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おじさん、勤務先の件で頭を抱える

何というかあっけないもので、ケーニスの人間界行はアッサリと滞る事無く完了いたしました。


魔都では一悶着あるのでは?っと身構えていたケーニスですが、実際にそんな事は無く、行われたのはスムーズな事務処理と転送装置による長距離移動のみでした。はい。




見送り? 労い? 



そんなものありませんでしたよ……


勤続3000年、ケーニスは長い時の中で得た物とは…… 何を成したのか。

その答えが付きつけられた気がして、とても遣る瀬無く、情けなく、ただ項垂れるし事しか出来ませんでした。



密かに期待していた、ルーネティア陛下との謁見。

美しく、何より愛しのあの人に似た面影がある彼女との対面は、ケーニスにとって心の拠り所であったのだけど。

その願い空しく、叶う事はありませんでした。


替わりと言わんばかりに、ケーニスに応対したのが王派閥のナンバー2、グランツ・マッケリン。

浅黒い肌をした長身のイケメンさんである。


もう一度言おう、『長身』のイケメンさんである。



ホント、ムカつくんですよコイツ。ちょっと背が高いからって、モテやがって!

派閥内の女の子食いまくってるらしいし……(ケーニスの勝手な妄想)

ひょっとして陛下にも手を出しているのでは? グヌヌ… 許しがたい事実だ。許せん。(ケーニスの勝手な妄想)


ルーネティア陛下にあの人の面影が被りこともあり、陛下が汚されているという事実は、ケーニスに何とも言えない感情を抱かせるのである。

故に、ケーニスにとってグランツは潰すべき敵であるのっだが…… 当のグランツは特に感じる事は無いらしく、相手にしていない。

それにケーニスと違い、グランツは叩き上げの実力派である。

魔人等級もケーニスと同等で、非の打ちどころない完璧魔人であり、王派閥内にも一定の勢力をもつ名実供のナンバー2なのであった。

別にグランツがケーニスを敵視してる事は無いのだが…… そこはケーニスが勝手な妄想で捻じ曲げていたのである。


以上がグランツとケーニスの関係性であるが…… 応対時、彼からこんな言葉を掛けられた。


「向こうで、派閥を創る事を禁じる! これは王命である」


とまあ、釘を刺されたのである。

言いたい事はケーニスにも理解できる。


なんせこの先向かうのは人間界。

人間界で暮らす魔族は、言わば下っ端も下っ端。

等級で言うなら7等級以下。魔界最弱のゴミと言われる6等級より下なのだ。

その中に2等級が現れたら、それを首魁に一大勢力となるのでは?と考えたのかもしれない。


不穏の芽は根元から、っといったとこだろう。


現在、魔界では派閥間での些細な衝突が後を絶えない。

きな臭い噂が流れ、内戦に突入する可能性すら無いとも言えないのである。

そんな中、新たな火種になるかもしれぬ新派閥など受け入れられる訳がないのだ。


そんな事、グランツに言われるまでもなく理解しているケーニスではあったが、隣にいるのはリュミス派のラ・レグノーゼ女史である。新派閥をそっくりそのままリュミス派に吸収される可能性を王派閥としては見過ごせなかったのだろう。



……

………


ね? 労い何てなかったでしょ? 僕は悲しいよ。

その後も、挨拶に来る者が現れるでもなく、見送られる事無く、僕は人間界へと旅立った訳で……


まあ、悲しんでる暇なんて無いわけなんですけどね。







ケーニスが送られた先は、一言でいうなら廃墟。

一部荒廃が進み、崩れた景色が幻想的なそんな街。

嘗て人間の都市が存在したその場所は、今や隠れた魔族の拠点となっていた。

とは言ってもこの場所は、転送用に築かれた大規模魔法陣を中心に人避けの結界を何重にも施した施設に過ぎない。ケーニスの勤務先は、また別の場所。


そこから派遣されたであろう魔人が、今ケーニスの前で平伏していた。




「申し訳ございません!」


初対面、それも転送直後から平伏したままの姿である魔人が、突如、大きな奇声と共に謝罪の意を述べてきのである。体勢を変える事無く、声を枯らすほどの勢いでひねり出された謝罪は、ケーニスとレグノーゼを驚かせた。


勢いのままに魔人は続ける。


「本当に申し訳ございません! 本日は、2等級魔人様をお迎えするという事もあり、皆でお迎えをする予定になっていたのですが……」


と語る魔人なのだが、どこか歯切れが悪い。

ケーニスが辺りを見渡しても平伏する魔人一人のみで『皆』など存在していない。


中々先が続かない魔人を見かねて、ケーニスは助け舟を出す事にした。


「別に出迎えなんていらないよ。 仕事が立て込んで忙しかったんでしょ? それなら問題ないよ。

 それに顔を上げてほしいな。 これからは同じ場所で働く者同士、仲間なんだから仲良くしようよ」


出来る限り優しく接するケーニスであったが、やりすぎかなとも思わなくもない。

今後の事を考えるなら、舐められない態度も時には必要だからだ。


必要なのだが……


「恐れ多い! それにあなた様方にあわせる顔など御座いません!

 だって…… どうしたら…… 」


その心配は無用の様だ。 が、どうにも様子がおかしい。

ケーニスが不審に思い問いただそうと思った矢先、レグノーゼが苛立った声音で牽制した。


「あのー、それってまーだ続く感じっすかね? 私らも暇じゃないんっすけど?」

「ヒッ!」


レグノーゼの威圧を受け、魔人が怯む。


「おい、やめろ。 話が拗れるから黙ってろ」

「ム! ケッちゃんだって暇じゃないんだし」

「分ってるなら、頼むからさ」




「……分かった」


納得がいかないという表情は崩さないレグノーゼを何とか窘めるとケーニスは魔人に向き直る。


「それだ、こちらの意図も汲んでほしい。

 要件は早く済ませたい。 これからの事もあるしな」


魔人には悪いけど、ケーニスも少しドスを利かせた対応に出た。

レグノーゼの言う通り、このまま問答を続けても意味がないと感じた為だ。


すると魔人が、蒼白になった面を上げる。


意を決した表情。

全てを覚悟した少女の顔がそこにはあった。


「2等級魔人様…… これから案内する勤務先の件でご報告があります。

 それについてなんですが……」







え?


今なんと?


ケーニスが聞いたのは、耳を疑いたくなる程の出来事。

先程までの状況とは一変し、今度はケーニスが顔を青くする番であった。


怒りが込み上げて来る出来事なのだが、これまで仕事を共にする仲間が一人しかいなかった為、何処か他人事に思えてしまう。ホントに何が如何なってそうなったのか……



「ぷーくすくす。 ウケるっす! え? ホント? それ。 アハハハハハ!」


事情を知ったレグノーゼが馬鹿笑いを始めていた。


本当に他人事で済まないだろうか?

一応、これから初出勤な訳だが…… 駄目ですよね? 多分そこで僕が一番立場が上だし……



本当に頭が痛い。


何でも信じがたい話しなのだが…… 

端的に言うと、勤務初日に勤務先の部下ほぼ全員に逃げられた上司がいるらしい……


はい、僕の事です。(´;ω;`)ブワッ

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