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思い出の夏祭り 〜君が私の気持ちに気づくまで〜  作者: 長岡更紗


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49/80

49.第二のサプライズ

『実はこのサプライズ、新郎である雄大さんが、芳佳さんを喜ばせたくて考えた計画なんです』


 やっぱりここはよしちゃんだけじゃなく、新郎の三島さんも持ち上げておかないとね!

 よしちゃんは私の言葉に驚いたように三島さんを見て、その三島さんは眼鏡の奥の優しい瞳を細ませてる。きゃーもーラブラブ!! 羨ましい!!


『そんな雄大さんの芳佳さんへの気持ちが嬉しくて、私たちは喜んでこの場に来させていただきました。今度はそんな優しい雄大さんへ、私たちからのサプライズです!』


 私は扉の方に手を向けた。

 その瞬間、扉は開かれて、オカシな国のメンバーが入ってくる。

 三島さんを見ると、「えええ?!」と目を見開いて驚いていて。

 ふふ、拓真くんの提案だよ。三島さんを驚かせてやろうって、みんなノリノリだったんだから。

 モニターに映し出された写真は、今度はバレーの最中に撮ったみんなの写真に変わった。これは、私や結衣ちゃんが練習中にこっそり撮ったり、みんなで撮ろうと言って写したものもある。

 私はやってきた平さんにマイクを渡した。

 ようやくここで私の出番は終了。はー、ホッとした! なんとか噛まずにできたよー!


『雄大さん、芳佳さん、本日はご結婚、誠におめでとうございます。えーと、いきなり出てきて誰だと思われたことだと思いますので、簡単に紹介させてください。僕たちは〝オカシな国〟というバレーチームのメンバーです。雄大さんはチームの最年長で、セッターという重要なポジションを担ってくれています』


 写真が、トスを上げてる三島さんの写真に変わる。会場からは、「へぇ」とか「おおー」とかいう声が上がった。嬉しいな、こういう反応。


『では今から一人ずつ、雄大さんへの日頃の感謝と祝福の言葉を伝えたいと思います。まずは、僕から』


 平さんは三島さんの方に体を向けた。モニターは、三島さんと平さんがハイタッチしてる写真を映し出してる。


『三島さんは温厚で、優しくて、でも男らしいのでいつも頼りにさせてもらってます。いつも打ちやすいトスを上げてくれて、ありがとうございます』


 そう言うと、マイクは隣の晴臣くんに差し出され、それを受け取った晴臣くんが口を開く。


『雄大さん、ご結婚おめでとうございます!! 仕事もできてカッコイイし、俺たち未成年をいつも気にかけてくれて、ホント感謝してます!』


 マイクは次に、ヒロヤくんへ。

 ヒロヤくんと真剣に話し合ってる三島さんの写真に変わる。


『雄大さん、いつもナイストスありがとうございます! 俺、雄大さんがセッターでよかったです!!』


 次にマイクが渡ったのは、緑川さん。


『めっちゃ美人な奥さん、羨ましいです!! 俺にも誰か紹介してください! 結婚おめでとうございます!』


 ほんっと最低。客席からはちょっとクスクス笑い声が聞こえるけど……私はさっぱり笑えない。

 マイクは移動して、一ノ瀬くんへ。彼なら安心して見られるや。


『雄大さんは俺たちの兄のような人で……とても頼り甲斐のある人です。ミスをしても、気にするな、切り替えていこうと声掛けしてくれるので、気持ちが楽になります。きっと私生活でもそんな感じだと思うので、素敵な家庭を築けると確信しています。雄大さん、芳佳さん、どうぞ末永くお幸せに』


 次は紅一点の結衣ちゃん。

 みんなが結衣ちゃんを取り囲んで楽しそうに笑ってる写真は、私が撮ったもの。


『ご結婚、おめでとうございます! 普段から凛々しい雄大さんですけど、今日はすごく綺麗で素敵な花嫁さんをもらって、さらに凛々しくなってます! バレーに仕事に家庭に、より一層の活躍を期待してます!』


 そして最後はオカシな国の創設者、拓真くん。

 そのかっちりしたスーツ姿に、ドキドキしちゃう。

 写真は、三島さんと拓真くんが二人で一緒にブロックジャンプしてるのが使われてる。これを撮るの、苦労したー! 普通のカメラだとブレがすごいから、いいカメラ買っちゃったんだよね。

 カッコよく撮れたから、私は大満足。三島さんを理由に、拓真くんの写真もいっぱい撮れたしね。

 その拓真くんが、最後のスピーチを始める。


『俺が雄大さんを知ったのは、別のチームでセッターをしてる姿を見たのが初めでした。見た瞬間、欲しいと思って口説き落として強引に引き抜きました。俺の見る目は確かだったと思ってます』


 三島さん、拓真くんに欲しいって言ってもらえるとなんて……しかも口説き落とし! 強引に?! なんて羨ましい!! 私もそんな体験したい!!


『雄大さんはセッターとしての技量だけじゃなく、人としても優秀っていうか……なんだろ、未熟な俺たちを引っ張って、時には見守って、そうやって成長させてくれるっていうか……。とにかくすげぇ人で、俺たちはみんな、雄大さんのことが大好きです』


 み、三島さん……拓真くんからの、大好き……っくぅ。私も言われたい……っ。


『これからも、俺たちの兄貴分でいてください。雄大さん、芳佳さん、この度はご結婚、おめでとうございます!!』

「「「「「「おめでとうございます!!」」」」」」


 バレーのメンバーが声を合わせて頭を下げる。

 写真は全員集合して、タイマーで撮ったもの。その中に私も入ってるのが、ちょっと嬉しい。

 みんなが頭を上げると同時に、新郎へマイクが渡されてた。三島さんはそれを持ってゆっくりと立ち上がる。


『えーっと……コメントを用意してたんだけど、予想外のサプライズで全部ぶっ飛んでしまいました』


 会場から笑いが起こる。

 ふふ。三島さんでもそんなことあるんだね。それだけ驚いてくれたのかな? サプライズは大成功みたい。やった!


『えーと、バレーのみんな、来てくれてありがとう。なんか最近コソコソ写真を撮られてるような気はしてた』


 あ、そこはバレてたんだ。


『俺はオカシな国に拾われる前は、ずっと別のチームでいたけど……正直、今のチームの方がよっぽど面白い。若い奴らが多いっていうのもあるけど、やるたび成長してくるし、見てて飽きないよ。俺の方こそ、俺をチームのメンバーとして認めてくれて、ありがとう! 結婚してもバレーは続けるから、よろしくな!』


 三島さんの言葉に、バレーのメンバーは誇らしそう。


『そして、遅くなりましたが、芳佳のために集まってくれた看護師の皆さん、本当にありがとうございます! 芳佳がどんな風に働いて、どんなに慕われているのかがよくわかりました。芳佳は人を優先させ過ぎるために自分がしんどくつらい目にあったり、真っ直ぐであるが故に融通が利かなくなって困らせてしまうこともあるかと思います。また、ただ単にミスをすることもあるかもしれません。どうかその時には、看護師の仲間である皆さんに助けてもらいたいんです。もちろん、夫として私も支えていく所存です。これからも三島芳佳を、どうぞよろしくお願い致します!』


 長い言葉の中には、よしちゃんに対するたっぷりの愛情。

 会場内は、大きな拍手で包まれる。よしちゃんも三島さんと同じように立ち上がって頭を下げてた。

 今日からはもう、徳澤芳佳じゃなくって三島芳佳なんだね。

 やっぱり、憧れちゃうなぁ。


 私達のサプライズという名の余興は終わった。

 結果は、大成功って言えるんじゃないかな?

 素敵な素敵な、披露宴だった。

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