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おじさん、心の内を吐露する

何故こうなってしまったのか?


僕は、これから人間界へと左遷される事とになる。





―――失礼。


挨拶もなく。 前置きもなく。

僕は何を言っているのだろうか・・・



いや、ここは僕の心の中だ。

少しぐらいの愚痴は許されるはず。 許されるよね?



僕はケーニス。 魔人である。

魔界に勤めて3000年。

そう、勤続3000年である。

言葉にするのは簡単だが、長い時を過ごした魔界このちを離れる事になるのだ。

それもこれから向かう先は…… 我が最愛の魔王ひとを封じた勇者が生まれた地、人間界である。


「はぁ~あ」


重いため息を漏らしながら、僕はこの先に待つであろう苦難を思い項垂れるのであった。





ホント、どうしてこうなってしまったのか…… 僕は2等級魔人なのに。


そう、僕は何を隠そう魔界の大貴族なのである。

それもエリートの中のエリート。

無き最愛の王の後を継ぎし最愛の人の妹君。現魔王。深紅の至宝とも呼ばれるルーネティア様の次くらい…は言い過た。王族の血縁(1等級魔人)の次くらいには、偉い筈なのである。


そう、偉い筈なのだ…… が、


「はぁ~あ」


僕のため息はとどまる事を知らない。



何故なら、知っているからだ。



僕は逆らえない。

逆らうだけの力が…… 僕には無いのだから。




※おっと! ここから先は、僕の自分語りだ。

 でも、聞いてもらえると嬉しい。

 何て言うか、今日はとことん語りたい気分なんだ。 そんな日ぐらい、みんなにもあるだろ?





僕は元々魔人ではなかった。 後天的に魔族になった存在である。

元の種はハーフホビット、人間とホビットとの混血であった。



ホビットとは小さな人間と言えば分かり易いだろうか?

パッと見は小さな人間。

しかも顔付きは幼く、その上で綺麗に整ってた容姿の者が多い種族であったそうだ。



あったそうだっと言うのは…… もう、この世にホビットという種が存在していない為である。



ホビットは種として、既に滅んでいた。

滅ぼしたのは人間。それも凡そ3000年程前の出来事であった。


容姿が幼く美しいという認識は他種族から見ても変わらなかったらしく、見る者が見れば邪な劣情を抱く対象になり得たらしい。

ホビットは、その多くが人間に捕らえられ、口にするのも憚られる様な劣情の捌け口となったそうだ。


そう、僕はその生きた証…… とは言っても、もはや遠き日の出来き事であり、人間も滅ぼした種の事など憶えていないのだろう。

それは僕も例外ではなく、記憶の片隅に存在するだけの残滓でしかない。


でも僕は人間が嫌いだ。

何故なら、それは彼らが彼女を封じてしまった為だ。


それは最愛の人。

僕が本来仕えるべき存在。

僕を寵愛し、拾い上げてくれた御方。

もう、お隠れになられたとされている…… 現魔王の姉君。


いや、僕は信じている。彼女が健在であると。

何故なら、現魔王は厳密には未だ魔王化出来ていない1等級魔人だからだ。


知る者は知っている。

魔界がきな臭く荒れているのは、絶対者たる魔王不在に気が付き始めている者がいる為だ。


だからと言って、魔族にとって魔人の等級は絶対不可侵。

最上位者たる魔王を除き、1等級魔人に逆らえる者は存在しないのである。

勿論、同等級者はその限りではないのだが……


だからこそ、僕は彼女が生きている事を信じる事が出来た。

本当なら救い出したい。しかし、僕には彼女の封印を解く力がないのだ。


現在、彼女は嘗ての居城にと共に魔界の奥地に封印されたまま近寄る事すらできない状態だ。

それは現魔王も例外ではなく、当時の勇者が如何に強大な力を持っていたのか、その一端を知る事が出来る。やはり勇者とは、魔族にとって天敵以外の何者でもないのだ。


当時の勇者は封印を終えると、即時人間界へと帰還した。

あまりに電撃的な強行であった為に、あの時は事実確認が遅れて大変だった。


ゲーティアの悪夢。 後にそう呼ばれる事になる嘗ての居城の名からとられた出来事。

中には略奪や虐殺をしなかった当時の勇者を称える者もいたが、僕にとってはまさに最大の悪夢であった。





▶で、僕は当時何をしていたのかというと……


A,形的に言うと、指をくわえて見ている事しかできませんでしたよ。はい。



▶情けない奴め?


A.いや、うん。でも僕戦闘要員じゃないし…… 当時の僕、魔王の愛妾だし。



▶でも立ち向かう事は出来ただろうって?


A.うん、多分、立ち向かったと思うよ…



▶何で他人事なのか だって?


A.その…… 何と言うか…… 当時、寝てたんだよね……

 そこは今でも僕の汚点だと思っているんだけど、夜のお仕事で疲れてたんだよ。

 元々そういう目的で拾われたみたいだし、僕も彼女に一目で惚れたし、相思相愛。

 起きた時にはゲーティアから転送されてて、何処だよここってな感じ。



▶彼女との夜を詳しくって、おま……


A.まあ、いいけどさ。

 技術とかは求められなかったかな。

 僕の容姿的な意味合いもあったのか、とにかく必死に突く様が好きだったらしいよ。



▶それって、本当に愛されていたのかだと?


A.お前、流石に僕も怒るよ!

 遊びってだけなら、そんな関係1000年も続かないでしょ。

 それに、僕は今じゃ2等級魔人だよ? 遊びの道具にそんな地位あげないよね?


 すまなかったって…… わかればいいんだけどさ。



まあ、どちらにしろ勇者と相対したところで、僕は瞬殺されていたよ。

1000年囲われた男が、そんな場面で対応できるわけがない。

出来て肉壁が上等だっただろうけど、起きてなかったんだよ…… ホント、僕って……



でも、頑張ったんだ。

現魔王、ルーネティア様の新体制になって、仕事に修行に僕頑張ったんだ。

あれから2000年。未だ封印を解けないけど、4等級の中堅魔人となら互角だし。

3等級にすら舐められてるけど、等級は絶対ですし。

僕だってそこそこやれるんだ!って矢先に…… 


何故、人間界に左遷なのか……



▶で、何をさせられるのかって?


A.偵察と諜報だって…… って具体的に僕、何をさせられるんですかね?

 やった事ないんですけど…… 見つかってくっ殺展開とかマジ簡便なんですけど。

 ほら、僕って中身はオッサンだけど見た目は幼いですし可愛らしいですから……


 魔界も魔界で現魔王が魔王じゃないってバレそうで揺れてるし、僕が頑張らなきゃなのに!しかも人間界にもきな臭いって噂があって… 行きたくないな……




って、あれ?


おい! どこ行くの?

って待てよ! 置いてかないで、最後まで愚痴らせて…… お願い! お願いだからーーーー!




僕の叫びは誰にも届かない。


ってか、心の中で愚痴ってただけな訳で……

別に頼れる相談相手がいないってわけじゃないんだけど…… アイツは…… (´;ω;`)ブワ

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