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思い出の夏祭り 〜君が私の気持ちに気づくまで〜  作者: 長岡更紗


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63/80

63.喧嘩

 う、うー……

 なんか、体が軋む……あ、私、床で眠っちゃって……


 ……


 ……


 な、なんで隣に晴臣くんがいるの?!

 ああああああ、私たち、眠っちゃったんだ?!


「は、晴臣くん!」

「ん……あ、おはようミジュさん」


 な、なんか晴臣くんは平常運転だね?! ちょっとは動揺してー!


「うわぁ、あのまま寝ちゃったんすね。もう朝か……」


 晴臣くんは伸びをしながら欠伸をしてる。そんなノンビリしてる姿を見ると、私も落ち着いてきた。


「晴臣くん、今日学校あるよね?」

「あるっすね。ミジュさんは?」

「私も今日は仕事あるの。ごめんだけど、七時二十分までに家を出なきゃ」

「じゃあなんか作るんで、とりあえず朝メシ食いましょう」

「えっ!! うちの冷蔵庫、ろくなもの入ってないよ?!」

「見ていいっすか?」

「い、いいけど……」


 晴臣くんは私の冷蔵庫を見て、うーんと唸っちゃった……恥ずかしい。


「ミジュさん、朝食は和食派っすか、洋食派っすか?」

「洋食……っていうか、いつも食パンを焼いてそのまま食べるだけなんだけど……」

「んー、じゃあ簡単にできるし、パンプディングでいっすか?」

「もうなんでも……お任せしちゃう」

「了解っす!」


 そう言うと晴臣くんは、卵を取り出して手早く作り始めた。

 早送りしてる? ってくらいの動きで、スイーツ系と惣菜系、二種類のパンプディングを作ってくれた。

 朝からこんなご飯食べたの、一人暮らし生活で初めてだよ。

 あんな空っぽで腐りかけばかりの冷蔵庫から、よくこれだけの物が作れたなって尊敬しちゃう。


 食事を終えて仕事に行く準備をすると、晴臣くんと一緒に家を出て鍵を掛ける。


「長い間お邪魔してすんませんっした」

「ううん、色々プレゼントくれたり朝食まで作ってくれて、ありがとうね」


 そんな話をしながら、カンカンと階段を降りていると、下から拓真くんが上がってきてた。

 どうやらコンビニに行ってたみたいで。その帰りに……鉢合わせしちゃった。


「おう、タクマ」

「お、おはよう、拓真くん」

「……」


 拓真くんは私の顔を見た後、晴臣くんの方に視線を移してる。


「昨日、泊まったのか?」

「あー、うん、つい寝ちまって」

「ふーん」


 拓真くんはそれ以上何も言わずに、カンカンと昇って通り過ぎてった。

 ぜ、絶対勘違いしてる……よね? どうしよう……。


「そんな顔しなくっても大丈夫っすよ。学校でちゃんと説明しときますから」


 ど、どんな顔してたんだろう……。でも晴臣くんが説明してくれるって言うなら、大丈夫かな。


「ありがとう、晴臣くん」


 ホッと息を吐きながらお礼を言うと、晴臣くんはニカッと笑って。


「じゃ、仕事頑張ってきてください!」


 躊躇せずに、私の頭を撫でていった。



 今日は日勤でバレーのある日。

 つまり、夕方六時に拓真くんの家でご飯の食べる日だ。

 晴臣くん、ちゃんと拓真くんに説明しておいてくれたかなぁ。

 ちょっとドキドキしながら中に入らせてもらう。


「お邪魔します……」

「あー……どうぞ」


 あれ……いつもの笑顔がない。というか、今日に限らず最近あんまり元気がないんだよね。

 不倫の相手と話し合いして、ちゃんと別れられたのかな。その辺もどうなったのか、ちょっと気になる。聞いても、いいのかなぁ。泥沼になってなきゃいいんだけど。

 いつものように中に入って、洗濯物を畳もうとすると、拓真くんが料理を持ってテーブルに出してくれた。洗濯物は食べ終わった後かな。


「どうぞ、食っていいよ」

「ありがとう、いただきます」


 そうして食べ始めるも、やっぱり拓真くんの目に力がない。


「あの……元気ないけど、大丈夫?」

「うーん……ミジュさぁ、俺ん家来るの平気なのか?」

「平気だけど……どうして?」

「俺は来られるの、あんまり平気じゃねーんだけど」


 ……え? 平気じゃないって……

 なんで?? 晴臣くんとのことを勘違いして?

 それとも、不倫相手と別れさせられて、腹を立ててるの?


「もう来ないでほしいってこと……? どうして? 私、昨日晴臣くんとはなんにもなかったよ?」

「でもさ、ミジュは晴臣の気持ちを知ってんだろ?」

「それは、知ってるけど……」

「それでどうしてあいつを泊めたりするんだよ」


 これは……また心配してくれてるのかな。でもなんかちょっと違う感じもする。


「泊めようとしたんじゃないし、晴臣くんだって泊まろうとしてたわけじゃないんだよ。なんか……つい二人とも寝ちゃったの」


 もっとマシな言い訳があればよかったのに……言い訳にすらなってないね、これじゃあ。


「でも……まぁ、晴臣と付き合うつもりなら、俺ん家にミジュが来るのは、あいつも嫌だろ」

「そんなこと誰が言ったの? 私、晴臣くんと付き合うだなんて、一言も言ってないんだけど」

「じゃあなんであいつを泊めたりしたんだっつー話だろ」


 えー、また話が戻っちゃってるよ! 終わらなくない?!


「けどさ、私だって晴臣くんの家に泊まったり、拓真くんの家に泊まったりしてるじゃない」

「あれは不可抗力だったし、二人きりじゃなかっただろ。俺と晴臣が、お互いに見張り役になってたし」


 拓真くんはグッスリ眠ってたから、あんまり見張り役になってなかった気はするけどね……。でも確かに、二人っきりでは泊まってなかった。二人っきりは今回が初めて。


「とにかく、私は晴臣くんとお付き合いするつもりはないから」


 そう言うと、やっぱり拓真くんは『じゃあなんで泊めたんだ』って顔でこっちを見てくる。まったく納得してくれてないみたい。


「晴臣のこと、好きなんじゃないのか?」

「そりゃあ……嫌いじゃないよ。いい子だもん」

「好きなんだろ?」

「……まぁ……好きか嫌いかで言ったら、もちろん好きだよ」


 好きか嫌いかで言わなくても、好きなんだけど。

 でも、昨日はかなり雰囲気に流されちゃった感があるなぁ。恐るべし、吊り橋効果。


「じゃあ俺のとこより晴臣のとこ行けば? あいつも喜ぶだろうし」


 うわ……拓真くんって、たまに放り投げるような言葉を使うよね……。

 結構それ、グサッと来るんだけど。


「私がここに来るの、そんなに嫌なら、もう来ないよ。でも別に、晴臣くんのところへ行くわけじゃから」

「なんだそれ。俺、ミジュの考えてること、ぜんっぜんわかんねーわ」

「私の方がわかんないよ! そんなに来てほしくないなら、もう来ない! それでいいんでしょっ」

「誰もそこまで言ってねーだろ!」

「言ったよ! 最初に来られるのやだって言ってた!」

「言ってねーって!! 平気じゃないっつっただけ!」


 ハァハァと、ご飯そっちのけでヒートアップしてしまう。

 なんでこんな言い争う羽目になっちゃってるの?!

 でももう、腹が立っちゃって、収まんないよ!!

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