ドキッ! デブだらけの異世界転生
ここは『デーブバッカ王国』。
この世界の女性はデブが美人。
デブが美しいとされている世界。
ただ太っているだけは駄目。
バスト、ウエスト、ヒップの大きさが同じであるほど美しいとされている。
世の女性達は沢山喰らい、そして理想の体型を維持する事に余念がなかった。
そんな世界で私はベットで目が覚めた。
私の名前は『メリッサ・デートリッヒ』地方伯爵家の4女で13歳です。
ベットから起き上がり近くにあった姿見を見れば。
金髪できめ細やかな髪は腰まで伸び、整った顔立ちに華奢な身体。
ピンクのドレスを着こなす姿はフランス人形みたいだった。
めっちゃ美少女だなぁ。
そう私が思う気持ちと、この華奢な姿で思い悩んでいたという気持ちもあった。
私が今まで生きてきた記憶とは別に、もう1つの記憶がある。
そうです私は転生者です。
私のもう1つの名前は『山野花子』平凡な家庭で育ち、平凡な容姿、平均的な高校大学へ行き。
中小企業だけど就職が決まって、もうすぐ大学も卒業ってところで交通事故で死んじゃいました。
学校帰り信号で待っていたところに、私の隣にいた男の子に向かって車が突っ込んできたんだよね。
「危ない!」って咄嗟に男の子を突き飛ばして、男の子は車の進路から外れてほっと一安心したところで強い衝撃を受けた。
ここで私の意識は無くなったんだけど、即死だったみたい。
目が醒めると見渡す限り何もない真っ白い空間にいて、目の前には真っ白いロープを着たお年寄りが浮かんでいた。
そして「ごっめーん☆」と、ペロって舌を出しながら謝ってきた。
自分がいる場所とか、人が浮かんでいるとかで驚くより、とりあえずジジイのテヘペロにイラっとしたよ。
ジジイは自分は神で、平凡的に生きてきた私がそんな行動を取るのは想定外らしく、急に死んじゃった私の死後の居場所がないと説明しだした。
想定外って……、普通子供が危ない目に合いそうだったら助けるでしょ!
外傷が少なければ生き返らせるのも可能だったらしいけど、グチャグチャの即死だったのでそれも不可能だってさ。
男の子は助かったし、自分の行動に誇らしさもあるから死んじゃったのはしょうがないと思っているけど、このジジイちょっと頭おかしくて「死体見る? 見る!?」とかワクワクしている感じで聞いてきた時はマジで殴りたいと思った。
誰が自分のグチャグチャの死体なんて見たいと思うのよ!
見ることを拒否すると、残念そうな顔がしたけど、ニヤリと笑い1つの提案と言う名の強制案を出してきた。
元の世界で生き返らせるのは不可能だけど、私が死んだ同時刻に異世界の少女が亡くなっていて、その身体を使ってなら生き返らせることは出来るから生き返らせるね。
っと、こちらが返事をする前に転生させられた。
「ちょ~っと、美的感覚が違う世界だけど頑張ってね~」っという声と共に。
そんな訳で私はメリッサとして生まれ変わった。
正確に言えばメリッサの死体に憑依したともいうのかな。
メリッサの今まで生きてきた13年間の記憶も受け継いでいるんだけど、まさかメリッサの死因が服毒自殺だったとは……。
太っている事が美人な世界で、このメリッサはどんなに食べても太れない体質みたいで、肉親からブサイクだなんだとイジメられていた。
しかも心の支えであった幼馴染で婚約者だった人を姉に寝取られているから酷すぎる。
肉親からのイジメは辛かったけど幼馴染の彼の「見た目なんて気にしない」と言ってくれていたのが本当に心の支えだった。
それなのに実は両親に言われて仕方なく付き合っていたと姉を侍らせながら告げられてメリッサの心がポッキリ折れ、この世界に絶望して自殺してしまったみたい。
……メリッサが不憫すぎる。
こんな美少女なのに、生まれた場所が違うだけでこんなに不幸になるなんて。
何より婚約者を含め周りはゴミクズしかいなかったのが不幸すぎる。
私がメリッサのことを悲しんでいると、ノック音がして金髪の太ましい人が部屋に入ってきた。
彼女はメリッサの双子の姉の『デブッサ・デートリッヒ』だ。
髪の色は同じだけど、なんか油でギトギトしているし、顔はニキビだらけ。
太っている人が美人だとしてもコレはないんじゃない?
幼馴染はコレを抱いたんだ。
意外と勇者だね。
「あら、メリッサまだ生きていたの?」
「はぁあ?」
生きていたのってなんだよ。
早く死ねと言っている物言いに私は頭にきてデブッサを睨みつける。
「なんなのその顔は! 婚約者にも裏切られたブサイクな貴女には生きる価値なんてないのよ!」
「私の価値は私が決める。お前にとやかく言われる筋合いはねーよ」
「なっ」
デブッサは目を見開いて固まっている。
今まで反論などしたこともない気弱だったメリッサが荒っぽい口調で言い返したらそうなるか。
「大体私のことをブサイクって言うけど、お前も大概だぞ? なんだよ艶もなければ皮脂まみれのギトギトの髪は! 肌はニキビだらけだし風呂入ってるのか? ちょっと臭うぞ。それにただ食べて太りましたっていう醜い身体は何だよ。それが美しいと思っているのか?」
私に捲し立てられて口をパクパクさせていたけど、茹でタコのように顔を真っ赤にして鬼のような形相になった。
「ブ、ブサイクな貴女に言われたくない!」
「はん。仮に私がブサイクだったとしてもお前もブサイクだという事実は代えられないよ」
「私はブサイクじゃない! カルロス様は綺麗だと言って下さった!」
「カルロス? あー、アイツは嘘つきだからね。どうせ親に綺麗だと言えとでも言われたんだろ」
カルロスはメリッサの婚約者の名前だ。
「それにブサイクな私に何を言われても違うなら気にしなければいいのに、そんなに怒るなんて自分でもそう認識しているんじゃないの?」
「ち、違う。……ち、違うんだから!」
そう言うとデブッサは目に涙を溜めて部屋を飛び出していった。
ドスドスと言う足音が遠ざかっていったと思ったら、「きゃーーーーー」という叫び声がしてドシーーン!と大きな音が鳴った。
何事かと思い私も部屋を出るとデブッサが階段の下でピクピクしていた。
どうやら階段を踏み外して転げ落ちたらしい。
ぷっ、ざまぁ。
使用人達が「大丈夫ですか!?」と駆け寄っているけど、その滑稽な姿に私の心はちょっと晴れていた。
自殺するほど傷ついたメリッサの慰めになんてならないだろうけどさ……。
◇
私は今1人で馬車に揺られながら王都へ向かっている。
メリッサの記憶によれば13歳になると貴族は王都の学園に行って3年間勉強をしないといけないみたい。
この学園へ行かなければいけないのも自殺の要因の1つだったみたいで、見た目が悪い自分は絶対学園でイジメられると思っていたっぽい。
双子のデブッサも本来なら一緒に王都へ行くはずだったんだけど、階段から落ちたことを理由に遅れて行くことになった。
脂肪が助けてくれたのか派手に落ちた割には足を捻ったくらいの軽傷だったのにねぇ。
あれからデブッサは私を避けるようになって、この前は目が合うとさっと逸らしていたよ。
アレくらいの罵倒で避けるなんてメンタル弱すぎじゃない?
デブッサ以外の家族はあまりメリッサと関わろうとしていない。
っというより、ほぼいない者として扱っていた。
ブサイクな娘がいるのが恥だと思っているらしい。
はー、やだやだ、本当にクズばっかりだよ。
まぁ、そのおかげで今のんびりと1人で馬車で王都へ行けてるんだけどね。
これがデブッサと一緒だったらかなりの苦痛だったんだろうなぁ。
馬車の揺れが心地よくてウトウトしていると御者の人がもうすぐ着くと起こしてくれた。
高い場所から見る王都は星型の形をしていて中央に大きなお城が建っていた。
薄っすらと街全体が光ってる感じがして綺麗だった。
「なんか光ってる?」
「お嬢様は王都は初めてなのですね。あれは守護結界の光ですよ」
独り言のつもりで呟いたのに、御者の人に聞こえてたみたいで答えれくれた。
この王都の周辺にはモンスターが出る遺跡や洞窟など多くあり、モンスターを寄せ付けない守護結界が張られている。
そう、この世界は剣と魔法の世界なんだよね!
「あれがそうなんですね。なんか綺麗ですね」
「綺麗かぁ。もう見慣れてしまって考えてもみなかったけど、確かに改めて見れば綺麗ですね」
「ですよね!」
感覚が共有できたのが嬉しくてつい興奮して立ち上がってしまった。
御者の人は驚いた顔をしたけど優しく微笑んでくれた。
それから王都に着くまでの短い間だったけど、軽い雑談をしながら楽しく過ごせた。
こんなことならもう少し早く話せればよかったなぁ。
王都は高い城壁で囲まれていて中に入る為には身分チェックが行われていた。
長い列に並び20分くらいでようやく私達の番になった。
御者の人が衛兵に身分書を渡し、書類を確認してから私の顔を見て失笑していた。
あー、どうせ伯爵令嬢なのにブサイクだなとでも思ったんでしょ。
私が衛兵を睨みつけると、コホンと咳払いをして目を泳がせていた。
「行ってもいいですか?」
「は、はい、大丈夫です。王都へようこそ」
ちょっと焦った様子で通行を許可した衛兵へ、私は少し離れたあたりで手の甲を相手に向けて中指を立てておいた。
Fu◯k you!
「……お嬢様、それは?」
「あっ、あはははは、なんでもないですよ~」
この世界でこのジェスチャーの意味が知られて無くてよかった。
伯爵令嬢がファックサインなんて流石に駄目だよね。
◇
王都に来てから2週間が経って今日は入学式。
会場では新入生が並んでいるけど、あちらを見ればデブ!こちらも見てもデブ!
女性の99%はデブばかりだった。
これだけデブが揃うと圧巻だなぁ。
痩せているのは貴族では私くらいだよ。
後は特待生の平民でちらほらいるくらいかな。
式の最中女性徒から憐れみのような視線を感じるし居心地が悪い。
やっと入学式が終わった。
変に注目を浴びていたせいで無駄に疲れたのでさっさと寮へ戻ろうと会場を出たところで、ぞろぞろと取り巻きを連れた綺羅びやかな人に声をかけられた。
太っているのになんか気品を感じるし優雅さもある人だった。
「突然声をかけてごめんなさい。私は公爵家長女『ビックトリア・ブリュンヒルデ』と申します」
ビックトリア様は、ドレスのスカートの裾をつまみ、軽く持ち上げながら膝を深く曲げてた挨拶、俗に言うカーテシーな挨拶をしているんだけど。
それがすごく綺麗なカテーシーで驚嘆してしまう。
「わ、私は伯爵家四女メリッサ・デートリッヒです。えっと、何か御用でしょうか?」
気品っていうか得もいえぬオーラに気後れして吃ってしまったよ。
「失礼なことだとは分かっているのですが。気になってしまったのでお聞きしたいのです。ご飯はしっかり食べているのでしょうか?」
「……はい?」
「ほら、凄くお痩せになっているので……」
「3食普通に食べています」
「それでは何かご病気でも?」
「普通に健康体です。どんなに食べても太らない体質ではありますが」
「まぁ! それは可哀相に」
ビックトリアは本当に驚いたような顔をしている、貶したいわけでもなくただ純粋に私を心配している感じは伝わってきた。
でも私はこの身体は可哀相だとは思っていない!
「ビックトリア様ご心配ありがとうございます。ですが私は自分の事を可哀相だとは思っておりません」
私はビックトリア様の目を見ながら自分の意思を伝えた。
取り巻き達は「ビックトリア様のお気持ちを踏みにじるなんて、容姿だけじゃなく心もブサイクなのね!」とか「これだからブサイクは! ビックトリア様行きましょう」などなど、私を貶し初めてる。
「貴女は……強い方なのですね。私が愚かでしたわ。さっきの言葉は取り消します」
そういうと私に頭を下げた。
急に頭を下げられると戸惑ってしまう。
取り巻き達もざわざわしているし。
「許して……もらえないでしょうか?」
私が戸惑って返答できないでいたので、頭を下げた状態でチラリと顔だけをあげて私を見つめる。
それが丁度上目遣いな感じになっていて、不覚にも可愛いと思ってしまった。
「ビックトリア様頭をあげてください!」
「許してくださるのですね?」
「許す許さないという話ではないのですが……」
「許してくださらないのですね」
「許します! 許しますから頭を上げて下さい」
「まぁ、それは良かったですわ!」
シュンとした顔に耐えられなくて許すと言うとビックトリア様は笑みを浮かべ私に抱きついてきた。
「ちょっ、ビックトリア様!?」
「メリッサ様、私と友達になってくださいまし」
「はいい!?」
「お嫌ですか?」
「嫌じゃないですか……」
「それでは今日からお友達ですわ!」
より強く私を抱きしめてくる。
なんかプニプニ柔らかくて気持ちがいいし、凄く良い匂いする。
「あっ、そうだ。私は今日はメリッサ様と帰るので貴女達はもうお帰りに……なって?」
「ひっ」
私に抱きついたまま顔だけを取り巻き達に向けて、先に帰っていいよと伝えただけなのに、取り巻き達の顔は恐怖で青ざめていた。
えぇぇ、どんな顔で言えばあんな顔になるのさ。
「……ね?」
「はい! ビックトリア様お先に失礼します!!」
取り巻き達も結構な体型をしていたのに、信じられないスピードで駆けていった。
もうその様はドドドドドドッ!っとバッファローの集団が駆けていったような感じで地響きも凄かったよ!
「ビックトリア様?」
「はい、なんでしょう?」
こちらを向いた顔はニコニコ笑っている。
「えっと。そろそろ離れてもらってもよろしいですか?」
「お嫌ですか?」
「お嫌と言うか恥ずかしいです」
「ならいいではありませんか」
よくないよ!
でも、何故か強く言えないビックトリア様のオーラ。
なんか恐ろしい。
「あれ、ビックトリアじゃないか。どうしたんだ?」
私がどうしようかと手駒いていると1人の男性がビックトリア様へ声をかけてきた。
男性はスラッとした体型でまだ幼い感じが残ってるけど、かなりカッコイイ顔立ち。
金髪碧眼でザ・王子様って感じのイケメンだ!
女性はデブが美人とされているのに、男性への美的感覚は普通なのも不思議。
「あら、殿下こそどうなされたのですか?」
えっ、殿下って本当に王子様!?
「僕は式が終わったから帰るところだよ」
「私は新しいお友達を作っておりましたの」
「へぇ~。新しいお友達ね」
「紹介しますわ。私の親友のメリッサ様ですの」
抱きつくのを止めて私を親友と紹介するビックトリア様……。
さっき友達になったばかりなのに。
「初めまして、伯爵家4女のメリッサ・デートリッヒと申します。お見知りおきを」
私はメリッサの記憶を頼りにカテーシーの挨拶をする。
上手くできたかな?っと殿下を見れば、彼は目を見開いて固まっていた。
あれ……何かおかしかった!?
「えっと、殿下どうかなさいました?」
「……美しい」
「へ?」
フリーズしていた殿下だったけど、私の手を両手で掴み跪き、とんでもないことを言いだした。
「美しい人よ。僕と結婚してくれ!」
はい?
「殿下何言ってますの! メリーは私のですわ!」
メリーって愛称で呼びだしてるしビックトリア様も何言ってるの!?
「殿下もビックトリア様も落ち着いて下さい」
「殿下じゃない。僕はカイルだ。カイルと呼び捨てにしてくれ!」
「メリー。私のことはトリアと呼んでくださいまし」
「む、無理ですよ!」
「カイル!」
「トリア!」
2人は譲らないとばかりに詰め寄ってくる。
誰か助けて!
「カ、カイル様、ト、トリア様、これで勘弁してください!」
流石に呼び捨てなんて無理だし様付けは譲れない。
涙目になりながら懇願すれば渋々ながらも2人は引き下がってくれた。
一安心したけど、まだ気を抜ける状態ではなかった。
「それでメリッサ結婚式は何時にしようか?」
「はいいいい!?」
「殿下させませんわ!」
「ビックトリア邪魔するでない!」
あー、もう無理!逃げよう。
「お二人ともお先に失礼致しまーーーーす」
「「あっ!」」
2人がいがみ合ってる隙に私は全力で逃げた。
この3年間逃げ切ることなんて無理だろうけど2人には合わないように普段は引き籠もろう!
王家に嫁ぐなんて考えられないし。
女性なんてもっと無理だよ!
◇
この学園は入学テストの成績順でクラス分けがされたんだけど、なんと私はAクラスだった。
前世では一応大学を卒業した程度の頭はあったのと、メリッサのこの世界の知識があったので高成績が取れた感じ。
高成績を取れたことは喜ばしいことだよ?
でもそのせいで、私は逃げることに失敗した。
何故かって。
私の席の両隣にトリア様とカイル様がいるからだよ!!
オワタ。
一週間前の私!なんでテストで手を抜かなかった!
お~、意外と簡単じゃん!って喜々として問題を問いていた自分を叱りつけたいよ。
……まぁ、Aクラスだったおかげで良かったこともあったけどね。
デブッサはBクラスでした。
寮で隣同士の部屋だったけどデブッサがずっと避けていたので会わなくてよかったのに、自分がBクラスだったと分かると自慢しにきた。
Bクラスに私の名前がなかったので下のクラスだと思っていたみたい。
私がAクラスだと分かった瞬間、苦虫を噛み潰したような顔になって「これで勝ったと思わないことね!」と捨て台詞を吐いて隣の部屋に駆け込んでいった。
かなり悔しかったのかドタバタと暴れていたみたいだけど、騒音で苦情が出たみたいで三角メガネがよく似合う怖い寮長さんにめっちゃ叱られていた。
うん、ちょっと気持ちがスカッとしたよ。
同じクラスになったけどカイル様は結婚は迫ってこないし、トリア様も不用意に抱きついてこないので、そこは安心しているところだけど。
基本私から離れない。
授業は絶対両隣を確保するし、お昼の学食も席は同じ。
トイレの時なんてカイル様が付いてこようとして大変だった。
流石にお断りしたけど、トリア様お願いだから「私は一緒に行けますのよ?」とカイル様を煽るのは止めて下さい。
そして当然のように個室に入ってこようとするのも止めて下さい!
なんで「え、入れないの?」って不思議そうな顔になるんですか!
2人だけでも疲れるのに私はほとんどの女子達に睨まれている。
トリア様の取り巻き達は私を貶したせいで付いてくるのを拒否られせいで、ある意味自業自得なのにさ。
カイル様狙いの肉食系女子達も私を睨んでくる。
カイル様のお付きの人達も美形でいろんなタイプのイケメン揃い、この人達も一緒にいるか、少し離れて付いてくるので。
私が美男美女(?)を引き連れたハーレム状態であるから「なんであのブサイクが!」って感じらしい。
1人寂しく過ごすのも辛いだろうけど、1人になれないでずっと騒がしいっていうのも辛いんだよ。
代わってくれるなら代わってほしいよ。
まぁ、睨まれているだけで嫌がらせなどのイジメがないのが救いかな。
トリア様とカイル様が終始べったりだから、そんなことできないっていうのもあるかもしれないけど。
「はぁ……」
「メリッサため息なんてついてどうしたんだ?」
「そうですわ。ため息をつくと幸せが逃げるといいますわよ」
「ハハハ……、なんでもないですよ」
この状況が辛くてため息が出てるとぶちまけたいよ。
言えやしないけどさ。
「それにしても流石僕のメリッサ! 凄かったよな」
「そうですわ! 私のメリーは凄いですわ」
凄かったっていうのはさっき魔法の授業で私が放った魔法で案山子が木っ端微塵になったんだよね。
案山子には防御魔法が付与されていて、普通の魔法では傷を付けるのも難しい代物なのに木っ端微塵って何さ。
周りは驚いてたけど、きっと私が1番驚いてたと思う。
メリッサは普通の魔力しか無かったはずのに、私になったことで何かが変わったのかな……。
◇
今日は課外授業で近くの山に来ています。
優秀な人をリーダーにしていくつかのグループを作り、山にいるモンスターの駆除が目的だ。
貴族学校なのになんでこんな授業があるんだろう。
私は魔力が高いという理由でリーダーになってしまった。
トリア様も違うグループのリーダーに、カイル様はお付きの人達と組んでいるみたい。
2人は最後まで私と組むと駄々をこねていたけど認められなかった。
2人と離れられてのんびり出来るかなって思ったけど、このグループの人達が問題かも。
トリア様の取り巻き「デッカラータ」と「フトッテーラ」と「ドーラムカン」の3人に、肉食系女子の「セアブラ」と「ユシ」の2人。
グループが決まって挨拶した時なんて、取り巻き3人からは笑顔で接しられたけど目の奥は笑っていなくて「死ね」っていう副音声が聞こえそうだったよ。
この課外事業、無事に終わるといいなぁ。
……はい、無事に終わりませんでした。
私は今、山の斜面を転げ落ちたところです。
モンスターとの戦闘中、デッカラータに突き落とされた。
「手が滑りましたわ~」って言ってから突き落としていたし確実に確信犯だ!
「イタタタタ」
頭は守りながら落ちたから意識はしっかりしてるけど、いろいろ打ち付けたから身体中が痛いよ。
所々服が血で滲んでいるし。
私の頭上では内容は聞こえないけど言い合いでもしてるのか騒がしい。
「痛っ!」
起き上がろうとしたら左足首に激痛が走った。
足首を触るとかなり腫れている。
捻挫か下手したら折れてるかもしれない。
この足だとこの斜面を登るのも無理そうだなぁ。
このまま寝転んでるわけにもいかないので、痛む左足を庇いながら近くの木まで這って移動して木を背にして座る。
流石に誰か救助に来くれるよね。
あの5人がベース基地へ戻れば私がいないことをカイル様やトリア様が気付くだろうし。
下手に動き回るよりここで待ってた方がいいよね。
まぁ動けないけどさ。
どれくらい経ったんだろう。
辺りは大分薄暗い感じになってる。
足首は拳大くらい腫れてるし、熱でも出たのかボーッとしてきた。
草むらがガサガサ揺れだした。
救助が来たのか期待して声をかけたけど返答がない。
不審に思い身構えていると「グルルルル」と唸り声を上げながら、犬歯をむき出しにした犬型のモンスター5匹がゆっくりと現れた。
まじかーー!
ヤバイヤバイヤバイヤバイ。
モンスター達は観察するように私をジッと見つめている。
私はこの間にいつでも飛びかかられてもいいように攻撃魔法の準備をしておく。
「ガウ」
右目に傷がある他より少し大きいモンスターは一声鳴くと、1匹のモンスターが私に飛びかかってきた。
「光弾!」
「ギャウン」
私の攻撃魔法で飛びかかってきたモンスターは爆発霧散した。
「はぁはぁ、あなた達もこうなりたくないでしょ!退きなさい!」
言葉なんて通じるとは思ってもいないけど、声を張って威嚇してみるが、4匹のモンスターは私を囲むように広がっていった。
私が弱ってるって分かってるんだろうなぁ……。
四方にいる4匹全部に注意を向けるなんて私には無理だし、私の体力を削るように動かれて攻撃魔法も全然当たらなくなった。
頭はガンガンするし、目も霞んできた。
あはは、これは無理かなぁ。
望んで転生したわけじゃないし、1度死んじゃった身だけど、死にたくないよ。
「…光…弾!」
私の右手からは何も出なかった。
魔力も無くなったみたいだ。
私の目から涙がこぼれる。
「死にたく……ないよ。……誰か助けてよぉ……」
魔力切れと熱の為か私の意識はそこでなくなった。
落ちる意識の中、私の名前を叫ぶ声が聞こえた気がした。
「………サ! …ぬな、起き……れ!」
ウルサイなぁ、もう少し寝かせてよ。
「メリッサ! 死ぬな、起きてくれ!」
死ぬ?メリッサって誰?
あ、私だ。
あれ、私はモンスターに襲われて……、あっ!
私が目を開けるとカイル様の今にも泣き出しそうな顔で覗き込んでいた。
「……カイ…ル様?」
「良かった、本当に良かった! 神よ、ありがとう!」
カイル様、あのクソジジイは役立たずだよ。
「カイル様モンスターは?」
「あぁ、僕が倒した」
1人で4匹も!?
カイル様強かったんだ。
「良かった。それならもう安全ですね」
安心したら涙が溢れてきた。
「あれ、すみません」
拭っても拭っても止まらない。
「いいんだよ。怖かったよね」
「……怖かった。怖かったよぉ」
私は泣き続けた。
カイル様がその間ずっと私の頭を優しく撫でてくれた。
「あ、あのカイル様もう大丈夫です」
泣き止んでも撫でてくれていたので、恥ずかしくて私は今顔が赤いと思う。
「うん、そろそろ戻ろっか皆も心配してるだろうし」
優しく微笑みながら帰ろうと提案してくれたけど、私足怪我してるんだよね。
「はい、ですが私足を痛めてしまって歩けないのですが……」
「大丈夫、僕が背負っていくよ」
「えぇ!? 殿下にそんなことさせられませんよ」
「カ・イ・ル! それに他に人はいないんだから、ほら!」
カイル様は私に背を向けて屈んでいる。
私は恐る恐ると言った感じでカイル様におぶさる。
「重くてすみません」
「あはは、全然重くないよ」
あー、そっか他の女性は太ましい人ばかりでしたね。
なんだろうカイル様の背中すごく安心する。
安心感と疲労もあって私は眠くなってきた。
「あれ、メリッサ眠い?」
「はい、少し……」
「寝てていいよ」
私はその言葉に甘えて眠りについた。
◇
目が覚めたら病院のベットにいて、あれから2日も立っていた。
足は骨折していたみたいだけど魔法で既に治っている。
身体中の打撲なども完治しているけど体力回復などの理由で1週間入院しないといけなかった。
入院している間トリア様は毎日お見舞いに来てくれて、学園でのことを話してくれた。
私を突き落としたデッカラータはある意味殺人未遂でもあるから、学園は退学で厳しいと言われている修道女送りになった。
共犯でもある他の2人フトッテーラとドラームカンは1ヶ月の停学ですんだみたいだけど、トリア様は満面の笑みで「ヤっといたのでご安心下さいまし」と言っていた。
怖すぎて何をヤったのかは聞けなかったけど……。
肉食系女子のセアブラとユシの2人は私が突き落とされた後、取り巻き達を糾弾し救援を呼びにすぐ戻ってくれたみたい。
でも2人では思うように戻ることができなくて、かなり時間が掛かってしまったらしい。
お見舞いに来てくれた2人がそう説明して、救援を呼びに行くのが遅くなったことを謝罪してくれたけど、2人はまったく悪くないから謝られると対応に困ってしまう……。
デブッサも1度だけ見舞いに来たんだよね。
また「あら、まだ生きてましたの?」なんて言うから私はブチ切れそうになったけど、フルーツが沢山入ったバスケットを私に付きつけ、凄く小さい声で「無事で良かった」と言い病室を出ていった。
私は唖然として固まっていたけど、その行動がおかしくて声を出して笑った。
デブッサが出ていった後すぐに来たトリア様は、私がずっと笑っているので不思議がっていたけど笑いは止められなかったよ。
実は入院していて1つだけ問題があったりする。
カイル様も毎日お見舞いに来てくれています。
来てくれるのは凄く嬉しいんだけど、私はカイル様の顔をまともに見れなくなってしまった。
カイル様の顔を見れば私の顔は赤くなるし、うるさいくらい心臓がドキドキ鳴る。
えぇ、そうです。
どうやらカイル様の事を好きになってしまったみたい。
助けられたくらいで好きになるなんて私ちょろすぎ。
でも好きになっちゃったものはしょうがないじゃない!
カイル様が来る度に顔を赤くしてるから、絶対カイル様は私の気持ちに気が付いてる。
だって今も私の髪を弄りながらニヤニヤしているし。
う~~、入院中に会うだけでもこれなのに、退院して一緒にいる時間が増えたら私の心臓ドキドキしすぎて止まるんじゃない!?
これからの学園生活が考えると怖すぎて退院したくなーーーーい!
◯
真っ白い空間の中、神と名乗っていたお年寄りは目の前にある映像を見ながらニヤニヤしていた。
「思いつきで転生させたけど、楽しんでいそうだね。流石わし、さすわし!」
神が自画自賛をしていると、背後に青い球体が現れた。
「あ~、やっぱり死亡管理不足に、無断転生させてたんだね~」
「ギクッ」
青い球体の指摘に、神は冷や汗をダラダラ流している。
「た、頼む、黙ってて!」
「ダメだよ~。これが僕の仕事だからね~。後で通知が来ると思うけど多分400年くらい減給だと思うよ~?」
「イヤァァァァァァァァァ」
真っ白い空間の中、神の悲痛な叫び声が鳴り響いていた。
「あれ?」
「メリッサどうしたの?」
「今すごくスカっとすることが起きた……ような?」
「?」
私もよく分からないことなので、カイル様もハテナ顔です。
こう例えるなら、あのクソジジイあたりに天罰が下ったような気持ち。
神様に天罰なんてあたるはずなんてないのにね。
病室から外を見ると私の心を表したかのように雲1つない青空が広がっていた。
お読みくださりありがとうございました。
思いつくままに書き殴ったのでおかしいところが多いとは思いますけど。
感想や評価などいただけると幸いです。
名前変更
ビクトリア→ビックトリア
取り巻き3人の名前追加
「デッカラータ」「フトッテーラ」「ドーラムカン」
肉食系女子の名前追加
「セアブラ」「ユシ」
いろいろ文章追加しました。