世界が滅んだ瞬間Ⅴ
「な、なんだ・・・あれは・・・」
住人が指差しているのは、とても巨大な黒竜だった。
帝国グリトニル、ユドラ・グシルで一番大きな国で最強の軍事力を誇る帝国だ。
だが突如這い上がって来た正体不明の化け物達の前ではユドラ・グシル最強のグリトニルも劣勢が続いていた。
被害状況はグリトニルやバルクレア、ライカダルの他にも禁国スヴァルトアールヴヘイム、宗教国イリアスもほとんど壊滅、ユドラ・グシルは未曾有の大災害が起こっていた。
そして各国には巨大な黒竜が地上を支配し、人間は後退を繰り返していた。
「あ、そうだ今は天使になってはダメよ」
「え?どういうことだ?今天使にならねぇとユドラ・グシルは崩壊するぞ?」
現在こうしてる今でも各国で巨大な黒竜が暴れユドラ・グシルを崩壊させようとしている、ここで人間を超越する天使が出ないと大災害だ。
「この混乱に乗じて黒幕であるミストルティンのスパイがいるのよ」
「それに見つかるとまずい・・・ということですね」
「正解」
アレスはただただユドラ・グシルが崩壊していくのを眺めることしかできなかった。
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「エルナド隊長!後退しましょう!ここは無理です!」
ライカダルの前線で戦っている第6分隊は前から来た黒竜を筆頭にした正体不明の生物の侵攻を食い止めていた。
だが、張っていた結界も壊れ、後退を余儀なくされた。
「くそっ!・・・・全員後退!」
エルナドが怪我人を抱え、全員に後退を命じた。
刹那、どこからか何かがエルナドが抱えていた隊員が鮮やかな血を舞い、地面に倒れた。
「な、なんだ!?」
突如殺された隊員を見て、全員が臨戦態勢に入った瞬間、エルナド以外の隊員が断末魔と共に倒れた。
「くそっ!何が起こっている・・・!」
剣を構えたまま辺りを見回すが特に何も見当たらない。
瞬間、後ろに人の気配を感じ後ろを振り向くと・・・
「遅い」
と、一言言い、エルナドの体を引き裂いた。
「がっ・・・!」
胸に深い斬り跡が残りそこから鮮血が舞う。
「・・・」
胸を切り裂いたその男はエルナドの冷たく見下ろした。
「きっ・・貴様・・何者だっ・・・ぐはっ・・・」
まともに喋れない程の傷をおったエルナドは死ぬ前にエルナドを切り裂いた男に質問した。
「冥土の土産に教えてやる、俺はエイヴン」
男はそう名乗った。
髪色は黒髪で、マフラーを巻いていた男だった。
「用は済んだ、死ね」
そう言いエイヴンは右手に持っていた短剣を逆手持ちし、エルナドの喉を貫いた。
「前線は全員殺したか、よし」
エイヴンはそう言い残し、姿を消した。