世界が滅んだ瞬間Ⅲ
ユドラ・グシルで二番目に軍事力が強く、優秀な魔法使いを多く排出した国で現在は隣国ライカダルと同盟を組んでいるバルクレアは西に位置するラ・ホールにて王都の騎士組織サーヴァントが異常を察知、即刻西のラ・ホールに向かった。
「マルドゥーク戦士長!」
サーヴァントの団員がサーヴァント戦士長マルドゥークの方へ青ざめた表情で走ってきた。
「どうした?異常が見つかったか?」
「はい、ラ・ホールから見たことのない生物がどんどんと這い上がって来ています!」
瞬間、ラ・ホールを調査していた団員が爆風と共に吹っ飛んだ。
「なっ・・・!」
爆風で砂煙が舞い、それが治まると団員が言っていたその、生物をマルドゥークは目の当たりにした。
それは色んな生物と死闘を繰り広げてきたサーヴァントですら見たことのない生物だった。
その形は様々でオークのような二足歩行の生物もいれば羽を持った鳥のようや生物もいた。
「っ!総員、突撃!ラ・ホールから這い上がって来た生物は何であろうと全滅せよ!」
マルドゥークの声と共に剣を抜き、弓を構え、魔法を詠唱し始めるサーヴァント。
一方で敵と認識したのか、謎の生物はサーヴァント達に攻撃して行った。
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「なんだ、騒がしいな」
外で爆音が鳴り響いてるのだ、途絶えることなく。
本を読んでいたアレスは窓を開け辺りを見回した。
「特に何も・・・・」
言い切ろうとした瞬間、アレスは見た。
西から来た謎の生物が既にバルクレアの首都ミュクルまで来ている事を。
と、騎士たちが東の浮遊島に避難しろ!という声が聞こえた。
それを聞いて、町の住民は今やることを全て後回しし、避難を最優先にした。
「アレス!」
家の下でアレスを読んでいる少女の声が聞こえた。
「リヴィエ、この事態はなんだ?」
「私にもわからない!」
とりあえず家の扉を開け、リヴィエを家に入れた。
「何が起きてんだよ・・・」
「今、アルシエル様に連絡をしているけど全然ダメ」
「まぁ、てことは俺らで何とかしろって事だろ」
アレスは深いため息をつき、窓の外に広がっている景色を見た。
「まぁ、この災害を引き起こした奴を俺らが殺せばいいわけか」
アレスは窓を眺めながら言った。
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その頃、ラ・ホールでは謎の生物を全滅させようとしたサーヴァントはたった一人、マルドゥークを残して全員戦死した。
「くそっ、個々の能力は全員バラバラだし、何より数が多すぎる・・・・」
さっき斬られた左腕を支えながら一人呻いた。
「うおぉぉおぉぉぉ!」
並大抵の人間には持つことすらできないほどの大剣は目の前の敵を薙ぎ払った。
バキバキという骨が折れる鈍い音を鳴らしながらオーク型の生物は絶命した。
「はぁ・・・はぁ・・・」
瞬間、上から鳥のような形をした生物がマルドゥークのいる方へ急降下し、マルドゥークの肩に噛みついた。
「ぐっ・・・おぉぉぉおぉぉ!」
「アオフ・ローダーン!」
と、魔法を詠唱した瞬間マルドゥークの体が燃え、肩に噛みついていた生物は焼け焦げた。
「ぐっ・・・がはっ・・・」
マルドゥークが詠唱した魔法は体を発火させるというもの。つまりマルドゥークも少なからずもちろんダメージをくらう。
その反動でマルドゥークは血を吐いた。
「私は・・・戦士長マルドゥーク・・・こんなところで負けるわけには・・・」
足の爪先に剣を突き刺し、気を失うのを阻止しマルドゥークは魔法を詠唱し始めた。
刹那、空から光の光弾が降ってきてマルドゥークの周りにいた生物は死滅した。
「っ・・・!なんだ、あれは・・・?」
マルドゥークが空を見上げるとそこには黒と白の翼を生やした何かがいた。
翼は6本生えていて右羽は白色、左羽は黒色と右と左で色は違っていた。
そして白と黒が混ざりあった甲冑を身に纏っていた。
右の二の腕に着いている腕輪のような物は赤、青、黄、緑、白、黒、紫と様々な宝石が埋め込まれていた。
そして何より目を見張るのは右手に装備している黒い剣だった。
「何なんだ、あれは・・・」
天使と呼ぶには相応しく無く、堕天使と言っても納得はできない、そんな矛盾した何かがマルドゥークを助けた。
と、鳥のような形をした生物がその何かに触れようとした瞬間、
「かっ・・・はっ・・」
最後に断末魔のような苦しさを表したのちその生物は地上へと落ちた。
「死んでいる・・・」
マルドゥークがその鳥を確認するとその生物は既に屍と化していた。
「あの瞬間に、何が・・・」
マルドゥークは唖然としていた。