幼き子
物心ついた時から私は城の外に出たことが無かった。
ううん、出たい考えが無かった。
だって、私には優しい母様がいたから
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「母様ぁ~! 母様ぁ~! どこですか!」
私の声は廊下に響くが誰も答えてくれる人はいない。
「母様どこいったんのだろう? もしかしたら、私の事嫌いになったのかなぁ」
グスッ、グスッ、目じりに涙を溜めて、声を上げて泣こうとした時、
「お嬢様ぁ! こんな時間にお布団から抜け出して、私は心配しましたよ」
気が付くと、私の世話をしてくれる一人の中の女中が私の目線になって、屈んでくれている。心配そうな顔をして、
「ねぇ、母様はどこ?」
私が涙まじりに訊ねると女中は笑って、私を抱き上げてくれた。
「主様は今、仕事で出払っていると昼間も言いました。寂しいのは分かりますが明日の昼には帰ってくるので、良い子で寝ましょう。主様は必ず帰ってくるので良い子で待っていましょう。ね」
私を抱き上げながら、女中は私の部屋に向かってゆっくり歩いて行きながら私にそう言った。
「本当に?」
私がそう聞くと女中はハイと言って
「だって、私達を作り出してくれた主様はあなたをすごく愛していらっしゃるのですから」
そう答える女中の顔は天井の窓から指す月の光できらきらとはね返し、私の顔も映し出していた。
私は女中達、優しくて強くて透き通っているガラスの彼女達が好きだ。