お姫様抱っこ
「えっ、えっ、え」
冷たい風が割れた窓から入ってくる。その風が私の頬をさわる。
「いいから、行こう」
混乱している私をレオは掴んで立たせようとした。
レオは優しさで外に連れて行こうとする事が分かった。だけど、私は。
「あの、私は外に行けないの。行っちゃだめなの!」
私の大きな声にレオは驚いた顔をした。
「わ、私達の一族は昔から魔力も魔法も強くて、特に女の子は男の子より強いの。そのせいで悪い人から狙われやすくて、捕まったら怖い事や痛い事が待ってるんだって、だから、安全な館、城の中にいるように言われているの。だから、私はずっとここにいるんだ。もう少し大人になるまで」
「じゃあ、悪い人に狙われるからツバキはずっとここにいるのか? 外に出たことが無いのか?」
私はゆっくり頷いた。そして、うつむいた。初めての周り以外からの優しさを断る事になって、でも、どうしようもない。私は外に行ってはいけない。もう少し大人になるまで。外に出る事は出来ない。もし、悪い人に捕まってしまったら、自分の魔力や魔法が悪用されると考えると、とても怖かった。
私が我慢すれば、危ない事はない。我慢しなければならない。だから、私はレオと外にいけない。
「ごめんね。せっかく誘ってくれたのに」
私はうつむいたまま謝ったけど、何も言わない。
あきれたのだろうか。それとも、もう話してくれないのだろうか。そんな不安が頭を駆け回ったが。
「そっか、だったら」
その声と共に誰かに持ち上げられる感覚がした。
「俺がツバキを盗めば、ツバキは自分から外に出たことにならないだろう」
そう言って、レオは私を持ち上げた。
「それに、どんな悪い奴らが来たとしても絶対にツバキは俺が守る」
そう笑ったレオは私を横抱きにして、窓の外に、城の外に飛び出した。