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思い出の夏祭り 〜君が私の気持ちに気づくまで〜  作者: 長岡更紗


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20/80

20.怒られる?

 練習はいつも、夜の九時で終わりみたい。

 片付けを終えて外に出ると、私は三島さんと携帯番号を交換する。それを見ていた拓真くんと晴臣くん以外のメンバーが、俺も私もと言い出して、結局全員と交換することになった。


「っつかさ〜。結局ミキちゃんの好きな人は、雄大さんってことだよなぁ〜」


 唐突な緑川さんの発言に、本当に頭が痛くなる。

 もうそういう話……拓真くんの前ではやめてよぉ……泣けてきちゃう。


「鉄平さん、それは違うだろ? ミキが大好きって言ってたのは、ナイスキーと間違えてただけなんだし」

「っぷ、なにそれ」


 ナイスキー大好き事件の真相を知らない三島さんが、少し吹き出してる。もういいよ、いくらでも笑ってください!


「でもさー、普通、昔の知り合いだからって応援に来ねぇだろ? 好きだから追っかけてきたってしか、考えられないね!!」


 緑川さんは、『どうだこの推理!』とばかりに胸を張ってくる。

 もう……本当に、この人どうにかして……。


「ブッブー、外れ! ミキは俺が誘ったから来てくれてんだよ」


 そう言ったのは、もちろん拓真くん。

 みんなの視線が拓真くんに向けられる。


「タクマが? ミキさんと?」

「どういう知り合いなの?」

「うん? 妹が入院してた病院の看護師さんでさ、今住んでる家のお隣さんなんだ。試合の前日に会って、なんとなく誘ったら来てくれただけだよ」


 な、なんとなく誘った……そ、そうだよね。深い意味なんてないよね。

 わかってはいたけど、そう言われるとちょっと落ち込んじゃうなぁ。


「ふーん。でもそれだけで普通来るか?? だってミキちゃん、バレーの経験なんてないみたいだしさー。興味のねー人は、朝から終わりまで試合なんか観たりしねーよ! つまり!」


 つまり? なにを言うつもり、緑川さん! もうやめてー!!


「ミキちゃんは、お前のことが好きなんだ! タクマ!!」


 いやーーーーッ!!

 なんでこの人は、そういうこと言っちゃうの!? 信じられない!!

 拓真くんは驚いてるのか呆れてるのかよくわからない顔してるし……あああ、どうしようっ!!


「……そうなんすか? ミキさん」


 聞いて来たのは晴臣くん。晴臣くんだったら聞き流して、話を逸らしてくれるかもと思ったのに。


「ち、違うよ!? 私、拓真くんのお母さんに、悪いことしないかどうか見てほしいって言われてて……か、監視みたいな感じで行ったの!」

「監視?」


 拓真くんの顔が、急にムッとした。

 わ、わかってるよ、拓真くんは悪いことなんてするはずがないって。でも……この状況で、他にどう言えばよかったの?

 百パーセント振られるってわかってるのに、『そうなの好きなの』なんて言えるわけないよ!

 そんな苛立ちを感じながらふと見ると、緑川さんはどこか嬉しそうに拓真くんの肩を叩いてる。


「おいおいタクマ、子ども扱いされたからって、拗ねんじゃねーよ!」


 元はと言えば、あなたが余計なこと言うからでしょー!!


「別に拗ねてねーし。ミキに面白くもない試合見せちまって、悪かったかなって思っただけ」

「面白くないだなんて思ってないよ! 私、ちゃんとバレー見るの初めてだけど、すごいって思った! また見たいって思ったから、こうして練習にも来ちゃったし……」


 みんながじっと私を見てる。

 あ、ダメだ。変な雰囲気になっちゃった。

 もう、監視なんて言うんじゃなかった……綸言汗の如し。 一度出した言葉は、どうしたって戻らない。

 私は肩を落として、少し頭を下げた。


「ごめん……監視なんて言って、言葉が悪かったよね。そういう意味じゃなくて、拓真くんが楽しくしてるところも見ておきたかったっていうか」


 うわ、言い訳っぽくなっちゃった。


「本当にごめんね? じゃあ私、先に帰るから……みんな、今日はありがとう」


 ダメだ、このまま逃げちゃおう。

 もうバレーは見に来られないよね。折角みんなと仲良くなれたから、残念だけど……。毎回監視に来られてると思ったら、拓真くんも気分良くないだろうし、きっと楽しめない。

 ああ〜、本当に馬鹿なこと言っちゃったな、私……。


「んじゃ一緒に帰ろう、ミキ。じゃあなみんな」


 ふえ!?

 お、送ってくれるの!?

 え、だって……怒って……ないの? 怒るよね、普通??


「ミキさん! 明日は第二中の体育館っす! なにもなかったら、来てください!」


 晴臣くん……。うわぁ、その心遣いにジンときちゃうよ。


「ありがとう、晴臣くん」

「おやすみっす、ミキさん!」

「お疲れさん!」

「おやすみ、園田さん」

「また来てください、待ってます」

「おやすみミキちゃーん!」

「まったねー、ミキお姉さま!」

「おやすみなさーい」


 あれ……? みんな、あったかい。気にして……ないの?

 私がみんなの方を見てぼうっとしていたら。


「ミキ、行くぞー」


 すでに先に行ってしまっていた拓真くん。彼を追いかけて、私は急いで走った。

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