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思い出の夏祭り 〜君が私の気持ちに気づくまで〜  作者: 長岡更紗


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12/80

12.お弁当

 『オカシな国』の第二戦目は、ギリギリだけどなんとか勝ってた。

 結衣ちゃん曰く、トーナメントじゃなくて全六チームの三セットマッチ総当たり戦で、勝ち数の多いところが優勝なんだって。勝ち数が同じだったら、セット数で。セット数が同じだったら得点数で勝敗が決まるみたい。

 次の試合はすぐに組まれていて、拓真くんたちは少しの休憩でもうコートに立ってる。き、きつそう〜。


「ほらほら集中ー!! 一本切ってこー!!」


 結衣ちゃんが叱咤すると、一人だけ色の違うユニフォームを着た晴臣くんって人が、相手のサーブを綺麗に上げる。それを三島さんのトスで、拓真くんが思いっきり叩く。

 決まった、と喜ぼうとしたら、結衣ちゃんが怒り顔で言った。


「線審、今のはギリ入ってたでしょーーーーッ、よく見なさいよっ」


 決まったと思ったけど、線審? はアウトの表示をしたみたい。主審もそれを見てアウトと判断して、相手チームに点が入っちゃう。


「でも相手チーム上手いよ。こりゃ負けるかもなぁ」

「リョウ、負けるとか言わない! 全力で応援!!」

「あー悪い。俺そろそろバイトだから抜けるわ。みんなにすごかったっつっといて」

「もう、仕方ないなぁ」

「あ、結衣、私も帰るね。飽きてきちゃった」

「ちょっと夏花?!」

「だってこの後もまだ試合あるんでしょ? バレー観戦だけで一日潰されるのはちょっとね。一応応援には来たんだし、義理は果たせたでしょ。んじゃ」


 そう言って、リョウくんと夏花ちゃんはあっさり帰っていった。

 まぁ私も、拓真くんがいなかったらそもそも見にすら来てないしね、気持ちはわかっちゃう。結衣ちゃんはすっごく悔しそうな顔してたけど。


「園田さんはまだいます?」

「あ、うん。バレーって詳しくないけど、迫力あって面白いかも。もうちょっと観ていこうかな」

「あーよかった! 高校でマネージャーしてた時は、コート前にいたからそんなことも思わなかったんですけど……二階からの応援は、人がいないとやっぱり寂しいです」


 うん、なんとなくわかる。隣に人がいてくれるだけで、なんか安心しちゃう。

 でも、私達の応援も虚しく、その試合は負けちゃった。相手チームだって練習してるんだし、そう簡単には勝たせてくれないよね。

 試合が終わった後は笑顔で相手チームと握手を交わしてるけど、本当は悔しそう。


「あ、お昼休憩に入るかな? 園田さん、一緒に下に行って、みんなとご飯食べましょうよ」

「え? でも私、お弁当持ってきてないし……」

「ああ、大丈夫! 私持ってきてるし、どうせあいつらも作ってきてると思うんで。みんなのお弁当、摘んじゃいましょ!」

「えええ?!」


 結衣ちゃんに手を引っ張られて、断る暇もなく連れてかれてしまった。

 三島さん、どうか私に気付きませんようにーーーーッ


「お疲れ様ー! さっきの試合、惜しかったねー」


 結衣ちゃんが明るくチームに話しかけてる。拓真くんは息を切らせて、ちょっと疲れた様子で笑ってるだけだった。やっぱり結構、悔しいのかな。


「とりあえず、今からお昼でしょ。私たちも一緒していい?」


 結衣ちゃんの言葉に、スパイカーの一ノ瀬くんが私に目を向ける。


「いいけど、その人は? それと、リョウとナツの姿が見えないけど」

「二人は帰っちゃったよ。で、この人は園田さん。オカシな国を応援してくれてたから、誘っちゃった」


 紹介を受けて、ドキドキしながらペコっとお辞儀をする。顔を上げると、拓真くんが嬉しそうに笑ってた。それだけで、私も嬉しい。


「あ、話してるとこごめん。俺ら、ちょっとそこのコンビニで弁当買ってくるから」


 そう言ったのは、三島さんと平さんと緑川さんの社会人三人組だ。


「雄大さん、大和さん、鉄平さん。俺、山ほど弁当作って来たんで、食べていっすよ」


 リベロの晴臣くんが、なんと五段のお重箱を取り出した。ど、どんだけ食べる気!?


「おー、俺も俺も!」


 それを皮切りに、拓真くんとヒロヤくんと一ノ瀬くんが、自作であろうお弁当箱をドドンと出してくる。


「私も作ってきたんで……よかったら食べてください。もちろん、園田さんも!」

「おおおー、すげーーーー」


 出揃ったお弁当は圧巻だった。三島さんたちだけじゃなく、私も目を丸めてしまう。

 だって……だって、どのお弁当もきらびやか!!

 彩りが良くて、綺麗に敷き詰められたお弁当は、その辺の主婦なんかよりもはるかに出来がいいんだもん!!


 三島さんは結衣ちゃんに渡された割り箸を手にとって、目をキラキラさせている。


「すごいな、お前ら。製菓専門なのに、料理もできるのか?」

「製菓専門学校とはいうけど、普通の調理師免許を取るための授業もあるし。料理が嫌いな奴は、そもそもこんな学校には入んねーだろうしなー」


 し、知らなかった……拓真くん、料理もこんなにできたんだ。

 お菓子も作れるし料理もできるって、私なんかよりよっぽど女子力高いよぉぉ! 私なんか、ほとんど毎日コンビニ弁当だもん!!


「園田さん、はい割り箸。どれを食べてもいいですからね!」


 結衣ちゃんにそう言ってもらえて、私はみんなのお弁当を順に摘ませてもらった。

 どれを食べても、美味しい。飾り付けも完璧。

 こんなにいっぱいのお弁当、絶対に残るだろうと思ってたけど、男性陣の食べる勢いが半端じゃなかった!! 気持ちいいくらいに食べる食べる!!


「そんなに食べたら、午後の試合に影響するよ!」

「食わなきゃ持たねーからいいんだよ!」


 結衣ちゃんの言葉にヒロヤくんが反論すると、みんなはそうだそうだと頷いている。

 あれだけあったお弁当が、瞬く間になくなっちゃった……。

 恐るべし、スポーツ男子の食欲。


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