寝る前のお話
「母様ぁ~~!」
「あらあら、そんなに泣いて、その様子じゃあ、メイド達によっぽど怒られたようね」
少女は母親の寝室に入り、ベットに腰かけて本を読んでいた母親に抱き着いた。母親は少女、娘を優しく抱き返した。母親はベットの脇のテーブルに本を置いて娘の頭を優しく撫でた。
「ぐすっ、うう」
「泣かない、泣かない。あなたの事を憎くて怒っているのではなく、心配したからなのよ」
娘は泣いている顔を上げて、母親の顔を見た。
母親は少し困り顔だが優しい顔をしていた。
「それに、あなたが怒られる原因の一つとして私のせいでもあるわね。ごめんね」
娘は顔を左右に振り、母親の言葉を否定した。
「そんな事無いです。私が急いでたからです」
娘はふんと子供なりに力強く言う様に母親は少し笑みを作ったがすぐさま少し悲しい顔をした。
「ああ、やっぱりあなたはなんて優しい子なんでしょ。そんなあなたのそばにいない母をどうか許して」
母親は優しく娘の顔を撫で、言葉を続けた。
「本当は私もあなたのそばにずっといたいのですがしなければならない務めがあります。でも、それもあと少しです。次ので私の番は終わります。そしたら、あなたと、雪華とずっといれますよ」
その言葉を聞いた娘の顔はみるみる明るい笑顔になった。
「それは、本当ぉ」
「ええ、本当よ」
娘は嬉しさで母親から離れ、部屋の中を飛び跳ねた。
「やったぁーーー!」
その娘の様子に母親も笑顔になった。
「ふふっ、私も嬉しいわ。もう、雪華に寂しい思いをさせないで済むのだから。でも、そろそろ止めないとメイド達が来て、またこわーいお説教が始まってしまうわ」
その言葉を聞いて、娘の行動は止まった。
「やだぁ」
「だったら、今日は大人しく私と寝ましょう。そして、明日は魔法を教えてあげるから」
娘は複雑そうな顔でうんと頷いたが。
「私、母様から魔法を教えてもらうのは大好きですけど、まだ眠くないです」
そう言うと母親はベットをトントンと優しく叩いて。
「それじゃあ、寝るまで私がお話をさせて、私に少しでも母親らしい事をさせて、お願い」
「そんなことないです。母様はとっても優しくて綺麗な母様です。私のとっても大好きな母様です」
「そう言ってもらえて、嬉しいわ。私も雪華の事が世界一大好きよ。だから、そんな雪華と明日も居たいから今日は寝ましょう。ね?」
その言葉に娘は頷いた。
親子は大きく綺麗なベットの上の布団に潜ると母親と娘は寄り添って、横になった。
「それじゃあ、今日はお姫様と彫金師の話をしましょう」
「私、その話大好きです」
「よかった。私も大好きな話よ。むか~し、むか~し、あるところに……」
母親が娘に寝る前に話を聞かせるその光景はどこにでもいる温かい親子の姿で。
その光景を見た人は誰も冷たく美しい氷の城の女王とその娘だよ思わないだろう。