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思い出の夏祭り 〜君が私の気持ちに気づくまで〜  作者: 長岡更紗


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58/80

58.バレンタインデー

 バレンタイン当日。

 仕事を終えて帰ってきた私は、冷蔵庫に入れられていたチョコレートを箱に詰めて綺麗にラッピングをした。

 けど、これをどうしようか。

 拓真くんのために用意したんだけど……拓真くんが作ったんだよねぇ……。

 どうしよう。これを渡すのは失礼かな。

 やっぱりブランドのチョコかなんかを買ってこよう。それで……こ、告白をするんだ。

 どど、どうしよう!!

 緊張してきた!!

 とりあえずコンビニでチョコを買ってこよう!!


 そう意気込んでコンビニに行ったはいいけど、すでにろくなチョコレートは残ってなかった。いかにも義理ですっていうようなチョコレートしか……。

 あ、バレーのメンバーにも義理チョコは渡した方がいいよね。とりあえず、買っていこう。

 いつもの約束の六時になったから、お隣へご飯を食べに行く。

 ど、どうしよ……いつ渡して、いつ告白しよう?

 バッグの中には、八枚の安いチョコと、一応拓真くんが作ってくれたチョコレートを入れてる。

 どっちを渡して告白するか……究極の選択なんだけど。

 でも結局、お出かけ前はバタバタしちゃって、渡す雰囲気にも告白する雰囲気にもなれなかった。やっぱり、帰り道かな。まだまだ緊張は続いちゃう。


 体育館に行くと、三島さんにちょいちょいと手招きされて、そっと話し掛けられた。


「どう? 告白した?」

「ま、まだです。帰りにしようかと……」

「おおー、頑張って!」

「今から緊張させないでください〜」


 もう、なんかすでに心臓が痛い〜〜。

 告白したら、どうなるのかな。オーケーしてくれるのか、断られるのか……。

 とりあえず、お試しでもいいから、お付き合いしてほしいよぉ。

 こ、怖くなってきた……どうしよう。


 全体休憩になると、結衣ちゃんがみんなに手作りのチョコを渡してた。私にも友チョコだと言って、可愛くラッピングされた箱を渡してくれる。

 多分、中身はすごいんだろうな。結衣ちゃんもパティシエ志望だし。彼氏である平さんにだけ、みんなの三倍はありそうな箱を渡してる。そりゃ、差をつけてあげないと、彼氏の立場がないよね。

 けど私のチョコレート、すごく渡しづらくなっちゃったなぁ。来年はもっといいのを用意しとかないと。


「えーと、私もチョコあるんだけど……」

「マジっすか?!」


 きゃー、晴臣くんが喜んでくれちゃってるー!

 百円ちょいの安物なんだよー、ごめんー!


「あの、ごめんね? 来る前に慌ててコンビニで用意したやつだから、大したことないんだけど」


 ペラペラの安物チョコを渡したけど、それでもみんな、喜んでくれたみたい。数が増えるのが嬉しいみたいだね。よかったー。

 男の子たちが、いくつ貰ったのかと話し始めた。チョコ選手権だね。


「よっし、これで俺は七つゲットしたぜ!」


 え! 意外に多い、緑川さん。全部義理チョコかな。


「俺は三つだな。雄大さんは?」


 ヒロヤくんは、彼女と私達だけだったみたい。


「俺はいくつだろ……三十くらい?」

「マジっすか!」

「雄大さんすげー!!」

「ほとんど会社関係の取引先が相手だよ。あと、事務の女の子とか」


 ひゃー、三島さん、そんなに貰うんだ……よしちゃん、怒らないのかな?


「大和さんは、いくつもらったの?」


 結衣ちゃんがジトッと平さんを見る。もうすっかり雰囲気は恋人だね。


「俺は……多分、二十個も貰ってないと思うけど」

「本命チョコは入ってる?」

「ないよ、そんなの。俺も雄大さんと同じで、会社関係だけ」

「そっか」


 それを聞いてニッコリしてる結衣ちゃん。やっぱり気になっちゃうよね。

 今度はその平さんが晴臣くんの方に目を向けてる。


「晴臣はいくつ貰った?」

「俺は今の二つだけっすよ」

「本当に? 晴臣はモテそうなのになぁ」

「ってか晴臣はチョコレートを断ってただろ。俺は見てたぜ!」


 ヒロヤくんが晴臣くんに詰め寄る。緑川さんが「なんで断んだ、もったいねぇ!」と叫んでた。


「俺は、ミジュさんのだけ受け取ろうと思って」

「おい、結衣のチョコレート受け取ってただろう?」

「まぁ結衣には大和さんがいるの、ミジュさんも知ってるし」

「とりあえず結衣のチョコを返してもらおうか。僕が食べる」


 平さんの言葉に、晴臣くんは素直に従って結衣ちゃんのチョコを渡してる。

 チョコが一つになった晴臣くんは、「これでミジュさんのチョコだけになった」と逆に嬉しそうだった。


「い、一ノ瀬くんはいくつ貰ったの?」


 晴臣くんの微笑みを見てられずに、一ノ瀬くんに話を振る。一ノ瀬くんは指を折り折り数えてから教えてくれた。


「十四……あ、十五個かな」

「なにいい!! 一ノ瀬なんかがなぜモテる……?!」


 もー、相変わらず失礼なこと言う緑川さん。性格はすぐには変わらないか。

 緑川さんの言葉に、晴臣くんが説明する。


「一ノ瀬は学校でもモテてるんすよ。取っ付きづらい感じだけど、なんだかんだとさり気なく優しいし。そういうところが女子に人気出んだろうなぁ」

「好きな人に好かれなきゃ、意味ないけどね」


 一ノ瀬くんは、どこか寂しそうに笑いながら言った。まだ、結衣ちゃんのことが好きなのかな? 一ノ瀬くんも素敵な人だから、早くいい人ができればいいなぁ。


「まぁでも、俺より拓真の方が貰ってるだろ?」


 ……ええ?! 拓真くん、そんなに貰ってるの?!

 今まで付き合ったことないって言ってたから、チョコレートもそんなに貰わないのかと思っちゃってた……。

 みんなは拓真くんにいくつ貰ったんだと詰め寄ってる。言いたくなさげだった拓真くんは、ついに折れてその数を口にした。


「うーん、三十五個くらいかな」

「そんなに、なんでタクマなんかが……っ」

「すごいなぁ。そんなにモテるのか、タクマは」


 私の頭の中に、三十四人の美女が立ち並ぶ。最後の三十五人目は私。

 そんなにチョコレートを貰ってるなんて、失礼だけど思いもしてなかった。

 三十四人の美女を相手に、私なんかが勝てるわけ、ない。



「数はあるけどさ。ほとんどが十歳までの女の子か、四十代から六十代くらいのおばちゃんなんだよな……」

「っぶ! お前ホント、誰とでも仲良くなるもんなー! 通学中に、どんだけの人と挨拶交わしてんだよ!」


 一番多くもらってたはずの拓真くんはションボリしてて、ヒロヤくんは大笑いしてる。

 ほとんどが恋愛対象外の義理チョコだってわかってホッとしたけど……逆に言うと、残りのいくつかは本命チョコだったんじゃ? 晴臣くんは、拓真くんが気付いてないだけでモテてるって言ってたし、気になっちゃう……。


「んじゃあ、結衣ちゃんとミジュちゃんはいくつチョコあげたのか、教えてくれよー!」


 緑川さんが悪びれずに聞いてくる。それに対して、結衣ちゃんは本命が一人、後はバレーのこのメンバーと、女の子への友チョコが三つだって答えてた。


「じゃあ、ミジュちゃんは?」

「私は……ここにいる人しかあげてないなぁ」


 そう言うと、拓真くんがあれ? っていう顔をしたけど、なにも言わずにいてくれた。

 あと、一時間弱でバレーも終わる。

 告白する時間が……近付いてきた。

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