魔法は力になってくれる
母様が帰ってきた次の日、私は母様と一緒に起きて朝食を食べ、そして、母様がいない間に頑張った魔法の成果を見せた。
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「母様見て見て」
私は手に持っている物を見せると母様は優しい笑みを見せてくれた。
「上手よ~。氷の中にしっかりと火が収められているわ。これはなかなか難しいのだけれど。やっぱり、あなたは私が子供の頃以上に魔法を操るの上手ね」
母様は優しく頭を撫でてくれた。とても嬉しい。
「母様に褒めてほしくて私、頑張りました。他にも水や風、草花もしっかり収められるんですよ。あとあと、自然系の魔法はもちろんですけど、この前より氷や雪が自由に扱えるようになりました」
「そうなの。雪華は本当に魔法が上手ね」
「はい。魔法使っている時、とても安心しますし魔法大好きです!」
そう言うと母様はさらに嬉しそうに笑った。
「魔法もきっとあなたの事が大好きよ。きっと」
「そうだったら、嬉しいです」
「ええ、きっとそうよ。でも、私の方があなたの事が大好きよ」
その言葉を聞いて私は自然と笑みがこぼれた。
そんな私を見て、ふと母様の顔が硬くなり、真剣な表情をした。
「いい雪華」
母様のさっきまでの温かい声が硬さと鋭さを含んだ声となっていた。
「母様?」
私は母様の表情と声に不安を覚えた。
「私達はとてもとても魔力が強くて、精霊や妖精を使役することも物に簡単に命を与える事が出来る。でも、それは私達の力の一端に過ぎない。私達に際限は無いの。だから、悪い人達に狙われてしまうの。そのせいで私達一族はあなたと私、あともう二人、私の弟とあのバカ男だけになったの」
あのバカ男の部分になぜか力がこもっていた。
「決して悪い人にその力を使わせてはいけない。使わせてしまうと多くの人が不幸せになってしまう」
でもねと母様は付け加えた。
「もし、あなたに危険が及ぶ時、必死に守ってくれる人、助けてくれる人、愛してくれる人が現れたら、その人のために全力で使いなさい。魔法もきっと力を貸してくれる」
母様は優しい声に戻って教えてくれた。
「それに、この世は悪い人もいれば、良い人もいる。とても色が溢れている世界なのよ。私も大切な人、良い人達に出会って、世界が色づいたの。だから、どうか世界を人を怖がらないで」
私は母様の話を十分に理解はできなかったが頷いた。
「あと、何があってもこれは忘れないで」
「何ですか?」
私が訊ねると母様は私の耳の口を寄せて、内緒話をするように。
「手を伸ばして、差し出してくれた手を掴んだら、決して離してはいけないよ」
その時の母様は少女のようないたずらっぽい笑みだった。
その後、一週間、私は母様と一緒にいられて、嬉しかった。
そして、母様はまた仕事に行った。
その際、別れる時、私は笑って母様を送った。
帰ってきたらこれからはずっと一緒にいれると疑わないで。
その一週間が母様との最期の楽しい時間だと知らずに。