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雪華
「母様ぁ~!!」
玄関ホールに急いで走ると普段は外と中を区切る大きな扉は開かれていて、外には白銀の世界にたたずむ氷の馬車とペガサス、そして、大好きな大好きな母様がいた。
私の声に振り向いた母様はとても優雅で綺麗で慈愛に満ち溢れた笑みを浮かべて手を振った。
私は我慢しきれず母様の元に走り出していた。
でも、玄関ホールの階段を急いで降りる途中で階段を踏み外してしまった。
「あっ」
衝撃に耐えようと目を閉じた瞬間に母様の美しいけど焦る声が聞こえた。
「雪華!」
感じたのは衝撃でも痛みでもなく優しい冷たさだった。
目を開けると私は柔らかい雪の上にいた。
そして、そんな私に近づく心配顔の母様の姿が私の目に映った。
「雪華! 大丈夫? 痛い所はない?」
母様はそう言いながら優しく、でも、決して離さない力で私を抱きしめた。
「うん、大丈夫です。母様が助けてくれから」
そう言うと母様は大きなため息をついたがよりいっそう抱きしめてくれた。
心配してくれている母様には内緒で心配してくれる事が嬉しかった。