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思い出の夏祭り 〜君が私の気持ちに気づくまで〜  作者: 長岡更紗


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30/80

30.タコ飯

 次の日は、私のリクエスト通りタコ飯にしてもらった。

 大体午後六時くらいに家に来てくれって言われたから、家に帰ってゆっくりとバレーに行く準備をして、それからお隣に行った。


「ごめん、まだもうちょい。座って待ってて」


 時間ちょうどに行ったけど、まだご飯はできてなかったみたい。

 中にお邪魔させてもらうも、どうにも手持ち無沙汰。かと言って、私が料理を手伝うなんてできるはずもないし……

 ふと見ると、ベッドの上にハンガーがついたままの服が放りっぱなしになってた。帰って来て洗濯物を取り込んで、そのままにしちゃったんだろうな。

 学校帰りにバイトして、ちゃんとご飯を作ってバレーにも行くって大変そう。他の家事なんて、きっと煩わしいよね。よし、私が一肌脱いじゃおう。

 ハンガーから服を外して、一枚一枚丁寧に畳んでいく。

 あ、なんか奥さんっぽいかも? な、なんちゃって!


「ミキー、ご飯でき……ちょ、なにやって……?!」


 拓真くんが私の姿を見て、慌ててご飯をテーブルの上に置いてる。


「あ、勝手にごめんなさい。ちょっとでも拓真くんの家事の手間がなくなればいいかと思って」

「や、うん……嬉しいんだけど、それ……俺のパンツ……」


 え? あ!! ちょうど手に取ったのが、拓真くんのパンツだったー!!

 やだ、よりによって、今とか!!


「あ、ご、ごめんね! でも大丈夫だよ、私、男の人のパンツなんて見慣れてるし!」


 お兄ちゃんもいたんだから、パンツを畳むくらいは慣れてる。それに職業柄、年頃の男の子の剃毛や、尿管を通したことだってあるんだからね?!

 こ、こんな……パンツ、パンツくらい……拓真くんのパンツ……

 はわわわ、ドキドキしちゃう! 拓真くんはボクサーパンツなのか、そうか……じゃなくって!!

 お願い、今は鼻血出ないで!! 変に思われちゃう!!

 拓真くんは複雑そうな顔してるし……ああああっ。

 アワアワしながらもなんとかパンツを畳み終えた。はぁ、まだ心臓が(おさま)らない。


「まぁ……できたから、食べようぜ」


 拓真くんがそう言ったから、洗濯物を畳むのは一時中断してご飯を食べる。

 タコ飯が……なぜか、体に沁みるよ……超美味しい。

 この食感がいいよね。生姜も入ってるっぽい。うわぁ、合うんだこれが!!


「もうこれ美味し過ぎるよーっ」

「だろ? 俺、これが一番好きなんだよな! タコさえ安けりゃなぁ〜」


 美味しいものを食べるって、ホント幸せ!!

 しかも好きな人が作って、好きな人と一緒に食べるんだもん。こんな贅沢は他にないよね!

 私も拓真くんもお腹いっぱいに食べちゃった。おひつの中は見事に空っぽ。

 拓真くんは食器を片付け始めたから、私は洗濯物の続きをする。


「ミキ、置いといていいよ。なんか悪ぃし」

「ううん、私は台所周りは苦手だから、こんなことしかできないし……拓真くんが嫌じゃないなら、させて?」

「ミキが嫌じゃないなら、俺はまぁ……うん、まぁ別にいいけど」

「もう畳んじゃったから、他に手伝えることない?」

「うーん……じゃあ風呂掃除とか?」

「わかった、任せて!」


 そうしてお風呂掃除を終えて出てくると、拓真くんも台所の片付けを終わらせたところだった。


「あ、掃除ありがとう」

「ううん、拓真くんはご飯を作る手間もあるんだから、このくらいはさせて」

「助かるよ。家にいた頃も、家事はほとんど俺の仕事だったからなぁ。やってくれるとありがたい」

「ええ、そうなの?」

「リナが八ヶ月間入院してる時なんかは、家事はぜーんぶ俺の仕事だったよ。家事って大変だよなぁ。料理はいいんだけど、細かい掃除とかすげぇ苦手」


 リナちゃんが入院してた時は、お母さんの池畑さんも付き添いでずっと病院だったもんね。高校生が全部の家事をするって大変だったろうなぁ。

 そういう経験のおかげか、綺麗な部屋にしてると思うけどね。苦手ながらも頑張ってるんだろうな。

 見ると、拓真くんは私が昨日あげたスポーツタオルを手に取ってた。それをいつものスポーツバッグに入れてくれてる。


「ありがとう、使ってくれるんだ」

「当たり前だろ? 折角くれたんだから」

「あ、そういえば、拓真くんの誕生日っていつなの?」


 昨日、タオルをあげた時に誕生日の話が出たから、気になってたんだけど。いきなり聞いて、不自然だったかな?


「え、俺? 四月十四日だけど」


 あーー、もうとっくに過ぎてたー! 引っ越してすぐに誕生日だったんだね……残念。


「そ、そっかぁ……」

「やば、時間なくなってきた。行こうぜ」


 私の誕生日も聞いてくれるかなって思ったけど……興味ないんだろうな。聞かれなかった。ちょっと寂しいけど、仕方ないのかな。

 急いで靴を履く拓真くんの後ろで、私は密かな溜め息を吐いた。

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