アミュレットⅢ
王都ニラカグアではアイリス率いるアミュレットがデモーネ達の掃討をしていた。
王都ニラカグアの面積はそこまで広くない為、奪還も簡単かと思いきや、王都にいるデモーネは他の場所にいるデモーネに比べ、力が増している。
その理由はと言うと、デモーネは人を喰うが厳密に言うとデモーネは人の中にある魔力を喰う。
そして王都の住民は貴族や王族など、先祖が魔力によって権威が上がり、その血が今の貴族や王族に流れている。
つまり、普通の人間より魔力が濃い人間をデモーネは喰った為、王都にいるデモーネは少し強いのだ。
「あらかた片付いたか、全員王都の警備にあたり、ベレット、リューネ、ライガン、ジルグアは私と共に王城を攻める!」
なぜ、アイリスが少数で攻めたかと言うと、偵察兵によると、王城には数える位のデモーネしか居なかった為、少数で行くことになった。
そして、アイリス達は王城に攻めいった。
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三人の口喧嘩が始まり、どれ程経っただろうか。
少女の結婚したいという発言により始まったこの口喧嘩。
アレスが止めようとしても、うるさい!という声で書き消されてしまう。
(ん?そういえば・・・・)
「なぁ、君の名前聞いてなかったんだが、聞いても良いか?」
すると二人もあっ、という顔をして少女に視線が集まった。
「そういえば聞いてなかったわね」
「お兄ちゃんを狙う女の名前、確かに聞いてなかった・・・」
「私の名前は、ルシフ」
「ルシフか、じゃあ一つ聞くがこれからどうするんだ?帰る所はあるのか?」
人間が避難しているスカイディナビアに連れていくのも考えたが、もし友人に見つかると少し厄介だ。
かといって、リヴィエとネイレスはこの一帯ではとある事があってかなりの人気者だ。
「私はアレスの部屋で一緒に暮らしたい」
また、火に油を注ぐような爆弾発言により、リヴィエとネイレスには手をつけられない状態になった。
「絶対にさせませんよ・・・そんな事」
「ふ、二人きりはだ、ダメ!」
なんとか喧嘩を1度止めたが、もう一度口喧嘩が始まった。
(この場から早く退散せねば・・・)
自分が巻き込まれる前に外の空気を吸ってくる、と言い残し、逃げるように家を出た。
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ルシフ達が口喧嘩をしていると同時刻、アイリス達は王城の中を探索していた。
偵察兵の話通り、デモーネはほとんど見当たらず、難なく王室付近まで来ることが出来た。
来るまでに人は誰一人居なくて、シンとした空間に包まれていた。
アイリス、ベレット、リューネ、ライガン、ジルグアは王室の前に来ると剣を抜き出し、警戒体制で扉を開けた。
「やはり・・・」
アイリスの剣呑な眼差しの前に立ち塞がるように居る正体は、デモーネ凶鬼型。
他のデモーネより魔力を多く喰った凶鬼で、ボス的存在。
漆黒の体はデモーネとさほど変わらないように見えるが、目を見張るのがなんと言っても四本の腕。
その腕全てに剣が装備されており、その巨体から繰り出される剣撃をくらうとおそらく一撃だろう。
だが、アイリス達は怯むこと無く怒り狂った声で叫びながら向かって来る凶鬼にアイリス達は迎え撃った。
「蒼剣術 蒼桜」
突進してきた凶鬼の攻撃を素早く交わし、カウンター攻撃を加えるが、怯むこと無く凶鬼は次の攻撃に移った。
アイリスの他の四人は散開し、攻撃のチャンスを伺う。
と、凶鬼は自分が囲まれている事に気づいたのか、四本の剣を地面に突き刺し辺りを黒い闇で攻撃した。
周りのガラクタがその闇に飲まれ、消えて行く。
危険と察知した五人は後退し、その闇が収まると全方位から五人は攻撃を仕掛ける。
「蒼剣術 黒蒼月」
「メタルリア・バースト」
「バニッシャー・ブレイズ」
「スティリアル・スラッシュ」
「ツイスター・アーチャー」
全員の攻撃が外れる事無く直撃、大きな爆発音と共に視界が煙に覆われた。
さっきのような範囲攻撃を警戒し、アイリスは下がるよう指示した。
「煙が晴れるまで一旦待機だ!」
刹那、まだ煙が晴れていない所から剣がアイリスの方に向かってきた。
煙の中で何かがうごめくような音がして、煙が晴れるとほぼ無傷の凶鬼が現れた。
全ての攻撃はしっかりと当たっていたにも関わらず、まだ疲れている様子を感じられない。
「くそ、全部くらっておいてこれかよ・・・」
ライガンは大剣を構えたまま、皮肉げに呻いた。
すると、凶鬼は頭上に燃え盛る大きな球を顕現させた。
その真っ赤な球は凶鬼が叫んだ瞬間に破裂し、王室全域に業火の火球が降り注いだ。
「くそっ!ここままでは・・・全滅するっ!」
リューネが警告するが、それはもう遅くて・・・。
全員が火球の雨を食らい、地面に倒れた。
ベレット、リューネ、ライガン、ジルグアが倒れる中、アイリスは剣を地面に突き刺し、息を切らしながら凶鬼を見据えていた。
一方で凶鬼はまだ体力が減っておらず、戦況は絶望的だった。
「ここで、諦める訳には・・・」
何とか立ち上がり、剣を構えながらアイリスは決死の覚悟で凶鬼に攻めいった。
凶鬼の目には全く諦めず、それどころか勝つ気でいるアイリスを見据え、凶鬼もまた剣を振り下ろした。
上から降り下ろされる一撃目を避け、避けた先に待っている二撃目。
それをかわし、三撃目を蒼桜で受け止める。
受け止めている間に繰り出される四撃目を魔法障壁で防ぐ。
そして障壁で時間を稼ぎ、その隙に凶鬼の懐に潜り込んだ。
「蒼剣術 蒼乱撃」
乱れる群青色の輝きを放つシュバリエは目にも止まらぬ早さで凶鬼の体に斬撃を加える。
が、凶鬼は一瞬の怯みを見せただけで一瞬に攻撃に移り、アイリス目掛けて一気に四連撃放った。
リアルに感じた、死のイメージ。
これまでの生きてきた記憶が一気に再生される走馬灯。
その中でアイリスは一言、放った。
「アレス・・・・」
瞬間、アイリスの前に障壁が顕現し、その障壁により凶鬼の四連撃は不発に終わった。
目の前に展開される謎の障壁に混乱するアイリス。
そんなアイリスは何者かによって抱き抱えられ、倒れている四人の近くで下ろされた。
「あなたは・・・・?」
深くフードを被った謎の人物は腰から禍々しく光る黒い剣を抜き出し、凶鬼に立ち向かっていった。
「天剣の技 凍獄」
と、凶鬼が凍結し凶鬼は行動不能となった。
そして、行動不能になっている間にフードを被った人物はアイリスの周りに倒れている四人を集め、回復の陣をはった。
「激癒の繭」
すると傷だらけで意識がなかった四人の傷はスッと消えて行き、意識を取り戻した。
もちろんアイリスの傷も癒えて行き、完全回復を果たした。
「・・・・あれ・・」
「俺は凶鬼に倒されたはず・・・」
意識を取り戻した四人は辺りを見回し、四人共前に立っているフードを被った人物に目を向けた。
それは、もちろんアイリスも。
「あんたは・・・一体・・」
フードを被った人物は何も言う事無く、氷付けになっている凶鬼の元に向かった。
腰に帯刀していた剣を抜き出し、凶鬼に攻撃を仕掛ける。
「行くぞ、封剣ガレド・サタナギア」
禍々しい封剣に黒い魔力が集まって行き、やがて黄色に輝き始め、封剣を降り下ろした。
「天剣の技 雷霆」
頭から一刀両断、氷の壁を自ら割りつつ、雷の一撃。
斬撃を放った直後、雷が凶鬼に落ち、塵も残らずに消えていった。