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思い出の夏祭り 〜君が私の気持ちに気づくまで〜  作者: 長岡更紗


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48/80

48.披露宴

 鳥白グランドホテルは、控え室でさえも豪華だった。

 十二月の第一日曜日、私達看護師はそれぞれに着飾ったパーティドレスで、今か今かと出番を待つ。

 今日はよしちゃんが結婚する日。私たちはサプライズで登場予定。

 ううう、緊張してきたぁぁあ。


「園田ちゃん、大丈夫?」

「か、噛みまくっちゃっちゃりゃ、どぼじよう?!」

「……落ち着きなさいって」


 丸木田さんに背中をドンっと叩かれる。

 だって、一生に一度の、よしちゃんの晴れ舞台だよ?!

 ヘマしちゃったら……披露宴を台無しにしちゃったら、どうしよう?!

 償っても償い切れないよー!!


 ふと後ろを見ると、バレーのメンバーがうちの看護師と交流を図ってる。

 みんな拓真くんのことを知ってるから、こっちでも拓真くんは人気だね。


「看護師の皆さん、準備をお願い致します。」


 ホテルマンが呼びに来た。いよいよ……出番だ……。


「ミジュさん、笑顔笑顔」

「行ってこい」


 ビクビクしてる私に、晴臣くんと拓真くんがエールを送ってくれる。

 私はコクコクと頷いて、控え室を後にした。

 披露宴会場の扉の前で待っていると、中から司会の人の声がマイクで拡張されて聞こえてくる。


『本日は新婦芳佳さんのために、この方たちが駆けつけてくださいました! どうぞ!』


 扉が開かれて、よしちゃんと仲の良い看護師八人が入っていく。

 うわぁ、新婦のよしちゃん、すごく綺麗。めちゃくちゃ驚いた顔してるけど。

「なんでなんで??」って言いながら、私たちと新郎の三島さんを交互に確認してる。

 司会者が『新婦の芳佳さんが勤務している病院の看護師仲間が、祝福に駆けつけてくれました』と言って、丸木田さんにマイクを渡した。丸木田さんは堂々とマイクを持って話し出す。


『ご紹介に預かりました、私たちは新婦芳佳さんと共に形岡医科大学病院の小児病棟で働く看護師仲間です。本日は三島雄大さん、芳佳さんのご結婚、誠におめでとうございます。一同、心よりお祝い申し上げます』


 みんなで頭を下げる。私の出番は一番最後。やっぱり緊張する……。

 よしちゃんの親戚や、親戚になる人ばかりだもんね。よしちゃんのためにも絶対に失敗しないようにしないと。

 顔を上げると、また丸木田さんが話し始める。


『私たちはこの度、芳佳さんが懸命に仕事をしている姿や人となりを皆様に知っていただきたく思い、スライドショーを作成致しました。あちらのモニターにご注目ください』


 音楽が流れ始め、一枚目の写真が映し出される。

 芳佳ちゃんがリナちゃんの血圧を計りながら、ニコニコ笑ってる写真。これは、池畑さんにお願いしてデータを送ってもらったもの。

 よしちゃんは至るところで患者さんに写真を撮らせてあげてたから、本人に気付かれずに画像を集めるのは結構簡単だったな。


『いつもキリッとしている芳佳さんですが、患者の前だとこのような、とても優しい笑顔になります』


 丸木田さんが次の仲本くんにマイクを渡す。

 その間にも次々と写真は入れ替わっていく。


『芳佳さんは入って来た当初からベテランのような貫禄がありました』


 二人目の看護師の言葉に、よしちゃんの親族席からクスクスという笑い声が上がる。


『患者さんだけでなく、僕たち看護師も、見ていて安心できる人です』


 今度は仲本くんから瀬名ちゃんへ。


『芳佳先輩は後輩の面倒見もすごくいいです。ちょっと厳しいけど、私は何度もよしか先輩に助けられました。つらくて泣いてた時も、よしか先輩だけは気付いて慰めてくれました。優しい素敵な先輩です』


 瀬名ちゃん、そんなことあったの?! 気付かなくてごめんね……。

 マイクはまた隣に移動する。


『芳佳さんは子どもにも人気ですし、実はお母様方にも人気があります。しっかりとした、それでいて丁寧でわかりやすい受け答え。その真摯な態度に、好感度は病院内でも群を抜いていると思います』


 その言葉に、よしちゃんは少し照れ臭そうで、逆に三島さんは鼻高々って感じだ。

 マイクはまたその隣へ。そして隣へ。一言ずつよしちゃんのいいところを挙げて、徐々に順番が近づいてくる。

 あああ、緊張がマックス!! ついに隣まで来ちゃった!


『私は今入院しているマリカちゃんから、芳佳さんにお手紙を預かって来たので読みますね。えーと、よしかおねえちゃんへ。いつもニコニコおねえちゃんが好きです。おくすり飲むのが嫌で泣いてたら、できるよっていってくれて嬉しかったよ。気分が悪い時、背中を撫でてくれてありがとう。よしかおねえちゃんは、私の大好きなおねえちゃんです』


 うわ……子どもの手紙はずるい! よしちゃんがうるうるし始めてるよ!

 つ、次が私?! よりによって、この手紙の後にー?!

 私は回ってきたマイクを受け取る。お、落ち着いて……練習した通りに……。私はスッと息を吸い込んだ。


『私は芳佳さんと同期です。でもいつも看護師長に怒られてる私とは違って、本当に優秀で。普段はすごくクールでカッコいい芳佳さんですが、患者様と向き合う姿勢はとても熱いです』


 そこで私は客席に向いていた体を、新郎新婦席に向けた。


『よしちゃん。一緒に働いて三年。色々あったね。でもどんなにつらかった時でも、涙をひとつも見せず凛としていられるよしちゃんは、本当に看護師の(かがみ)だよ。結婚すると家庭と両立になって大変だろうけど、これからも一緒に頑張っていこうね』


 よしちゃんの顔が、ほんの少しだけ崩れた。泣くところまではいかなかったけど、多分嬉しいって思ってくれたんじゃないかな。


『病院では気を張ることが多いよしちゃん。家族になる雄大さんの前では、素直になっていいと思うよ。もちろん、私たちは仲間なんだから、一人で抱え込まずになんでも相談してね』


 そう言い終えると、司会者がよしちゃんに別のマイクを向けてた。そのマイクに向かって少し鼻をすすった後で、よしちゃんが口を開く。


『ありがとう……みんな……』


 あ、泣いた! よしちゃんの目からころっと涙が滑り落ちた。

 この雰囲気だけでジンときちゃうよね。感極まっちゃったみたい。

  モニターには、白血病患者の颯斗くんが退院した時の写真が映し出されてる。ナースステーションにいた全員で撮ったそれは、みんなすごくいい笑顔でピースサインをしてる。

 隣にいる新郎の三島さんが、新婦のよしちゃんにハンカチを差し出してた。用意してたね、三島さん!

 さぁ、ここまでは上手くいった。ここからがもう一つのサプライズ。

 私はもう一度、マイクを口に寄せた。

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