51.撮影
招待客がいなくなったところで、私たちはよしちゃんに近付いた。
「よしちゃん!」
「園田! 来てくれてありがとう! ほんっとビビっちゃったよ!」
うわぁあ、今日のよしちゃんの笑顔はとびっきり!!
やってよかったなぁ、私も幸せ!!
「拓真くんもありがとうね。雄大もすごく驚いてたよ」
「ならやった甲斐がありました」
「ありがとな、タクマ。ミジュちゃんも!」
「いえいえ。喜んでもらえて、私も嬉しいです! ねぇよしちゃん、私と写真撮ってもらっていい?」
「もちろんいいよ。撮ろ撮ろ!」
私が素早くよしちゃんの隣に行くと、拓真くんがいっぱい写真を撮ってくれた。ふぁー、満足!
「ありがとう、よしちゃん! 疲れてるだろうのに、ごめんね」
「大丈夫だよ。あ、そうだ。園田、ちょっと待ってて」
そう言うと、よしちゃんは急いで披露宴会場に戻っていく。と言っても、重いドレスに高いヒールを履いているから、いつも歩くよしちゃんのスピードよりも遅かったけど。
少しして戻ってきたよしちゃんの手には、綺麗なブーケが。
「これ、私持って帰るつもりでブーケトスしてなかったんだけど……園田にあげる」
「え……ええ?!」
カサブランカの白くて滝のように流れるブーケ。キャスケードブーケっていうんだっけ。すごく素敵。
トスをせずに持って帰るって気持ち、わかるよ。なのに、私なんかにくれるとか……だ、ダメでしょ!!
「芳佳、持って帰って新居に飾るって言ってたのに……いいのか?」
「私、これをどうしても園田に持って帰ってほしいんだ。雄大はいい? 花言葉でこれに決めたけど、園田にあげちゃっても」
「俺はいいよ。元々人にあげるもんだと思ってたし」
えええ……い、いいの?? どうしよう、嬉しい……っ
「はい、園田、受け取って。次は園田が結婚できるように」
「うわあぁ、ありがとうよしちゃん! どうしよう、嬉しくて泣けてきちゃう〜っ」
「ただのブーケで泣かないの。泣くのは結婚式までとっておきなさい!」
「そんなの、一生泣けないかもしれないじゃない!」
「だいじょーぶ。結婚できるよ、園田も」
ほ、ほんとかなぁ? 結婚、できればいいけど……。
綺麗なブーケ。私もいつか、ブーケを誰かにあげられるのかな。
「あ、ねぇ、カサブランカの花言葉って?」
さっきのよしちゃんの言葉が気になって聞いてみる。
すると二人は顔を見合わせてから、照れ臭そうに教えてくれた。
「色々あるんだけどね。純粋とか無垢とか、祝福とか。その中で一番気に入ったのは……雄大な愛、かな」
「あ、三島さんの名前……っ」
「園田も、雄大な愛に包まれますように……って、園田はこの雄大じゃないからね?!」
「わ、わかってるよ! よしちゃんの場合は雄大な愛じゃなくって、雄大の愛でしょ!」
よしちゃんは夫となった人の腕を取って、あははと楽しそうに笑ってる。三島さんのよしちゃんを見る目が優しくってもう……。
ああ、嬉し過ぎて泣けてきちゃうよ。よかった……よかったねぇ、よしちゃん。
「ふふ、園田もブーケ似合ってるじゃない」
「ありがとう」
「写真撮ってあげるよ。拓真くん、カメラ貸して」
「俺が撮りますけど?」
「拓真くんは園田と一緒に入ってあげてよ。一人で撮るのも寂しいでしょ」
そう言いながら、よしちゃんは私にそっとウインクしてくれた。
よ、よしちゃーーん! ありがとうううう!
「じゃあ俺が撮るから芳佳も入ったら?」
「雄大は黙ってて。いいの、私が撮るんだから」
頭にはてなマークを浮かべる三島さんを制して、よしちゃんは拓真くんの持ってたカメラを奪っていく。
わあ、どうしよ……ドキドキしちゃう。
「ほら、もっと寄って寄って」
私がチラリと拓真くんを見上げると、拓真くんも同じように私を見て、一歩近付いてくれた。
「うーん、まだ違うなぁ。雄大、私達が写真撮った時って、どんな風に立ってたっけ?」
「えーと、確かもうちょっとお互いに体を向けて……こうかな」
三島さんが拓真くんの足を、横じゃなくて少し縦になるようにした。私も三島さんの指示通り、少し内側を向く。
「園田、ブーケはもうちょっと下の方で持つの。そうそう。じゃ、こっち見て笑って」
い、いきなり笑ってって言われても……、む、無理!
「園田、顔が引き攣ってるよ」
「だ、だってー!」
「ほら、拓真くんも笑顔ー!」
「うーん、ミジュが吹っ飛んだ時のことでも思い出すかなー」
「ちょっと、拓真くん!」
「ハハッ」
「も、もう〜」
そう言いながら、私もクスクス笑っちゃった。
その間に、よしちゃんがいっぱい写真を撮ってくれてる。
「よし、これだけ撮れば、一枚くらいはいいのがあるでしょ」
「ありがとうよしちゃん!」
カメラを受け取って、大事に抱える。ううー、嬉しいよ……拓真くんと二人の写真。それも、スーツ姿とパーティドレス姿。さらにはブーケまで!
印刷して、部屋に飾っておこう。
私たちはよしちゃんと三島さんにお礼を言って、拓真くんと一緒に家へ帰った。




