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思い出の夏祭り 〜君が私の気持ちに気づくまで〜  作者: 長岡更紗


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50/80

50.自撮り

 私たちは控え室に戻ると、そのまま解散という流れになった。

 三島さんによければ二次会に出席してと言ってもらえて、丸木田さんや仲本くんら四人は出席するつもりみたい。

 バレーのメンバーは成人してる緑川さんと平さんだけが出席。

 二次会は夜のお店でするから、未成年者は仕方ないね。

 ちなみに私は不参加。本当は出席したかったんだけど、拓真くんと晴臣くんに止められちゃった。信用ないな〜、私。

 まぁ、また心配させちゃうのも悪いし……それに残ったバレーのメンバーで、夕食でも食べようかって話になってるから、そっちに参加することにしちゃった。

 とりあえず、みんな一度帰って着替えてから、午後四時くらいに晴臣くんの家に集合ってことになってる。

 でも私は出口の方には向かわずに、披露宴の会場の前で、披露宴が終わるのを待った。

 せっかくいいカメラを買ったんだもん。絶対よしちゃんの姿も撮りたい。

 そうしてしばらく待ってると、遠くの方から拓真くんがキョロキョロしながら現れた。私を見つけて駆け寄ってくる。


「なんだ、ここにいたのか」

「どうしたの?」

「いや、帰ろうとしたらいなくなってるからさ。同じアパートなんだから、一緒に帰るだろ?」

「あ、ごめんね。先に帰ってていいよ。私、よしちゃんの写真を撮りたいんだ」

「ああ、じゃあ一緒に待つよ。一緒に写りたいんだろ? カメラ貸して、撮ってやるから」


 あれ、そういう意味じゃなかったんだけど……でも確かに、よしちゃんと一緒に写ってる写真は欲しい。お言葉に甘えちゃおう。

 私がカメラを渡すと、拓真くんは色々といじって遊んでる。男の子って、メカ系好きだよね。


「ちょっと練習。ミジュ撮らせて」

「ええ? 私だけ撮るの?? 恥ずかしいよ!」

「恥ずかしくないだろ。その格好、綺麗で似合ってるし」


 そんな嬉しいことをさらっと言って、パシャパシャと写真に撮られちゃう。

 うわぁ、どんな顔していいのかわかんない〜〜。


「おっけー、いい感じに撮れた。なぁ、俺の携帯でも撮っていいか?」

「ふえ?! なんで??」

「いや、リナに送ってやろうかと思って」


 あ……兄バカだ。


「だったら私の写真より、拓真くんの写真を送った方が喜んでくれるよ。私が撮ってあげようか」

「じゃあ一緒に撮ろうぜ」


 ……ふえ?!!

 拓真くんは自分の携帯でカメラを起動すると、私の傍まで来て少しかがんだ。

 顔の位置を、私の高さにまで合わせてくれてる。ひゃああ。


「ミジュ、もっと寄って」


 グイッと肩を抱き寄せられて、勢いで少し頭がこつんと当たった。

 き、きゃーー! 近いよぉ!

 拓真くんは気にせず平気でパシャパシャと写真を撮ってる。


「うーん、服は写んねーな」


 そりゃそうだよ!

 っていうかその写真、私も欲しい。


「ま、しゃーねーか。母さんに送信っと」


 えええ!! 池畑さんに?! リナちゃんじゃないの?! あ、まだリナちゃんは携帯持ってないのかー!

 どう思われるだろ……だ、大丈夫かな?

 うちの拓真に手を出してないでしょうね、とか電話掛かってこないよね? こ、怖いよー、どうしよう……。

 さぁーっと血の気が引いていく。母親は息子をかわいがるっていうし、なるべく池畑さんを怒らせたくないのにー。


「ミジュ? 大丈夫か?」

「え? あ、うん……」

「よく頑張ったよな」


 そう言って拓真くんは私の頭を撫でてくれたけど……ん?? なんの話??


「本当は、まだ好きだったんだろ」


 好きって言葉に勝手に心臓が反応してビクッと動いちゃう。

 そ、そりゃ、まだ好きだよ、拓真くんのこと。っていうか気づいてたの?

 いや、拓真くんが気づくはずもないよね。じゃあなんのことを言ってるんだろう。

 私は撫でられながらそっと拓真くんを見上げる。


「まぁいい男は他にもいるから、落ち込むなよ」


 いい男は他にもいる……拓真くん以外にもってこと? もしかして、遠回しに好きになるなって言ってるの?


「……ミジュ?」


 わ、わかってるけど……可能性は、ほとんどないって。

 わかってたけど……。

 仲良くなれたと思うたびに、突き放してくるんだもん、拓真くんって。悲しくなっちゃうよ。


「大丈夫か? 泣きそうなら、無理してここにいなくていいと思うぞ」

「大丈夫。よしちゃんと写真、撮るんだから」

「……無理すんなよ」


 私はそのままグッと耐えて、披露宴が終わるのを待った。新郎新婦退場という司会者の声が聞こえて、扉からよしちゃんたちが出てくる。

 その後、出席者の見送りが済むまで、私たちは少し離れた場所で見てた。


「やっぱり……羨ましいなぁ、よしちゃん……」


 好きな人と結婚して、すごく綺麗で幸せそうな姿は純粋に憧れちゃう。

 あんな風になりたいって思うのは、女の子なら当然の気持ちだよね。

 視線を感じて拓真くんの方を見ると、捨てられた子犬を見るような、哀れんだ瞳を私に向けてた。……なんで?! 私って、そんなに結婚できなさそう?!

 お、落ち込んじゃうよー。


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