表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/9

おじさん、癒しを得る

まず初めに、言い訳をさせてほしい。


何故か?



それは僕が間違っていないからです。

大体、何を間違えたの言うのだろう?


少女を飼うと決めた事でしょうか?



いいえ、間違ってなどいません。 アレは概ね正しかった。

僕は、あの時の判断を褒めてあげたいと思います。


何故なら彼女はこの国の要人。

聞けば、末子とはいえ、この国のお姫様と言うではないですか。

手駒として置いておくには十二分に価値があります。しかも、これは彼女の意志でです。


というか、元々その手筈で攫った少女です。 問題がない。 問題など無いのだ。

それに彼女は…… 『ルナ』と名付けた少女は、とても可愛らしく僕に懐いてくれている。


もし問題があるとすれば、ゼザ国の譲渡が口約束である事だろうか。

しかし、それも本契約という形で縛り終えてしまえば、後から覆せなくなる。


ただ、今回の件―― 僕は何も国を貰い受けようなどと大それた事は考えていません。

これまで通り、情報を流してもらえる立場に就ければ、それで問題がないのです。


これからの国との交渉はメディに任せていく積りですが、その際、切れる札は多いにこした事がないというだけの事です。


そう、何が間違っているのか…… 僕にはそれが分からない。




―― 失礼、少し熱くなってしまったかも知れませんね。









「あの… レグノーゼさん…… 怒ってます?」


「あはは、 ケッちゃん変態がうつるから、 話しかけないで欲しいっす」


「あのー、 レグノーゼさん。 怒ってますよね?」


「そんな幼気な少女を飼うなんてド変態さんと、交わす言葉はありません!」


レグノーゼのぞんざいな態度に、ケーニスは戦々恐々としていた。

ルナは別に現れた2等級魔人の怒気に当てられて尻餅をつき、怯えている。


取り付く島のない状況、しかし、ここはケーニスが何とかしないといけない場面であった。

何とかしなければ駄目だと、悪寒が告げているのだ。


少女を飼うと決めたのはケーニスである。

彼女の幸せの為にも、何とかしなければいけなかった。





レグノーゼが帰還したのは、つい先程の事。

ケーニスが少女を連れ戻ってから数日が経過していた。


戦果を右腕に掲げ、機嫌よくケーニスが居座る執務室の扉を開いた彼女を待ってい居たモノは…… 少女と戯れる男の姿でした。 はい、ケーニスとルナです。


誤解なき様に言っておくと、この時ケーニスはルナの頭を撫でていただけでした。


しかし、レグノーゼからするとそれは看過できない状況。

目の前で行われているのは、主君であるリュミスを裏切る行為。

見知らぬ少女とケーニスの逢瀬。 うら若い乙女と戯れる男の絵面である。


許されるはずが無かった。



レグノーゼは勢い余って手に持った戦果をケーニスに向かって投げつけていた。


飛んできたのは男の首級。

それは、ゼザの裏社会に関わるとある男の末路であったのだが、今はそれどころではない。

ケーニスはそれを振り払うと、レグノーゼを睨む。 勿論、抗議の意を込めてである。


しかし、レグノーゼにも譲れない物があるらしく、尋常ではない圧の睨みを返してきた。



ケーニスの傍から悲鳴が漏れる。

それは隣で腰を抜かしたルナから漏れた悲痛な叫び。


それは仕方のない事だった。

レグノーゼの睨みは、同等級のケーニスですら怯む代物。

人間であるルナが直接受けてショック死しなかっただけでも奇跡といえた。

それに、ルナの事など眼中に無いレグノーゼは、遠慮の無い怒りを貯めた瞳でケーニスに問うていたのだ。


こうなってしまうとケーニスは弱い。 彼はおそらく最弱の2等級魔人である。

そんな彼にレグノーゼの怒りを退けるだけの算段がある訳なかった。




「ねぇ、ケッちゃん? ケッちゃんの言い分が聞きたいっす」


怒り心頭の御様子だが、猶予を与えてくれた様だ。



まだ、チャンスはある。


ケーニスは素直に頷くと、これまでの経緯をレグノーゼに明かし始めた。









さて、言い訳の続きと行きましょうか。


うん、そうですね……

いや、初めから話そうか。 その方がよさそうだしね。



飼う飼わないの問答をルナと終えた辺りから…




あの後、僕は彼女を連れ立って屋敷へと転移しました。


早期の帰還に、メディを多少驚かせてしまいましたが、僕は直ぐに事情を話し事態を収めました。

とは言っても、肝心のレグノーゼは依然姿を消したまま。 僕はそれに付け込んだ形となった訳です。


ただ、これだけは言わせてもらいたい。 これは偶然であった。 と。


別に、レグノーゼに知られる事が怖かったとか、そういう事は無い。

何故なら、先にも述べた通り僕は間違っていからだ。 やましい気持ちなんて…… なかった。



事態の収まった屋敷で、僕は少女を湯に入れた。


誤解なき様に付け加えると、メディに世話をさせました。

少女を入念に洗浄してもらい、元ある姿へと戻してもらう事にしたのです。


勿論、ポーション等薬品の使用も許可しましたよ。

国の要人が傷物じゃ、話にならないからね。



結果。


うん、見違えましたよ。 綺麗で可憐な少女の出来上がりです。


正直、これ程とは思っていなかった。

もしこの姿で「飼って下さい」と言われていたら、僕はイチコロだったと思う。

これは僕がチョロいって訳じゃなく、それだけ彼女の器量が良かったって話。


まあ、それでも魔王いとしのひとには劣るんだけどね。



そんな訳で、無事復活を果たした美少女だったけど…… 僕は彼女の名を知らない事に気が付いたのです。


ただ、それは些事に過ぎませんでした。

どうせ飼うのだから僕が名を付ければいい。 そう思ったんです。


すると興が乗ってしまい…… 何故だろう、不意に思い浮かんだんです。



『ルナ』という名が。



それはとても懐かしい響きで、僕を迎えていた様に思います。


1000年囲われ、2000年勤労した男の何処にそんな記憶があったのか…… 変な話ですが、その感傷は悪くない気がしました。 おかしな気持ちに陥りましたが、僕は彼女をルナと呼ぶ事に決めました。





……ええ。 何というか。


お恥ずかしい話、僕…… いや、私、ケーニスは、魔人を始めて凡そ3000年。


初めて生き物を飼うという行為に浮かれていました。



だってさ、2000年ですよ。 一人身で2000年。


はぁ……



思い返すだけでため息がもれます。


情けない話ですが、寂しい。


僕だって弱音が履きたくなるのです。

エリートだからって一人は…… 辛いのです。


そこにルナが現れました。




フフフ。 いいですか? 


彼女にルナと名付けたその日の事です。

夜更け過ぎに、彼女は僕の執務室に現れました。


ですが、ルナには既に一つ部屋を与えています。

身柄をゼザに返すまでのとりあえずの接待用の客間です。

そこで休んでもらっていた筈なのですが、抜け出してきたようです。


理由を問うと「御主人のお仕事が終わるまで、ここで待ちたい」っと、言うのです……




もうね…… グッときましたよ。(*´ω`*)

それに猫の様に気ままに現れた姿は、中々にグッドでした。



速攻でメディに指示を出して、僕はお休みの時間をとりましたよ。


僕はこの日、彼女を優しく抱いて寝たのです。

勿論、誤解なき様に付け加えると、添い寝をしただけです。


次の日も彼女は僕の部屋に現れました。

何というか…… 待ってくれている人がいるというのは、恐ろしく励みになりまして。


仕事効率アップですよ!⤴


まあ、現状仕事はメディに任せきり。

城への招集も、彼女の手腕に任せました。

僕の仕事と言えば報告書の確認と日々の鍛錬です。


と、まあ何ともブラックな状況ですが、メディには後に報いたいと考えております。



そして、その日の朝。

僕はルナと一緒に朝食を取り、仕事を始めた矢先の事…… レグノーゼ様のご登場と言う訳です。



幸せな時は、あっという間の事でした。




ん? 言い訳になっていない?

そうですね、これは確かに。


吐露してしまっただけですね。





◆ 





事情を聴き終えると、レグノーゼは魂が抜けた様な顔をした後、頬を引く付かせ「間女にケッちゃんが…… 不潔です」と言い残し、執務室を後にしました。

慌てて後を追うケーニス達でしたが、応接室に備え付けられたソファーの上で横たわり不貞腐れるレグノーゼの姿が確認するも、最早これまで、取り付く島もない状況と相成っていたという訳です。


それからというもの、ケーニスはレグノーゼに言い訳を続け、レグノーゼもレグノーゼで何かをブツブツと言葉にしては考え込んでしまっており、時折放たれる殺気にルナが怯えるという何とも不思議な構図を応接室に作り上げていました。



そんな膠着状態を破ったのは、残念な事にケーニスではなく…… レグノーゼでした。


「ペットっす! 飼うって事は彼女はペットという事でいいっすよね?」


何か色々と思案した末の言葉であるとは理解できるが、包み隠さず放たれた暴言に、ケーニスは心を痛めた。

ルナを飼うと決めたが、ペットいう表現には抵抗がある。

小動物扱いしてはいるが、人としての権利は尊重するつもりだった。

ただ、レグノーゼの言い分に間違いはなく、言い返す事が出来なかったのだ。



「はい♡ 私はルナ。 御主人様のペットで御座います」


そんな中、即答したのはルナ本人。

何を思っての言葉か、変に意識してしまったケーニスはついつい「何言ってんのコイツ」とごちってしまった。


しかも、主人ではなくペットの返答に、レグノーゼが不満そうなジト目を向けてくる。


暫し、その視線に晒されながらも、ケーニスは愛想笑いで耐え抜いた。



「まあ、OKっす。 その線で行きましょう。 後はリュミス様次第っすけど……」

「え? 何でリュミスが?」「こ、こっちの話っすよ! アは、アハハ」


不意に出たリュミスの名に驚くも、必死に誤魔化すレグノーゼに深追いはやめておいた。

そこから先は、何となく察しがついたからだ。

ケーニスに思い人がいる以上、そこから先は藪蛇でしかなかった。


だから話を逸らす為に、聞いてしまった。



「てか、ペットなら許されるの?」


これにはレグノーゼもポカーンと呆けてしまった。


ケーニスは魔王いとしのひとに操を立てる。

そのつもりで、極力女の子との接近を避けてきたが、ペットならアリなのかと聞いてみたくなったのだ。

勿論、貞操は守るつもりだが、昔からリュミスに心揺らされていた為、尋ねたくなったのだ。


言葉が過ぎたかもしれない。 ペットとは言わないが、心癒される程度のスキンシップならアリなのだろうか? と、問いかけたかったのだ。


しかし、あまりにも短絡的なケーニスの言葉にレグノーゼが渋い顔をする。



「その御一方だけでお願いするっす。

 ペットなら…… もしかすると許されるかも…… 断言は出来ないっす」


怒りを滲ませながらも譲歩してくれた返答に、ケーニスは大人しく頷いた。

レグノーゼもケーニスの殊勝な態度に、やれやれとため息を漏らすに留まった。










「あ、それとケッちゃん! 言っとく事があるっすよ」

「如何したの? 改まって……」


「ちょっと魔界に行って来るっす」


話しの流れが絶たる急な宣言に、ケーニスはヒヤリとしていた。

とうとう愛想を尽かされたのかと、内心焦っていた。


普段、レグノーゼは出ていく際に声を掛けるような事はしない。

なのにどうして…… 疑念が湧いて来る。



「ケッちゃん、魔軍に報告を上げてるっすか?

 今、魔界と連絡が取れない感じなんっすけど……」



え?



「なんか、まずいっぽいっす。

 確認してくるんで、お暇を貰うっす」


「いや、ちょっと待て! 僕も行く」


「駄目っすよ! ケッちゃんには仕事があるっすから。

 私が戻るまでに、こっちの地盤を固めてほしいっす」


「でも」


「ペットの件は、やんわり報告してあげるっす。

 心配なのは分かるっすけど、そっちの方がいいっしょ?」


悪戯な笑みが、ケーニスを押しとどめる。

レグノーゼに弱みを握られた感じが、どうにも遣る瀬無かった。



「じゃあ、任せるけど、何かあったら直ぐに報告しろよ」


「まかせろっす!」



渾身の笑みで意気込むレグノーゼ。

ケーニスに別れを告げると直ちに転移の予備動作に移った。

レグノーゼは転移が終わるまで手を振り微笑んでいた。


が、ケーニスはその時を見逃さなかった。


消える間際、彼女の表情は一変していた様に見える。

何処か寂しそうなそんな雰囲気。

何時もなら別れの憂鬱と流しただろうが、その意味した処をケーニスは直ぐに知る事になった。




リュミス革命。


リュミスが指導したその革命に、レグノーゼも名を連ねていたのである。

次回は、主人公の視点を離れリュミス回です。

少し過激な表現を含むと思うので、苦手な人は王派閥の魔人が酷い目に合う位に把握してもらえれば、飛ばしても話は繋がると思います。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ