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03.犯人捜し

 拓真くんが骨髄液を採取した翌日、リナちゃんは骨髄移植をした。そしてその翌々日に、拓真くんは退院。

 きっと帰る前に、リナちゃんの様子を見に来るんだろうなって思ってたら、やっぱり思った通りだった。


「おはようございます!」


 拓真くんの視線の先には盛岡看護師長。


「おはよう、拓真くん。ドナー大変だったでしょ。大丈夫だった?」

「大丈夫です。俺、鍛えてあるんで」

「ふふ、その顔見たらリナちゃんも喜ぶわね。早く見せてあげてらっしゃい」

「ハイ!」


 彼は嬉しそうに返事をして、リナちゃんの病室に向かっている。

 私になにか一言あるかなって思ってたけど……なにもなかった。目すら、合わなかった。

 多分、この病棟の看護師では、私だけがお見舞いに行ってたのに。ちぇ。


 それでも、肩を落として仕事をするわけにいかない。

 私は気を取直し、頑張って仕事をこなした。


 その日、一緒に仕事を終えたよしちゃんと、ロッカールームで着替えをする。


「ああー、今日も忙しかったー!」

「お疲れ様、よしちゃん」

「あ、そうだ、園田は聞いた? 拓真くんが言ってたらしいんだけど」


 拓真くんの名前にドキンとする。

 な、なんだろう。なにを言ってたのかな。お見舞いに来てくれて、ありがとう、とか?


「病室に、知らない人が来てたらしいよ! 拓真くんはお母さんの池畑さんかと思ってたらしいんだけど、違ったんだって!」


 ……え!! それ、もしかして私?? って、池畑さんに間違えられてたの!?

 池畑さんって四十歳過ぎてるよね……私、池畑さんに間違えられちゃったの? そ、そんなぁ。


「どうやら氷を食べさせてくれたみたいでさ。看護師じゃないの? って聞いたんだけど、白衣じゃなかったんだって」

「麻酔が効いてたんでしょ? 夢だったんじゃない?」


 ロッカールームにいた同じ小児科先輩看護師の丸木田さんが話に入ってきた。


「それが、拓真くんが翌日確認したら、確かに氷を貰いに来た女の子がいたんだって!」

「やだぁ、まさか不審者?」


 ど、どうしよう、不審者扱いされてる!


「私の推理では、拓真くんのことを好きな女の子だね!」


 よしちゃんがフフンと不敵な笑みを浮かべて、自信満々にそう言った。

 どうしよう……合ってる。『それ、私なの』なんて、もう口が裂けても言えない。


「すごく若い女の子だったらしいよ。だから、同級生の女の子が、心配で学校終わってから電車に乗って来ちゃった、って感じじゃないかな! 時間的にも!」


 大ハズレだよ、よしちゃん……。

 私って背が低くて童顔だから、高校生に見られちゃったんだね。もう立派な二十四歳なんだけど。


「じゃあ、調べてみる? 外からの面会者だったら記録があるはずだし。骨髄採取日の夕方、海近市から面会にきた女の子ってわかってるんだったら、結構絞れると思うよ」

「なるほどー!」


 丸木田さんとよしちゃんは探す気満々だ……どうしよう!!

 そんな人はいないってわかっちゃったら、本当に不審者が入ったって大騒ぎになっちゃう!!


「や、やめようよ、二人とも……か、可哀想じゃない?」


 おずおずと提案する私を、二人は『なんで?』という顔で見てくる。


「えっと、だって、自然のままにしておく方がいいと思うんだけど……その高校生の女の子だって、大人に引っ掻き回されたら、嫌だと思うんだよね」

「うーん、そうかなぁ?」

「あー、でもわかるかもー! 大人が出しゃばるなって思ったこと、昔あるわー」


 丸木田さんがそう言ってくれたおかげで、「このままにしておくのも楽しいよね」という大人のちょっと黒い部分を見せながらも、納得してくれたから助かった。



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