入ったからな」
そう言って親父は笑う。
「悪いな親父、俺からのプレゼントで渡せるものって言ったら...」
「要らねぇよ生きてるだけで十分だ...だが母さんにはしっかり挨拶していけ」
「分かってるって、まぁレティには俺自作の本と、攻撃型と防御型の魔法陣一式とお袋には俺お手製の人形ライリー君を作ったから許してくれるさ」
そう言って束になった紙と汚い針仕事で作った人形を机に置く。
「んじゃ、偶に帰ってくるよ、逝ってきます」
そう言って荷物を粗方持ち扉を開ける。
外に出ると妹とお袋、それとおまけの様に居る妹の彼氏。
お袋と妹は分かるが、彼氏が待ち構えているのに思わず吹き出す。
「お前に妹....いや、レティを! いや、言葉出ねぇわ上から宜しくやろうと迫ってたの見たからさ」
そう言い笑う。
「兄貴!...あたし達から渡すものも有るの」
そう言って妹がザックを渡す。
「中身空っぽなんだけど」
そう言うと妹が怒る。
「その袋が渡すもの! あと母さんも!」
そう言ってお袋を押す。
「何かと必要でしょ?」
そう言って渡されるのがズシリと重い小袋を渡される。
「要らねぇって! 色々もう貰ったよ!」
そう言って雑貨類を指さす。
「でも...」
「母の愛はわかったからもう良いよ!」
そう言って分厚い胸筋と丸太のような腕でハグをする。
「よし! 十分貰った!」
そう言って離し次に彼氏を見て手を出す。
「はい」
そう言うと彼氏は俺の手を握る。
「レティはしっかり守ります!」
「ちげぇよ! 何かくれるからここに居るんじゃねぇのか?」
そう言って腰に付いている短剣を俺は見る。
「よし、それ貰うわ!」
人外の速度でそれを引ったくり短剣を取る。
「何、良いもん使ってるじゃねぇか....家紋...お前貴族か?」
「はい! セバスチャン・ベルリットと言います!...父親が準男爵なんで法服貴族なんですが」
「へぇ....腐っても貴族だ、青い血で家の家を巻き込むなよ?」
「はい!...で、その短剣なんですが....」
「あ!?」
ガラテルの声が響き、目が赤く光る。
「いえ、良いです差し上げます」
「よし、まぁしっかり妹の事見てくれたら何かあった時助けてやるさ」
そう言って肩を叩き跳躍し、一番大きな柿の木の頂にある枝に乗る。
「さらばだ諸君! 次にあうときはぁぁぁぁあ!」
柿の木の枝が折れ頭から落ち首が変な方向に曲がる。
「兄貴!」
「ライリー!」
「お兄さん!」
「なんだどうした!」
親父も扉から飛び出し俺を見る。
視界が明後日の方向を見ているが、頭を掴み無理やり戻した後家の屋根に飛び乗りもう一度言う。
「さらばだ諸君! 次に会うときは...もういい!また会おう!」
そうして俺は去った。
まぁ近場の諸侯の軍に傭兵で入ってみますか。
ぼーっと考えながら街並みを歩く。
身の丈7尺近い大男。
ある者は道を開けある者は後ろ姿をガン見する。
手を額に当て影を作り空を見上げる。
その顔は爽やかな表情をしているが、如何せん切り付けられた顔は歴戦の武士をしているせいで、気色が悪い。
「武士は食わねど高楊枝、食わなくても良い武士は何楊枝だ?」
考えていることも凄まじくどうでも良い事だが、歩く所は、変わらず往来の真ん中を歩く。
肩で風を切り歩く姿はすごく様になるが遅い速度。
世話しなく歩く商人や馬車には迷惑な話だが、避けてるれるだけありがたい。
フラフラと歩き向かう先は駐屯地だ。
親父曰くここ最近一層きな臭くなるこの情勢。
諸侯の保存のきく食べ物の買い占めに、武具の値上がり。
大方山賊の山狩りと言う事らしいが、俺は違うと思う。
この国は腐るどころか、良い香りがするくらいの宗教国。
そりゃ、神が顕現し、魔王を仕留めた勇者、飛ぶ鳥が喜んで飛び込み買い殺して貰おうとする程の列強国。
最初は魔物の攻撃が激しかったらしいが、神のやった奇跡のおかげで、この国は今や安泰国家だ。
城壁は壊れず、すべての池は聖水で満たされついでに降る雨も聖水と来たもんだ。
魔王との聖戦を始めるかと言う所でやって来た勇者と言う兵器に、祝福された殺し屋集団。
最初は城や、街を守る為に居た兵士たちも手持無沙汰だろう、余った余力でじゃあ周りの国々を平定するはずだ。
俺はそう考え、駐屯地へ向かう。
家から出て早二時間たどり着いた駐屯地で俺はそこでもぼーっと順番が来るのを待っていた。
本当なら何処かの傭兵団に入って一律の給金を貰った方が楽だし安全と聞くが、俺は単体での申し込み、目立てるだけ俺は目立って地盤を築く事にした。
何相手は人間、俺の反応速度に対応できるやつは少ない、下手な致命傷を受けて魔物だともバレないはずだ。
「はい、次テントに入れ」
俺の番が来たようだ、テントに入る。
最初が大切だ、俺はそうやって文字を書き移す仕事にありつけた。
渡される羊皮紙に名前を書く。
名無しの権兵衛
これで良し、前にも言ったが俺は東の国を愛している。
流暢に漢字を書く。
「拙者は東の国から来た武士である、名前は名無しの権兵衛言いずらければゴンと呼んでくれ」
そう兵士に言う。
「あ、ああその傷は?」
「うむ、拙者の国では元服を迎えると罪人と戦わされる、その時に当たった相手が敵側の武将で有った故負った傷だ、なに、周りの雑兵など瞬く間に殺すことも出来る」
そう言って周りを見る。
周りで効いていた傭兵や、兵士が怒る事もせず目を伏せる。
さっきも言ったが7尺近い大男に傷だらけの両腕、右腕に至っては隠せと言いたくなる程の火傷の跡だ。
目の前の話をしている兵士もさっきから見ている視線は切られ白濁した左目に、顔面の右側を覆う程の爛れた皮膚。
声は焼かれたかの様なガラテルが効きすぎ死霊が喋っているかのような声だった。
見たら分かる通り喧嘩を売っても得をしない相手、なら離れて見ておくのが得なのだ。
「は、はぁ...分かりました、何か証明...いや、良いですその傷跡を見ると歴戦の戦士ですね」
そう言って俺の紙を後ろに回す。
「ではあなたの契約金は日に銀貨3枚、敵を10人打ち取る度に上乗せしていく形で宜しいですか?」
「何!? 拙者を雇うのにたった銀貨3枚!?」
「ひっ! っす少しお待ちください!」
そう言い目の前の兵士は転げるようにテントから飛び出した。
周りを見るも厳つい兵士や、巨漢の傭兵も目を合わせない。
銀貨3枚と言うのは正直に言うと破格の値段だ。
傭兵一人の一日の金額は凡そ銀貨1枚その三倍だ。
暫く待つと先ほどの兵士と別の男が入ってくる。
その男を見て俺は息を飲んだ。
別に恨みも何もないが、影が薄かった槌使いの男だ。
「またごっつい男が来たな....で、お前は銀貨3枚の金額では足りんと言うのか?」
そう言って持ってきた両手持ちのメイスをドスンと地面に置く。
「拙者としては銀貨10枚は欲しい所、何、百でも二百でも敵を殺してやる」
「ほう...そう言えば貴様東の国から来たと言ったな?」
「そうだ、拙者は東の国から来た」
「そうか....」
そう言って槌の男は覆われた兜と総面を外す。
「お、お前...いや、貴方は!」
思わず声が漏れる。
黄色い肌に薄い顔つき、頭部は月代に剃られていた。
「俺はこう見えて東の国の出だ、でお前の高い鼻に彫の深い目、髪は鮮やかな赤毛だが何処が東洋の出だ?」
そう言われ俺は数舜考えて答える。
「ふん俺は、抜け忍だ、天狗の家系と言われている」
はい嘘です、天狗って言っとけばバレない筈だ。
『何藩の忍だ?』
『ソレハコタエラレナイ』
ヤバい、東の国の言葉は覚えているが、話すのは慣れていない。
『....お前魔王を見た事が有るか?』
うわ、めっちゃ迷う、はいと言えば恐らく余裕で雇用されそれ処か貴族まで駆け上れるんじゃねえか?
『ゴメンナサイ、ワタシアズマノクニのデデハナイナニヲイッテイルノカワカラナイ』
そう言うと鼻でため息をついた。
「いや、何でもない...カッァァァァ!」
一挙動で放たれたメイスの突きが俺の頭を掠める。
あぶねぇ! こいつ分かってて攻撃しやがった。
首を傾け避けるもジンジンと傷む耳、若干掠めたようだ、恐らく当たったのはピッとだけだろう、それだけならバレない筈だ。
周りの傭兵たちは椅子から転げ落ち兵士たちも剣を抜き俺を睨む。
「銀貨三枚で良い、分かったお前の強さは十分わかった!」
俺は少し遅れつつも椅子から転げ落ち土下座する。
「ふん....銀貨十枚だ、その代わりお前は最前線で一番に飛び込んでもらう」
そう言って槌の男は外に出る。
「危なかったですね、ヒョウ様の攻撃が当たってたら頭なんか吹き飛んでましたよ」
そう言いながら後ろに居た兵士は剣を収め俺に手を貸す。
「あ、ああ有難う...すごい人が居るもんだ見えなかった....」
そう言いつつ俺は立ち上がり外に出た。
それからしばらくボッチで過ごした...と思うだろ?
そんな事は無い俺は周りの奴らに銀貨10枚貰ったから飲みに行こうぜと誘って仲間を作りまくった。
時には傭兵団の頭や、下っ端のごろつき、衛兵の真似事をしたり、して仲間を作る。
で、一週間程で周りの仲間に顔が売れ、翌日も飲みに行こうと思っていると、招集が掛かった。
呼ばれた先は、国境沿いの砦だ。
どうやら敵の奇襲に会い、取られては無い物の兵糧攻めを食らっているみたいだ。
この駐屯地から馬で3日、徒歩で5日くらいで行ける距離だ。
そこからは慌ただしかった。
隊列を組み皆で歩く。
俺は一番先頭一時間ごとに後ろに回っていくが俺だけずっと先頭だ。
部隊数は1000人規模で、騎兵がその内60騎弓兵が200で残りが歩兵と補給兵だ。
700人の歩兵の先頭で俺はスキップをしたり地面に生えている野花を愛でている。
自分からしたら全てが目新しい物に見え楽しいが、貴族や、兵士からしたら隊列を乱す奴に見えるらしい。
いや、俺もそう思うが、如何せん暇なのがいけない。
まぁまだ歩き始めて2時間ほどだが....
そうしてヘイトと、面白い奴だと色々稼ぎつつ、とうとうやって来た最前線。
隊列を4重に組み前に弓兵を置き左右を騎兵が囲む。
最初に大将が声に魔法を乗せ叫ぶ。
「敵は神に見捨てられし蛮族なり! 我々は女神に祝福されし聖戦士弓兵! 放っえぇぇ!」
その声が響いたあとロングボウ隊が弓を放つ。
二百本の矢の雨は敵部隊に降り注ぐもシールドを上に上げた歩兵隊により阻まれる。
しかし、それでも運が悪い奴がバタバタと倒れたと思うと向こうからも矢が飛来してくるのが見えた。
此方も負けじとシールドを上げ飛んでくる矢を受け止める。
「騎兵隊は敵側面からランスチャージ! 弓騎兵は敵の騎兵を押さえ歩兵は全身!」
声を揃え歩兵が前進する。
盾を互い違いに合わせ進む様はカタツムリが動いているようにも見えるが隙間から出ている槍は砥がれている。
そんなオッサン臭い中を俺も速度を合わせ貰った鍋の蓋の様な盾を揃え進む。
暫く進むと敵側面についた騎兵がチャージをするのが見えた。
矢の攻撃を受け何名か倒れるもその速度は止められず地響きを上げ敵の横腹を食い破り反対側へ飛び出す。
「おおすっげぇ!」
思わず声が漏れ笑みが生まれる。
しかし敵もバカではない、こちらにも騎兵が飛び込んできていた。
徐々に聞こえてくる地響き、その音は土石流が流れて来る音に似ているが、狙っているのは此方の部隊だ。
「シールドウォール!」
声が響き盾を二段三段に構え隙間から槍を出す。
俺も最初は見ていたが怖くなり目を瞑って本気で盾を持つ。
ミシミシと盾が悲鳴を上げ持ち手の部分が変形し始めるも思い切り踏ん張る。
そして音が最高潮に達し手に衝撃が響く。
人馬一体とはこの事だ、貫徹能力は頭蓋骨を軽く貫く力、盾を貫き横腹を逸れ後ろの奴に突き刺さる。
そして数百キロの塊による体当たりだ、馬鹿め、この騎手は死んだ。
他にも突っ込んでくる騎兵は止める声が響く。
騎兵の強みはランスチャージを行い敵の柔らかい所や側面を舐める様に走り抜け槍を当てていく。
馬鹿正直に突っ込んで来たこいつは俺のバカみたいな力に吹き飛び部隊の後ろ側に飛び込んでいった。
俺?俺は左手の骨がバキバキに折れ、つっかえ棒にした足は骨が飛び出し転けそうになるも気合で耐え何事も無かったかのようにふるまう。
これが仮に俺じゃなくても人が2~3人死ぬだけで騎兵を失う。
バカ高いコストでこれは勿体ないな。
痛みで眩むも前を見ると弓騎兵が敵の騎兵を追いかけまわし飛び込んでこれたのはそう多くなかった。
そこに味方の騎兵も合わさりこれでランスチャージの危険はなくなった訳だ。
そしてまた少しずつ前進し、敵の槍とこちらの槍がくっつくかと言う所で....
「死に晒せぇぇぇぇ!」
俺が盾を思い切り盾をこちらを睨んでいた男に投げつけエストックで切り込む。
敵の盾ごと突いた一撃は騎兵のチャージとほぼ同等。
綺麗に乗った攻撃は敵の盾の張り付けている隙間を破りそのまま殴り込む。
たいして力も入れてなかったのだろう、その盾はそのまま刺さったまま一人二人と刺し貫き隙間が生まれた。
敵のとろ臭い動きより早くえぐり込んだ俺は両隣の盾を持っている敵の腕を切り飛ばしエストックを引き抜く。
それに合わせるように周りから見方が隙間に飛び込み槍や剣で敵兵を殺していく。
俺も合わせ片っ端から刺し殺していく。
瓦解した前方は焦りを生み敵は狼狽をはじめる。
「ランスチャージ!」
その声が聞こえたと思うと既に待機していたのだろう敵の裏側を騎兵が舐めとっていく。
どうやら弓兵も既に刈り取っていたようだ、敵が散っていく。
「掃討戦だ! 尻から食い破れ!」
俺はそれでも敵兵を片っ端から殺していく。
ボルテージはMaxだ、脳内麻薬が頭を走り回り目の前が明暗し、殺しまわる。
時には敵を突き刺し骨ごとえぐり取り、短剣で首を切り飛ばす。
武器が折れた時は敵の頭を掴みそれを振り回し周りの敵を撲殺する。
悪鬼羅刹とはこの事だ、敵の槍を受けたらそのまま体を進ませ敵を掴みに行く。
声にならない声を叫び周りの敵を屠り肉片へと変えていく。
近くでその声を聞いた敵は泣き叫び逃走を図ろうとするも掴み思い切り味方に向かって放り投げ餌をやる。
そうして俺は突出し続けていると後ろから声が聞こえた。
「おい! 止まれ! 後退だ!」
「知るかそんなもん! 殺せ! 殺せ! 殺し続けろ!」
引きずり回していた敵を味方に向かって投げる。
「終わったんだ! 敵は敗走している!」
「終わり!? まだこんなに居るじゃねえか!」
「ちげえ! お前が追いかけまわしてんだ!」
そう言われ気が付く、いつの間にか周りの景色が変わりかなり城の近くに居た。
後ろを見ると仲良くなった傭兵の頭が蒼い顔をして止めていた。
息を思い切り掃き出し次の掴んでいた奴の顔を近づけ言う。
「俺の名前は名無しの権平だ、お前は俺の獲物だから逃がしてやるお前の所の貴族に俺の名前をちゃんと伝えとけ」
そう言って手を離してやる。
とぼとぼと歩き自分の陣地に歩いて行くとヒョウ様もとい伊嶋兵右衛門忠一って言う名みたいだ。
「それよりお前、イジマのおっさんがキレ散らかしているから戻ったら行けよ」
「怒られる事なんもしてねぇよ....って言ってもしゃぁねぇか」
そう言いつつ落ちていた剣を拾いつつ戻った。
『ただいま権兵衛もどりました、へぇ代官様には色々便利を図ってもらって恐悦至極ほかに何を差し出せばええんですかい?』
そう言い揉み手をしながら近づく。
『お前...やはり暗黒騎士なんだな』
『はて、暗黒騎士とは大層な名前ですね暗黒が苗字って言うやつですか?』
そう言うとまたメイスが振り下ろされるも俺は避けない。
周りには誰もおらずテントの中に血しぶきが上がり辺りを濡らす。
左肩が砕けメイスがめり込み胸部まで達している。
俺はそのメイスを掴み思い切り力を入れる。
何処までも入る力ミシミシと音を立て柄は曲がり始めそれを丸める。
「どうですか? 楽しかったですか? 私が暗黒騎士もとい、名無しの権兵衛です、帰ってきました...いや、我が暗黒騎士なり、我の名は名無しの権平貴様らの戦争に助太刀しに来たに候」
そう言って丸まったメイスを地面に落とし笑う。
「お、お前....そうか、魔界では世話になったな....」
そう言って俺を見た後メイスを見る。
「糞....俺の金剛棒が...まぁ良い、お前どうやって来た?」
「我はあれから大変だった? もういいや、あれからめっちゃ大変だったんだ、それはもう、それより嫁さんは? 別れちゃった?」
「イリナは身ごもっている、戦場に連れてこれる訳ないだろ...貴様とは積もる話も有るか、あの後は大変だった」
そう言い、椅子に座る兵右衛門
俺はまだ地面に座ったままだ、椅子を探すも無く地面に肘をつき涅槃の体制をとる。
「さて何処から話した物か...」
「ん~...じゃあ伊嶋様の口は堅い方?」
「伊嶋様って...兵右衛門で良い」
「じゃあ俺はゴンちゃんで、勇者の仲間にも一人仲間が欲しいんだ」
「貴様! やはり魔王との繋がりがあるのか!」
「違うって、勇者を裏切るって言うのには近いかも知れないけどさ...よし、今回の報酬は俺いくらくらい稼いだ?」
「金貨10枚だ...だが、お前にはそれ以上の価値は有る」
「じゃあ、俺城落とすからその城あげるからさ俺の言う事を絶対しゃべらない事誓う?」
「....分かった、誓う...が城は要らん大層な話でもなさそうだしな」
「言ったらイリナだっけ? とヒョウちゃんの子供殺すから宜しくぅ、じゃあ心して聞いてもらう」
そうして俺はどんなことが有ったか話した。
魔界に落とされずっぽし掘られた事を細かく話し勇者に助けられた事と最後に置いて行かれた事や、気合で戻った事も話した。
「っていう訳さ、で、さっき言った通り魔物になった俺は勇者とはすっぱり忘れる事にしてここで面白おかしく過ごそうかなとね、まぁ一番頭に来るのが暇って言うのが大きいね」
煙草を肺まで入れた後話しながら出す。
「...そうか...じゃあ次は俺が現世に戻った時の話をしようか...」
「あの後、勇者は泣き血を吐くほど叫び女神の手を切り付けた」
それを聞き吹き出す。
「女神の手どうなった? って切れる訳ないもんね」
「ああ、だが何度も飛び降りようとする勇者をなんとか抑え俺達は現世に戻り勇者は行方不明になった」
それを聞いて吸っていた煙草を落とす。
「おいおい! あの糞剣士はなんで止なんだ!?」
立ち上がりテントを出ようとする。
「何処に行くんだ! まだ話が有る!」
「んなもん嫁さんをしっかり繋ぎ留めなかった糞剣士を叩き殺すためだよ」
そう言いつつもう一度座る。
「はぁ....剣士って事はバルリレント王子の事か」
それを聞き笑う。
「あの糞剣士王子なのか! なんて言う強運天は二物を与えずと言うがあいつ幾つ持っていった?」
王の息子と言う地位に達者な剣捌き、俺に負けるが身長も高く顔も良い、何より顔がイケメンだ。
指折り数え俺との差を考えると腹が立ち地面を思い切り殴る。
ズドンと言う音と共に腕が弾ける。
「かぁぁぁ羨ましいな俺を見てみろ、勝ってるのは身長だけだなんだこの残った汚いもんは金玉の皺か?」
自分で言っていて悲しくなり寝転ぶ。
「まぁ良い、で次は?」
「あ、ああ勇者は居なくなる時言っていたライリーは生きてたって」
「.....死んだよあいつは」
「でも目の前に居るのはお前じゃないのか? ライリー」
「いや、死んでるんだ、俺は人じゃない、そもそもだ戦っている時の俺を見たか?」
「ああ」
「俺は人か? 正直に言うと魔王より俺は質が悪い自信が有るぞ」
脅威の回復能力と低燃費どころか何を燃やして動いているのか分からないこの体だ。
「ユナにお前から説明してやれ」
「したさ、しっかり死んだ証拠として指輪を渡した、そもそも俺の顔を一度見てあいつは怯えた、そこで俺は分かったさ、俺は魔物、彼女は人、まして勇者だ、一緒になる事は不可能、そもそも俺は子供も作れないし頭は狂っている見た目も正直に言うと魔物に近いグールに近い存在だ」
「魔物と勇者か....いいと思うぞ俺は」
「急にデレんな気色悪い! 俺としては王子と結婚してほしい! 意地張ってる訳じゃないぞ、本当に俺はもう人じゃない、理性も有るが、この人は殺しちゃいけない人と殺していい人っていう分け方してるだけでまともじゃないんだ」
「しかしだな....」
「あああもう話してミスった、話し相手欲しさに言うんじゃなかった....ああ、分かった」
すとんと心に何かが落ち噛みあう。
「俺は彼女ユナをまだ愛している、愛しているからこそ隣に居る事ができない何もかも失っても彼女を守る存在って言った方が良いか? 背後霊? 違うな守護霊的な?」
そう言いながら煙草に火を付ける。
「敬愛と言う事か?」
「いや崇拝って言う所かな? 女王様の言う事を絶対聞く的なイクなと言われれば絶対イケないみたいに」
「?...そうか、そう言う所が狂ったと言う所か....」
「そうそう、言いたくなくても出る的な...出る的な」
そう言いつつ俺は笑う。
「だめだ、やっぱりおかしいわ、俺の頭、なんて言えば良いんだろうな沢山の俺が同じ事を皆で言うからはみ出てくる感じか」
そう言って自分の頭を叩く。
「まぁお前が勇者にばれたく無いって事は分かった、武士に二言は無い」
そう言うヒョウちゃんを見る。
「絶対言うなよ? まぁ言ってもしゃあないヒョウちゃんの嫁さんも子供も殺さんよ、でも毎日俺の指を送り付けるからな」
そう言って俺はテントを出た。
眠剤が効いてしまって途中から何書いてるか分からなくなりました
この話は書き直したりするかもしれません
お休み