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思い出の夏祭り 〜君が私の気持ちに気づくまで〜  作者: 長岡更紗


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64.誰?

 喧嘩をしたいわけじゃないけど、どうにも腹が立って仕方ない。

 大体、どうして来てほしくないかの理由がわかんない。ちゃんと説明してくれなきゃ、私だって納得いかないよ。

 とにかく……腹は立つけど、話し合わないと。


「ねぇ、どうして私に来てほしくないの?」

「来てほしくないわけじゃねーよ。ただ来られると、俺がつらいってだけ」


 ……だから、それがなんで?? ほんっと意味がわかんない。


「つらいって、なにが?」

「ミジュ、この前、俺にすっげー残酷なこと言っただろ」

「……残酷なこと?」


 な、なにぁ言ったっけ……私、そんなに酷いことは……

 あ!! もしかして、あれ? 不倫をやめろって言ったこと? それ以外に考えられない。


「あれはだって、仕方ないでしょ? 私は、拓真くんのためを思って……」

「俺のためだって言うなら、放っといてほしかったよ」


 そんなに、泥沼な展開になっちゃってるの? 私が余計なこと言ったせい?

 拓真くんの顔は悔しそうで……少し、申し訳なくなってきた。


「それなのに、平気な顔して俺ん家にくるミジュに、腹が立った」


 人の恋愛を壊しておいて、能天気に笑ってる私が嫌だったのかな。

 それだったら……ちょっと気持ちはわかるかも。私も事情をちゃんとわかってなかったのに、首を突っ込み過ぎたのかもしれない。


「そっか……ごめんね。よかれと思って言ったことだったけど、余計なお世話だったよね」

「ミジュの、俺を傷つけたくないって気持ちはわかったんだけどさ。やっぱあの仕打ちは、残酷だわ」

「ほ、本当にごめんなさい!!」


 頭をブンっと深く下げる。

 どうしよ……だって、放っておけなかったんだもん!

 でも、どれだけ事態が悪化しちゃってるんだろう……まさか、慰謝料払え、みたいなことになってないよね??


「あの、大丈夫なの?!」

「だから、あんま大丈夫じゃねぇって」

「うそ……それで、いくら払わなきゃいけないの?!」

「あ、いや、別に金はいらねーけど」


 ほっ、よかった。慰謝料請求はされてないみたい。


「その人は、どうなったの?」

「え? その人?」

「その女の人だよ! 拓真くんが別れ話をしたんでしょ?!」

「──は? なに言って…… 」

「まさか、自殺未遂したとか?! 多いんだよ、別れたくない女の人が狂言自殺とか、実際に自殺未遂で病院に運ばれてくること!」

「ちょ、待っ……」

「それで拓真くんは落ち込んでたの? もしかしてその人、もうこの世には……」

「待て、ミジュ!!」


 拓真くんが突然大きな声を出して、私を制してくる。

 一気に畳み掛け過ぎちゃったかも……拓真くんは好きだった女性を死なせてしまった罪悪感でいっぱいだろうのに……。

 拓真くんは眉間のあたりに手を当てて、塞いでる。泣いてるの、かな……。


「あのさ、その話……」

「わかってる、誰にも言わないよ」

「いや、そうじゃなくて……俺と、誰が、なんだって?」

「え? 拓真くんの、不倫相手が、自殺したんでしょ?」

「ふ、不倫相手が自殺?!!!」


 拓真くんが飛び上がるほど驚いてる。私が知ってることに驚いたのかな。

 でもその直後、拓真くんは大口を開けて笑い始めた。


「ぶははははははっ!! どこがどうなったら、そんなことになんだよー?!」

「え……? 自殺してないの?」

「そこじゃなくて……俺が不倫してるって、誰かから聞いたか?」

「……聞いてない」

「俺はそもそも不倫なんかしてねーっつーの」

「そ、そうなの?!」

「そうだよ! 大体わかるだろ、誰とも付き合ったことねーっつってんのに」

「それは、人妻と恋仲だから、付き合ってないって言うしかなかったんじゃないの?」

「ミジュ、どういう思考回路だよ??!!」


 拓真くんは、またヒーヒー笑い出してしまった。

 え、本当に? 本当に、不倫じゃなかったの??

 よ、よかったー!! 本気で心配しちゃったよ!

 拓真くんがひとしきり笑い終えて涙を拭くと、ようやく話せる状態になった。


「大丈夫?」

「おー。まさかの不倫発言だもんなー」

「ご、ごめんってば! だって、好きな人は年上だって言ってたし」

「まぁな」

「じゃあ、誰だったの?」

「ミジュにだけはぜってー教えねぇ」


 うっ、そうだよねぇ……また変な話に持っていかれちゃ困るもんね。

 あーあ、拓真くんの信用をなくしちゃった……。


「ご、ごめんね、色々と」

「もういーよ」


 拓真くんが優しい目をして、その右手を伸ばしてくれた。

 私は条件反射のように頭を差し出す。ぐしゃぐしゃ、わしゃわしゃと、拓真くんの手が何度も私の頭を往復した。

 すごく久々。嬉しいっ。


「私、これからもここへ食べに来ていいの?」

「いーよ」

「嫌じゃないの?」

「もう平気んなった」

「よ、よかった〜〜!!」


 あのまま喧嘩して終わっちゃったら、どうしようかと思った。

 結局、拓真くんに好きな人はいるみたいだし、なんの進展もしてないけど。

 でも関係が後退しなくて、本当によかった。今度からはちゃんと、前進できればいいなぁ。

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